眼下の敵
『眼下の敵』(がんかのてき、英語: The Enemy Below)は、1957年のアメリカ合衆国・西ドイツの戦争映画。第二次世界大戦における大西洋上のアメリカ海軍護衛駆逐艦とドイツ海軍潜水艦(Uボート)の戦いを描く。 監督はディック・パウエル、出演はロバート・ミッチャムとクルト・ユルゲンスなど。 概要元イギリス海軍中佐D・A・レイナーの実体験を元にした小説『水面下の敵』を、20世紀フォックスが映画化した作品。対潜戦の心理的駆け引きと1対1の決闘を描き、戦争映画・潜水艦映画の古典的名作として名高い。また、主演のロバート・ミッチャムの代表作の一つである。共演したクルト・ユルゲンスにとっては初のハリウッド映画出演で、戦後ドイツを代表する俳優として知られつつあった彼は本作で知名度をさらに高め、以後、戦争映画でのドイツ軍人を当たり役とするようになった。俳優出身であるディック・パウエルの、映画監督としての代表作でもある。 破壊シーンはミニチュア特撮が使われているが、撮影にはアメリカ海軍が全面協力しており、実際の護衛駆逐艦(USS ホワイトハースト)の砲撃・爆雷投下シーンは評判になった。 米独どちらかを一方的に悪役とはせず、両者を公平に描いている。原作では連合国側駆逐艦はイギリス海軍所属「ヘカテ」とされたが、映画化に際してはアメリカ海軍所属の護衛駆逐艦に差し替えられている。 ドイツ人役も英語であるが、ドイツ語訛りの英語で差別化を図っている。中盤でUボートの乗員が歌ったのはドイツ軍人のレオポルト1世 (アンハルト=デッサウ侯)にちなんだ「デッサウ行進曲」である。 音響効果を担当したウォルター・ロッシは、1957年度アカデミー賞最優秀特殊効果賞(現アカデミー音響編集賞)を受賞。 護衛駆逐艦USSヘインズ(DE-181)護衛駆逐艦USSヘインズ(DE-181)は、映画では真珠湾で米海軍が提供したUSS ホワイトハースト (DE-634)によって表現されている。電話の話し手、砲と爆雷の乗組員、そして船を放棄するすべての乗組員など、実際の船の乗組員の多くが映画に登場する。 ホワイトハーストの艦長、ウォルター・スミス少佐は、技術士官を演じた。彼は、戦闘前の小休止中に、下士官がローマ帝国衰亡史を読んでいるすぐ隣で漫画(リトル・オーファン・アニー)を読んでいる男性である。ホワイトハーストは1971年に標的艦として沈没した。実際のDE-181は、キャノン級護衛駆逐艦 USS ストラウブ (DE-181) (1974年に解体)であった。 ストーリー第二次世界大戦中の南大西洋。トリニダード・トバゴへ向け航行中のアメリカ海軍のバックレイ級護衛駆逐艦「ヘインズ」は、民間出身のマレルが艦長として着任していたが、出港以来艦長室から出てこないため乗組員たちは船酔いを疑い、その資質に疑問を抱いていた。ある日の夜、ヘインズは浮上航行中のドイツ海軍のUボートIX型を発見し、ようやく艦長室から出てきたマレルの指揮下、追尾行動に入る。敵の追跡を察知したUボートの艦長シュトルベルクは潜航してこれを振り切ろうとするが、ヘインズは、早朝に爆雷攻撃を開始、Uボートに損傷を与えることはできなかったものの、わざと左舷を敵潜の真後ろにさらし、一度撃てば終わりのUボートの後部発射管の魚雷を使わせてしまうことに成功する。これにより乗組員たちはマレルへの態度を改め、士気も高まる。 Uボートは、造泡ポリマーと水上艦より早い回頭能力により、ヘインズの真下を逆航、一度はそのまま逃げ切ることに成功するが、シュトルベルクはイギリスの暗号表の受け取りで味方水上艦と合流する任務を負っていたため、いずれは元進路の140°(360°式で南東)に戻らざるを得ず、またそのことを、マレルに読まれていたため、もとの進路に戻ったところを再び捕捉されてしまう。相手が只者ではないと悟ったシュトルベルクは危険承知で、安全潜航深度を超えた310mの海底に着底し、音をたてず、ヘインズがこちらを見失ったと判断して去るのを待つ。しかし、それもマレルには読まれており、ヘインズもまた、音を立てず、洋上で停止していたのだった。 その間、Uボートの先にいるドイツ水上艦がヘインズよりも強力であると見込んだマレルは、近海の友軍に援軍を求めるが、到着まで半日以上かかることが判明する。やがてシュトルベルクは、海底を離れ、静かに元進路の140°に動き出す。これに対しマレルは2時間ごとの波状攻撃を仕掛けて、Uボートの乗組員を心理的に追い込む作戦に出る。度重なる爆雷攻撃により、Uボートには、降伏を進言したり、パニックになる乗組員が出る。しかし、シュトルベルクはレコードをかけ、それをあえて大音量で流し、歌声を合わせて乗組員を鼓舞。聴音機からその様子を知ったマレルも、敵艦長の不屈の闘志に敬意を抱くようになる。 そのうちにシュトルベルクは波状攻撃をかけてくるヘインズの動きに一定のパターンがあることに気づく。そして、次の爆雷攻撃のさい、そのパターンの隙をつき、4本の魚雷を放射線状に発射、1本をヘインズの機関室に命中させることに成功する。ヘインズは沈没が免れない損傷を受けるが、マレルはマットレスを甲板上で燃やして艦が戦闘不能な様に偽装し、Uボートを海上におびき出す。シュトルベルクはその策にはまり、Uボートを浮上させ、ヘインズに対して「5分後に攻撃を開始する」と警告して退艦を促す。マレルはその時間を利用して艦の航行と砲撃に必要な最低限の人員以外を退艦させた後、ヘインズをUボートに突進させ、砲撃を開始する。Uボートは応戦するが、ヘインズに乗り上げられ、両艦とも炎上する。シュトルベルクも自爆装置を仕掛けて退艦を命じ、脱出したUボートの乗組員達は先に脱出したヘインズの乗組員達のボートに救助される。そのあいだシュトルベルクは、長年の腹心ハイニが重傷を負って艦内に取り残されている事を知り救助に向かう。残っていた乗員も退艦させ、ヘインズ上最後のひとりとなったマレルは、Uボート上にシュトルベルクとハイニを発見。一旦はそのまま退艦しようとするが、引き返す。艦長同士たがいに無言で敬礼を交わしたのち、マレルはふたりの救助を試みる。マレル(とシュトルベルクとハイニ)がまだヘインズに残っていることを知った双方の乗組員達は、自爆装置がいつ作動するか分からない危険を顧みず、ボートをヘインズに接舷させて3人を救い出す。この最後の3人が救助された直後、Uボートの自爆装置が作動、両艦は共に爆沈する。 援軍として到着したアメリカ海軍の駆逐艦上、捕虜となったUボートの乗組員たちは、戦死したハイニのため水葬を執り行う。葬儀を終えた後、後部甲板でシュトルベルクが「もう何度も死んでいるはずなのにいつも助かる。今回助かったのは君のせいだ」と言うと、マレルは「なら今度はロープを投げないよ」と冗談交じりに言う。それに対し、シュトルベルクは「いいや、君はまた投げるさ」と返す。 主要人物
ドイツ海軍
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脚注注釈出典
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