クロヒラアジ
分類
学名
Carangoides ferdau (Forsskål, 1775 )
シノニム
Scomber ferdau Forsskål, 1775
Caranx ferdau (Forsskål, 1775)
Carangoides hemigymnostethus Bleeker, 1851
Caranx hemigymnostethus (Bleeker, 1851)
Caranx laticaudis Alleyne & Macleay, 1877
Carangoides laticaudis (Alleyne & Macleay, 1877)
Caranx gilberti Jordan & Seale, 1906
Carangoides gilberti (Jordan & Seale, 1906)
Ferdauia lindemanensis Whitley, 1951
和名
クロヒラアジ
英名
Blue trevally
おおよその生息域
クロヒラアジ (学名:Carangoides ferdau )はアジ科 に属し、広い分布域をもつ外洋性の海水魚 である。インド洋 と太平洋 の熱帯 、亜熱帯 海域に分布し、生息域は西は南アフリカ 、東はハワイ まで広がっている。比較的大型の種で、最大で全長70cmに達した記録がある。第二背鰭 の鰭条数や体色により他種と区別できる。水深60mほどに生息し、通常岩礁 やサンゴ礁 、浜辺 、ラグーン などでみつかる。肉食魚で、他の魚やエビ 、カニ 、軟体動物 などを捕食する。漁業における重要性は地域によって異なり、漁獲量が多い地域もある。釣りの対象となり、食用としても美味である。
分類と命名
スズキ目 アジ科 のヨロイアジ属 (Carangoides )に属する[ 1] 。
本種はスウェーデン の博物学者 ペール・フォルスコール (英語版 ) によって、紅海 から得られた標本をもとに1775年に初記載された[ 2] 。彼は本種をScomber ferdau と命名しサバ属 (Scomber )に分類した。これはその当時アジ科が存在しなかったためで、アジ科創設後本種ははじめギンガメアジ属 (Caranx )に、次いでヨロイアジ属に移され、そのまま現在に至る。Gilbert Percy Whitley は本種をヨロイアジ属からFerdauia 属という独立の属 に分離しようと試みたが、この分類が受け入れられることは無かった[ 3] 。本種は初記載の後も何度も再び記載、命名されている。この混乱に加え、同属種で生息域の重なるナンヨウカイワリ (C. orthogrammus )との混同も起こっていたため、本種のシノニム をめぐる歴史は複雑である。種小名 のferdau は"Ferdau"という人名に由来している。これは恐らくホロタイプ の採集者への献名 だと考えられる[ 4] 。
形態
暗い体色の個体
比較的大型の種で、最大で全長70cm、体重8kgに達した記録がある[ 3] 。ヨロイアジ属の他種と同様に、側偏した楕円形で、背側が腹側よりもふくらんだ体型をもつ。しかしながら本種はほとんどの同属他種とは異なり頭部が丸みを帯びており、この点ではコバンアジ属 (Trachinotus )の魚と類似している。成魚の唇はかなり厚くなっている[ 5] 。分離した二つの背鰭 があり、第一背鰭は8本の棘条を、第二背鰭は1本の棘条と26本から34本の軟条をもつ。第二背鰭の軟条数は同属種の中で最も多い。亜成体では第二背鰭の伸長部はしばしば鎌状になるが、その長さはふつう頭部の長さよりは短い。臀鰭 は2本の棘条が前方に分離して存在するほか、後方に1本の棘条とそれに続く21本から26本の軟条が存在する。腹鰭 には1本の棘条と、それに続き20本か21本の軟条がある[ 6] 。側線 は前方でやや湾曲し、直線部と曲線部の交点は第二背鰭の15番目から20番目の軟条の下方にある。側線の曲線部には82から90の鱗が、直線部には12から17の鱗と26から31の稜鱗 (アジ亜科 に特有の鱗)が存在する[ 6] 。胸部腹側から胸鰭の基部にかけては鱗がないが、その領域の中にも横方向に鱗の帯が存在している。両顎は前方にかなり突き出すことができる。両顎には絨毛状歯からなる幅の狭い歯列が存在するが、加齢とともに退化していく[ 5] 。鰓篩数は24から29、椎骨 数は24である[ 7] 。
体色は背部では青緑色から黄緑色で、腹部にかけて銀色になる[ 7] 。成魚には5本から8本の暗い垂直な横帯が入り、中央のものは「く」の字型に折れ曲がる[ 8] 。この帯はふつう死後も残る[ 7] 。多数の、それほど目立たない金色の斑点が側面に存在し、そのほとんどは胸鰭より上部に存在する。背鰭軟条部と臀鰭は白味を帯びた黄緑色で、前方にある伸長部はしばしば端が白色から青色になる。尾鰭 は黄緑色で後端と頂端は暗い色になる。腹鰭は透明か少し白味がかる[ 9] 。
分布
ミクロネシア のサンゴ礁 にて
広い生息域をもち、インド洋 、西太平洋 、中央太平洋の熱帯 ・亜熱帯 域に生息する[ 9] 。生息域は西は南アフリカ から、アフリカ 東海岸に沿って北へ紅海、インド 、東南アジア へと広がる。南はオーストラリア やインドネシア にも生息し、日本、韓国 、台湾 、ハワイ 、そしてミクロネシア やニューカレドニア 、トンガ を含む多くの太平洋の島々にも生息する[ 3] [ 10] [ 11] 。
日本においては南日本 の太平洋岸、琉球列島 でみられる[ 8] ほか、長崎県 野母崎町 からも記録がある[ 12] 。
沿岸域の水深60mほどの岩礁 、サンゴ礁 、浜辺 [ 13] 、ラグーン 、砂底の海域などでみられる。本種は外洋性であり、島や環礁 の間を移動できる[ 9] 。エスチュアリー ではあまりみられないため、低い塩濃度に対する耐性は低いとみられる[ 4] 。
生態
クラゲ の一種Thysanostoma loriferum のそばにいる幼魚
インド太平洋 に住む他のアジ科魚類と同様、本種の生態についてはあまり知られていない。本種は遊泳力が高く、小さな群れを作る肉食魚で、様々な種類の小魚(特にサバ やカワハギ )[ 14] 、エビ やカニ などの甲殻類 、軟体動物 などを捕食する[ 4] 。ハワイにおいては餌を探すヒメジ やソトイワシ を追いかけ、その魚の見つけた餌の残りを捕食する行動が観察された[ 15] 。本種の個体数は一年を通じて多いが、成熟した個体の記録は稀である。台湾沖では2月に仔魚が現れることが知られており、このことから繁殖期が12月頃であることが示唆されている[ 10] 。一方インドにおける研究では両性ともに尾叉長48.6cmで性成熟 に達し、産卵は7月から11月までの間に始まると推定された[ 16] 。幼魚は時として大型の浮遊性クラゲ の触手 を隠れ家とすることが知られている[ 15] 。
人間との関係
いくつかの地域ではその個体数の多さのため商業的価値をもつが、他の主要漁業における混獲 によって漁獲されることの方が多い。大抵は他のアジ科魚類とまとめて扱われ、本種単独での漁獲量の統計はない。主に延縄 や刺し網 などによって漁獲される[ 5] 。南アフリカでは釣り の対象魚として人気があり、釣り人によって様々な種類の小さな餌を用いて釣り上げられる。明け方や夕方が本種を釣るのに最も適しているとされる[ 4] 。食用としても美味であるが、ごく稀にシガテラ毒 が見いだされることがある[ 3] 。
出典
^ "Carangoides ferdau " (英語). Integrated Taxonomic Information System . 2008年3月29日閲覧 。
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