千葉市美術館(ちばしびじゅつかん)は、千葉県千葉市中央区にある美術館[2]。1995年(平成7年)11月1日開館[2]。2020年(令和2年)7月11日リニューアルオープン。
概要
1982年(昭和57年)千葉市は「豊かな心と創造性をはぐくむ市民文化都市」づくりを目指し、美術館の設立計画が持ち上がる。
1989年(平成元年)3月に有識者による千葉市美術館構想懇談会が作られ、翌年から千葉市美術品等取得基金により本格的に作品収集を開始、5年の準備期間を経て、1995年(平成7年)に開館した。
1927年(昭和2年)に建てられたネオ・ルネサンス様式の旧川崎銀行千葉支店(矢部又吉設計)の建物は、千葉空襲で焼け残った歴史的建造物で[3]、その跡地に総合支所と美術館を併設する構想が浮上したため、保存を求める市民らが約1,500人の署名を提出して保存運動を展開し[4]、これを受けて千葉市が部分保存の検討を含める形で基本設計を委託することになった[5]。
そこで、設計者の大谷幸夫は[6]、新ビルで旧川崎銀行千葉支店を覆うようにする「さや堂」方式を用いて保存・修復と区役所と美術館の新設を両立する計画とし[7]、1-2階にさや堂ホールとして歴史的建造物を活用して[6]、総工費約 160 億円を投じて建設された[8]。
比較的新しい美術館だが、初代館長に辻惟雄が就任し[9]、大英博物館との共催で欧米から版画や肉筆画等363点の出品作品を集めた[10]喜多川歌麿展を開館記念展として開催した[11][12]。
2代目館長に小林忠[13]、3代目館長に河合正朝と日本美術史の専門家を迎え[13]、江戸絵画や現代美術を中心に集中的なテーマをもった特色ある展覧会を積極的に開催している。
2000年(平成12年)度末において美術品は 66 億円(取得原価)、寄託品 1 億円(寄託年度の時価評価) にのぼる[8]。
開館以来、中央区役所との複合施設であったが、区役所は2019年(令和元年)5月7日にQiball11階に移転[2][14]。美術館へと用途変更する拡張工事を行い、月替わりの常設(通常)展示室のほか、ワークショップや児童書など計約4,500冊をそろえる図書室[15]、子どもアトリエを新設し2020年(令和2年)7月11日にリニューアルオープンした[16]。
新型コロナウィルス感染拡大へ対する新たな取り組みとして、2021年1月22日よりデジタルミュージアム事業を開始した[17]。
コレクション
平成元年に定められた作品収集のテーマは、
の3つの柱分けられる。
テーマ1に関連するものとしては、無縁寺心澄の作品が約950点[18]、浜口陽三の作品を約50点所蔵。
テーマ2に関しては、公立でしかも後発の美術館としては珍しく浮世絵のコレクションが充実している。これは、浮世絵の祖・菱川師宣が房総出身なことや、浮世絵研究家であった今中宏が収集した渓斎英泉のコレクション300点が美術館設立の契機にもなったことによる[19][20]。現在では版画約1,000点、肉筆浮世絵100点弱を所蔵し、常設(通常)展では毎月内容を変え展示し、企画展でも少なくとも年に1度は浮世絵の展覧会が開かれる。他にもアメリカの文化人類学者ロバート・ラヴィッツが収集した、絵入版本1,000点余(浮世絵師以外も含む)、経営学者ピーター・ドラッカーが収集した室町水墨画と、近世の禅画や南画 [21]197点も同館の大きなコレクションといえる。
テーマ3に関連するものとして、サトウ画廊のオーナー・佐藤友太郎から約100作家による400点以上のまとまった作品寄贈を受けており[22][23]、順次展示・紹介がされている。
主な収蔵品
江戸絵画・日本画
近現代美術
利用案内
- 開館時間: 10時から18時(入館は17時30分まで)金・土曜日は20時まで開館 (入場は19時30分まで)
- 休館日: 毎月第1月曜日(祝日の場合は翌日)・年末年始(12月29日 - 1月3日)・展示替時
