スパイク (ミサイル)
スパイク(Spike:ヘブライ語: ספייק)は、イスラエルのラファエル・アドバンスド・ディフェンス・システムズ社によって開発された第三世代対戦車ミサイルである。 歴史ラファエル社では1970年代から光ファイバー誘導方式の対戦車誘導弾の構想を持ち続けていた。1980年代初頭に見通し外(NLOS:Non-Line-of-Sight) から発射器の光学センサー(EO:Electro-Optic)サイト及び弾頭の赤外線画像シーカーから取得された赤外線画像により射手が飛翔中に標的を選択・誘導できるタンムーズ対戦車ミサイル[1][2]を開発したとされる。 しかしタンムーズ対戦車ミサイルは長い間非公開とされ、公に1980年代前半にイスラエル軍により採用され、各国に輸出されたのはIAI社のレーザー誘導方式(LBR)のMAPATSであった。 現在のスパイク対戦車ミサイルの原型となったのは赤外線画像シーカー/光ファイバー誘導方式のNT対戦車ミサイルである。NTシリーズの各ミサイル(NT-G Gil、NT-S Spike、NT-D Dandy)は1987年より開発が始まり1992年より試験が開始された。 1994年の試験では良好な性能を持つことが確認され、NTシリーズの各ミサイルは1997年にパリ航空ショーにて公開された。イスラエル軍では1998年よりスパイク対戦車ミサイルの運用が始まった。 このNTシリーズの各ミサイルは、2002年にNT-G GilからSpike MR、NT-S SpikeからSpike LR、NT-D DandyからSpike ERとそれぞれ名称変更され、スパイク対戦車ミサイルとなる[3]。 概要スパイクは、発射後に自動誘導される、いわゆる撃ちっ放し能力を備えたミサイルである。 また、誘導方式は赤外線画像シーカーを用いた赤外線ホーミング。さらにスパイクの派生型ではミサイル本体と発射機に備えられた光ファイバーケーブルにより高い射撃・進路修正観測能力を持つものもある。 弾頭は、成型炸薬弾を二つ重ねたタンデムHEATで、先頭のHEATが爆発反応装甲を爆発させ、二番目のHEATが敵の主装甲を貫徹する。 発射はソフトローンチ式で、爆発の力ではなく圧縮ガスによって射出され、ロケットモーターに点火する。これによりバックブラストを軽減しており、より狭い場所からでも発射可能で市街戦に有利な特徴となっている。 構成要素スパイクは、主に二つのサブシステムから構成される。すなわち「三脚付き発射台と射撃管制システム」および「ミサイル本体」である。全体での重量は長射程型のMR/LRの場合は26kg。重量削減はサーマルサイトを撤廃することで実現する。 このミサイルは、歩兵が三脚付き発射台を用いるか、あるいは装甲車にマウントされた発射器から用いられる。さらに、フランスでスペルウェールUAVへの装備が試みられている。また、スパイクER以降のモデルは攻撃ヘリコプターへの装備も行われており、イスラエル空軍はAH-1やAH-64に搭載しているほか、スペイン陸軍はティーガーに、イタリア陸軍はA129 マングスタに装備させている。 また、同じラファエル社によって開発された遠隔操作式砲塔ユニットである、サムソン RCWS-30やタイフーンに組み込んだ状態での運用も行われている。 販売このミサイルは、多くの陸軍で旧式化したミランやドラゴンなどの第二世代対戦車ミサイルを置き換えた。 ヨーロッパでの販売を容易にするため、ドイツにEuroSpike GmbH社が設立された。この会社の持株比率はディール・ディフェンス社40%、ラインメタル社40%、ERCAS B.V社(ラファエル社が100%の株を所有する子会社)が20%である。所在地はバイエルン州のレーテンバッハ・アン・デア・ペーグニッツ。 派生型
ミサイル重量は34kg。発射器重量は車載型が30kg、空中発射型が55kg。装甲貫徹能力はRHA換算で1,000mm。2018年には最大射程を倍化したスパイクER2が登場した。ラファエル社によれば、スパイクER2の誘導データリンクは光ファイバー/無線(RF)方式の併用である[4]。地上から発射された場合、射程10km、ヘリコプターなど空中から発射された場合、射程16kmとされる。
2009年にスパイクNLOSが発表されて間もなく、それまで長期間非公開にされていたタンムーズ(ヘブライ語:תַּמּוּז, 英語:Tammuz)対戦車ミサイルが公にされた。タンムーズ対戦車ミサイルとスパイクNLOSは主翼・操舵・安定翼などの各部の形状が大きく異なる[6]が、同一のミサイルとして扱われることがある。よってタンムーズ対戦車ミサイルの改良型もしくは派生型として開発されたのが、海外輸出も想定した新型のスパイクNLOSであると考えられる(タンムーズ対戦車ミサイルの誘導データリンクは詳細不明だが、発射時の画像や動画では有線誘導ワイヤーが無いこと [7]や、スパイクNLOSと同一のミサイルとして扱われることもあることから、同じく無線(RF)方式と思われる。)。 スパイクLR/ER/NLOSは、いずれも撃ち放し(F&F:Fire-and-Forget)、F&O(Fire-and-Observe)、Fire-to-Grid方式に対応している[4]。
採用国1990年代初頭よりタンムーズ(ヘブライ語:תַּמּוּז, 英語:Tammuz)対戦車ミサイル(2009年に登場したスパイクNLOSと同一の扱いをされることもある。)を搭載したペレフ自走対戦車ミサイルを運用。1997年からMR、LR、ERを運用。
類似のシステム
出典
外部リンク |