をいう。区間 I の点付き分割(tagged partition)P(x, t) とは、各 i に対して xi ≤ ti ≤ xi+1 なる条件を満たす有限数列 t0, …, tn−1 を備えた分割をいう。つまり、点つき分割は分割の各小区間に識別のための点をとったものである。点付き分割の大きさは、(識別点をとらない)通常の分割におけるものと同一とする。
を満たすことと定める。これらはいずれも最終的には、分割を細かくしていけば f のリーマン和がいくらでも s に近づくことを意味する。これはリーマン和をどれほどでも望むだけ近づけても成り立つから、すなわちリーマン和が s に収束することを言うものに他ならない。これらの定義は実際にはもっと一般の有向点族の概念の特別の場合になっている。
元の定義との同値性の証明の概要
先に述べたように、これらの二つの定義は同値である。つまり、前者の定義における s が存在するための必要十分条件は後者の定義における s が存在することである。前者から後者が出ることは、ε に対して条件を満足する δ を取り、大きさが δ より小さい点付き分割を選べば、s との差が ε より小さいリーマン和とその分割の任意の細分に対して、細分の大きさはやはり δ より小さいから、細分のリーマン和もやはり s との差が ε 内に収まることからわかる。後者から前者が出ることはダルブー積分を用いれば容易にわかる。まず後者の定義からダルブー積分の定義が出ることはダルブー積分(英語版)の項を見よ。いま、ダルブー積分函数が前者の定義を満たすことを示す。ε を止めて、分割 y0, …, ym を、対応する上ダルブー和および下ダルブー和がダルブー積分の値 s との差が ε/2 に収まるように選ぶ。I 上の |f(x)| の上限を r とするとき、r = 0 ならば f は恒等的に 0 になる零写像で明らかにリーマン積分もダルブー積分も 0 になるから、以下 r > 0 の場合を考える。m > 1 ならば δ を ε/2r(m − 1) と min{yi+1 − yi} の両方よりも小さくとり、m = 1 ならば δ を 1 より小さくとる。点付き分割 (x0, …, xn; t0, …, tn−1) を選んでそのリーマン和と s との差が ε より小さいことを示さなければならない。
これを見るのに、小区間 [xi, xi+1] を選ぶ。この小区間が適当な小区間 [yj, yj+1] に含まれるならば ƒ(ti) の値は [yj, yj+1] における f の下限mj と上限Mj の間にある。全ての小区間がこの性質を持つならば、リーマン和の各項はダルブー和の対応する項で抑えられ、ダルブー和の値を s に近づけることができるから、これで証明は完結する。これは m = 1 の場合であり、証明は終わっているから、以下 m > 1 と仮定する。この場合、ある [xi, xi+1] がどの [yj, yj+1] にも含まれないかもしれない。それどころか、分割 y0, …, ym の二つの小区間に亘って交わりを持つ可能性もある(δ がどの小区間の長さよりも小さいと仮定したから、三つ以上の小区間に亘ることはない)。つまり、記号で書けば、
ここで、各 ti に対してさらに二つ、ti − δ/2 および ti + δ/2 を識別点に加える(片方が区間 [0, 1] を外れるならばその点は考えない)と、ti は小区間 [ti − δ/2, ti + δ/2] に対応する識別点になる。ti が直接 xj のどれかの上にあるならば、ti は二つの小区間 [ti − δ/2, xj] と [xj, ti + δ/2] の双方に対応する識別点とする。さらに、これら以外の小区間の識別点を選ばなければならないが、その選び方はいま二種類を挙げることができる。一つは全ての識別点を有理数にとる方法で、これによってリーマン和は可能な限り大きくとれて、1 − εよりも大にすることができる。もう一つは、識別点を全て無理数にとる方法で、これによりリーマンはは可能な限り小さくできて、ε で抑えられる。
任意の分割から始めて、最終的にリーマン和を 0 にも 1 にも望むだけ近くすることができたから、リーマン和が特定の数 s に収束するという主張は偽となり、この函数 f はリーマン可積分でないことが示された。実はこの函数はルベーグ可積分であり、函数が殆ど至る所0 であるから、ルベーグの意味での積分値は 0 であるけれども、しかしこのことはリーマン積分に影響を及ぼすものではない。
さらに困った例が存在する。Iℚ は(殆ど至る所等しいという意味で)同値なリーマン可積分函数が存在したけれども、どのリーマン可積分函数とも同値でないようなリーマン積分不能な有界函数というものが存在する。例えば、C をスミス–ヴォルテラ–カントール集合とし、その指示函数を IC とする。C はジョルダン可測ではないから IC はリーマン可積分ではない。さらに IC に同値なリーマン可積分函数 g は存在しない。実際、g は IC と同様に稠密集合上 0 でなければならないから、前の例と同様に g の任意のリーマン和は任意の正数 ε に対して 0 との差が ε 以内に収まるような細分を持つ。しかし、g のリーマン積分が存在するならば、それは IC のルベーグ積分である 1/2 に等しくないといけないから、g はリーマン可積分でない。
