異類婚姻譚異類婚姻譚(いるいこんいんたん)とは、違った種類の存在と人間とが結婚する説話の総称。世界的に分布し、日本においても多く見られる説話類型である。なお、神婚と異類(神以外)婚姻とに分離できるとする見方や、逆に異常誕生譚をも広く同類型としてとらえる考え方もある。 概要婚姻の相手としては、神、妖精、精霊など信仰対象となる存在の他、蛇、馬、キツネなど動物が相手となる話も多い。 ギリシア神話のゼウスが乙女の元に白鳥や水滴と化して訪れる話や、貴族の祖先が神や動物との間の子という物語が各地にあるが、これらは古代の族外婚による信仰、生活様式の違いに起源を求める説がある。子孫が残る伝承のものには、子孫にとって都合の良いもの(統治の根拠とする始祖伝説等)が多い。例として日本の天人女房(天女)系羽衣伝説や、中国の清王朝始祖、満洲民族のブクリ・ヨンションの伝説等が挙げられる。 多胎児は、人が動物のように多産となることから、先のゼウスの例のように動物に化けた神、もしくは動物が関わった影響と考える例が世界的にみられる。 日本日本神話におけるホオリとトヨタマヒメの結婚は異類婚姻譚であり、2人の子孫が初代天皇となっている。これは始祖の正当性の根拠として豪族などの有力者のエピソードを元に作られた神話とされる。 関敬吾をはじめ、異類婚姻をテーマとした研究は多くなされており、様々な角度から分析されている[1]。分析の仕方により、分類の仕方も変わってくるが、ここでは、例として関敬吾による分類を挙げる。なお、この分類上で言う「動物」には、慣例的に、架空の山姥、鬼、河童、天人等も含まれる。 大まかに六つの要素で構成されている。
異類婿人間の女と動物の婚姻[2]。何かと引き替えに、女性が一種の人身御供として異類と結婚する羽目に陥る。女性自ら婚姻が破綻する様に画策し、破局させる話も多い。
異類女房人間の男と動物の婚姻。異類婿よりは比較的悲惨でない話が多い。見るなのタブーを犯すことで離別する結末を迎える話も多い。
他界との関わり日本には、他界(死後の世界、神の世界等)と関わると何事か幸を得るという感覚が古来あったようで、神話を始め様々な説話にその思想的痕跡が見られる。異界と関わり幸を得る方法としては
などがあり、異類婚姻譚は文字通り婚姻により幸を得る部類である。 アジア
中国日本と同様に、狐女房を始めとして『聊斎志異』などに多数伝わる[5][6]。日本での説話の元になったと思われるものが多数ある。
朝鮮ヌルハチは李座首の娘とカワウソの間に生まれたという伝承がある。 ベトナム丁朝大瞿越を建てた丁部領は、母親が水浴びをしているときにカワウソと交わって出来た子だという[7]。 ヨーロッパヨーロッパでの異類婚姻譚に登場する動物は、元が魔法や呪いで姿を変えられた人間とされるものが多く、ギリシア神話等では神の化身であることも少なくない[8][9]。このため異類の本質が動物そのものであることは少ないという指摘もある。また逆のパターンとして妖精が魔法で動物の姿となっていたというパターンも多数存在する。
北米トリンギットには人の姿になるカワウソの元へ嫁ぎ、その後生まれた子が母の故郷への部族との交易を行い双方に富をもたらしたという伝承がある[10]。 創作美女と野獣、かえるの王さま、一寸法師、奥さまは魔女など神話や伝承をモチーフにしたり、異類婚姻譚を描いた物語は各地で創作されている。 漫画やアニメなどにおける異類婚姻譚的概念・混血の類型は、半妖とも呼ばれている。 脚注・出典
関連項目
外部リンク
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