| この記事は特に記述がない限り、日本国内の法令について解説しています。また最新の法令改正を反映していない場合があります。 ご自身が現実に遭遇した事件については法律関連の専門家にご相談ください。免責事項もお読みください。 |
階級(かいきゅう)は、特定の社会、組織の内部において存在する順位等級のことである。本稿では特に日本の公務員の階級について概説する。
日本の公務員の階級
日本における公務員の階級制度は、自衛隊や警察などの社会の安定維持に関わる公務員において特に厳格である。これらの組織では、法令に基づいて「階級」が定められており、昇進・昇級・役職など全てが階級によって決められる。現在の日本社会の中でも、自衛官、警察官、消防吏員、海上保安官の階級は最も法律的・組織的効力が大きいと言える。これらの組織で階級が上がることを昇任という。
また、法令に基づく階級を持たない公務員でも、裁判官や検察官、自衛官以外の防衛省職員(いわゆる「背広組」)などは、職務の重さに応じて官名が改まることになっており、これが実質的な階級呼称となっている。地方公共団体の一部でみられる職層別の職員の職の呼称なども、こうした階級的呼称の一種とみなすことができるだろう。
さらに、一般には事務官や技官、事務吏員や技術吏員といった官名・職務名のみしか与えられていない多くの公務員も、俸給表によって給与の額と担うべき職責の重さに関する基準が存在しており、先に述べた職層階級に応じた係員、主任、係長、主査、課長補佐、室長、課長、次長、局長、特別職といったような事実上の階級的な区分を有していることが普通である。
階級・階級的呼称が存在する国家公務員
以下には、法令上「階級」とはされていないが、職責の上下を示す階層別の呼称として用いられ、実質的に階級とみなしうるものを含む。
階級・階級的呼称が存在する地方公務員
- 警察官(都道府県警察(地方警務官は除く))
- 消防吏員(東京消防庁はじめ各消防本部):消防組織法第16条の規定に基づき、消防庁が定める「消防吏員の階級の基準」[2] に従い、市町村が定める。
- 消防団員(東京都及び各市町村の設置する消防団)
- 水防団員(国土交通省の所管する水防団)
- 海防団員(香川県観音寺市の海防団)
- 地方公共団体事務系・技術系職員の職層
- 地方公共団体には職員に職層別のなんらかの呼称を与えているものが多くみられるが、その呼称自体の呼び方も「職名」「職務名」「職層名」「補職名」など様々である。特に最近では、職名等は単に職員あるいは事務吏員、技術吏員などと称し、室課長以上の職制として部長、課長、参事や副参事、課内の職制として主幹、副主幹、主査、主任、主事・技師などを置いているケースも多い。
- 東京都の例
- 東京都は、「職員の職名に関する規則」に基づき、職員の職名は職層名及び職務名によるとしており、職層名が階級的呼称に該当する。
- 東京都のように参事、副参事等を職層名として置いている場合は、局長・部長・課長等のラインを外れて置かれるスタッフ職の職名に職層名をそのまま用いる。
- 理事、専門理事(局長)
- 参事、専門参事(特定職部長及び部長)
- 副参事、専門副参事(統括課長及び課長)
- 主事(課長補佐以下)
現存しない公務員・官吏の階級呼称
第二次世界大戦前には、武官である軍人及び文官のうちの公安職員に階級が存在したほか、武官及び文官のすべての官吏を高等官と判任官に分けて、高等官は親任官及び一等官から九等官までの官等とし[注釈 1]、判任官は一等から四等までの等級とした[4]。なお、判任官の下には天皇の任命大権ではなく、官公庁との私契約に基づいて勤務する雇員と呼ばれる下級の職員がおり、これらも階級の一部をなしていた。
また、公務員制度の過渡期であった戦後の短い時期には、旧勅任官が一級官吏、旧奏任官が二級官吏、旧判任官が三級官吏と呼ばれて存続したことがある[5] [6]。昭和22年制定の議院事務局法・国会職員法が制定当初、国会職員に参事(一級官吏相当)、副参事(二級官吏相当)、主事(三級官吏相当)、主事補(雇員相当)の職階を設けていたり、現在も検事が一級、二級などと呼び分けられているのはこの名残である。
以下には、戦前・戦後に存在したが、現在は消滅している、階級呼称を有する官吏・公務員を列挙する。
現在の日本の公的機関における主要な階級の比較表
