ロングアイランド・レイルロードのコンコース
LIRRの電車に向かうラッシュアワーの群衆
出発ゲート
ペン駅の地下のプラットフォームへ向かう線路。
ハドソン川上空から見た再開発前のハドソン・ヤード 円形の建物がペン駅(2009年)
ペンシルベニア駅 (Pennsylvania Station、略称:Penn Station)は、アメリカ合衆国 ニューヨーク州 のニューヨーク市 マンハッタン区 チェルシー にある鉄道駅。「ペン・ステーション」の愛称で呼ばれる。同市のグランド・セントラル駅 と並ぶ大規模な駅である。
概要
ペンシルベニア駅は、チェルシー の北部でミッドタウン・ウエスト の中央、7 -8番街 と31-32丁目に囲まれた街区に位置している。駅舎はマディソン・スクエア・ガーデン と共有の建物を使っている。1日あたり、およそ600本もの列車が発着している。駅の主要施設は地下にあり、プラットフォームは隣のジェームズ・ファーレー郵便局 の地下まで伸びている。郵便局からハドソン川 の間の区画には、MTA のウェストサイド車両基地 があり、周辺では大規模なハドソン・ヤード 再開発が進行中である。駅の周辺にはブロードウェイ やデパート のメイシーズ 、マンハッタン・モール などもある。
歴史
初代駅舎
アメリカ最大の鉄道会社であったペンシルバニア鉄道 のターミナル駅はハドソン川の西岸にあり、マンハッタンからはフェリーで連絡していた。同社にとってマンハッタン乗り入れは長年の悲願であった。ハドソン川を渡る鉄道橋は建設できず、河底トンネルは蒸気機関車を通すには適しないため、ハドソン川を渡る方法がない状態であったが、トンネル内を電化して電気機関車が蒸気機関車を牽引することによりマンハッタンに鉄道を引く目途がたつようになった。1902年、ニューヨーク市当局から建設許可を受け用地の買収を開始、当時テンダーロイン地区と呼ばれた歓楽街の2街区が丸ごと更地になった。1904年には川の下を横断するトンネルと駅舎の建設が始まった。乗り場は地下にあるため大量の土砂が掘削された。建築事務所マッキム・ミード・アンド・ホワイトによって設計された駅舎は古代ギリシア の神殿 のように列柱の並ぶ荘厳なボザール様式 (歴史主義建築 )の建築物であった。駅は1910年 に完成・開業した。(初代駅舎 を参照)
待合室 1911年
地下のプラットフォーム
コンコース 1962年
コンコースの大屋根 1962年
7番街のファサード 1962年
二代目駅舎
第二次世界大戦 後、ハイウェイや航空路線の広がりに伴い、鉄道の利用者は急激に減少した。ペンシルバニア鉄道も赤字経営となり鉄道以外の収益を増やす必要に迫られ、マンハッタンの一等地にあるペン駅舎を建て替えることになった。反対運動が起こったが1963年に解体は実行された。しかし歴史的建築保存運動 が高揚するきっかけになり、その後のグランド・セントラル駅 保存などにつながった。新駅舎は不動産ディベロッパー との共同プロジェクトでマディソン・スクエア・ガーデン と共有の建物になった。切符売り場やインフォメーションセンター、待合室なども現代的に改装されたが地下のプラットフォーム だけは創建当時のたたずまいを残している。
三代目駅舎
既存ペンシルバニア駅の西側に隣接したジェームズ・ファーレー郵便局 (James A. Farley Building) は8番街と9番街の間かつ31丁目と33丁目の間にあり、初代駅舎同様にマッキム・ミード・アンド・ホワイト設計によるボザール様式の大規模な建物でニューヨークの中央郵便局として親しまれてきた。これを駅の入り口に転用し、かつてのような壮麗な駅舎を取り戻すというアイデアは1990年代初期から存在していたが、資金調達等の問題からなかなか具現化されなかった。2010年から具体的な計画がスタートし、2017年6月に工事が始まり2021年1月1日に開業した。建物中央部にはガラス張りの大きな吹き抜けが設けられている。計画を強く後押しした上院議員パトリック・モイニハンの名を冠しモイニハン・トレイン・ホール(Moynihan Train Hall)と命名された。
発着している鉄道路線
近郊電車
アムトラック
アムトラック (Amtrak)の列車は長距離列車でいずれも列車ごとに名前が付いているので、本項でも列車ごとに羅列する。
ペンステーションの前後を始めとしてニューヨーク近郊のほとんどの区間は複々線になっており、このような区間ではアムトラックの列車は主要駅だけに停車し、小さな駅はメトロノース鉄道 (Metro North Railroad)やニュージャージー・トランジット (New Jersey Transit, NJT)のような通勤・近郊鉄道が停車することで長距離移動客と近距離移動客の分離を図っている。
アムトラックの列車は基本的に定員制(乗車車両のみを指定される方式で席は自由)で、リクライニングシート採用の車両、前述のようなダイヤ構成と通勤鉄道に比べて速くて快適だが、同じ駅同士を移動する場合は通勤鉄道に比べて料金は高い。また、同じアムトラックでも列車によって料金が異なる。