- 観覧料: 展覧会毎に異なる。小・中・高学生は無料。10月18日の千葉市民の日は無料開放。
交通アクセス
脚注
出典
- ^ “浮世絵の所蔵品が充実 千葉市美術館 【シリーズちば旅・アート散歩編】”. www.chibanippo.co.jp. 2020年11月7日閲覧。
- ^ a b c d “千葉の文化創造の拠点 市美術館がオープン 中央区役所との複合施設”. 千葉日報 (千葉日報社): p. 朝刊 12. (1995年11月2日)
- ^ “歴史の証人ぜひ保存を 旧川崎銀行千葉支店 空襲にも焼け残る 市文化財保護審”. 朝日新聞 (朝日新聞社): p. 朝刊 27. (1989年8月30日)
- ^ “旧川崎銀行千葉支店 保存を求めて署名千五百人”. 朝日新聞 (朝日新聞社): p. 朝刊 26. (1989年9月6日)
- ^ “旧川崎銀行千葉支店 部分保存を検討 千葉市が基本設計委託”. 朝日新聞 (朝日新聞社): p. 朝刊 21. (1989年12月27日)
- ^ a b “建築 地域の「歴史」へ確たる眼 大谷幸夫「千葉市美術館・中央区役所」”. 読売新聞 (読売新聞社): p. 夕刊 11. (1995年6月7日)
- ^ “旧川崎銀行千葉支店 保存に“さや堂”案 新ビルで前面部覆う ユニークな構想に注目”. 千葉日報 (千葉日報社): p. 朝刊 3. (1990年4月23日)
- ^ a b “公の施設と財政援助団体等(千葉市美術館)の管理運営にかかる包括外部監査の結果”. 千葉市. 2020年11月7日閲覧。
- ^ “初代館長に辻氏 市立美術館”. 千葉日報 (千葉日報社): p. 朝刊 12. (1995年10月26日)
- ^ “過去最大「歌麿展」 千葉市美術館開館記念に 欧米から363点集める”. 朝日新聞 (朝日新聞社): p. 朝刊 25. (1995年8月28日)
- ^ “歌麿展が閉幕5万4287人来館 千葉市美術館”. 朝日新聞 (朝日新聞社): p. 朝刊 26. (1995年12月12日)
- ^ “「歌麿展」で幕開け 内外の秘蔵品一堂に”. 千葉日報 (千葉日報社): p. 朝刊 12. (1995年11月4日)
- ^ a b “市美術館長4月に交代 小林氏退任、後任は河合氏”. 千葉日報 (千葉日報社): p. 朝刊 7. (2012年2月25日). https://www.chibanippo.co.jp/news/local/70228
- ^ “中央区役所が移転しました。”. 千葉市. 2020年5月21日閲覧。
- ^ “来館者と作り上げる芸術 空間、作品…変貌するラボ 千葉市美術館 【ふさの国探宝】(千葉日報オンライン)”. Yahoo!ニュース. 2020年11月7日閲覧。
- ^ 千葉市. “千葉市美術館リニューアルオープンのお知らせ”. 千葉市. 2020年10月26日閲覧。
- ^ “NTT東日本 千葉市所蔵の世界に誇る浮世絵をインタラクティブに体験できる体験型美術展「Digital×浮世絵」を開催 | ロボスタ - ロボット情報WEBマガジン”. ロボスタ. 2021年1月6日閲覧。
- ^ “「広く市民に公開して」 白井さん 無縁寺の絵、市へ寄贈”. 千葉日報 (千葉日報社): p. 朝刊 10. (1987年12月11日)
- ^ “ご挨拶・沿革 | 美術館について | 千葉市美術館”. www.ccma-net.jp. 2020年10月26日閲覧。
- ^ “渓斎英泉の実像に迫る 江戸末期の美人画第一人者 千葉市美術館で企画展”. www.chibanippo.co.jp. 2020年10月26日閲覧。
- ^ “ドラッカー、恋に落ちた水墨画 「渋好み」、画僧・雪村など197点日本に:朝日新聞デジタル”. 朝日新聞デジタル. 2020年10月26日閲覧。
- ^ “日本現代美術の草創期を駆け抜けた道場主・佐藤友太郎 -千葉市美術館開設秘話-”. カルチャーちば (千葉市文化振興財団) (34): 18-21.
