スミロドン
スミロドン(Smilodon, 'ナイフの歯'の意)は、新生代第四紀更新世(約250万 - 1万年前)の南北アメリカ大陸に生息していた剣歯虎の属[1]。サーベルタイガーの中でも最後期に現れており、アメリカ大陸間大交差によって北アメリカから南アメリカに渡った。 形態・生態体長1.9 - 2.1メートル、体高1 - 1.2メートル[2]。南アメリカに進出したグループの方がより大型であった[3]。「サーベルタイガー」の名の元となる、24センチメートルに及ぶ牙状の長大な上顎犬歯を持つ[2]。この犬歯の断面形状は楕円であり、後縁は薄く鋸歯状になっていた[1]。これは強度と鋭利さを兼ね備えた構造であり、獲物にこれを食い込ませる際の抵抗は小さくなっている。また下顎は120度まで開き、犬歯を効率よく獲物に打ち込むことができた[3]。しかし、この犬歯は現生のネコ科のように骨を噛み砕ける強度は持っておらず、硬い骨にぶつかるなどして折損する危険を回避するため、喉元の気管など柔らかい部位を狙ったと推定される[4]。前肢と肩は非常に発達しており、獲物を押さえ込んだ上で牙を打ち込むのに適した形態であった。また発達した肩は、牙を打ち込む際の下向きの強い力を生み出すことができたとされる[1]。 しかし一方、発達した前肢に比べて後肢が短く、ヒョウ属の様な現代のネコ科の大型捕食者ほど素早く走ることはできなかったとされる。そのためマンモスのような動きの遅い大型動物やマクラウケニアなどの弱った個体や幼体を群れで襲い、捕食していたと考えられている。群れを形成していたことの傍証としては、怪我をして動けない個体がしばらく生きながらえていたことを示す化石が見付かっている例が挙げられる。これは、他の個体から餌を分け与えられていたものと推測されている[4]。
スミロドンの食性については、大きく発達した犬歯をもつため柔らかい肉や内臓のみを食べたとする説のほか、上下の顎を噛み合わせることが困難であるから獲物の血を啜ったとする説[5]、スカベンジャー(腐肉食者)とする説もある[6]。しかし、スミロドンの骨格には獲物と戦った際についたとおぼしき損傷の跡が見られるものも多いことから、プレデター(捕食者)であったとする説が主流である[注釈 1][2]。 絶滅大型の犬歯と発達した前肢は、大型獣の捕殺に高度に適応した完成形態であった。しかしこれはまた、走行という面において、走行と捕殺の機能を高次に兼ね備えた新しいタイプの捕食者に大きく水をあけられてしまうことを意味した。地球が寒冷化し、大型草食獣が減少しつつある時代においては、かれらは時代遅れの存在となっていた[8]。タールピットに嵌まった獲物を狙い、自らも沼に脚を取られて死んだとおぼしき化石も発見されている[2]。 分布南北アメリカ大陸に生息。カリフォルニア州ラ・ブレア・タールピット(La Brea Tar Pits)においてダイアウルフ、テラトルニスなどとともに多数の化石が発見されている[3][2]。数は2,000体以上[1]で、これはダイアウルフに次いで多い[3]。 脚注注釈出典参考文献
関連項目
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