よくある制限は「左側」リーマン和と「右側」リーマン和である。左側リーマン和は各 i に対して ti = xi ととるもので、右側リーマン和は同じく ti = xi+1 ととるものをいう。これらの制限はだけでは問題となるわけではなく、任意の分割を各 ti で再分割することにより左側リーマン和または右側リーマン和を得ることができる。より厳密な言い方をすれば、左側リーマン和全体の成す集合と右側リーマン和全体の成す集合とは、点付き分割全体の成す集合において共終である。
ルベーグの条件が十分であることの証明は直接的だが多少長くなる[10]。f が殆ど至る所連続ならば、有界閉区間 I の任意の分割に対して、まずその分割を二つの区間族 C, D に分け、D が全ての不連続点を含み、C には不連続点が含まれないようにする。直観的には、D は「幅」を任意に小さく、他方 C は「高さ」を任意に小さくすることができる。これをきちんと書けば、任意の正の数 ε に対し D の適当な再分割で、長さの総計が高々 ε であるような区間族が全ての不連続点を含むようなものが取れる。従って、D 上の上ダルブー和と下ダルブー和の差は ε(M − m) で抑えられる(但し、m および M はそれぞれ f の下限および上限)。ここで、函数の有界性、およびコンパクト集合上でジョルダン測度が 0 であることとルベーグ測度が 0 であることが同値になる(従って有限分割が使える)ことを用いた。残りの C の上では函数は有界閉区間上の連続函数で、従って一様連続になるから、分割 C の再分割で、その各区間上で f が高々 ε しか変化しないようなものが取れる。従って上ダルブー和と下ダルブー和の差は高々 ε|I| である(ここでコンパクト性を用いた)。以上から、差の合計 ε((M − m) + |I|) ≕ Kε は ε の定数倍で、これはいくらでも小さくすることができるから、この函数がリーマン可積分であることがわかる。
^リーマン積分は、1854年にリーマンの教授資格論文としてゲッティンゲン大学に提出された論文 "Über die Darstellbarkeit einer Function durch eine trigonometrische Reihe" (三角級数による関数の表現可能性に関して)において導入された。[1]リーマンの積分の定義は、4節 "Über der Begriff eines bestimmten Integrals und den Umfang seiner Gültigkeit" (On the concept of a definite integral and the extent of its validity)[2] を参照。
^Brown, A. B. (1936-09). “A Proof of the Lebesgue Condition for Riemann Integrability”. The American Mathematical Monthly43 (7): 396–398. ISSN0002-9890. JSTOR2301737.
^Basic real analysis, by Houshang H. Sohrab, section 7.3, Sets of Measure Zero and Lebesgue’s Integrability Condition, pp. 264–271
^Introduction to Real Analysis(PDF) , updated April 2010, William F. Trench, 3.5 "A More Advanced Look at the Existence of the Proper Riemann Integral", pp. 171–177
^Lebesgue’s Condition, John Armstrong, December 15, 2009, The Unapologetic Mathematician
Shilov, G. E., and Gurevich, B. L., 1978. Integral, Measure, and Derivative: A Unified Approach, Richard A. Silverman, trans. Dover Publications. ISBN 0-486-63519-8.
Apostol, Tom (1974), Mathematical Analysis, Addison-Wesley