『永遠/TOWA 』(とわ、The Endless River)は、2014年11月に発表されたピンク・フロイド のスタジオ・アルバム 。前作の『対/TSUI 』以来20年ぶりで、2008年にリック・ライト が死去してから初となるアルバム・リリースである。また英EMI パーロフォン 買収に伴なうワーナー・ブラザース・レコード 傘下からの初作品であり、ロジャー・ウォーターズ 脱退後、デイヴ・ギルモア がリーダーシップを執って以降の3作目となる。
背景・制作
リック・ライト 2006年7月ドイツ・ミュンヘンにて
ニック・メイスン(左)、デイヴ・ギルモア(右) 2011年5月ロンドン・O2アリーナにて
2008年に死去したオリジナル・メンバー、リック・ライト の「トリビュート 」というコンセプトで、ほぼ全編インストゥルメンタル 、アンビエント 音楽から成る作品。ライトと共に1993年から行い、アルバム『対/TSUI 』収録予定だった20時間分のセッションを基に構成されている。デイヴ・ギルモア が所有する"Astoria "という船(1911年建造)の中に設けられているレコーディング・スタジオで制作された音源をベースに、2013年から2014年に掛けて新たに作業が加えられた[ 1] 。プロデュースはギルモア以外にも、フィル・マンザネラ (元ロキシー・ミュージック )、ユース (キリング・ジョーク )、アンディ・ジャクソン (ピンク・フロイドのエンジニア)との共作となっており、ロジャー・ウォーターズ は本作の制作に一切関わっていない[ 1] 。
また、ギルモアは「リックは逝ってしまった。我々は、持てる価値の全てを注ぎ込んだ。出せるのはこれが最後だ」と、本作がバンドにとって最後のアルバムになると明言しており[ 2] 、ツアーの計画も無いとしている。ただし、セッション素材のうち今作に入らなかったものは今後ギルモアのソロ作に使われる可能性があるという[ 3] 。僚友のニック・メイスン も「ツアーは無いと思う。本作をライブでプレイするには、リックでなくては不可能」とコメントしている[ 4] 。
著名なゲストに、理論物理学者 スティーヴン・ホーキング 博士が、自身の名を冠した曲「トーキン・ホーキン〜ホーキング博士の伝言」にボイス・サンプラーとして出演している。その他、『鬱 』や『対/TSUI』を担当した音楽プロデューサーボブ・エズリン 、キーボード奏者アンソニー・ムーア (元スラップ・ハッピー 、元ヘンリー・カウ)などが参加[ 2] 。
音楽性
アルバム・タイトルは、前作『対/TSUI』の収録曲「運命の鐘 (High Hopes )」の歌詞「The water flowing / The endless river / Forever and ever」から引用されている。ギルモアはこの2作は同じセッションから生まれたため「ある種の連続性」があるとコメントしており[ 3] 、4つのテーマに分けた組曲となっている。上記の通り『対/TSUI』収録時に録音されたセッションをソースとしているため、ほぼ全編インストゥルメンタルで幻想的なアンビエント色が濃い[ 1] 。
元々は、アルバム『対/TSUI』を2枚組にしようとした構想があり、使用するはずだった残りのマテリアルを完成させたのが本作であるとしている[ 4] 。最終トラック「ラウダー・ザン・ワーズ〜終曲(Louder than Words )」のみ歌詞付きのボーカルがあり、『対/TSUI』で作詞を担当したギルモアの妻、ポリー・サムソン が詞を提供し、先行シングル で発売された[ 5] 。そしてこの楽曲が、ピンク・フロイドのラスト・ソングであるとギルモアは明言している[ 6] 。
リリース
国内盤を含むワールドワイド盤は、デラックス・エディション(CD +DVD / CD+Blu-ray )2種と、スタンダード・エディション(通常盤)の3形態でリリースされた。デラックス・エディションはボックス仕様でブックレットやポストカードが封入され、国内盤には独自の別冊ブックレットも付属する[ 7] 。Blu-ray盤のみ、ハイレゾ音源 が収録されている。また、欧米などの一部では、2枚組アナログLP もプレスされた[ 8] 。
プロモーション
バンド及びレコード会社によるプロモーション・キャンペーンではTVコマーシャルの他に、ロンドン 、ニューヨーク 、パリ 、ミラノ で、アルバム・アートワークを基にしたインスタレーション の展示が行われた[ 1] 。同年11月10日には、ロンドンで大々的な発売記念イベントが開催され、サイケデリック映像で演出されたアルバム試聴会が実施された[ 9] 。
ミュージック・ビデオ
先行シングルで発売された収録曲「ラウダー・ザン・ワーズ〜終曲(Louder than Words )」のミュージック・ビデオ が、アルバムのリリースと同時にYouTube で公開されている。野外風景の撮影は中央アジア ・アラル海 付近で行われ、『対/TSUI』レコーディング・セッション時の模様などをミックスしたものとなっている。そして、リック・ライト への追悼テーマに沿う形で、天国に向かう旅をしているかのような演出がされている[ 6] 。
アートワーク
バンドのアートワーク・アルバム・カヴァーは、いくつかの例外[ 注 1] を除いてほぼ全てヒプノシス 、同チーム解散以降はその中心人物、ストーム・ソーガソン が手掛けていた。しかしソーガソンが2013年に死去したため、同じ元ヒプノシスのオーブリー・パウエル がアートディレクター として引き継ぎ、カヴァー・アーティストの発掘にあたった。そして、エジプト 出身で18歳のデジタル・アーティスト、アハメッド・エマッド・エルディン による作品が採用され、Stylorouge スタジオがデジタル化の部分で協力した[ 10] 。このカヴァー・アートは、ロンドンのサウス・バンク にてライトアップされ、高さ8メートルの立方体巨大オブジェとして展示された[ 1] 。
評価・批評
アルバムの存在は、正式な発表以前からソーシャル・メディア 上でリークされていた。20年ぶりにスタジオ・アルバムを体感できることもあって、この作品が発表されること自体は好感を持って迎えられたものの、作品内容の評価が上述の音楽性の事情もあり、賛否両論となっている[ 11] 。
かつてのメンバーであったロジャー・ウォーターズ は、本作をもってピンク・フロイドを終わらせたのは正しい判断だとしつつも、ラスト・アルバムについては「少し聴いたが、好みではない」と評している[ 12] 。
