教育隊教育隊(きょういくたい)とは、自衛隊における各種教育を担当する部隊のことである。外国の軍隊にも同様の部隊が存在し、『教育隊』と訳される。 概要入隊した自衛官候補生、 一般曹候補生、技術曹に対する基礎教育、それを終えた後に各職種に合わせた特技の教育を行う部隊である。海空では特技教育を術科学校で行う。 新入隊員の教育隊には礼法に精通したベテランの曹長(先任伍長など)が配属されている。入隊後の基礎教育は男女別の部隊で行われるが、航空学生のみ入隊時から一括して教育を受ける。 幹部候補生幹部候補生は防衛大学校、防衛医科大学校、一般大学を卒業後または部隊で勤務している自衛官から選抜されて、幹部候補生学校で幹部に必要な教育を受け部隊へ配属される。 隊員の頭髪基準従来、教育隊に入隊する新入隊員には部隊ごとに定める頭髪基準があり、概ね男性隊員には丸刈りが、女性隊員には短髪が推奨されてきた。しかし、2024年1月に木原稔防衛大臣が「2024年4月から頭髪の基準を緩和して、男性隊員に対する丸刈り推奨ルールを廃止し、スポーツ刈りを推奨する規定に改める」という方針を示した。女性隊員の髪型についても、制服着用時に肩にかからないよう1つに束ねることなどを条件に、長髪でも可とする。また、新入隊員の頭髪基準を全ての教育隊で前述の基準に統一することとした。この方針が示された背景には、「少子化による人手不足を解消する目的」や「さまざまな学校の校則において頭髪に関する基準が緩和されているという事情」がある[1][2]。 陸上自衛隊新隊員教育隊陸上自衛隊の新隊員教育隊は、正規編制の方面混成団・教育大隊・教育中隊のほか、各部隊において臨時編成される。略して「新教(しんきょう)」と呼ぶ。 新隊員教育隊本部の編成 ※連隊・群が担任する例。
区隊の編成
教育隊の運用
教育部隊の配置北部方面隊 北部方面混成団(東千歳駐屯地)
東北方面隊
東部方面隊 東部方面混成団(武山駐屯地)
中部方面隊 中部方面混成団(大津駐屯地)
西部方面隊 西部方面混成団(久留米駐屯地)
陸上総隊隷下部隊 防衛大臣直轄部隊 陸曹教育隊陸曹教育隊(りくそうきょういくたい)は、陸曹として必要な教育(陸曹候補生課程・生徒陸曹候補生課程・初級陸曹特技課程・陸曹上級課程・陸曹中級課程・陸曹基礎英語課程)を行う部隊であり、各方面混成団隷下の構成部隊として1つずつ置かれている。女子の陸曹候補生課程は東部方面混成団隷下の女性自衛官教育隊が担当。大隊規模であるため、隊長は1等陸佐(三)若しくは2等陸佐(1等陸佐(三)昇任予定)が務める。区隊長は以前、幹部自衛官(概ね3尉候補者課程出身の2尉~3尉)が充てられていたが、上級曹長制度の普及に伴い現在区隊長・助教等の基幹要員はすべて陸曹で編成している。機甲科の陸曹教育のため第1機甲教育隊が東部方面隊に編成されていたが2019年(平成31年)3月に廃止され、陸曹候補生課程は、所属方面の各陸曹教育隊共通教育中隊で、初級陸曹特技課程は富士学校機甲科部で行われるようになった。 陸曹教育隊の一覧※陸曹教育隊の略称「陸教(りっきょう)」と呼ぶ。
陸曹教育隊の編成共通教育中隊・普通科教育中隊及び上級陸曹教育中隊各1を基準として編成される。
陸曹教育隊の詳細第1陸曹教育隊第1陸曹教育隊(だいいちりくそうきょういくたい)は、東千歳駐屯地に駐屯する北部方面混成団隷下の教育部隊である。
第2陸曹教育隊第2陸曹教育隊(だいにりくそうきょういくたい)は、仙台駐屯地に駐屯する東北方面混成団隷下の教育部隊である。
第3陸曹教育隊第3陸曹教育隊(だいさんりくそうきょういくたい)は、板妻駐屯地に駐屯する東部方面混成団隷下の教育部隊である。
第4陸曹教育隊第4陸曹教育隊(だいよんりくそうきょういくたい)は、大津駐屯地に駐屯する中部方面混成団隷下の教育部隊である。中部方面隊管内の陸曹候補生課程・生徒陸曹候補生課程及び初級陸曹特技(普通科・基礎英語)課程、陸曹上級課程を担当する。
第5陸曹教育隊第5陸曹教育隊(だいごりくそうきょういくたい)は、久留米駐屯地に駐屯する西部方面混成団隷下の教育部隊である。
陸曹教育隊の沿革
教育大隊教育大隊(きょういくだいたい)は、主として新隊員教育(一般曹候補生前期課程(女子については、東部方面混成団隷下の女性自衛官教育隊が担任)・自衛官候補生課程(女子)の教育)を行う教育部隊であり、3個の教育中隊(第120教育大隊は2個、第117教育大隊は4個)を編合して編成される。方面混成団隷下の構成部隊として北部、東北、東部方面混成団に1個の、中部、西部方面混成団に2個の教育大隊が編合される。大隊長は2等陸佐。第101から第120教育大隊までの20個大隊が編成されたが、教育部隊の改編により逐次廃止され、北部方面混成団に第120教育大隊、東北方面混成団に第119教育大隊、東部方面混成団に第117教育大隊、中部方面混成団に第109教育大隊及び第110教育大隊、西部方面混成団に第113教育大隊と第118教育大隊の7個大隊が編成されている。 教育大隊の一覧※太字は太字は、廃止部隊