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- ^ “アートぷらざ 千葉市収蔵作品 Dark Oval 川端実”. 千葉日報 (千葉日報社): p. 朝刊 12. (1994年8月14日)
- ^ “アートぷらざ 千葉市収蔵作品 プラスティック・ポエム 北園克衛・作”. 千葉日報 (千葉日報社): p. 朝刊 12. (1993年5月25日)
- ^ “アートぷらざ 千葉市収蔵作品 スペースモジュレーター 北代省三・作”. 千葉日報 (千葉日報社): p. 朝刊 12. (1995年4月9日)
- ^ “アートぷらざ 千葉市収蔵作品 №B White(部分) 草間彌生”. 千葉日報 (千葉日報社): p. 朝刊 12. (1994年12月26日)
- ^ “アートぷらざ 千葉市収蔵作品 あなたの肖像 工藤哲巳”. 千葉日報 (千葉日報社): p. 朝刊 12. (1994年6月6日)
- ^ “アートぷらざ 千葉市収蔵作品 Breath graph 105 佐藤時啓・作”. 千葉日報 (千葉日報社): p. 朝刊 12. (1993年5月10日)
- ^ “アートぷらざ 千葉市収蔵作品 陽華公主 白髪一雄 素早く描いた「足絵」”. 千葉日報 (千葉日報社): p. 朝刊 12. (1994年10月10日)
- ^ “アートぷらざ 千葉市収蔵作品 「景中」 菅木志雄 簡潔さの中に緊張感”. 千葉日報 (千葉日報社): p. 朝刊 12. (1994年6月27日)
- ^ “アートぷらざ 千葉市収蔵作品 「赤ん坊の影NO.387」 作・高松次郎”. 千葉日報 (千葉日報社): p. 朝刊 12. (1994年5月23日)
- ^ “アートぷらざ 千葉市収蔵作品 魚と果物 浜口陽三 「黒」の諧調、光のたまもの”. 千葉日報 (千葉日報社): p. 朝刊 12. (1994年9月15日)
- ^ “アートぷらざ 千葉市収蔵作品 釈迦十大弟子二菩薩 棟方志功”. 千葉日報 (千葉日報社): p. 朝刊 12. (1994年9月14日)
- ^ “アートぷらざ 千葉市収蔵作品 作品 村上三郎 人真似や前例を排す”. 千葉日報 (千葉日報社): p. 朝刊 12. (1994年10月31日)
- ^ “アートぷらざ 千葉市収蔵作品 手の中の眼 毛利武士郎・作”. 千葉日報 (千葉日報社): p. 朝刊 12. (1993年11月5日)
- ^ “アートぷらざ 千葉市収蔵作品 黒人の女 柳原義達・作”. 千葉日報 (千葉日報社): p. 朝刊 12. (1993年8月22日)
- ^ “アートぷらざ 千葉市収蔵作品 WorkC-40 山田正亮作”. 千葉日報 (千葉日報社): p. 朝刊 12. (1994年8月1日)
広報資料・プレスリリースなど一次資料
参考文献
- 図録
- 『千葉市美術館所蔵作品選』 千葉市美術館編集・発行、1995年
- 『千葉市美術館所蔵浮世絵作品選』 千葉市美術館編集・発行、2001年
- 『千葉市美術館 所蔵作品 100選』 千葉市美術館編集・発行、2015年4月10日
- 書籍
- 『首都圏 美術館・博物館ベストガイド』 オフィスクリオ著、メイツ出版、2011年
関連項目
外部リンク
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