日本 のMCバトル、新橋のSL広場にて、2017年
MCバトル (エムシーバトル)は、ヒップホップ 文化が発祥のラップ を用いてMC 同士で行われる対決である。モンスターとは
般若である
概要
諸説あるが、1970年 代後半にアメリカ の東海岸 のヒップホップシーンが起源とされており、DJバトルやダンスバトルと共に行われ広まっていったとされる。アメリカでは1980年 代の、クール・モーディー[ 1] とLLクールJのバトルなどが有名である[ 2] 。
MCバトルは、ビート を小節 ごとに交互で回すのが主流であるが、ただ単にラップでお互いを攻撃し合うこともあり、これもMCバトルと定義される。1980年代初頭のアメリカにおけるヒップホップシーンでのMCは、他のMCのライブステージでバトルラップを用いて戦い、それを通じて名声を得ていた。なお、その場のステージや街角 などで行われるものがMCバトル、MCそれぞれの音源 の歌詞 で繰り広げられる中傷 合戦はビーフ とされている[ 3] 。
各国のMCバトル
日本
日本 では、クラブ イベントの企画の一つに取り入れられたり、MCバトルメインのイベントが行われたりと全国 各地で行われている。会場もクラブや、ライブハウス など、イベントの規模により大小さまざまが会場が使用されている。主なMCバトルには、ULTIMATE MC BATTLE や戦極 MCBATTLE 、King of Kings 、高校生ラップ選手権 などがある[ 4]
お笑い芸人 によるMCバトルのイベントも開催され、戦極MCBATTLEが主催した「戦極MCBATTLE feat 芸人ラップ王座決定戦」ではとろサーモン の久保田和靖やレイザーラモンRG 、中山功太 などが参戦し、MCバトルを行っている[ 5] 。戦極MC BATTLEなどの運営に携わるMC正社員 はMCバトルについて、「音楽であり口喧嘩であり、大喜利 であり、ディスカッションであり、ドラマでもある。」と述べており、格闘技やスポーツのようなフィジカルの能力、勉強で必要なIQ がなくても気軽に参加できる点が魅力であるとしている[ 6] 。2010年 代にはBAZOOKA!!! 高校生RAP選手権 やフリースタイルダンジョン など、MCバトルを取り入れたテレビ番組 も制作された。日本のMCバトルの大会においてはDJ が流すビート に、MC同士が小節ごとに即興 の歌詞を用いてフリースタイル のラップを行い、互いのスキル を競い合う。勝敗は即興性、内容 、ディス 、韻 、フロウ などを総合して判定 される。相手から言われたことに対してアンサーがきちんと返せているかも、バトルにおいて重視される。大体は8小節を2-3ターンずつ交互で行われるが、16小節で行われる場合もある。DJとMCの他にバトルを進める進行 役も存在する。バトル終了後の勝敗の判定は、現場の観客 の歓声の大きさで決まったり、審査員の多数決 で決まったり、どちらも取り入れられたりと、そのイベントにより基準 が異なる。
全国的にMCバトルが広まっていったのはB-BOY PARK がMCバトルを盛り込んだ2000年 前後とされ、1999年から2001年にかけてのB BOY PARKのMCバトルでは、KICK THE CAN CREW のメンバーのKREVA が3年連続優勝を果たしている。2002年 には、日本でもヒットしたアメリカ映画 『8 Mile 』でMCバトルがモチーフ にされたこともあり、知られるきっかけとなる。イベントによってはバトルの模様を収録したDVDも制作され、映像化されている。出場するMCはメジャーレーベル からCDもリリースしてライブ活動も行うプロのラッパーから、音源制作をしていないラッパーまで様々である。参加目的も、自分のラッパーとしての実力を試したいという理由や名声を得るためなど、多種多様である。バトルの大会で名を残したMCやバトルでの活動に特化 しているMCを、バトルMCと呼ぶ。
中国
2017年、中国 でオンラインのMCバトル番組『The Rap of China 』(iQIYI )が放送開始。半年で25億回の再生回数を達成するなどの影響をもたらし、中国全土がヒップホップに沸くなどブームをもたらした[ 7] 。
主なMCバトルのイベント
激闘!ラップ甲子園
SONY 主催。高校生、もしくはそれに準じる年齢から小中学生までが参加する大会。全国数ヶ所でオーディションや大会が行われ、第5回からは賞金100万円。
