ほとんどの星は、MK分類を用いて分類されている。これは O、B、A、F、G、K および M を用いた分類を用いており、O型が最も高温で、M型が最も低温である。アルファベットの順番がバラバラであるのは、スペクトル型と天体の温度が対応していると判明したのがアルファベット順の分類が開発された後であり、後に温度の順番に並べ替えて現在の様式に整理されたという歴史的な経緯に由来する。それぞれの文字の分類はさらに0から9を用いて細分化され、この中では0が最も高温で、9が最も低温であることを示す。例えば、A8、A9、F0、F1 という分類は高温から低温になるように並んでいる。この分類法は、古典的な恒星の分類には当てはまらないその他の星や恒星に似た天体を分類できるように拡張されている。例えば白色矮星を表す D、炭素星を表す S や C などが加えられた。また、褐色矮星などの低温の天体のスペクトルとして、L、T、Y が導入されている。
MK分類ではローマ数字を用いた光度階級も合わせて用いられており、これは恒星のスペクトルにおける特定の吸収線の線幅に基づいて定められている。線幅は恒星大気の密度によって変化するため、恒星が矮星(主系列星)か巨星であるかを区別することができる。光度階級では、極超巨星に対しては 0 もしくは Ia+、超巨星に対しては I、明るい巨星に対しては II、通常の巨星に対しては III、準巨星に対しては IV、主系列星に対しては V、準矮星に対しては sd もしくは VI、そして白色矮星に対しては D もしくは VII が割り当てられている。この記法をすべて用いた場合の太陽のスペクトル型は G2V であり、これは表面温度が 5800 K 程度の主系列星であることを意味する。
ハーバード分類は、天文学者アニー・ジャンプ・キャノンによる1次元の分類である。キャノンは、それまでに存在したアルファベットを用いた分類を並べ直し、単純化した。恒星はそのスペクトルの特徴に応じてアルファベット1文字でグループ分けされ、オプションとして数字で細分化される。主系列星の表面温度は約 2000 K から 50000 K までの値を取りうるが、より進化した恒星は 100000 K を超える場合もある。物理的には、この分類は恒星大気の温度を示しており、通常は温度が高いものから低いものへの順番で並べられる。
1877年に、セッキは5番目の分類を追加した[44]。カシオペヤ座γ星やこと座β星などの輝線星が該当し、現在の分類ではBeに相当する。1891年にエドワード・ピッカリングは、class V は現在の分類でのO型 (後にウォルフ・ライエ星も含む) と、惑星状星雲の中にある恒星に相当するものであると提唱した[46]。
1880年代に天文学者のエドワード・ピッカリングが、ハーバード大学天文台において対物プリズム[47]法を用いて恒星スペクトルのサーベイを開始した。この研究の初期成果は、1890年に『Draper Catalogue of Stellar Spectra』として出版された[48]。このカタログのスペクトルの大部分はウィリアミーナ・フレミングによって分類されたものである。
1897年、ハーバードの別の天文学者アントニア・モーリは、セッキによる class I のオリオン亜分類を、残りの class I よりも先に配置した。これは現在の分類で言うと、A型よりも先にB型を置くことに相当する。これを行ったのはモーリが初めてであるが、彼女はスペクトル型の文字は用いず、かわりにIからXXIIまでの22種類の数字を用いた[44][51]。
スペクトル型の文字を記憶する方法としては、温度が高い方から低い方へ、"Oh, Be A Fine Girl/Guy, Kiss Me!"(ああ、お上品な女の子/男の子になってキスしてください!)というものがよく知られている[54][55]。そのほか、炭素星に用いられていたR型、N型やS型を含めて "Right Now, Sweet!" と続けるもの、後年に追加された褐色矮星などのさらに低温なスペクトル型であるL型やT型を含めて "Let's Tea/Turn/Try!" と続けるものなど、様々なバリエーションがある[55]。
O型のスペクトルは、かつてはHe I λ4471 に対する He II λ4541 のスペクトル線の強度で定義されていた。ここで、λ は波長であり、それに続く数値の単位はオングストローム (Å) である。2つのスペクトル線の強度が等しくなっているものがO7と定義され、早期型になるほど He I 線が弱くなる。O3型はそのスペクトル線が完全に消えるところとして定義されていたが、現在の技術で観測すると非常に弱いスペクトル線があることが分かる。そのため、現在の定義は窒素のスペクトル線で、N III λ 4634-40-42 に対する N IV λ 4058 の強度比を用いている[62]。
O型星は支配的な吸収線を持ち、またしばしばヘリウム II の輝線と、イオン (Si IV、O III、N III と C III) と中性ヘリウムの顕著なスペクトル線が見られ、O5からO9に向かって強くなる。また、顕著なバルマー線も持つが、より晩期型のものほど強くはない。O型星は非常に重いため、非常に高温な核を持ち水素を急速に燃焼している。そのため、O型星は主系列段階を最初に外れる恒星である。
O型星とB型星の境界は、元々は He II λ4541 のスペクトル線が消えるところで定義されていた。しかし、現在の観測装置を用いると、早期B型星でもこのスペクトル線は依然として存在していることが分かる。現在では、B型の主系列星は代わりに He I の紫のスペクトルの強度で定義されており、これはB2で強度が最大になる。超巨星の場合、代わりにケイ素のスペクトル線が用いられる。Si IV λ4089 と Si III λ4552 線が早期B型星を示す。中期B型星では、Si II λ4128-30 に対する後者のスペクトルの強度が決定的な特徴であるのに対し、晩期B型星では、He I λ4471 に対する Mg II λ4481 の強度が特徴となる[62]。
A型星はより一般的な肉眼で見える恒星のひとつであり、白色か青白色である。A型星はスペクトル中に強い水素線を持ち、これはA0で最大となる。また電離した金属の線である Fe II、Mg II、Si II も持ち、A5で最大となる。Ca II 線の存在はこの段階で特に強くなる。太陽系の近傍にある恒星のうち、160個に1個 (0.625%) がA型主系列星である[注 6][12][68]。
太陽を含むG型星は[14]、スペクトル中に顕著な Ca II のH、K線を持ち、これはG2で最大となる。水素線はF型星よりも弱いが、電離した金属のスペクトル線に加え、中性金属のスペクトル線も示す。CH分子のGバンドに顕著なスパイクが存在する。太陽系の近傍にある恒星のうち、およそ13個に1個 (7.5%) がG型主系列星である[注 6][12]。
巨星では表面重力が小さいため、TiO や VO を含む凝縮物は生成されない。そのため、孤立した環境では矮星よりも大きなL型星は決して形成されない。しかし恒星の衝突を介してL型のスペクトルを示す超巨星が形成される可能性はある。その一例がいっかくじゅう座V838星であり、高輝度赤色新星の増光を起こしている最中にL型のスペクトルを示したことが報告されている[82]。
T型星:メタン矮星
T型矮星は、表面温度が約 550-1300 K の低温な褐色矮星である。これらの放射のピークは赤外線の波長であり、スペクトル中ではメタンの特徴が目立つ[79][80]。
M型とS型の間での境界にある型はMSという分類が与えられる。同様に、S型とC-N型の境界にあるものにはSC型もしくはCS型という分類が用いられる。漸近巨星分枝に位置する炭素星は、年齢が進むにつれて炭素の存在量が増加し、M → MS → S → SC → C-N という系列をたどるという仮説が提唱されている。
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