宜保 愛子(ぎぼ あいこ、1932年〈昭和7年〉1月5日 - 2003年〈平成15年〉5月6日)は、日本の作家。タレントとしても活動していた。神奈川県横浜市生まれ。
1980年代にテレビで稀代の霊能者として取り上げられたことで一躍注目を浴びた。著書も多数出版され、ベストセラーも多数存在した。霊能力があるとして多数の信奉者を生み人気を集めた一方、その能力についての真贋論争も話題となった。
来歴
幼少時、懐疑主義者の父や母親からはその特異体質を非難されたが、兄だけは受け入れてくれていた。その為、兄の戦死はかなりの辛さだったといい、墜落した海に行った際には号泣し、「お兄ちゃん」と連呼していた程であった。また宜保の弟は飛び出した際に車に轢かれ死亡している。私生活では二男一女の母親であり主婦であった。
1961年(昭和36年)のテレビ出演を期に、人気が高まり、多くの講演会を行うようになる。1970年代中頃から、心霊研究家の放送作家新倉イワオと共に、日本テレビの『あなたの知らない世界』に出演、また女性週刊誌『女性自身』の有名人との対談連載などによって1980年代後半に話題となった[1]。芸能人のみならず多くの文化人とも霊視対談を行った[2]。1990年代に入ってから彼女の霊能をテーマとした多くの特番が組まれ、著書がベストセラーにもなった。しかし1993年(平成5年)には、その霊能力を疑問視する物理学者の大槻義彦や女性誌から批判を浴びた。
1995年(平成7年)のオウム真理教の事件の後、オカルト的な放送をすることに批判が高まる中で出演回数は低下し、約5年間テレビ界から遠ざかった[3]。2001年から2003年までフジテレビ・『力の限りゴーゴゴー!!』のコーナーに出演。話題となった「力合わせてゴーゴゴー宜保スペシャル強力版」が最後のテレビ出演となった。
2003年5月6日、胃癌のため死去。71歳没。葬儀は本人の生前からの遺言で親族のみの密葬で行われた[3]。霊能力に関して批判していた大槻義彦は、「霊感商法等により露骨な金儲けを行うような事は一切なかったところは評価できる。私は彼女の霊的現象について疑義を持っていろいろと批判、検証はしたが、彼女の人間性や人柄までは否定するつもりは一切なかった。」と追悼の言を述べた[2]。霊視・霊能とは別に、宜保の人間性を評価する者も少なくなかった[2]。
人物
気さくさや上品さ、人や霊への隔てのない優しさを持つ人物であり、出演番組では天然ボケな一面も披露していた。また、番組では遠隔霊視した建物などを絵に書く事も多かったが、描かれた絵を見るに絵は苦手だった事がうかがえる。
先天性の難聴により右耳の聴力を失っており、その右耳は霊の言葉を聞くことができたという。
また、4歳のとき、左目に火箸が落ちて失明寸前となり、1年ほど闘病生活を送った[2]が、それでも視力は回復せずほとんど見えなくなった。
本人によれば、6歳頃に、自分の中の霊能力を自覚したといい[3]、蔵が燃える風景や自殺した人が飛び込む風景などが見えていたり、車にひかれた弟の身体から魂が抜けて上るのが見えたという。また、ハッキリと理解したのは幼なじみの友人が亡くなった後、宜保に「遊ぼう」と声をかけてきて、宜保が遊びに行こうとして親に友人が死んだ事を話された時だという。
宜保は相談者の守護霊の声が聞こえ、姿が見え、亡くなった人が守護霊になると、その人物の側に行ってもなんとなく温度を感じず、生きている人が守護霊だと体温のような温かさを感じるという。そして、相談者の亡くなった肉親の霊と話すことによりその肉親について他人が知り得ないことがらや、相談者の家の構造や家具の配置などを言い当てたとされる[2]。また、守護霊や霊との会話はテレビに映る映像を見るようだと語り、耳元で囁いてくることもあると語っている。
なお、宜保によれば海外の人の守護霊や霊でも普通に上記のように映像を見ていたり会話したりしているらしいが、英語圏の場合だけは何故か英会話をいっているらしいと語っている。
また、霊能力の1つとして、霊視が可能で人の持ち物からその人物にまつわることを見たり(宜保本人によると浮かび上がってくる、知り合いなら人物特定も出来る可能性がある)、建物などの過去や過去にあったものを見る、遠隔(海外でも)霊視する力もあると主張していた。
元英語教師という事もあり、英語にも堪能で[2]、通訳を介さずに撮影や能力解明に協力していた海外の人に霊や霊の話などを話したり、ユリ・ゲラーと会話を行ったことがある[4]。
霊能力に関する議論
- 批判的な見解
- 宜保の行った霊視の大半は調査や資料に当たることでわかるものであり、霊視の内容が事実と矛盾することもあるとして、その霊視は事前の調査によるものであるとの疑惑も報じられた[1]。
