那須烏山市(なすからすやまし)は、栃木県の東部に位置する市。
中世より烏山城の城下町として栄えた。那珂川県立自然公園に位置し、那珂川や荒川の清流に龍門の滝、国の重要無形民俗文化財に指定されている「山あげ祭」や温泉など歴史文化・観光資源が豊富な地域である。
地理
那須烏山市は、栃木県の中東部、八溝山地の西麓、塩那丘陵の南端、那珂川の中流域に位置する。市域には那珂川支流の荒川、江川が流れ、市内向田で那珂川に合流する。旧烏山町市街地は那珂川が成す右岸河岸段丘にある。
県庁所在地である宇都宮市より北東へ30-35kmほど、JR烏山線の列車で約50 - 60分の位置にあり、宇都宮都市圏に属する。宇都宮市への通勤率は13.7%(平成22年国勢調査)。
- 山:八溝山地、塩那丘陵
- 河川:那珂川、荒川、江川(以上、那珂川水系)、小貝川(以上、利根川水系)
- 湖沼:
地名の由来
- 応永年間、沢村五郎資重が、稲積城(那珂川の東側にあった)から城を移築する際、当初、那珂川の東側の山へ築城しようと用意をしていた。そのとき一羽の烏が飛来し、金の幣束(へいそく)を咥え、那珂川の西側の一番高い山の頂上にその幣束を落としたことから、それを見た資重は「烏は熊野権現の使いというから権現様のお告げではないか」と、那珂川の西側の山に城を築いた。それ以来、その城を烏山城ということになった。この話は昔から伝わる伝説で、そこから「烏山」という名がでてきたといわれている(烏山に伝わる民話「烏山の民話」からの要約)。
- 那須記では烏山城に因む地名とされている。もともと、この土地は8世紀末から『坂主』その後『酒主』と書かれてきた。一方で那珂川沿岸の丘陵には群鳥が棲む草叢があり『烏山』と呼ばれていた。そこへ築城した沢村(那須)資重が烏山城と名付け、地名も烏山としたと云われている。読み(音)からの推察では「川原(カワラ)」「洲(ス)」「山(ヤマ)」の転訛説がある[1]。
隣接する自治体
気候
那須烏山市の気候は典型的な太平洋側気候である。海から離れた内陸部に位置するため日較差、年較差が比較的大きく、内陸性気候の特徴が見られる。
冬季はからっ風が吹き降水量が少なく乾燥し、12 - 2月の降水量は年間降水量(平年値1,300mm程度)の1割にも満たない。日内の最低気温は氷点下に達し、特に天気が良い日の朝は放射冷却の影響を強く受け-5度以下になることもあるが、昼間は最高気温が10度前後に達し寒い日でも5度程度まで上がる。
春季から夏季、秋季にかけては降水量が多く湿潤し、特に夏季から秋季にかけて(5 - 10月)の降水量は年間降水量(平年値1,300mm程度)の7 - 8割に達する。
ケッペンの気候区分は、気象庁烏山観測所(2009年2月23日まで観測、市内愛宕台字道陸神)の過去22年間の気象観測平年値を基にすると温暖湿潤気候(最寒月の平均気温が-3.0℃以上18℃以下、最暖月の平均気温が22℃以上、基準詳細は温暖湿潤気候#条件を参照)に区分される。
那須の名を冠するが、天気予報の予報区分は「栃木県南部」、警報注意報は真岡・芳賀地域と同じ「南東部」に分類される。[2]
烏山(愛宕台字道陸神)の平均気温、平均最高気温、平均最低気温と降水量
(平年値:1979年 - 2000年22年間の平均)[注釈 1]
|
1月 |
2月 |
3月 |
4月 |
5月 |
6月 |
7月 |
8月 |
9月 |
10月 |
11月 |
12月 |
年
|
平均気温(℃)
|
1.7 |
2.3 |
5.6 |
11.3 |
15.8 |
19.2 |
22.6 |
24.3 |
20.5 |
14.7 |
8.9 |
4.0 |
12.6
|
平均最高気温(℃)
|
7.9 |
8.4 |
11.5 |
17.4 |
21.4 |
23.6 |
26.9 |
28.9 |
24.9 |