MC BATTLE THE 罵倒[ 注 2]
G.O主催。主に関東地方で予選が行われ、決勝大会は東京で開催される。ボディタッチありのルールが特徴。
SPOTLIGHT
韻踏合組合 主催。ENTERという予選大会が3ヶ月毎に行われ、予選、決勝大会共に大阪で開催される。
凱旋MCBattle
怨念JAP主催。春夏秋冬で開催される大会。2017年に東京の渋谷で初開催[ 8] 。2021年2月23日にMCバトルとして初めてのアリーナでの開催を果たした。
小倉 MC BATTLE
PEKOKHARED主催。年に数回予選が行われ、予選、決勝大会ともに小倉で開催される。通称KMB。
SCHOOL OF RAP
ダースレイダー主催。主に東京と大阪で年に数回予選が行われ、決勝大会は東京で開催される。22歳以下のMCのみ出場可能。
U-22 MCBATTLE
MC正社員主催。出場者を22歳以下に限定した大会。
口喧嘩祭
HIKIGANESOUND主催。バトルはトーナメント方式ではなくMCたちのネームタグを事前にBOXに投入し、一枚ずつネームタグを引き、その場で先行、後攻を含めた対戦カードが発表される形式で行われる。
真ADRENALINE(旧ADRENALINE)
Sound Luck(ACE&HIDE)主催。東京で開催される大会。
当初は「ADRENALINE」という名称で開催されており、平成選抜、昭和選抜のチームに別れトーナメントが行われていたが、2019年度をもって大会終了。翌年より、「真・ADRENALINE」と改題して開催をした。
生バンド(Da-Dee-MIX)によるビートが特徴。ほかの大会に比べCHEHON などのレゲエDeejay、Rude-α [ 注 3] のようなバトルではなく楽曲を中心に活動しているラッパーなどの出場が多い。
フリースタイルダンジョン
サイバーエージェントの藤田晋とラッパーのZeebraと放送作家の鈴木おさむやフリーのテレビディレクター岡田純一とともに番組の草案を作り上げてテレビ朝日にて放送される。従来のバトルとは異なりトーナメント制では無くチャレンジャーがモンスター勝つ毎に賞金が出るラウンド制となっている。2022年に限定で「フリースタイルモンスター」としてAbemaTVで復活した。
MRJ
MC派遣社員と日本語ラップCOMのMeo主催。MRJはミスター日本語ラップの略で、毎年東京都内を中心に開催されているMCバトルイベント。
ADDVANCE
ズキ子主催。毎回ライブが豪華な特徴があるMCバトルイベント。
BATTLE SUMMIT
2022年より6つの団体(KING OF KINGS・SPOTLIGHT・戦極MCBATTLE・凱旋MC Battle・真ADRENALINE・レゲエDeeJayクラッシュイベントCOMBAT)共同開催のMCイベント、各イベントが選抜したMCによるトーナメント戦が行われ賞金1,000万。
2024年には、8つの団体(KING OF KINGS・SPOTLIGHT・戦極MCBATTLE・凱旋MCBATTLE・真ADRENALINE・Redbull Rokumaru・口喧嘩祭・破天MCBATTLE)の共同開催により、第2回となるBATTLE SUMMIT IIが行われた。賞金は2,000万円、D.O やJ-REXXX 、Benjazzy などをはじめとする豪華なMCが出場し、般若 が優勝を飾った。
フリースタイルリーグFSL
2022年よりフリースタイルのプロリーグ化をコンセプトに掲げたプロジェクト。旧来のバトルイベントにはなかったマッチメイク型の試合形式を採用し、バトラーやフリースタイルシーン全体を新しいエンターテイメントとして昇華することを目指している。
Red Bull 韻 DA HOUSE
レッドブル 主催。スペイン語 圏で開催されている「Red Bull Batalla」の日本版で、日本のMCバトルでは珍しい時間制のバトルである。2021年に第1回大会を開催[ 9] [ 10] 。
主なMCバトル出場者
世界
主なMCバトルビート
MCバトルを取り扱った作品
脚注
注釈
^ 2017年度をもって大会終了。
^ 2018年度をもって一旦大会の開催が終了されたが2023年に再開。
^ Rude-αは2021年1月30日の真ADRENALINE Abemaの陣で5年ぶりにバトルに復帰した
