連邦準備制度(れんぽうじゅんびせいど、英語: Federal Reserve System, FRS)は、アメリカ合衆国の中央銀行制度である。ワシントンD.C.にある連邦準備制度理事会(Federal Reserve Board, FRB)が、全国の主要都市に散在する連邦準備銀行(Federal Reserve Bank, FRB)を統括する。連邦準備制度理事会は連邦議会の下にある政府機関であるが、予算の割当や人事の干渉を受けない。各連邦準備銀行は株式を発行する法人(body corporate)である。
歴史
連邦準備銀行の株主
連邦準備制度理事会は政府機関であるが、各連邦準備銀行は株式を発行する法人である。ただし、合衆国政府は連邦準備銀行の株式を所有しておらず、各連邦準備銀行によって管轄される個別金融機関が出資(=株式の所有)義務を負っている[1][2][注釈 1]。また、個人や非金融機関の法人は連邦準備銀行の株式を所有できない。
個別金融機関による出資額は金融機関の資本規模に比例するが、連邦準備銀行理事を選出する際の投票権は出資規模に関わらず一票ずつであるため、大手銀行が主導権を握るといったことはできない[2]。
連邦準備法により[3]、連邦準備銀行の株主が連邦準備制度に及ぼす影響力はきわめて小さいものに限定されている。連邦準備法における連邦準備銀行の株主の位置づけは、9人の連邦準備銀行理事のうち6人を選定するにすぎない(他の3人は連邦準備制度理事会が指名)[4]。また、連邦準備銀行理事の権限は理事長の選出のみであり、その理事長の権限も以下のものに限られている。
- 連邦公開市場委員会(FOMC)委員12人中5人の選出[5]
- 連邦準備制度理事会への提言[6]
連邦準備制度は大統領の指名と議会の承認による連邦準備制度理事会の主導により運営されている。ただし、連邦準備制度理事会が政府機関であるのに対し、連邦準備銀行が民間企業の形式を採っているのは事実である。とはいえ完全な民間企業とも言えず、両者を折衷した性格を持っている[2]。
主要業務
中央銀行としての一般的な業務は次のようなもの。
以下は新しい知見となりうるもの。
実際、支払制度が十分に維持されているとは言いがたい。2016年2月にバングラデシュ銀行が不正送金で損害を受けた事件をめぐり、バングラデシュ警察が捜査したところ、FRBはファイアウォールを有効にせずに10ドルの中古ルーターで国際銀行間通信協会に接続していたことが分かった[7]。他にもずさんな実態の中央銀行があるものと世界銀行関係者が見ている。
金融政策の独立性については発足当時政府の影響を強く受けたとされる。この点、ミルトン・フリードマンなどが、「世界恐慌にまで発展した1920年代のアメリカの金融バブル崩壊に際して、連邦準備制度が明白な不作為によって事態を深刻化させた」と指摘する。この考え方は今ではベン・バーナンキ(第14代議長)をはじめとする経済学者に広く受け入れられている[8]。戦後、ブレトンウッズ体制がスタートし、FRBと財務省が協定を締結し、金融政策の独自性を持つようになったとされる。
組織
連邦準備制度理事会
連邦準備制度理事会 (Federal Reserve Board of Governors) は連邦準備制度の統括機関。中央銀行に相当。14年任期の理事7人によって構成され、理事の中から議長・副議長が4年の任期で任命される。議長・副議長・理事は大統領が上院の助言と同意に基づいて任命する。
金融政策の策定と実施を任務としており、また連邦準備制度の活動の最終責任を負う。
大統領に対して、政府機関中最も強い独立性を有する一方で、世界経済に対する影響力は絶大であるため、FRB議長は「アメリカ合衆国において大統領に次ぐ権力者」と多くの人々に考えられている[9]。
現在の理事会メンバーは以下の通りである。定員は7人。
※この空席に任命された人個人の任期満了日。
連邦公開市場委員会
連邦公開市場委員会 (Federal Open Market Committee, FOMC) は、FRBが定期的に開く会合で、FRB理事7人と連邦準備銀行総裁5人(ニューヨーク連邦準備銀行総裁と、持ち回りで選ばれる他地区連銀の総裁4人。それ以外の地区連銀総裁も議論には参加するが議決権はない)で構成されるアメリカの金融政策決定機関である。議長はFRB議長、副議長はニューヨーク連邦準備銀行総裁が担当する。
FOMC定期的会合は年間8回開かれ、フェデラル・ファンド金利の誘導目標、及び公定歩合が決定されるが、市場の急変などでは臨時会議が開かれ、暫定的に公定歩合などが決定される(例:2000年末の株価大暴落時や、エンロンショック、2007年8月17日の0.5パーセント引き下げ等)。
連邦準備銀行
連邦準備銀行 (Federal Reserve Banks) は市中銀行の監督と規制など、公開市場操作以外の連邦準備制度の業務を行い、また連邦準備券(ドル紙幣)の発行を行う。連邦銀行(連銀)と呼ばれることもある。以下の12地区に分割されている。このうち第2地区のニューヨーク連邦準備銀行が全体の要となる。
歴代議長
連邦準備制度理事会の長は「議長」(Chair of the Federal Reserve Board)と呼ばれる。
脚注
注釈
- ^ 日銀は、日本政府が株式(正確には出資証券)の55パーセントを保有し、残りが公開市場(ジャスダック)で流通されている。
- ^ 即時グロス決済資金移動ネットワーク。日銀ネットのようなもの。個人手形交換所の CHIPS と結合し、プライベートの有限会社に運用されている。
- ^ 自動手形交換制度。実質的な証券集中保管機関。
- ^ NACHA は ACH のスポンサー。1974年という、国際決済オンライン化が世界で一気に普及した時期に設立されたNPO。
出典
参考文献
- Wood, John Cunningham; Woods, Ronald N. (1990), Milton Friedman: Critical Assessments, Routledge, ISBN 0415020050
- フルフォード, ベンジャミン (2008/12/20). アメリカが隠し続ける金融危機の真実. 青春出版社. ISBN 978-4-413-03698-6
- The Secrets of the Federal Reserve, 1952. Reprinted John McLaughlin, 1983, 208 pages, ISBN 0-9656492-1-0
外部リンク
ウィキメディア・コモンズには、
連邦準備制度に関連する
メディアおよび
カテゴリがあります。