コネチカット州方面行き
マンハッタンから東に進み、コネチカット州 やマサチューセッツ州 方面へ向かう列車。並走する通勤鉄道はメトロノース鉄道のニューヘイブン線 (New Haven Line)でニューロシェル 付近で合流する。
アセラ・エクスプレス (Acela Express)
ワシントンまで行く列車で専用車両を用いる高速列車。ボストン方面の列車とは直通運転している。主な途中経由地はニューアーク (Newark)、フィラデルフィア (Philadelphia)、ボルチモア (Baltimore)など。停車駅を最小限に絞り、最高速度は240km/hの高速列車。車両は専用車両でファーストクラスとビジネスクラスのみで構成され、運賃は高め。
ノースイースト・リージョナル (Northeast Regional)
アセラ・エクスプレスと同じルートを走りボストンまで向かう列車だが、こちらは一般的な客車編成で速度も遅い。運賃はアセラよりも安い。主な経由地はニューロシェル、スタンフォード 、ブリッジポート 、ニューヘイブン 、ニューロンドン 、プロビデンス など。ニューヘイブンから先、内陸部のスプリングフィールド に向かう列車も一部にある。
バーモンター(Vermonter)
合衆国北東部のバーモント州 まで向かう列車で後述のイーサン・アレン・エクスプレス(Ethan Allen Express)と異なり、コネチカット州から先、コネチカット川 をたどるように北上し、コネチカット州、マサチューセッツ州とバーモント州を縦断、同州北部でカナダとの国境に近いセント・オールバンズ まで走る。主な経由地はニューヘイブン、ハートフォード 、スプリングフィールド、モントピリア など。
ニュージャージー州方面行き
マンハッタンから西に進みニュージャージー州 、ペンシルベニア州 、ワシントンD.C. 方面へ向かう列車。並走する通勤鉄道はニュージャージー・トランジット のNJTノース・イースト・コリドー線 。
ノースイースト・リージョナル(Northeast Regional)
ワシントンを経由しその先のバージニア州 まで行く列車で、アセラ・エクスプレスやほかの長距離列車に比べると停車駅が多く遅いが安い。ニューヘイブン方面の列車とは直通運転をしている。主な経由地はニューアーク、ニューブランズウィック 、トレントン 、フィラデルフィア、ウィルミントン 、デラウェア州 ニューアーク (デラウェア州) 、ボルチモア、ワシントンD.C.、アレクサンドリア など。バージニア州アレクサンドリアから先、リンチバーグ に向かう路線と、州都リッチモンド を経由し港湾都市ニューポートニューズ に向かう列車に分かれる。
クレセント (Crescent)
ワシントンD.C.まではアセラやリージョナルと共通。そこからさらに進んでバージニア州 、ノースカロライナ州 、アラバマ州 などを経由してルイジアナ州 ニューオーリンズ まで走る列車。主な経由地はニューアーク、トレントン、フィラデルフィア、ウィルミントン、ワシントンD.C.、リンチバーグ、シャーロット 、アトランタ 、バーミングハム など。
カロリニアン (Carolinian)
ワシントンD.C.を経由してノースカロライナ州の州のシャーロットまで行く列車。前述のクレセントと同じルートをたどり、同列車の補完的な役割をする。
キーストーン・サービス (Keystone Service)
フィラデルフィアから先ペンシルベニア州を横断し、同州西部にある同州の州都ハリスバーグ までを結ぶ列車。主な経由地はニューアーク、トレントン、フィラデルフィア、ランカスター など。
カーディナル(Cardinal)
ワシントンD.C.まではアセラやリージョナルと共通。そこからバージニア州 、ウエストバージニア州 、ケンタッキー州 、インディアナ州 などを経由してイリノイ州 シカゴ までを結ぶ列車。主な経由地はチャールストン 、シンシナティ 、インディアナポリス など。ニューヨークとシカゴを結ぶ列車には他に後述のレイク・ショア・リミテッド(Lake Shore Limited)がある
ペンシルベニアン(Pennsylvanian)
ペンシルベニア州フィラデルフィアから先、同州ハリスバーグまではキーストーン・サービスと共通し、そこからさらに同州ピッツバーグ へと向かう列車でペンシルベニア州をメインに走る。
シルバー・メティオ (Silver Meteor)、シルバー・スター (Silver Star)
どちらの列車もニューヨークとフロリダ州 のマイアミ を結ぶ列車であるが、途中ノースカロライナ州、サウスカロライナ州内において経由地が異なる。また、フロリダ州内においても、シルバー・メティオがオーランド 方面とマイアミ方面を直行するのに対し、シルバー・スターはその区間でタンパ に寄り、同駅でスイッチバック を行う。
パルメット(Palmetto)
ニューヨークからワシントンを経由してジョージア州の港湾都市サバンナ までを結ぶ列車。