正確を期せば、統合・陸・海・空の各幕僚長は、階級上は「幕僚長たる将」の自衛官の役職名、警察庁長官は階級外の唯一の警察官の役職名であるほか、消防庁長官及び次長は消防吏員ではなく、海上保安庁長官、次長及び海上保安監は海上保安官ではないが、専用の階級章等があり、最高位級の階級に準ずる扱いを受けているため、便宜的にここに記す。
日本の公務員の階級
自衛官 |
警察官 (皇宮護衛官を含む) |
消防吏員 |
海上保安官 |
備考
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統合幕僚長 |
警察庁長官 |
- |
- |
(指定職8号俸)本府省事務次官級
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陸上幕僚長 海上幕僚長 航空幕僚長 |
警視総監 |
(消防庁長官) |
(海上保安庁長官) |
(指定職7号俸)本府省外局長官、省名審議官級
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将 |
警視監 |
消防総監 (消防庁次長)
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(海上保安庁次長) (海上保安監) |
(指定職6~3号俸)警察庁次長[注釈 2]、本府省庁局長級、陸上総隊司令官、自衛艦隊司令官、航空総隊司令官、方面総監、地方総監、東京都局長(消防総監)
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消防司監
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(指定職2~1号俸)本府省庁局次長・部長・審議官級、地方機関の長(管区単位・大規模)、師団長(将)、旅団長(将補)、本庁部長・管区本部長〔海保〕、東京都局(東京消防庁)次長、理事
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将補
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一等海上保安監(甲)
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警視長 |
本府省庁課長級、地方機関の長(管区単位・小規模)、団長(将補)、連隊長(1佐)、本庁参事官・管区本部次長〔海保〕、東京都区参事(部長、担当部長、参事)
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1佐 |
消防正監 |
一等海上保安監(乙)
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警視正 |
消防監
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二等海上保安監 |
本府省庁室長級、東京都区参事(統括課長、署長〔消防〕、統括副参事)、独立大隊長、管区機動隊連隊長、大型艦船の長、本庁課長・管区本部部長・保安部長・大型巡視船の長〔海保〕
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2佐 |
警視 |
消防司令長 |
三等海上保安監 |
本府省庁課長補佐級、東京都区副参事(課長、担当課長、副参事、小規模署長)、大隊長(自衛隊)、機動隊大隊長、艦船の長、本庁課長補佐・管区本部課長・保安部次長・保安署長・中型巡視船の長〔海保〕
|
3佐 |
警部 |
消防司令 |
一等海上保安正 |
本府省庁係長、東京都区主事(統括課長代理〔都〕、本部指定係長・署課長・課長代理〔警視庁〕、課長補佐〔消防〕)、中隊長(自衛隊)、機動隊中隊長、小型艦船の長、本庁係長・管区本部課長補佐・保安部課長・保安署次長・小型巡視船の長〔海保〕
|
1尉 |
二等海上保安正 |
本府省庁係長心得、同主任、同係員、東京都区主事(課長代理〔都〕、本部係長・署課長代理〔警視庁〕、係長〔消防〕、統括係長〔特別区〕)、中隊長・副中隊長(自衛隊)、小隊長(一部)本部係長・署、本庁専門員・管区本部係長・保安部専門官・保安署次長・大型巡視艇の長〔海保〕
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2尉・3尉 |
