マッチ(Match、1958年 - 1965年)は、フランスのサラブレッドの競走馬、および種牡馬。フランス・イギリスの競馬で活躍したほか、アメリカ合衆国でワシントンDCインターナショナルにも優勝した。
かつて同名の馬がイギリスに存在したため、いくつかの資料ではマッチII (Match II) と表記されている。さらにアメリカでは同年生まれの競走馬に同名のものがいたため、こちらではマッチIII (Match III) と呼ばれた[1]。
経歴
フランス・カルヴァドス県にあった、ウィイー牧場 (Haras d'Ouilly) で生産された牡馬である。生産者名義は牧場主のフランソワ・デュプレ、馬主名義はウィイー牧場が宛がわれて競走馬として登録された。
デビューは3歳からで、ノアイユ賞に勝った後にフランスのクラシック路線に挑戦、リュパン賞やジョッケクルブ賞ではライトロイヤルの2着に敗れるが、9月のロワイヤルオーク賞で優勝、クラシック勝ち馬の称号を手にした。10月には凱旋門賞にも挑戦、5着に入った。
翌年は7月に出走したサンクルー大賞で優勝すると、続いてイギリス・アスコット競馬場のキングジョージ6世&クイーンエリザベスステークスに遠征を敢行、2着馬に3/4馬身差をつけて勝利を手にした。この後同年も凱旋門賞に挑戦したが、再び5着に敗れている。
1962年11月、マッチはアメリカ・ローレル競馬場からの招待を受けて、当時のアメリカで唯一の国際競走であったワシントンDCインターナショナルに、鞍上イヴ・サンマルタンを伴って出走した。同年の競走には、アメリカ勢として当時の3強であったケルソ・キャリーバック・ボーパープルが出走しており、またアメリカ国外からはマッチ以外にも日本のタカマガハラ、ソビエト連邦のザベッグ、イギリスのパーダオなどが登録されていた[2]。
オッズにおいてはケルソらアメリカ勢が人気を集めていたため、ほとんどの招待馬は単勝109倍の超大穴であった[2]。しかしボーパープルの調教師であったアレン・ジャーキンが「あのフランスの馬、あいつはケダモノだよ」と漏らすなど、マッチは招待馬の中でも高く評価を受け、単勝7倍とそこそこの人気に支持された[2]。
スタートからボーパープルが先手を打ったが、そこにキャリーバックとケルソが襲いかかり、その2頭で先頭を争う展開が続いていった。そして最終コーナー前でキャリーバックが力尽き、最後の直線に入ったところでケルソが完全に先頭に立つと、スタンドからはケルソの勝ちを確信したファンらのケルソコールが響きわたった。しかしその内側ラチ沿いからマッチは猛烈に追いこみ、ケルソを交わし、最終的に2着のケルソに1馬身半差をつけての優勝を飾った[2]。後にケルソの鞍上であったイスマエル・ヴァレンズエラは、この競走について「あいつが来たのは見えた。だけど自分にはあれをどうすることもできなかった。」と語っている[2]。
この競走をもって同年を終了、そして競走馬を引退した。
引退後
引退後はイギリスで種牡馬となったが、わずか3シーズン後の1965年に急死した。
産駒は非常に少なかったものの、遺児の一頭ワールドカップ(World Cup 1965年生、牡馬)がクイーンエリザベス2世ステークスに優勝し、ほかに8頭が重賞を制覇した。
日本に輸入された産駒にマッチウォン(2戦1勝)やトウケイニセイの祖母ヴェスタルファイアがいる。
評価
主な勝鞍
※当時はグループ制・グレード制未導入
- 1961年(3歳) 7戦3勝
- ノアイユ賞、ロワイヤルオーク賞
- 2着 - リュパン賞、ジョッケクルブ賞、パリ大賞
- 1962年(4歳) 7戦4勝
- サンクルー大賞、キングジョージ6世&クイーンエリザベスステークス、ワシントンDCインターナショナル
年度代表馬
- 1962年 - イギリス年度代表馬、最優秀古牡馬
- 1962年 - フランス最優秀古牡馬
血統表
母Relanceはフランス出身の馬で、マッチ以外にもダービーステークス勝ち馬のレルコ(Relko 1960年生、牡馬・父タネルコ)、ジョッケクルブ賞勝ち馬のリライアンス(Reliance 1962年生、牡馬・父タンティエーム)などを出した名繁殖牝馬であった。
脚注
- ^ Turf Newspapers Ltd,, "Addendum to Register of Thoroughbred Stallions, Vol. XXV, 1963", London
- ^ a b c d e TIME 1962年11月23日号
参考文献
- The History of Thoroughbred Racing in America [p.560] (1964 著者: William H. P. Robertson 出版: Bonanza Books ASIN B000B8NBV6)
外部リンク