- 例えば、物理学者の大槻義彦は、「昔、私が対決した霊能者の宜保愛子は、6人のスタッフ(家族でスタッフを固めた「オフィスワン」という個人事務所)で事前調査をしていました」と語っている[5]。当時大槻は、宜保が霊能力と称しているものはどれも何らかのトリックで説明がつくものだから、自分が実験に立ち会ってチェックさせてほしい[6]と宜保側に申し込み、テレビ番組での対決が具体化しかけたが、結果的には宜保側がキャンセルした[2]。さらに、宜保の著書『宜保愛子の死後の世界』(日東書院 ISBN 4528007940)に大槻のプラズマ実験写真が「霊の写真」との説明で無断で使われていたことが発覚し問題となった[1] 。
- また、1993年12月30日に日本テレビで放映された『新たなる挑戦II』において、ロンドン塔ブラディ・タワーの上階に置いてある天蓋付きのベッドに、エドワード4世のふたりの王子、エドワード5世とリチャードが座っていると霊視した。しかし、宜保が霊視をしたという兄弟が生きていた当時その階は存在せず、その1世紀以上も後に増築された場所であった。更に宜保の霊視内容は夏目漱石著作の小説『倫敦塔』の内容とほぼ一致していることが指摘されている[7]。
- また、日本テレビで放映されたエジプトでの霊視番組における歴史事実との矛盾、どのような事前調査を行って霊視に見せかけていたのか、その手法が、永瀬唯 他『ギボギボ90分!―と学会レポート 』(楽工社 2006年11月 ISBN 4903063062)にて明かされている。
これらの批判的な意見が存在する中で、霊能力や霊視に対する科学的な説明として、「シャルル・ボネ症候群」に関連した神経学的な異常が「幻視」となって見えたのではと指摘する研究者もいる[8]。
主な著書
かんき出版
コスカ出版
角川書店
学習研究社
光文社
講談社
漫画
主婦と生活社
青林堂
説話社
大陸書房
漫画
ビデオソフト
カセットテープ
大和堂
日東書院
勁文社
ケイブンシャ大百科シリーズ
- 232 恐怖の霊大百科 1985.9.10刊
- 258 恐怖の怨霊大百科2 1986.6.5刊
- 285 怪奇亡霊大百科 1986.6.5刊
- 296 心霊写真大百科 1987.5.25刊
- 305 恐怖の霊大百科2 1987.7.25刊
- 324 心霊写真大百科2 1988.2.15刊
- 342 心霊写真大百科3 1988.9.26刊
- 354 恐怖話大百科 1989.3.2刊
- 362 恐怖の心霊体験大百科 1989.4.28刊
- 368 宜保愛子の霊視大百科 1989.6.22刊
- 377 宜保愛子の心霊探検大百科 1989.8.24刊
- 380 霊能力入門大百科 1989.10.5刊
- 387 宜保愛子の心霊探検大百科2 1989.12.12刊
- 398 宜保愛子の恐怖話大百科2 1990.3.21刊
- 409 守護霊大百科 1990.6.19刊
- 411 心霊写真大百科4 1990.7.11刊
トーク番組
- パック2(北海道放送)不定期レギュラー - 北海道のローカルのワイドショー番組で、1980年代後半以降、北海道各地の霊場と言われる場所に出かけて霊視を行う企画がシリーズ化されていた。
脚注
- ^ a b c 呉智英(監修)『オカルト徹底批判』 朝日新聞社 1994年5月15日)
- ^ a b c d e f g 別冊宝島1199号 『日本「霊能者」列伝』(宝島社 2005年10月)ISBN 978-4796648066
- ^ a b c 霊能力者の宜保愛子さんが胃がんのため死去(nikkkansports.com)[リンク切れ]
- ^ 永瀬ほか(2006)『ギボギボ90分!』pp.55-57 には、永瀬唯による宜保の英語力についての説明があり、そこでは、1991年10月のTBS系特番「驚異の霊能者・宜保愛子 第3弾」で宜保が国際電話でユリ・ゲラーと英語で議論したことが紹介されていた。
- ^ 「早大名誉教授の大槻義彦さんに聞く スピリチュアル番組問題(上)江原霊視は『事前調査の成果』 タレント情報をネットで検索?」(『J-CASTニュース』2008年2月10日)
- ^ 大槻義彦『疑惑の霊能者 宜保愛子の謎』(悠飛社、1993年9月) ISBN 494644825X
- ^ 『新・トンデモ超常現象60の真相』(ISBN 9784903063072) 234-240頁
- ^ 霊能力の謎を解く「幻視」の秘密! 知られざる「シャルル・ボネ症候群」、『webムー』(2021.11.18)
参考文献
- (霊能は脳のメカニズムで説明できると解説)
- (科学者の手による批判書)
- (大槻義彦の著書『宜保愛子の謎』に疑問を呈している)
- (宜保番組を数多く手がけた放送作家の手記)
- 皆神龍太郎他 『新・トンデモ超常現象56の真相』太田出版 2001年7月ISBN 4872335988
- (宜保のロンドン塔霊視が下調べに基づくものであったと結論)
- 永瀬唯他 『ギボギボ90分!―と学会レポート 』 楽工社 2006年11月ISBN 4903063062
- (宜保の全盛期を代表する特番1本を集中的に検証。宜保愛子という人物に敬意を払いつつ彼女の仕事を分析する)