^ 公共広告・ACジャパンのCMに出演したことで、有名になった
^ 1度目、5度目の優勝は団体戦
出典
^ [ttps://www.allmusic.com/artist/kool-moe-dee-mn0000113300 Kool Moe Dee] 2023年8月5日閲覧
^ The song Kool Moe Dee used to beef hiphophero.com 2023年7月8日閲覧
^ “ヒップホップ名物“ビーフ”の意味と解説から知る、日本語ラップ事情” . KAI-YOU Premium . (2022年5月27日). https://premium.kai-you.net/article/526 2022年6月16日 閲覧。 ( 要購読契約)
^ 有名MCバトル 2023年7月19日閲覧
^ “芸人ラップ王座決定戦にとろサーモン久保田、RG、中山功太ら参戦” . お笑いナタリー . (2015年8月6日). https://natalie.mu/owarai/news/156170/ 2022年9月14日 閲覧。
^ 高木“JET”晋一郎 (2022年8月24日). “一夜にして賞金1000万円も!? マイク1本で闘う統一王者が誕生する「MCバトル」の現在地” . 集英社 オンライン. https://shueisha.online/articles/-/44850 2022年9月14日 閲覧。
^ 小山ひとみ (2021年12月27日). “一大ブームに沸いた中国ヒップホップはいま。若手ラッパーや関係者たちの声を聞く” . CINRA . https://www.cinra.net/article/202112-chinesehipohop_gtmnmcl/ 2022年1月11日 閲覧。
^ “T-Pablow、5年ぶりのバトルシーン復帰、史上最大規模の「凱旋MCBATTLE in さいたまスーパーアリーナ」生中継決定” . ザテレビジョン . (2022年5月13日). https://thetv.jp/news/detail/1083828/ 2022年5月16日 閲覧。
^ “レッドブル主催のMCバトル大会「Red Bull 韻 DA HOUSE」開催、アプリで出場者を募集” . 音楽ナタリー . (2021年5月18日). https://natalie.mu/music/news/428711/ 2022年9月14日 閲覧。
^ “レッドブル主催フリースタイル・ラップバトル決勝<Red Bull 韻 DA HOUSE>に日本全国のラップバトルの垣根を超えて人気者16名が集結” . BARKS . (2021年8月17日). https://www.barks.jp/news/?id=1000206459/ 2021年9月16日 閲覧。
^ “「フリースタイルダンジョン」晋平太vs.ラスボス般若、涙の結末「晋平太、笑おうぜ」そして爆弾発言 ”. エキサイトニュース . 2022年11月15日 閲覧。
^ “映画『TKO HIP HOP』 ”. MOVIE WALKER PRESS . 作品情報 . 2021年2月20日 閲覧。
^ 古澤誠一郎 (2019年5月12日). “急増中のMCバトル漫画。『デトロイト・メタル・シティ』作者の最新刊でもパンチラインが炸裂!” . ダ・ヴィンチニュース . https://ddnavi.com/review/457138/a/ 2021年2月20日 閲覧。
^ ANARCHY; 野村周平(インタビュアー:中島晴矢)「WALKING MAN インタビュー ANARCHY×野村周平が語る、ヒップホップを武器にした極貧青年の成長と青春 」『映画.com 』、2019年10月10日。https://eiga.com/movie/90267/interview/ 。2021年2月20日 閲覧 。
^ “邪悪なラップが「キラメイジャー」を襲う、拙者が闇ラッパー晋平太” . 音楽ナタリー . (2020年12月14日). https://natalie.mu/music/news/408714/ 2022年9月14日 閲覧。
関連項目
文化 歴史 サブジャンル
1970年代 1980年代 1990年代 2000年代 2010年代
融合ジャンル
影響を与えたジャンル 楽器、技術 一覧 地域別