レイダーガンダム
レイダーガンダム (RAIDER GUNDAM) は、コズミック・イラ (C.E.) 年代を舞台とする「ガンダムSEEDシリーズ」第1作として2002年 - 2003年に放送されたテレビアニメ『機動戦士ガンダムSEED』に登場する架空の兵器。「ガンダムシリーズ」で主流となっている人型ロボット兵器「モビルスーツ 」(MS) で、作中勢力のひとつである地球連合軍がストライクガンダムなどに次いで開発した3機の試作機の1機。イージスガンダムとは別系統の可変MSであり、戦闘機のようなモビルアーマー (MA) 形態ですばやく移動しつつ、機体各部の火器や手持ちのワイヤー付き鉄球で攻撃する。ブーステッドマンと呼ばれる強化人間による操縦を前提としており、そのひとりであるクロト・ブエルの搭乗機として劇中後半より登場する。 名称の「レイダー」は英語で「侵略者」「強襲者」などを意味する[1]。作品の公式ウェブサイトやメディア、関連商品では「レイダーガンダム」と公称されるが、作品内の設定ではほかの同型機とともに固有名の「レイダー」が正式名称となる。 当記事では、そのほかのアニメや漫画・小説などの外伝作品に登場する各バリエーション機の解説も行う。 デザイン・設定メカニックデザインを担当した大河原邦男によると、頭部に装備されたツォーン(ビーム砲)は監督の福田己津央によるアイデアであり、敵の機体ゆえに凶悪さをアピールするために付けられたものであるという[2]。 設定解説
アズラエル財団傘下の国防連合企業体が、初期(第1期)GAT-Xシリーズのデータをもとに開発した後期(第2期)GAT-Xシリーズの1機。これら後期シリーズに採用された内部フレームは、初期シリーズの5機に採用されたX100、X200、X300系のいずれかの系列に属しつつも、より改良を加えた新造フレームとなっている。 さらに、通常装甲の下に配置されたフェイズシフト装甲(PS装甲)を被弾時のみに起動する「トランスフェイズ装甲(TP装甲)」を採用したことで、エネルギー消費の軽減とより高出力の火器の実装が可能となり、外見上のPSダウン状態を敵に悟られなくする利点を生み出している[7]。ストライクダガーと共通規格で全天周に近いモニター構造のコックピットや[8]ナチュラル用操縦OSも採用されているが[9]、高性能なぶん操縦の負担が増大しているため[7]、「生体CPU」と呼ばれる強化兵士「ブーステッドマン」の搭乗を前提としている[10][注 1]。 本機は初期GAT-X機のイージスと同じX300系フレームを採用した可変MSであるが[12]、変形機構はより簡素化されている[5]。また、イージスが宇宙での対艦戦闘を想定したMA形態なのに対し[12]、本機は大気圏内飛行も考慮した可変翼と大推力スラスターを備え、MA形態もそれらと両腰のクローアームを展開した鳥類型となっている[3]。MA形態は、「レイダー(襲撃者)」[12]の名通りの一撃離脱やクローで敵を捕獲してのゼロ距離攻撃を得意とし、大気圏内では同じ後期GAT-X機のカラミティを背に乗せる運搬機として機能する。MS形態は近・中距離戦に優れ、固定・携行武装を用いた圧倒的な破壊力を発揮する[4]。なおその運用戦術から、搭載火器は基本的に短射程式となっている[4]。 当初は制式型のGAT-333として開発されていたが、地球連合軍のオーブ解放(侵略)作戦に合わせた一部スペックの簡略化と改装が施され、制式仕様の先行型として完成した[13]。 武装
劇中での活躍地球連合軍所属のブーステッドマンのひとりであるクロト・ブエルが搭乗し、系列機のカラミティやフォビドゥンやとともにオーブ解放作戦で初投入され、フォビドゥンと連携してキラ・ヤマトのフリーダムを追い詰めるが、救援に現れたアスラン・ザラのジャスティスの介入を受け撤退する。今度はカラミティを含めた3機がかりで再戦を挑むが、能力増進薬「γ-グリフェプタン」の効果消失による禁断症状でパイロットたちが戦闘継続困難となり、再度撤退する。 オーブ陥落直前に宇宙へとから脱出したアークエンジェルとクサナギを追撃するべく、月面の連合軍基地に配備されたアークエンジェル級2番艦「ドミニオン」の艦載機となり、L4コロニー群宙域戦でフリーダムの頭部をミョルニルで破壊する活躍を見せる[16]。 戦争終盤の第二次ヤキン・ドゥーエ攻防戦で、プロヴィデンスのドラグーン攻撃を受けて行動不能となったバスターに襲いかかるが、援護に現れたデュエルがバスターから借用した超高インパルスライフルのビームに貫かれ撃墜される。『スペシャルエディション完結編 鳴動の宇宙』では、プロヴィデンスと交戦前のバスターに直接撃墜される。 レイダー制式仕様雑誌『月刊ホビージャパン』の模型連動企画『機動戦士ガンダムSEED MSV』で登場。デザインは大河原邦男が担当した。量産型という設定のアイデアは「ASTRAYシリーズ] の展開も考慮した千葉智宏のアイデアで、複葉機をモチーフにしたアイデアは設定担当の森田繁によるものである。また、当初はムウ・ラ・フラガ専用機としてガンバレルを装着したアイデアも存在したとされている[17]。