警部補 |
消防司令補 |
三等海上保安正 |
本府省庁係長心得、同主任、同係員、東京都区主事(主任〔都〕、本部副主査・署係長〔警視庁〕、担当係長・統括・主任〔消防〕、係長・主査・次席〔特別区〕)、小隊長(自衛隊)、機動隊小隊長、管区本部専門員・保安部署係長・中型巡視艇の長〔海保〕
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准尉・曹長・1曹 |
巡査部長 |
消防士長 |
一等海上保安士 |
東京都区主事(係員〔都〕、本部係員・署主任〔警視庁〕、副主任〔消防〕、主任主事〔特別区〕)、分隊長、機動隊分隊長。自衛隊にあっては上級陸曹(1曹以上)が小隊長級、初級陸曹(2曹・3曹)が班長・分隊長級。※警察官、海上保安官(二等海上保安士以下は司法巡査)、自衛隊警務官にあってはこの階級以上が司法警察員
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2曹 |
二等海上保安士
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3曹 |
三等海上保安士
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士長 |
(巡査長) |
消防副士長 |
一等海上保安士補 |
自衛隊警務官にあってはこの階級が司法巡査。警察官、海上保安官にあってはこの階級以下が司法巡査(海上保安官では平成2年以降補職者なし)。
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1士 |
巡査 |
消防士 |
二等海上保安士補
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2士 |
三等海上保安士補
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公務員以外の階級
公務員以外の民間企業や宗教団体などにおいても組織上の職階に留まらず、軍隊や警察の階級を模倣した階級制度を制定している場合がある。船員、警備員、救世軍人、神宮衛士などはそれにあたる。
脚注
注釈
- ^ 親任式を以って任ずる官を除き他の高等官を9等に分け、親任式を以って任ずる官及び一等官・二等官を勅任官とし、三等官から九等官までを奏任官とした[3]。
- ^ 警察庁次長の階級は警視監であるが、外局長官級の俸給である指定職6号俸を支給される。
出典
- ^ 参議院 事務局職員の採用 >衛視Q&A
- ^ http://www.fdma.go.jp/concern/law/kokuji/hen51/51020002010.htm 消防吏員の階級の基準
- ^ 「御署名原本・明治四十三年・勅令第百三十四号・高等官官等俸給令改正明治二十四年勅令第九十六号(枢密院議長副議長顧問官並書記官長書記官議長秘書官年俸)外三十一件廃止」JACAR(アジア歴史資料センター)Ref.A03020844700、御署名原本・明治四十三年・勅令第百三十四号・高等官官等俸給令改正明治二十四年勅令第九十六号(枢密院議長副議長顧問官並書記官長書記官議長秘書官年俸)外三十一件廃止(国立公文書館)(第2画像目、第32画像目から第40画像目まで)
- ^ 「文武判任官等級令ヲ定ム」JACAR(アジア歴史資料センター)Ref.A15113760100、公文類聚・第三十四編・明治四十三年・第六巻・官職門五・官等俸給及給与~旅費(国立公文書館)(第3画像目から第6画像目まで)
- ^ 「御署名原本・昭和二十一年・勅令第一九三号・官吏任用叙級令施行等ニ伴フ高等官官等俸給令ノ廃止等ニ関スル件」JACAR(アジア歴史資料センター)Ref.A04017814600、御署名原本・昭和二十一年・勅令第一九三号・官吏任用叙級令施行等ニ伴フ高等官官等俸給令ノ廃止等ニ関スル件(国立公文書館)(第2画像目から第3画像目まで、第7画像目)
- ^ 「御署名原本・昭和二十一年・勅令第一九四号・官吏任用叙級令施行ニ伴フ文武判任官等級令廃止等ニ関スル件」JACAR(アジア歴史資料センター)Ref.A04017814700、御署名原本・昭和二十一年・勅令第一九四号・官吏任用叙級令施行ニ伴フ文武判任官等級令廃止等ニ関スル件(国立公文書館)
関連項目