「ポリシーン・パン 」(Polythene Pam )は、ビートルズ の楽曲である。1969年9月に発売された11作目のイギリス盤公式オリジナル・アルバム『アビイ・ロード 』に収録された。アルバム『アビイ・ロード』のB面の特徴であるメドレー「ザ・ロング・ワン」(The Long One )の4曲目で、1969年7月に「シー・ケイム・イン・スルー・ザ・バスルーム・ウィンドー 」と繋げてレコーディングされた。
背景
本作は1968年頃にビートルズのメンバーがインド ・リシケーシュ で、マハリシ・マヘーシュ・ヨーギー のもとで瞑想修行を行っていた時期に書かれた楽曲で、同時期に書かれた「ミーン・ミスター・マスタード 」と同様にレノンは「インドで書いたガラクタの一つ」としている。1968年5月にジョージ・ハリスン の自宅でデモ音源が録音されており、この時の音源は1996年に発売された『ザ・ビートルズ・アンソロジー3 』や2018年に発売された『ザ・ビートルズ (ホワイト・アルバム) 〈スーパー・デラックス・エディション〉 』に収録された。
本作のモチーフについて、レノンは「とある女性と僕たちを最初にマスコミに露出してくれた、イギリス版のアレン・ギンズバーグ ともいえる男との思い出。1963年8月のツアー中に会ったんだけど、僕は女連れで、向こうにも僕に会わせたいという女がいた。その女はポリエチレンを身に纏っていると聞いていたけど、本当にそうだった。長靴やキルトは着けてない。あれは僕の捏造だ。ポリ袋の中の変態的なセックス。とにかく曲のネタが欲しかったんだ」と語っている。レノンは、本作をきつめのリバプール訛り で歌っている。ジョージ・ハリスン は、テレビシリーズ『ザ・ビートルズ・アンソロジー 』のインタビューで、「僕がこの曲を気に入ったのは、すごくリヴァプールっぽかったからだ。コミカルでありながら、シリアスなところもある曲を書く人間はいなかった。この曲はとても上出来なロックンロール・ナンバーだったけど、明らかにジョークなのに、誰も笑わず、誰もピンときていないと、もどかしくなってくることもある」と語っている。
タイトルの「ポリシーン」は、ポリエチレン の(主にイギリスでの)別称で、「ポリシーン・パン」というタイトルは、キャヴァーン・クラブ でライブを行っていた時期の常連客で、ポリエチレンを食していたことから「Polythene Pat 」と称されていたパトリシア・ホジットに由来している。レノンが弾くパワー・コードから始まる楽曲で、音楽評論家のイアン・マクドナルド (英語版 ) はザ・フー の「ピンボールの魔術師 」に触発されたものと推測している。
レコーディング
「ポリシーン・パン」のレコーディングは1969年7月25日に開始され、「シー・ケイム・イン・スルー・ザ・バスルーム・ウィンドー 」と繋げてレコーディングされた。8トラック・レコーダーのトラック1にポール・マッカートニー のベース 、トラック2にリンゴ・スター のドラム 、トラック3にレノンの12弦 アコースティック・ギター 、トラック4にハリスンのリードギター 、トラック6にレノンとマッカートニーのリード・ボーカル が録音された。ギターソロ中にレノンは「Fab! That's great! Real good, that. Real good ... (イカす!最高じゃん!それほんといい。)」と称賛の言葉を口にしていた。この日にレコーディングされたテイクから、オーバー・ダビング用にテイク39が採用された。
7月28日と30日にスネアドラム 、シンバル 、タンバリン 、E からA に下降し、この2つのキーの間の転調を可能にする5音のエレクトリック・ギター 、レノンとマッカートニーのハーモニー・ボーカル 、新たなリード・ボーカルなどがオーバー・ダビングされた。
なお、本作は『アビイ・ロード』のB面の特徴となっているメドレー「ザ・ロング・ワン」の4曲目となっているが、当初は前曲「ミーン・ミスター・マスタード 」と本作の間には「ハー・マジェスティ 」が配置される予定となっていた。しかしメンバー内で考えが変わったため、「ハー・マジェスティ」はメドレーから外れることとなり、本作との繋がりを持たせるために「ミーン・ミスター・マスタード」の歌詞に登場するマスタード氏の妹の名前が「シャーリー」から「パン」に変更された。
クレジット
※出典
カバー・バージョン
1970年にブッカー・T&ザ・MG's がアルバム『McLemore Avenue 』でカバー。
1976年にロイ・ウッド がドキュメンタリー映画『All This and World War II』のサウンドトラックとしてカバー。
1999年にアトム・アンド・ヒズ・パッケージ (英語版 ) がアルバム『Making Love 』で歌詞を変更してカバー。タイトルも「P.P. (Doo-Doo)」に変更された。
脚注
出典
参考文献
ハウレット, ケヴィン (2018). ザ・ビートルズ (ホワイト・アルバム) 〈スーパー・デラックス・エディション〉 (ブックレット). ビートルズ . アップル・レコード .
ハウレット, ケヴィン (2019). アビイ・ロード (スーパー・デラックス・エディション) (ブックレット). アップル・レコード .
Lewisohn, Mark (2005) [1988]. The Complete Beatles Recording Sessions: The Official Story of the Abbey Road Years 1962-1970 . London: Bounty Books. ISBN 978-0-7537-2545-0
MacDonald, Ian (2005). Revolution in the Head: The Beatles' Records and the Sixties . ISBN 978-0099526797
Miles, Barry (2001). The Beatles diary. Volume 1: The Beatles years . Omnibus press London. ISBN 0-7119-8308-9
Sheff, David (2000). All We Are Saying . St. Martin's Griffin. ISBN 0-312-25464-4
Turner, Steve (2003). “Abbey Road”. A Hard Day's Write (9 ed.). HarperResource. ISBN 0-06-273698-1
Winn, John C. (2009). That Magic Feeling: The Beatles' Recorded Legacy, Volume Two, 1966-1970 . New York, NY: Three Rivers Press. ISBN 978-0-307-45239-9
外部リンク