19.9 |
14.9 |
10.5 |
18.0
|
平均最低気温(℃)
|
-3.4 |
-2.8 |
0.4 |
5.5 |
10.7 |
15.5 |
19.3 |
20.8 |
17.0 |
10.3 |
3.8 |
1.3 |
8.0
|
降水量(mm)
|
29.1 |
47.9 |
92.9 |
104.1 |
138.5 |
150.1 |
158.7 |
169.4 |
215.0 |
120.9 |
68.7 |
25.4 |
1320.8
|
以下に示すのは現在の市内測候所である気象庁那須烏山観測所(2009年2月24日から観測開始、市内森田字小塙前)の2009年〜2020年の各月平均値データである。
那須烏山(2009年 - 2020年)の気候
|
月 |
1月 |
2月 |
3月 |
4月 |
5月 |
6月 |
7月 |
8月 |
9月 |
10月 |
11月 |
12月 |
年
|
最高気温記録 °C (°F)
|
17.2 (63)
|
21.7 (71.1)
|
25.5 (77.9)
|
30.3 (86.5)
|
33.1 (91.6)
|
36.3 (97.3)
|
37.3 (99.1)
|
37.6 (99.7)
|
35.2 (95.4)
|
32.3 (90.1)
|
24.8 (76.6)
|
20.3 (68.5)
|
37.6 (99.7)
|
平均最高気温 °C (°F)
|
8.6 (47.5)
|
9.4 (48.9)
|
13.2 (55.8)
|
18.2 (64.8)
|
23.7 (74.7)
|
25.8 (78.4)
|
29.4 (84.9)
|
30.9 (87.6)
|
27.2 (81)
|
21.5 (70.7)
|
16.0 (60.8)
|
10.7 (51.3)
|
19.6 (67.3)
|
日平均気温 °C (°F)
|
0.9 (33.6)
|
2.5 (36.5)
|
6.4 (43.5)
|
11.3 (52.3)
|
17.2 (63)
|
20.6 (69.1)
|
24.4 (75.9)
|
25.4 (77.7)
|
21.5 (70.7)
|
15.6 (60.1)
|
9.1 (48.4)
|
3.4 (38.1)
|
13.2 (55.8)
|
平均最低気温 °C (°F)
|
−5.4 (22.3)
|
−3.7 (25.3)
|
−0.1 (31.8)
|
4.7 (40.5)
|
11.3 (52.3)
|
16.4 (61.5)
|
20.8 (69.4)
|
21.5 (70.7)
|
17.5 (63.5)
|
10.9 (51.6)
|
3.4 (38.1)
|
−2.4 (27.7)
|
7.9 (46.2)
|
最低気温記録 °C (°F)
|
−12.3 (9.9)
|
−11.0 (12.2)
|
−7.6 (18.3)
|
−5.7 (21.7)
|
0.6 (33.1)
|
7.0 (44.6)
|
12.8 (55)
|
11.7 (53.1)
|
7.6 (45.7)
|
0.7 (33.3)
|
−4.0 (24.8)
|
−9.0 (15.8)
|
−12.3 (9.9)
|
降水量 mm (inch)
|
32.7 (1.287)
|
47.3 (1.862)
|
91.3 (3.594)
|
138.5 (5.453)
|
128.0 (5.039)
|
169.3 (6.665)
|
180.9 (7.122)
|
154.7 (6.091)
|
188.8 (7.433)
|
171.9 (6.768)
|
69.5 (2.736)
|
47.7 (1.878)
|
1,436.3 (56.547)
|
平均月間日照時間
|
220.0
|
185.4
|
196.7
