GNUデバッガ
GNUデバッガ(単にGDBとも)は、GNUソフトウェア・システムで動く標準のデバッガである。これは、多くのUnix系システムで動作可能な移植性の高いデバッガであり、Ada、C言語、C++、Objective-C、Pascal、FORTRAN、FreeBASIC、Goといったプログラミング言語に対応している[2][3]。 歴史GDBは初め、GNU Emacs が「そこそこ安定化」した後、1986年 にGNU システムの一部として リチャード・ストールマン が書いた[4]。GDBは、GNU General Public License (GPL) の下でリリースしている 自由ソフトウェア である。これは、BSDに付属していたdbxデバッガをモデルにしている[4]。 1990年から1993年まではジョン・ギルモアが保守をしていた[5]。現在はFree Software Foundationによって任命されたGDB運営委員会によって保守されている[6]。 技術詳細機能GDBは、プログラムの実行の変更や追跡といった充実した機能を提供する。プログラム内部の 変数 の値を修正したり、監視したりすることや、プログラムの通常の動作とは別に 関数 を呼び出すことができる。 2003年 現在、GDBのターゲット・プロセッサは、以下のとおりである。
標準リリースでサポートされている、さほど有名でないターゲット・プロセッサには、以下がある。
新しいリリースでは、これらの一部をサポートしていない可能性がある。GDBには、M32RやV850といった、日本製のCPUをターゲットにしたコンパイル済みのシミュレータがある[7]。 GDBはまだ活発に開発されている。バージョン7.0の新機能には、Pythonスクリプトのサポートが含まれ[8]、バージョン7.8ではGNU Guileスクリプトもサポートされている[9]。バージョン7.0からは「リバーシブルデバッグ」がサポートされている。これは、クラッシュしたプログラムを巻き戻して何が起こったのかを確認するように、デバッグセッションを後退させることができる[10]。 遠隔デバッグGDBには「遠隔」モードがあり、しばしば組込みシステムのデバッグで使われる。遠隔操作では、GDBとデバッグ対象のプログラムは別のマシンで動作する。GDBは、GDBプロトコルをシリアルやTCP/IP経由で理解する遠隔「スタブ」と通信することができる[11]。スタブプログラムは、通信プロトコルのターゲット側を実装したGDB付属の適切なスタブファイルにリンクすることで作成できる[12]。または、gdbserverを使用して、プログラムを変更せずにリモートでデバッグすることもできる。 GDBを使い、動いているLinuxカーネルをソース・レベルでデバッグするKGDBでも、同じモードを使っている。KGDBを使い、カーネル開発者は、アプリケーション・プログラムのようにカーネルをデバッグできる。カーネル・コードにブレークポイントを設定でき、ステップ動作ができ、変数を参照できる。ハードウェアのデバッグ・レジスタ (debugging register) が使えるアーキテクチャでは、ウォッチポイントが設定できる。ウォッチポイントとは、特定のメモリー・アドレスを実行したり、アクセスしたときのブレークポイントをかけるものである。KGDBには、シリアルケーブルやイーサネットを使ってデバッグ対象マシンに繋がったマシンが必要となる。FreeBSDでは、FireWire DMAを使ったデバッグもできる[13]。 グラフィカルユーザーインタフェースこのデバッガは、グラフィカルユーザインタフェース (GUI) は含まれておらず、デフォルトはコマンドラインユーザインタフェース (CUI) である。UltraGDB、Xxgdb、Data Display Debugger (DDD)、Nemiver、KDbg、Xcode デバッガ、GDBtk/Insight、HP Wildebeest Debugger GUI (WDB GUI) など、いくつかのフロントエンドが構築されている。Codelite、Code::Blocks、Dev-C++、Geany、GNAT Programming Studio (GPS)、KDevelop、Qt Creator、Lazarus、MonoDevelop、Eclipse、NetBeans、Visual Studioなどの統合開発環境は、GDBとインターフェースをとることができる。GNU Emacsには「GUDモード」があり、VIM用のツールが存在する(例: clewn)。これらのツールはIDEにあるデバッガと同様の機能を提供する。 他にも、メモリリーク検出器など、GDBと連動するように設計されたデバッグツールもある。 コマンド例
セッション例C言語で書かれた以下のソースコードを考える。 #include <stdio.h>
#include <stdlib.h>
#include <string.h>
size_t foo_len( const char *s )
{
return strlen( s );
}
int main( int argc, char *argv[] )
{
const char *a = NULL;
printf( "size of a = %lu\n", foo_len(a) );
exit( 0 );
}
Linux上のGCCコンパイラを使用する場合、生成されたバイナリに適切なデバッグ情報を含めるために $ gcc example.c -Og -g -o example
そして、バイナリを実行できるようになった。 $ ./example
Segmentation fault
サンプルコードを実行するとセグメンテーションフォールトが発生するので、GDBを使用して問題を検査することができる。 $ gdb ./example
GNU gdb (GDB) Fedora (7.3.50.20110722-13.fc16)
Copyright (C) 2011 Free Software Foundation, Inc.
