『スートラ〜教典』(原題:Sutras)は、イギリスのシンガーソングライター、ドノヴァンが1996年に発表したスタジオ・アルバム。新曲によるアルバムとしては12年振りの作品に当たる[2]。
背景
ドノヴァンはリック・ルービンの主宰するレーベル、アメリカン・レコーディングスとの契約を得て、ルービンのプロデュースにより2年以上かけて本作を完成させた[2]。ドノヴァンは1996年当時、「僕はリック・ルービンが同志だってことが分かったよ。彼の家を訪ねて書斎を見た時、僕が前の月に入手したばかりのニューエイジ系の本を、彼も読んでいたんだからね」と語っている[2]。
本作のレコーディングには、ダニー・トンプソン(元ペンタングル)、スティーヴ・フェローン、ベンモント・テンチ(トム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズ)に加えて、デイヴ・ナヴァロ(ジェーンズ・アディクション〜レッド・ホット・チリ・ペッパーズ)や、アメリカン・レコーディングス所属のジョニー・ポロンスキー(英語版)を含む若手ミュージシャンも参加した[3]。「黄金郷 (Eldorado)」は、エドガー・アラン・ポーの同名の詩を引用した曲で[4]、ナイジェル・ケネディがアレンジ及びヴァイオリン演奏で参加している[1]。
反響・評価
セールス的には大きな成功に結びつかず、全英アルバムチャート入りもBillboard 200入りも逃す結果となった[5][6]。
Stephen Thomas Erlewineはオールミュージックにおいて5点満点中3点を付け「彼の有名曲に見られたカラフルなサイケデリック・ポップ色を捨て去った代わりに、初期のレコードのアコースティック・フォーク色を押し出しており、ドノヴァンのソングライティングには少々ムラがあるとはいえ、温かみのあるパフォーマンスは、特に長年のファンにとって魅力的かつ歓迎に値するだろう」と評している[7]。
収録曲
特記なき楽曲はドノヴァン作。アメリカ盤CDは14曲入りだが[8]、日本盤CD(FHCA-1001)には「ガーデン」が追加された。
なお、日本盤の日本語対訳歌詞、及び対訳タイトルは「王様」が担当しており、訳者のイメージ通りに「対訳歌詞でそのままメロディーに乗せて歌える」仕様になっている。
- 曲げないで - "Please Don't Bend " – 4:12
- 何もいらない - "Give It All Up " – 3:09
- 眠り - "Sleep " – 2:47
- Fiona Macleodの"Blessing for the Soul's Release"からの引用を含む[1]。
- 永遠に続く海 - "Everlasting Sea" – 3:32
- 気高いあなたの愛 - "High Your Love" – 2:30
- 曲はサイババ・コミュニティのスピリチュアル・メロディにインスパイアされた[1]。
- 澄んだ額の御方 - "The Clear-Browed One" – 3:18
- 道 - "The Way" – 2:14
- 老子の著書『老子道徳経』(訳:Gia-fu Feng, Jane English)からの引用を含む[1]。
- 深い平和 - "Deep Peace" – 3:10
- 涅槃 - "Nirvana" – 3:31
- 黄金郷 - "Eldorado" – 3:06
- 我がものに - "Be Mine" – 3:27
- 『The Love Songs of Sappho』(訳:Paul Roche)からの引用を含む[1]。
- 明かりの貴婦人 - "Lady of the Lamp" – 4:09
- 永遠の今 - "The Evernow" – 4:08
- 私は宇宙 - "Universe Am I" – 4:44
- ガーデン - "The Garden" – 2:51
参加ミュージシャン
- ドノヴァン - ボーカル、アコースティック・ギター、ハーモニカ、ハーモニウム
- ベンモント・テンチ - キーボード(on #2, #3, #8, #11, #12)
- デイヴ・ナヴァロ - メロトロン(on #4, #14)、バッキング・ボーカル(on #4, #7, #9)、エレクトリックピアノ(on #5)、エレクトリック・シタール(on #7)、ピアノ(on #9, #14)、キーボード(on #13)、チェンバレン(on #14)
- ダニー・トンプソン - アコースティック・ベース(on #1, #2, #6, #13, #14, #15)
- ジョシュ・ヘイデン - ベース(on #3, #9, #11)
- ジョニー・ポロンスキー - ベース(on #7)
- エヴァン・ハーツェル - ドラムス(on #3)
- スティーヴ・フェローン - パーカッション(on #5, #13)、ドラムス(on #7, #9, #11, #13, #14)
- ジュリエット・プレイター - パーカッション(on #5, #7, #9, #13, #14)
- D・サーディ - ベル(on #5)
- ナイジェル・ケネディ - ヴァイオリン(on #10)
- Michael Severens - チェロ(on #3, #7, #13)
- Gerri Sutyak - チェロ(on #4, #14)
- Pavinder Singh - タブラ(on #5)
脚注