|
192.4
|
203.4
|
138.3
|
135.6
|
169.0
|
140.1
|
144.0
|
159.8
|
187.2
|
2,086.8
|
出典:気象庁[3][4]
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歴史
鎌倉時代から江戸時代まで
現代以降
行政
歴代首長
- 那須烏山市長
代 |
氏名 |
就任 |
退任 |
備考
|
1 |
大谷範雄 |
2005年(平成17年)11月6日 |
2017年(平成29年)11月5日 |
合併前の南那須町長
|
2 |
川俣純子 |
2017年(平成29年)11月6日 |
|
|
2005年10月1日の那須烏山市発足から市長選挙までの間、旧烏山町長の福田弘平が市長職務執行者を務めた。
市議会
衆議院
- 任期 : 2017年(平成29年)10月22日 - 2021年(令和3年)10月21日(「第48回衆議院議員総選挙」参照)
公的機関
市役所
- 烏山庁舎(旧烏山町役場)
- 南那須庁舎(旧南那須町役場)
県の機関
警察
栃木県警察
消防
医療
図書館
人口
|
那須烏山市と全国の年齢別人口分布(2005年)
|
那須烏山市の年齢・男女別人口分布(2005年)
|
■紫色 ― 那須烏山市 ■緑色 ― 日本全国
|
■青色 ― 男性 ■赤色 ― 女性
|
那須烏山市(に相当する地域)の人口の推移
1970年(昭和45年)
|
33,539人
|
|
1975年(昭和50年)
|
33,281人
|
|
1980年(昭和55年)
|
33,562人
|
|
1985年(昭和60年)
|
33,854人
|
|
1990年(平成2年)
|
33,699人
|
|
1995年(平成7年)
|
33,535人
|
|
2000年(平成12年)
|
32,790人
|
|
2005年(平成17年)
|
31,152人
|
|
2010年(平成22年)
|
29,206人
|
|
2015年(平成27年)
|
27,047人
|
|
2020年(令和2年)
|
24,875人
|
|
|
総務省統計局 国勢調査より
|
関東地方では千葉県勝浦市についで人口が少ない市である。
経済
歴史的にみて、栃木県東部の経済的な拠点であった。近年は交通網の整備が進み宇都宮市やさくら市などに進出している郊外型店舗、市内の事業活動低迷により斜陽の傾向にある。那珂川中流域の要衝としての観光資源に重きをなしている。
農業
第1次産業が盛んである。「中山かぼちゃ」の生産が特色[6]。
商工業
- 商業施設
地域
町名一覧
烏山地域
- 烏山地区
- 旭(あさひ)1-2丁目
- 愛宕台(あたごだい)
- 表(おもて)
- 金井(かない)1-2丁目
- 城東(じょうとう)
- 城山(しろやま)
- 中央(ちゅうおう)1-3丁目
- 初音(はつね)
- 南(みなみ)1-2丁目
- 向田地区
- 落合(おちあい)
- 神長(かなが)
- 滝(たき)
- 野上(のがみ)
- 向田(むかだ)
- 境地区
- 大木須(おおぎす)
- 大沢(おおさわ)
- 上境(かみざかい)
- 小木須(こぎす)
- 小原沢(こはらざわ)
- 下境(しもざかい)
- 宮原(みやはら)
- 横枕(よこまくら)
- 七合地区
- 大桶(おおけ)
- 興野(きょうの)
- 白久(しらく)
- 滝田(たきた)
- 中山(なかやま)
- 谷浅見(やあざみ)
南那須地域
- 荒川地区
- 岩子(いわこ)
- 宇井(うい)
- 大金(おおがね)
- 大里(おおさと)
- 小倉(おぐら)
- 鍛冶ケ澤(かじがさわ)
- 鴻野山(こうのやま)
- 小河原(こがわら)
- 小白井(こじろい)
- 小塙(こばな)
- 曲畑(そりはた)
- 高瀬(たかせ)
- 田野倉(たのくら)
