ブルー・オイスター・カルト(Blue Öyster Cult)は、アメリカ合衆国ニューヨーク州出身のハードロック・バンド。略称「BÖC」。ヘヴィメタルのルーツとなったグループの一つである[6]。1967年に結成し、休止を挟みながら50年以上にわたって活動している。代表曲に「(Don't Fear) The Reaper」(「死神」)「Godzilla」「Burnin' for You」(「お前に焦がれて」)がある。ちなみにセバスチャン・バック (スキッド・ロウ、アメリカ)は、BOCの大ファンである。
歴史
結成/初期
1967年、サンディ・パールマンが、自作の詩「The Soft Doctrines Of Imaginos(イマジノスの柔らかな経典)」(#イマジノス参照)の世界観を、ロックによって表現するというコンセプトで、協力者アルバート・ブーチャード(B)とともにミュージシャンを集め、ニューヨーク市のロングアイランドで結成された。結成当初のバンド名は「Soft White Underbelly」[7]であった。パールマンはマネージメントを担当し、ライブのブッキングやレコード契約を速やかにまとめて、彼らを表舞台に送り出したのであるが、バンドに与えたパールマンの影響はそれに留まらず、自作の詩をバンドのオリジナル曲の歌詞の素材として提供し、バンドが生み出した世界観にも決定的な影響を与えた。
1972年、「コロムビア・レコード」より『Blue Öyster Cult』でデビュー。変形十字のシンボルマークもこの時から使用が開始されている(#バンド名とシンボルの由来参照)。アルバムはビルボード200にチャートインし、バーズやアリス・クーパー、マハヴィシュヌ・オーケストラらと盛んにツアーを行って知名度を上げていった。レーベルは彼らをアメリカ版ブラック・サバスとして売り出そうと試み、『Tyranny and Mutation』(1973)、『Secret Treaties』(1974)とコンスタントにアルバムをリリースする。
全盛期
ライブ・アルバム『On your feet or on your knees』(1975)の好調なセールスにより広く知られるようになった。なお、このアルバム題名となっている'On your feet or on your knees!'を冒頭でMCとして叫んでいるのはニューヨーク・パンクのオリジネイターでもあるパティ・スミスである。音楽メディアはパンクとハードロックを区別したがるが、パティの例でもわかる通り、双方のジャンルの人物が交流することは、たびたび見られた。当時としてはLP盤2枚組の高価なセットであったが、N.Y.でのアンダーグラウンド系ロックの記録として未だに評価が高い録音であり、スタジオ録音のB.O.Cとは趣が異なる演奏が聴ける名作である。
次いで代表作ともいえる『Agents of Fortune』(1976)をリリースする。『Agents of Fortune』からのシングルで、リードギターのバック・ダーマが曲を作り歌も担当した「(Don't Fear) The Reaper」[8]が全米12位まで上昇し、アルバムはゴールド・ディスクを獲得する。ダーマのボーカルはソフトで、そのバックもソフトロックサウンドであり、ハードロックサウンドは曲中の展開部の一部のインスト部に限られたもの。
同じくマーティン・バーチのプロデュースした『Fire of Unknown Origin』(1981)では、シングル「Burnin' For You」が全米トップ40入りするヒットとなる。この曲は当初"バック・ダーマ" ローザー(Vo/G)のソロ・プロジェクト用に書かれたものであったが(ブルー・オイスター・カルトには合わないと判断された)、パールマンの指示でアルバムに収録されることとなった。また、本作収録の「Veteran of the Psychic Wars」の歌詞はマイケル・ムアコックが書いたことで知られている。このアルバムに伴うツアーの最中、アルバート・ブーチャード(Ds)が失踪するという事件も発生した。この時に代役となったのは、バンドのライティング担当技師だったリック・ダウニー(Ds)である[9]。このツアー音源を元に、ライブ・アルバム『Extraterrestrial Live』(1982)をリリース。アルバート・ブーチャードがドラムを叩いているのは2曲だけで、残りはリック・ダウニーのプレイである。ダウニーはその後正式なドラマーとしてバンドに加入。この頃アルバート・ブーチャードは、バンド結成の発端であり、後述するパールマンの創作企画「イマジノス」の実現に取り組んでいた。
安定期/分裂
プロデューサーにブルース・フェアバーンをむかえ、『The Revölution by Night』(1983)をリリース。バンドはアルバムの出来に満足していたが、セールス的には前スタジオ作に届かなかった。このアルバムに伴うツアーを終えてリック・ダウニーは脱退。
2019年、イタリアのフロンティアーズ・レコードと契約し、2020年にはオリジナルアルバムとしては19年ぶりとなる『The Symbol Remains』をリリース。32年ぶりにビルボード200チャートイン(192位)を果たす[12]。また2024年4月12日には、1978年から1983年の間にレコーディングされていた音源をAI技術(デミックス・ソフトウェア)とエリック・ブルーム、バック・ダーマ、アルバート・ブーチャード、リック・ダウニーらにより新たにレコーディングしたパートを用いて再構築したアルバム『Ghost Stories』(怪談)を発売した[13]。
その他、1991年にリリースされたライブビデオからの音源で製作された『Live 1976』(1994)。2002年にリリースされたライブDVDからの音源で製作された『A Long Day's Night』(2004)、2022年にニューヨークで計3公演行われた結成50周年記念ライヴの模様を収録したCD2枚組+DVDのライブ作品『50th Anniversary Live - First Night[14]』(2023)
などのライブアルバムがリリースされている。