チャート成績
本国・全英ウィークリーチャート では初登場1位を記録した[ 13] 。イギリスでの1位は1995年発売のライブ・アルバム 『P.U.L.S.E 』以来となる。全世界でも軒並みヒットを記録し、世界20か国で1位を獲得した[ 14] 。
日本のオリコンチャート では最高7位を記録し、『対/TSUI』以来20年7か月ぶりのTOP10入りを記録(ウィークリー洋楽アルバムランキングでは最高3位)。12月1日付のBillboard Japan Top Albumsでは5位を記録した。
その他の各国のチャートは後述を参考。
収録曲
Side 1 # タイトル 作詞 作曲 時間 1. 「追伸〜伝心 (Things Left Unsaid)」 Gilmour 、Wright 4:26 2. 「使命 (It's What We Do)」 Gilmour、Wright 6:17 3. 「潮汐流 (Ebb and Flow)」 Gilmour、Wright 1:55 合計時間:
12:38
Side 2 # タイトル 作詞 作曲 時間 4. 「サム〜調和 (Sum)」 Gilmour、Mason 、Wright 4:48 5. 「スキンズ〜感触 (Skins)」 Gilmour、Mason、Wright 2:37 6. 「静かなる人〜暗黙 (Unsung)」 Wright 1:07 7. 「追慕〜遥かなる想い (Anisina)」 Gilmour 3:16 合計時間:
11:48
Side 3 # タイトル 作詞 作曲 時間 8. 「失われた対話 (The Lost Art of Conversation)」 Wright 1:42 9. 「ヌードル・ストリートにて (On Noodle Street)」 Gilmour、Wright 1:42 10. 「灯 (Night Light)」 Gilmour、Wright 1:42 11. 「出発 Part1 (Allons-y (1))」 Gilmour 1:57 12. 「オータム'68 (Autumn '68)」 Wright 1:35 13. 「出発 Part2 (Allons-y (2))」 Gilmour 1:32 14. 「トーキン・ホーキン〜ホーキング博士の伝言 (Talkin' Hawkin)」 Gilmour、Wright 3:29 合計時間:
13:38
デラックス・エディション付属ディスク(BD &DVD 共通)
追慕~遥かなる想い / Anisina (6 video tracks)
名前のない詩 / Untitled (アルバム未収録曲) (6 video tracks)
エヴリカ(a) / Evrika(a) (アルバム未収録曲) (6 video tracks)
ナーヴァナ / Nervana (アルバム未収録曲) (6 video tracks)
出発 / Allon-y (6 video tracks)
エヴリカ(b) / Evrika(b) (アルバム未収録曲) (6 video tracks)
TBS9 (アルバム未収録曲) (3 audio tracks)
TBS14 (アルバム未収録曲) (3 audio tracks)
ナーヴァナ / Nervana (アルバム未収録曲) (3 audio tracks)
アルバム 96kHz/24bit 5.1サラウンド (DTS Master Audio) (BD盤のみハイレゾオーディオ )
アルバム 96kHz/24bit 5.1サラウンド (PCM) (BD盤のみハイレゾオーディオ)
アルバム 96kHz/24bit PCMステレオ (BD盤のみハイレゾオーディオ)
チャート
脚注
出典
^ a b c d e ピンク・フロイド20年ぶりのニュー・アルバム『永遠(TOWA)』 - SonyMusic
^ a b ピンク・フロイド、20年ぶりのニューアルバムが最後の作品に - billboard-japan
^ a b Everitt, Matt (9 October 2014). “Shaun Keaveny, with a Pink Floyd Exclusive, Pink Floyd Talk to 6 Music's Matt Everitt ”. BBC . 2014年10月9日 閲覧。
^ a b ピンク・フロイド「リック無しでライブは不可能」 - BARKS
^ ピンク・フロイド、20年ぶりに新アルバムリリース - シネマトゥデイ
^ a b 亡き友に捧げる「ラウダー・ザン・ワーズ~終曲(フィナーレ)」のミュージックビデオを公開 - SonyMusic
^ ピンク・フロイド『永遠(TOWA)』、別冊「永遠のピンク・フロイド」も付随 - BARKS
^ ピンク・フロイド新作「永遠(TOWA)」は3形態で発売、収録曲の断片音源公開 - MUSICMAN-NET
^ ピンク・フロイド、英国でのアルバム発売記念イベントで48年振りのサイケデリック”ライト・ショー”が再現 - SonyMusic
^ “Egyptian teenager designs Pink Floyd’s new album cover ”. Egyptian Streets . ES Media Inc. (23 September 2014). 2014年9月23日 閲覧。
^ “Reviews for The Endless River by Pink Floyd ”. Metacritic . CBS Interactive. 5 November 2014 閲覧。
^ ロジャー・ウォーターズ「デヴィッド・ギルモアは正しい判断を下した」 - BARKS
^ ピンク・フロイド、20年ぶりニュー・アルバムが全英で初登場1位 - MUSICMAN-NET
^ ピンク・フロイド『永遠(TOWA)』全世界20か国で1位獲得!日本独自インタビュー第3弾公開
^ "Australiancharts.com – Pink Floyd – The Endless River" . Hung Medien. 15 November 2014 閲覧。
^ "Austriancharts.at – Pink Floyd – The Endless River" (in German). Hung Medien. 18 November 2014 閲覧。