License GPLv3+: GNU GPL version 3 or later <https://gnu.org/licenses/gpl.html>
This is free software: you are free to change and redistribute it.
There is NO WARRANTY, to the extent permitted by law. Type "show copying"
and "show warranty" for details.
This GDB was configured as "x86_64-redhat-linux-gnu".
For bug reporting instructions, please see:
<https://www.gnu.org/software/gdb/bugs/>...
Reading symbols from /path/example...done.
(gdb) run
Starting program: /path/example
Program received signal SIGSEGV, Segmentation fault.
0x0000000000400527 in foo_len (s=0x0) at example.c:8
8 return strlen (s);
(gdb) print s
$1 = 0x0
この問題は8行目にあり、 コマンド GNU gdb (GDB) 7.3.1
Copyright (C) 2011 Free Software Foundation, Inc.
License GPLv3+: GNU GPL version 3 or later <https://gnu.org/licenses/gpl.html>
This is free software: you are free to change and redistribute it.
There is NO WARRANTY, to the extent permitted by law. Type "show copying"
and "show warranty" for details.
This GDB was configured as "i686-pc-linux-gnu".
For bug reporting instructions, please see:
<https://www.gnu.org/software/gdb/bugs/>...
Reading symbols from /tmp/gdb/example...done.
(gdb) run
Starting program: /tmp/gdb/example
Program received signal SIGSEGV, Segmentation fault.
0xb7ee94f3 in strlen () from /lib/i686/cmov/libc.so.6
(gdb) bt
#0 0xb7ee94f3 in strlen () from /lib/i686/cmov/libc.so.6
#1 0x08048435 in foo_len (s=0x0) at example.c:8
#2 0x0804845a in main (argc=<optimized out>, argv=<optimized out>) at example.c:16
この問題を修正するには、変数 #include <stdio.h>
#include <stdlib.h>
#include <string.h>
size_t foo_len( const char *s )
{
return strlen(s);
}
int main( int argc, char *argv[] )
{
const char *a = "This is a test string";
printf( "size of a = %lu\n", foo_len(a) );
exit( 0 );
}
GDB内で実行ファイルを再コンパイルして実行すると、正しい結果が得られるようになった。 GNU gdb (GDB) Fedora (7.3.50.20110722-13.fc16) Copyright (C) 2011 Free Software Foundation, Inc. License GPLv3+: GNU GPL version 3 or later <https://gnu.org/licenses/gpl.html> This is free software: you are free to change and redistribute it. There is NO WARRANTY, to the extent permitted by law. Type "show copying" and "show warranty" for details. This GDB was configured as "x86_64-redhat-linux-gnu". For bug reporting instructions, please see: <https://www.gnu.org/software/gdb/bugs/>... Reading symbols from /path/example...done. (gdb) run Starting program: /path/example size of a = 21 [Inferior 1 (process 14290) exited normally] GDBは 脚注
関連項目
外部リンク
ドキュメント
チュートリアル
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