武装・装備(制式仕様)
劇中での活躍(制式仕様)八・八作戦では、ザフトのカーペンタリア基地への攻撃に使用される。 「ASTRAYシリーズ」では、戦闘用コーディネイターであるソキウスシリーズや別の機体であるソードカラミティ3号機、フォビドゥンブルーとともにロンド・ギナ・サハクへと譲渡された機体が登場する。アメノミハシラに配備され、ジェネシスαを襲撃したジンハイマニューバ2型を撃墜するなどする。 南米独立戦争では、連合軍脱走兵のエドワード・ハレルソンが久しぶりに搭乗し、大気圏再突入用降下カプセルを装備して地球に降下しようとしたところ、モーガン・シュバリエのガンバレルダガーにカプセルを破壊されるなど窮地に陥るが、機体は中破しつつも生存したままでの突入に成功する。 C.E.73年を舞台とする『機動戦士ガンダムSEED DESTINY』の「スペシャルエディションIII」では、ヘブンズベース攻防戦で基地防衛に当たっていた本機が、3機のウィンダムとまとめてザフトのレジェンドに撃破される。この場面は、のちのHDリマスター版の映像にも追加されている。 ゲルプレイダーガンダム雑誌『月刊ホビージャパン』に掲載された模型連動のフォトストーリー『機動戦士ガンダムSEED DESTINY ASTRAY R』に登場。同誌のモデラーであるセイラマスオが製作した作例に設定を付加したもので[23]、後に書籍掲載の際に町田能彦による設定画が新たに掲載された[24]。
武装(ゲルプ)
ブーストレイダーガンダムC.E.72年を舞台とする『月刊ガンダムエース』連載の漫画『機動戦士ガンダムSEED ECLIPSE』に登場。デザインは阿久津潤一が担当した[27][28]。
ハーフコーディネイターによるテロ組織「アンティファクティス」のリーダーにして、大西洋連邦のブルーコスモス構成員であるジョエル・ジャンメール・ジローが、エールカラミティに次いで搭乗する機体。カラミティとフォビドゥンを含む第2期GAT-Xシリーズ3機の特性を集約することを目的としており、プラントに忌避感をもつ大西洋連邦のブルーコスモス系軍需企業の主導によって開発された。開発期間短縮のために既存技術を転用した結果、外見はいびつなキメラのような姿に変貌しており、本機と交戦したエクリプス2号機パイロットのケン・ノーランド・スセからは「機体の中でコンセプトが衝突(コンフリクト)しているような危うさを感じる」などと違和感を抱かれる[29]。また、操縦性もナチュラルでは対応できないほど悪化しており、「対コーディネイター用」でありながら「コーディネイターでなければ操れない」という皮肉な特性がブルーコスモスの思想にそぐわないという理由で開発は中断された。以上の経緯から本機は欠陥兵器の烙印を押されるが、性能面での評価は高く、表出した「標準サイズのMSでは全機能の搭載は困難」「専用パイロットの育成が必要」という欠点は、のちのデストロイの開発に生かされることになる[27]。 新規武装は、バックパックのアームでそれぞれ接続されたカラミティ用の連装ビーム砲「シュラーク」とフォビドゥン用のレールガン「エクツァーン」、額に増設された大型エネルギー砲「ミーミル」、両腕のシールド先端に接続された格闘用クロー「ザラストロ」、フォビドゥンのゲシュマイディッヒ・パンツァーと同質のビーム偏向防御能力をもつ両腰アーム先端の「ゲシュマイディッヒ・リージョン」、両脚のスラスターユニットに装備された52mm超高初速砲。エクツァーンにはフォビドゥンと同じ磁場誘導による自機ビームの屈曲射撃能力が継承されているほか、従来の口部ツォーンには増幅器を兼ねた砲身の伸長機能が追加されている。またエクリプス2号機との戦いでは、先に撃墜したエールカラミティの空戦用複合兵装「アドラー」を奪って使用する[27]。 脚注注釈出典
関連項目 |