「ファイ 」はこの項目へ転送 されています。
この項目では、ギリシャ文字のΦについて説明しています。
キリル文字については「Ф 」をご覧ください。
アルメニア文字については「Փ 」をご覧ください。
グルジア文字については「Ⴔ 」をご覧ください。
Φ , φ (ファイ、フィー、古代ギリシア語 : φεῖ ペー 、ギリシア語 : φι フィ 、英語 : phi [faɪ] ファイ )は、ギリシア文字 の第21番目の文字。ギリシア数字 の数価は500。
キリル文字 のФ はこの文字に由来する。
音声
古代ギリシア語 では無声両唇破裂音 の帯気音 /pʰ/ 、現代ギリシア語 では無声唇歯摩擦音 /f/ を表す。摩擦音への変化がいつごろ起きたかは正確にはわからないが、ビザンチン時代には摩擦音になっていたようである[ 1] 。
起源
古代ギリシア語には3つの帯気音 /pʰ tʰ kʰ/ があった。このうち/tʰ/ にはフェニキア文字 を転用することができたが(θ )、それ以外は適当なフェニキア文字が存在しなかった。クレタ島 およびその周辺のテーラー 、メーロス では文字を追加せず、/pʰ/ の音は単に「Π 」と書くか、または「ΠΗ 」の2文字で表記したが[ 2] 、それ以外の地域では新たに「Φ 」の字を追加した。
この文字の起源については議論が分かれる。古代の文字名称はペー(φεῖ )で、この名は明らかに「π 」からの類推によってつけられた[ 3] 。紀元前4世紀の末に ει は /iː/ と発音されるようになり、その影響で文字名称も φῖ とされることが普通になった。近代西洋諸言語の名はそれにもとづく[ 3] 。
記号としての使用
大文字の「Φ」は、
電磁気学 で、磁束 を表す。
言語学 (生成文法 )の用語に、Φ素性 というものがある。
数学 において Φn の形で x n − 1 における既約円分多項式 を表す。
直径記号 ⌀ は、空集合 の記号 ∅ やギリシャ文字大文字イタリックの Φ あるいは北欧系母音の Ø (スラッシュ付きオー)とは異なる。
小文字の「φ」(
φ φ -->
{\displaystyle \varphi \,\!}
)は、
幾何学 で、θ に次いで角度を表す(球面座標系 など)。
数学 で正整数 n に対し1から n までの整数 のうち互いに素 なものの個数を与える関数: オイラー関数 φ(n ) として使用される(なお,数学の集合 においては,空集合 の意味を表す)。
また、黄金比 の記号としても用いられ、
φ φ -->
=
1
+
5
2
{\displaystyle \varphi ={\frac {1+{\sqrt {5}}}{2}}}
である。
素粒子物理学 では、ストレンジクォーク とその反クォークからなるファイ中間子
ϕ ϕ -->
(
s
s
¯ ¯ -->
)
{\displaystyle \phi (s{\bar {s}})}
を表す。
量子力学 ではψ とともに波動関数 を表す。
場の理論(場の古典論 、場の量子論 )では、場を表す変数・演算子として使われる。
電気工学 で単相交流 を「1
ϕ ϕ -->
{\displaystyle \phi \,\!}
」、三相交流 を「3
ϕ ϕ -->
{\displaystyle \phi \,\!}
」と記述することがある。
地質学 において粒径区分に使用される。詳細は砕屑物 を参照。
またφ,Φを区別するため、前者をやわらかいファイやバルファイ、後者をかたいファイやファイと呼ぶことがある。
また,一般的には「空(から)」をイメージする語として使用されることもあり,そのような意味の代替語として使われる場合もある。
類似の文字・記号
符号位置
Unicode では小文字の「φ 」に U+03C6 (GREEK SMALL LETTER PHI)と U+03D5 (GREEK PHI SYMBOL) の2つの符号位置が割り当てられている。Unicodeバージョン3.0以降は、前者が一筆書きの
φ φ -->
{\displaystyle \varphi \,\!}
、後者が丸に斜線を引いた
ϕ ϕ -->
{\displaystyle \phi \,\!}
の字形に対応するが、それ以前は割り当てが逆だった。この変更は現代ギリシア語において一筆書きの
φ φ -->
{\displaystyle \varphi \,\!}
が通常用いられる字形であることによる。フォント によっては古いバージョンのUnicodeに従い逆の字形になっていることがある[ 4] 。
JIS X 0213 では小文字のファイは1-6-53にあり、例示字形は丸に斜線
ϕ ϕ -->
{\displaystyle \phi \,\!}
の形になっているが、U+03C6の方に対応することになっている。
大文字
Unicode
JIS X 0213
文字参照
小文字
Unicode
JIS X 0213
文字参照
備考
Φ
U+03A6
1-6-21
Φ
Φ
Φ
φ
U+03C6
1-6-53
φ
φ
φ
Te X では\phi で丸に斜線の
ϕ ϕ -->
{\displaystyle \phi \,\!}
を、\varphi で一筆書きの
φ φ -->
{\displaystyle \varphi \,\!}
を表す。
脚注
^ Allen (1987) pp.18-26
^ Threatte (1996) p.272
^ a b Allen (1987) p.170
^ “Representative Glyphs for Greek Phi” (PDF ). UTR #25: Unicode support for mathematics . https://unicode.org/reports/tr25/#_Toc231
参考文献
W. Sidney Allen (1987) [1968]. Vox Graeca (3rd ed.). Cambridge University Press. ISBN 0521335558
Leslie Threatte (1996). “The Greek Alphabet”. In Peter T. Daniels; William Bright. The World's Writing Systems . Oxford University Press. pp. 271-280. ISBN 0195079930