発電設備の運用発電設備の運用(はつでんせつびのうんよう)とは、需要家に適切な電力を供給するため、需要に合わせた発電所の運用を行うことである[1]。 同時同量同時同量とは、電圧・周波数を一定とするため、電力消費量と発電量とを一致させることである。 特に周波数の制御は重要であり、0.5Hzの動揺がタービンブレードの異常振動やタービン軸のねじれなどを引き起こすことになる。それゆえ日本の電力会社は、周波数の変動を±0.2Hzに抑えることを目標としており、また電気法規でも同様に定められている。 電気製品の動作に支障がでる場合があるため、発電量と電力消費量の一致はこの面からも求められている。 アンシラリーサービスアンシラリーサービスとは、供給区域の配電電力会社から、バランシンググループ(複数の新電力が一つの託送契約を結ぶ)へ、託送・需要と供給の不一致の補正・力率調整(無効電力供給)などを供給するものである。 日本では、計画値同時同量と呼ぶ、配電電力会社とバランシンググループの間で、30分単位で発電量と電力消費量を一致させるシステムで運用されている。 中央給電指令所で、需要と一致するように、発電所の出力を補正する。周波数偏差・電力潮流・発電機の出力などを収集・管理するため、電力系統・制御機器の整備および運用にかなりの費用と人手をかけている。 需給調整需給調整とは、同時同量を達成するために需給調整市場・電力系統・発電設備などの運営を行うことである。 調整力調整力とは、供給区域における周波数制御、需給バランス調整その他の系統安定化業務に必要となる発電設備(揚水発電設備を含む。)、電力貯蔵装置、ディマンドリスポンス(デマンドレスポンス)その他の電力需給を制御するシステムその他これに準ずるもの(但し、流通設備は除く。)の能力である。 予備力→詳細は「供給予備力」を参照
予備力とは、供給区域の調整力以外の発電機の発電余力と上げ調整力を足したものである。
需要変動需要変動とは、30分平均値からの需要の変動である。
最大電力需要最大電力需要とは、供給区域の電力需要を足したものである。
需給調整市場需給調整市場とは、調整力の調達・調整力の運用・調整力発動量の実績値による支払いを行う市場である。
容量市場容量市場とは、中長期的な供給力を確保するために、発電設備のkW価値の収益機会を与える市場である。
系統制約系統制約とは、電力系統で流通させることのできる電力の限度である。
想定潮流の合理化想定潮流の合理化とは、供給信頼度や電源運用の自由度を大きく低下させることのない範囲で、実態をより反映した電源稼働を前提とすることによって想定潮流の合理化を図り、流通設備効率の向上及び電力系統利用の円滑化を図ることである[2]。 N-1電制N-1電制とは、単一設備故障時にリレーシステムで瞬時に電源制限を行うことで運用容量を拡大することである[3]。 運用方法発電設備は、電源脱落・電力系統事故などに備えた調整力・瞬動予備力が確保されるように運用される。
ベース運用ベース運用とは、ベースロード用とも呼ばれ、最低要求発電量として、点検時以外、24時間一定出力が確保されなくてはならない。建設費用等の初期投資額が高くても、連続運転能力、ガバナフリー容量が大きい、ランニングコストの低廉なものが最適とされる。 地熱発電・流れ込み式水力発電・再熱再生サイクル式大容量超臨界圧火力発電・原子力発電などで行われる。発電原価は原子力で5.3~13円程度とされている。 ミドル運用ミドル運用とは、ピーク時に常用最大出力、その他の時間帯は需要に合わせた出力で運用する。 石炭汽力発電などで行われる。発電原価は燃料費によって大きく変わるが、最も効率的なLNG火力の場合は数年前に7円を切っていて最も効率的であるといわれていた。 ピーク運用ピーク運用とは、ピーク時に、燃料費が安くなるように制御し、その他の時間は停止または最低出力で運用する。 日間起動停止(DSS)・週間起動停止(WSS)に対応した、揚水発電・調整池式水力発電・ダム式水力発電・コンバインドサイクル発電・石油汽力発電などで行われる。 揚水発電の発電原価は東京電力の試算で30円を超えている。また、関西電力が試算した火力発電所での発電原価も同じく30円を超えている。東電の揚水発電所は100万kWのものが稼働率10%で計算されているもので、これが実際に運用されている3%程度ということで再計算するなら1kWhは100円を超えるものとなる。この為、最近では電力会社は夏場のピークを落とすための電力料金体系を出してきている。 さらには一日数十分あるいは年間数十時間といった尖頭負荷に対しては、ランニングコストよりも建設費が低廉で、かつ始動から全負荷までに要する時間の短いガスタービンエンジンによる発電設備も各国で稼働中である。 調整力の低い時間帯の周波数調整夜間などの軽負荷時・太陽光発電などの調整しにくいものが多くを占める休日昼間などは、短周期の負荷変動の量はそれほど変わらないので、需給の変化に伴う周波数調整能力が低い。 夜間電力の割引・蓄電池利用など需要の開拓、昼・夜の揚水発電の揚水運転、地域外への送電、太陽光発電の受電停止などが行われている。 揚水時の消費電力を瞬時に変更できる可変速揚水機を、需給変化対応・無効電力の調整に利用している。 脚注
関連項目Information related to 発電設備の運用 |