モーニングスター(ドイツ 、フライブルク の拷問博物館)
モーニングスター、および、同じ名で呼ばれることがある武器の柄頭の形状比較図
モーニングスター (英語 : morning star )、あるいはモルゲンシュテルン (ドイツ語 : Morgenstern )は、打撃用の武器 の一種。日本語 では、朝星棒 (ちょうせいぼう)、星球式鎚矛 (せいきゅうしきつちほこ)、星球武器 (せいきゅうぶき)とも言う。
殴打用合成棍棒 であるメイス の一種で、名称の由来となった星球(球状の頭部に複数の棘 を備えたもの)の柄頭 を特徴としている。
メイスは古代 から使用される普遍的な武器で、頭部をスパイクで強化する手法もよく使われる手法である。メイスやモーニングスターのような殴打武器は、金属 鎧 に対して刀 や剣 、槍 の類より有効な打撃を与えることができるため、重武装化が進んだ古代 西アジア や古代 中国 ・中央アジア で対抗手段としてメイスがよく用いられるようになり、その中で出縁型メイスやモーニングスターに類似する武器が開発された。後に中世 西ヨーロッパ でもメイスがよく用いられるようになり、13世紀 から14世紀 ごろにドイツ で生まれたモルゲンシュテルン (Morgenstern) は棘付きメイスから発展した武器で、大型球型の頭部に棘を放射状に配置した柄頭をもっていた。モルゲンシュテルンは完成度の高さから、他の西ヨーロッパ地方へ広がり、16世紀 には騎士 が使用する一般的な武器の一つになった。また第一次世界大戦 では、塹壕 戦における無音武器として復活している。
呼称
英語 名 morning star は、「明けの明星 」を意味すると同時にこの武器の名でもあるドイツ語 Morgenstern に由来する意訳語 で、柄頭の形状を輝く星 の形に見立てている。そこから同型の頭部をもった武器を広く morning star と呼び、星型の柄頭を備えたフレイル などを同様に呼ぶことがある。
同じ名で呼ばれる武器
ホーリーウォータースプリンクラー(英語:holy water sprinkler )
基本的にはメイスの別称として用いられる。この名で呼ばれるのはある種のブラックユーモア であるが、要するに頭上にメイスの一撃を加えるとあたかもスプリンクラー が水を吹くように血液が飛び散るさまを言い表したのだとされる。こうした武器は特に聖職者の間で愛用された。当時の聖職者は騎士階級出身者も多く、彼らは僧職にありながらも戦場に立つことも多かった。代表的な例としては『ローランの歌 』の大司教テュルパン、ウィリアム征服王 の異母弟でバイユー司教のオドがいる。彼らがこうした武器を好んだのは、剣と異なり相手を殴打しても「血を流す機会が少ない」からであった。
ゴーデンダッグ(英語:goedendag 、別名:godendac 、godendard 、godendart )
1302年 に勃発した金拍車の戦い の一局面であるコルトレイク (en ) の戦い (cf. ) の様子を伝えるレリーフ において、フランドル都市連合軍の兵士たちが得物とするゴーデンダッグが見える(中央の隊列)
ゴーデンダック、ないしヘーデンダーハなどとも呼ばれるこの戦棍はフランドル の歩兵が使用したものとして名高い。右のレリーフにあるように、木製の柄に金属のスパイク(通常は一本)を取り付けたもので、柄は先端になるほど幅が太くなり、ほぼ円錐形に近い形状をしている。長さも1m前後あるため、歩兵に対してはもちろん、馬上の騎士 にも攻撃ができるようになっている。コルトライク (クールトレ)の戦いでフランドル軍が使用したのちは、この武器はフランドル兵の代名詞的存在となった。
しかしゲーデンダークにはもう一つ候補となるものがあり、フィレンツェ の商人の記録では、「槍のような握りに棘のついた殻竿 のような」武器であるとしており、こちらはフレイル に近い形状をしているものと思われる。
類似する武器
東洋の武器類
モーニングスターと同類の概念 を持つ武器として、中国 には、殷 後期に武器化された錘 を始め、戦国時代 前期に開発された狼牙棒 や杵 や蒺藜骨朶 がある。狼牙棒は古代中国において棍 を発展させたもので、1m ほどの金 の先に直径10cm 、長さ50cm程度の紡錘形 の棘を取り付けた頭部を備えた武器である。戦場での疲労を避けるため柄頭を中空にしてあった。
また、日本 には南北朝時代 に現れた金砕棒 があり、鬼 の得物としてよく知られている。
現代の武器
モーニングスターに類似した凶器として、野球 のバット に釘を打ち付けた釘バット がある。
創作作品におけるモーニングスター
歴史上のモーニングスターはメイス の一種であるが、ファンタジー 作品においては、柄と棘付き鉄球の間を鎖 で繋いだ形状のもの(cf. 武器#鎖物・縄 )、すなわち、フレイル 型のものが存在する。このフレイル型のもののみをモーニングスターと呼び、本来のモーニングスターは棘付きメイス、または単にメイスとだけ呼ぶ作品もある。
脚注
関連項目