バーモンター(Vermonter)
ワシントンまで行く。バーモント州方面の列車とは直通運転をしている。主な経由地はニューアーク、トレントン、フィラデルフィア、ウィルミントン、ボルチモアなど。
ニューヨーク州北部方面行き
エンパイア・コネクションの位置。
ハドソン川 に沿って北上し、ニューヨーク州の州都オールバニ などを経由する列車。並走する通勤鉄道はメトロノース鉄道のハドソン線 でリバーデイル 付近で合流し、ポキプシー まで同じ線路を走る。
もともと、この方面に行く列車はニューヨーク・セントラル鉄道 (New York Central Railroad)の列車であり、ペンシルバニア鉄道のターミナルである当駅ではなく、ニューヨーク・セントラル鉄道のターミナルであるグランド・セントラル駅に発着していた。1960年末に両社が合併しペン・セントラル鉄道になり、さらにはアムトラックになってからも、ターミナル駅が分けられており両駅の移動には手間がかかっていた。これを解消するために貨物線を流用・再整備したエンパイア・コネクション(Empire Connection)と呼ばれる短絡線が建設され、1991年4月7日よりNY州北部へ行く列車も当駅発着に統一された。
アディロンダック(Adirondack)
ニューヨーク州を縦断し、カナダ 東部ケベック州 の都市モントリオール まで走る列車。主な経由地はオールバニ、サラトガ・スプリングズ 、ポート・ケントなど。
エンパイア・サービス (Empire Service)
主にマンハッタンとオールバニまでを結ぶ列車で本数が比較的多い。主な経由地はヨンカーズ 、クロトン・ハーモン、ポキプシーなど。数は少ないものの、一部の列車はオールバニから先、シラキュース 、バッファロー を経由して、カナダ国境の手前、ナイアガラフォールズ まで走る。
イーサン・アレン・エクスプレス(Ethan Allen Express)
ニューヨーク州を縦断し、バーモント州 ラトランド に向かう列車である。主な経由地はクロトン・ハーモン、オールバニ、サラトガ・スプリングズ など。列車名はバーモントを中心にアメリカ独立戦争 で活躍した英雄イーサン・アレン に由来する。
メープルリーフ (Maple Leaf)
カナダのオンタリオ州 トロント まで走る列車。主な経由地はオールバニ、シラキュース、バッファロー、ナイアガラフォールズ(ニューヨーク州、オンタリオ州 )、セントキャサリンズ 、オークビル など。
レイク・ショア・リミテッド (Lake Shore Limited)
ニューヨーク州を北上し、途中で進路を西に変えて五大湖 沿いにでイリノイ州シカゴまで結ぶ列車である。主な経由地はオールバニ、エリー 、クリーブランド 、トレド など。この列車はかつてこの区間を所有していたニューヨーク・セントラル鉄道 (倒産済み)が運転していた豪華看板列車、「20世紀特急 (20th Century Limited)」に由来している。ただし、当時はニューヨーク側のターミナル駅がグランド・セントラル駅 であったなど若干の違いはある。
この列車は途中のオールバニでボストン発着の車両が連結・解放される。ボストン発着の列車はウースター 、スプリングフィールドを経由してオールバニまで走る。
当駅からの接続路線
地下道などを通じて下記の路線に乗り換えが可能である。
ニューヨーク市地下鉄
PATH
バス路線
都市間バス
一般バス
シャトルバス
隣の駅
アムトラック
■ アセラ・エクスプレス
ニューアーク・ペン駅 - ニューヨーク・ペン駅 - スタンフォード駅
■ ノースイースト・リージョナル
ニューアーク・ペン駅 - ニューヨーク・ペン駅 - ニューロシェル駅
■ バーモンター
ニューヨーク・ペン駅 - スタンフォード駅
■ カーディナル 、カロリニアン 、キーストーン・サービス 、クレセント 、シルバー・メティオ 、シルバー・スター 、パルメット 、ペンシルベニアン
ニューアーク・ペン駅 - ニューヨーク・ペン駅
■ アディロンダック 、イーサン・アレン・エクスプレス 、エンパイア・サービス 、メープルリーフ
ヨンカーズ駅 - ニューヨーク・ペン駅
■ レイクショア・リミテッド
クロトン・ハーモン駅 - ニューヨーク・ペン駅
ロングアイランド鉄道
■ 本線 (シティターミナルゾーン )
ニューヨーク・ペン駅 - ウッドサイド駅
NJトランジット
■ 北東回廊線 、■ 北ジャージー海岸線 、■ モントクレア - ブーントン線 、■ モリスタウン線 、■ ラリタンバレー線 、■ グラッドストーン支線
セカーカス・ジャンクション駅 - ニューヨーク・ペン駅
かつて存在した路線
ACES
ACES
ニューアーク・ペン駅 - ニューヨーク・ペン駅
ペンシルバニア鉄道
本線
ニューアーク駅・ペン駅 - ニューヨーク・ペン駅
ニューヨーク・アンド・ロングブランチ鉄道
ニューアーク駅・ペン駅 - ニューヨーク・ペン駅
事件・事故
脚注
外部リンク