- 東原(とうばら)
- 福岡(ふくおか)
- 曲田(まがつた)
- 森田(もりた)
- 八ケ代(やかしろ)
- 下江川地区
- 上川井(かみかわい)
- 熊田(くまだ)
- 三箇(さんが)
- 志鳥(しとり)
- 下川井(しもかわい)
- 月次(つきなみ)
- 藤田(ふじた)
- 南大和久(みなみおおわぐ)
教育
幼稚園・保育園
- 那須烏山市立つくし幼稚園
- 烏山みどり幼稚園
- 聖マリア幼稚園
- 烏山保育園
- 宮原保育園
- 七合保育園
- 境保育園
- すくすく保育園
- 小木須保育園
- にこにこ保育園
- 学童保育げんきっ子クラブ荒川
- 学童保育げんきっ子クラブ江川
小学校
特別支援学校
中学校
高等学校
郵便
郵便番号は「321-06xx」(烏山地区)、「321-05xx」(南那須地区)が該当する。集配局は市内全域が烏山郵便局の管轄となる。
郵便局
- 烏山郵便局(07007)
- 南那須郵便局(07120)
- 下江川郵便局(07144)
- 七合郵便局(07152)
- 小木須郵便局(07174)
- 向田郵便局(07221)
- 烏山仲町郵便局(07271)
- 志鳥簡易郵便局(07704)
- 宮原簡易郵便局(07711)
- 藤田簡易郵便局(07719)
- 下境簡易郵便局(07722)
- 興野簡易郵便局(07727)
- 神長簡易郵便局(07730)
- 南那須八ケ代簡易郵便局(07736)
- 南那須三箇簡易郵便局(07740)
電話番号
市内地域が烏山MAの管轄となり、市外局番は「0287」。収容局は以下の2ビルが該当し、市内局番は以下の通り。
- 栃木烏山局:80、82、83、84
- 南那須局:88
文化
交通
鉄道
- 東日本旅客鉄道(JR東日本)
路線バス
この他、東野交通(現・関東自動車)の宇都宮東武・烏山線、さくら市営バスが市内域に乗り入れていたが現在は運行されていない。
道路
- 一般国道
- 主要地方道
- 一般県道
名所・旧跡・観光スポット・祭事・催事
名所・旧跡・観光地
- 烏山和紙会館
- 山あげ会館
- 目黒製作所の大看板 - 山あげ会館前。カワサキモータースが那須烏山市に寄贈。高さ2.8m×幅4.5m。[7]
- どうくつ酒造(島崎酒造)
- 大金温泉
- やまびこの湯からすやま(廃業)
- こぶしが丘温泉(廃業)
- 寿乃湯
- 烏山城
- 龍門の滝
- 龍門ふるさと民芸館(龍門の滝に隣接。賽銭箱の前で手を合わせるとハイテク龍が目を覚ます)
- 太平寺(龍門の滝の入口にある。開基嘉祥元年(848年)慈覚大師。川口松太郎の小説で有名になった蛇姫の墓がある)
- 天性寺(織田信長の位牌、那須家六代の墓がある)
- 泉渓寺(勅額の門がある)
- こぶしが丘牧場
- やな(那珂川・矢沢のやな、ひのきやのやな、荒川・一ツ石観光やな 森田城やななど)
祭事・催事
- 山あげ祭(毎年7月 第三 金土日)
- 大金いかんべ祭(毎年8月)
著名な出身者
脚注
注釈
出典
- ^ 塙静夫著『とちぎの地名』(落合書店刊)
- ^ 栃木県の警報・注意報
- ^
“栃木県那須烏山”. 気象庁. 2024年12月14日閲覧。
- ^
“観測史上1~10位の値”. 気象庁. 2024年12月14日閲覧。
- ^ 大久保忠良『お殿様ご苦労記 : 下野国烏山藩主大久保家の歴史物語』 三鷹・烏山大久保藩歴史継承会 2005年3月。‐ 大久保忠訓編『烏山藩大久保家の由来と変遷』改訂版。浜松・大久保忠訓 2002年3月。<WB01540750>
- ^ 『中山かぼちゃ』 - コトバンク
- ^ 読売新聞 栃木版 2022年6月3日 23面掲載
外部リンク
ウィキメディア・コモンズには、
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