教育中隊教育中隊(きょういくちゅうたい)は、主として新隊員教育を行う教育部隊であり、教育大隊隷下の構成部隊として2から4個の教育中隊が編合される。中隊長は3等陸佐または1等陸尉。第301共通教育中隊から第343共通教育中隊までの43個中隊が編成された。教育部隊の改編により、廃止となった教育中隊も多数あり2024年(令和6年)現在は、北部方面混成団に3個中隊、東北方面混成団に2個中隊、東部方面混成団に4個中隊、中部方面混成団に6個中隊、西部方面混成団に5個中隊の20個中隊が残るのみである。現在の教育中隊は、上記の「教育部隊の配置」を参照。 教育中隊の一覧※太字は太字は、廃止部隊
教育部隊の沿革
その他の教育隊陸上自衛隊には、ほかにも次のような教育隊がある。
また、「教育隊」の名称は持たないが部隊への練度向上・教育訓練目的に以下の部隊も存在する。
廃止された教育部隊新隊員教育隊
職種の教育部隊
教育連隊
機甲教育隊海上自衛隊海上自衛隊の教育隊は一般海曹候補生、自衛官候補生、公募海曹として入隊した者、海曹予定者(陸自の陸曹候補生課程相当)、3等海曹に新たに昇任した者(初任海曹課程)、1等海曹に新たに昇任した者(上級海曹課程)に対し、海士、初級海曹、上級海曹として必要な知識および技能を修得させるための教育訓練をすることを任務とする[11]。 大湊地方隊を除く4つの地方隊に置かれており、司令は1等海佐、副長は2等海佐をもって充てられる[11]。 女性新入隊員の教育については2018年(平成30年)度までは横須賀教育隊のみであったが、2019年(令和元年)度から佐世保および舞鶴教育隊でも教育を開始し[12][13]、2023年度(令和5年)から呉教育隊でも女性隊員の受け入れを開始したため[14]、全教育隊で女性新入隊員の教育を行っている[15]。 航空学生の教育は男女とも小月航空基地の小月教育航空群小月教育航空隊で行われる。 海上自衛隊では入隊後(以降は毎年度)運動能力および水泳能力の測定が行われる。上から順に1級から7級まで評価され、7級に未たない者は級外となる。特に、入隊時に全く泳げない者には専用の訓練メニューが用意されておりほぼ全員が泳げるようになるという[16]。なお級外の者は、運動能力級外であれば「赤靴」、水泳能力級外であれば「赤帽」と呼ばれる。
沿革
教育隊の組織
航空自衛隊航空自衛隊の教育訓練機関は、航空自衛隊幹部学校以外はすべて航空教育集団隷下に編成されており、基礎教育機関としては防府南基地(山口県防府市)に航空教育隊(こうくうきょういくたい、Air Basic Training Wing)が設置され、第1・第2教育群および基地業務群からなる。第1教育群(防府南)では、自衛官候補生、一般空曹候補生、空曹予定者および初任空曹に対しての教育訓練を行うほか、隷下に女性自衛官教育大隊が設置されている。第2教育群(熊谷基地)では、自衛官候補生、一般空曹候補生、空曹予定者、初任空曹の教育訓練に加えて上級空曹(主に昇任1年前後の1等空曹に対する管理職教育)に対する集合教育も行っている。 航空学生の教育は男女とも防府北基地の第12飛行教育団航空学生教育群で行われる。 このほか、航空自衛隊生徒として採用された者に対し4年間の教育を実施する生徒隊(熊谷基地)を編成していた。 沿革
組織
大日本帝国大日本帝国陸軍東部軍管区教育隊など多数設けられた。 大日本帝国海軍外国軍体制や訓練内容は自衛隊とほぼ同等で、男女が別の部隊に分けられ、最初は各種礼法、体力トレーニング、射撃や格闘などの基礎教育を行い、次に特技の専門教育を実施する。 アメリカ軍アメリカ軍の新入隊員が配属される教育隊は、通称ブートキャンプで呼ばれている。訓練プログラムの正式名称は、アメリカ陸軍は陸軍基礎訓練(Army Basic Training)、海兵隊及び海軍は新兵訓練(Recruit Training)、空軍は基本軍事訓練(Basic Military Training)、沿岸警備隊は基礎訓練(Basic Training)である。 行進やランニング中にはミリタリーケイデンスが唱和される。 脚注
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