^ "Ultratop.be – Pink Floyd – The Endless River" (in Dutch). Hung Medien. 14 November 2014 閲覧。
^ "Ultratop.be – Pink Floyd – The Endless River" (in French). Hung Medien. 14 November 2014 閲覧。
^ "Pink Floyd Chart History (Canadian Albums)" . Billboard . 20 November 2014 閲覧。
^ "Top Stranih [Top Foreign]" (in Croatian). Top Foreign Albums. Hrvatska diskografska udruga. 15 November 2014 閲覧。
^ "Czech Albums – Top 100" . ČNS IFPI . Note : On the chart page, select 201446 on the field besides the word "Zobrazit", and then click over the word to retrieve the correct chart data. 18 November 2014 閲覧。
^ "Danishcharts.com – Pink Floyd – The Endless River" . Hung Medien. 17 November 2014 閲覧。
^ "Dutchcharts.nl – Pink Floyd – The Endless River" (in Dutch). Hung Medien. 14 November 2014 閲覧。
^ "Pink Floyd: The Endless River" (in Finnish). Musiikkituottajat – IFPI Finland . 16 November 2014 閲覧。
^ "Lescharts.com – Pink Floyd – The Endless River" . Hung Medien. 16 November 2014 閲覧。
^ "Longplay-Chartverfolgung at Musicline" (in German). Musicline.de. Phononet GmbH . 17 November 2014 閲覧。
^ "Greekcharts.com – {{{artist}}} – {{{album}}}" . Hung Medien. 15 November 2014 閲覧。
^ "Top 40 album DVD és válogatáslemez-lista – 2014. 46. hét" (in Hungarian). MAHASZ . 20 November 2014 閲覧。
^ "GFK Chart-Track Albums: Week 46, 2014" . Chart-Track . IRMA . 14 November 2014 閲覧。
^ “חמשת הנצפים ביותר ” (Hebrew). Musicaneto. 16 November 2014 閲覧。
^ “Classifica settimanale WK 46 (dal 10-11-2014 al 16-11-2014) ” (Italian). Federazione Industria Musicale Italiana . 20 November 2014 閲覧。
^ {{{album}}} | {{{artist}}} ORICON NEWS. oricon ME . 14 November 2014 閲覧。
^ "South Korea Gaon International Album Chart" . On the page, select "2014.11.09~2014.11.15", then "국외", to obtain the corresponding chart. Gaon Chart November 9, 2014 閲覧。
^ "Charts.org.nz – Pink Floyd – The Endless River" . Hung Medien. 14 November 2014 閲覧。
^ "Norwegiancharts.com – Pink Floyd – The Endless River" . Hung Medien. 14 November 2014 閲覧。
^ “Polish Society of the Phonographic Industry ”. 20 November 2014 閲覧。
^ "Portuguesecharts.com – Pink Floyd – The Endless River" . Hung Medien. 17 November 2014 閲覧。
^ "Spanishcharts.com – Pink Floyd – The Endless River" . Hung Medien. 16 November 2014 閲覧。
^ "Swedishcharts.com – Pink Floyd – The Endless River" . Hung Medien. 18 November 2014 閲覧。
^ "Swisscharts.com – Pink Floyd – The Endless River" . Hung Medien. 18 November 2014 閲覧。
^ "Official Albums Chart Top 100" . Official Charts Company . 14 November 2014 閲覧。
^ "Pink Floyd Chart History (Billboard 200)" . Billboard . 20 November 2014 閲覧。
^ "Pink Floyd Chart History (Top Rock Albums)" . Billboard . 20 November 2014 閲覧。
注釈
外部リンク
ピンク・フロイド公式プロモーションサイト
ソニーミュージック・インフォメーション