イヌビワ (犬枇杷、学名 : Ficus erecta または Ficus erecta var. erecta )は、クワ科 イチジク属 の落葉低木 から小高木 。山野や海沿いに生える。別名ヤマビワ 、イタビ 、姫枇杷。
名称
果実 (正確にはイチジク状果 という偽果 の1種)がビワ の実に似ていて食べられるが、ビワに比べ不味であることから「イヌビワ」の名がある。「イヌ」は劣るという意味である。「ビワ」とついていてもビワ(バラ科 )の仲間ではなくイチジク の仲間で、ビワとは近縁関係にはない。イチジク渡来前の時代の日本では、本種は「イチジク」とよばれていた。
分布
日本 の本州 (関東 以西)・四国 ・九州 ・沖縄 と、韓国 の済州島 に分布する。海岸や沿海の山地 に自生する。特に関東地方から沖縄までの海岸沿いの照葉樹林の林縁に多く見られる。
なお、イチジク属のものには熱帯 性のものが多く、本種は落葉性 を獲得したため、暖温帯 まで進出できたものと考えられる。本種はイチジク属の木本 としては本土 で最も普通に見られるため、南西諸島 などに分布する同属のものには「○○イヌビワ」という本種に比した名を持つものが多い。
形態・生態
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(2014年8月 )
落葉広葉樹 の低木 から小高木 で[ 5] 、高さは5メートル (m) くらいまでになる。樹皮 は灰白色でなめらか、一年枝はやや太く、緑色を帯びて無毛である[ 5] 。枝を1周するように、はっきりした托葉 痕がある[ 5] 。樹皮に傷つけるとイチジク と同様に乳白色の樹液 が出る。
葉 は狭い倒卵形 から長楕円形 、基部は少し心形か丸まる。葉質は薄くて草質、表面は滑らかかあるいは短い毛 が立っていてざらつく。変異 が多く、海岸 沿いでは厚い葉のものも見ることがある。ごく幅の狭い葉をつけるものをホソバイヌビワ (var. sieboldii (Miq.) King)、葉面に毛の多いものをケイヌビワ (var. beecheyana (Hook. et Arn.) King) というが、中間的なものもある。葉縁に鋸歯 はない。秋には紅葉 し、鮮やかな黄色や橙色に染まり、常緑樹林の中でよく目立つ。紅葉後は遅くまで落葉せずによく残っている[ 5] 。
花期は晩春(4 - 5月ごろ)で、雌雄異株 。葉の付け根についた花嚢 (かのう)は、秋に赤色から黒紫色へと変化して果嚢 (かのう)となる。イチジク を小さくしたような形の実をつける。
果嚢は9月末 - 10月ごろに完熟し、見た目は小さなイチジク様で、直径10 - 13ミリメートル (mm)の球形で長い柄があり[ 5] 、白い粉を吹いたような濃紫青色となる。果嚢は甘く、食用になる。
冬芽 はイチジクに似ていて、枝先の頂芽 は円錐形で先が尖り、互生する側芽 は球形や楕円形をしている[ 5] 。頂芽は無毛で芽鱗2枚に包まれている[ 5] 。側芽の芽鱗は2 - 4枚である[ 5] 。葉痕は円形や心形で、維管束 痕は多数が輪状に並ぶ[ 5] 。
蜂との共生
イヌビワの花序 には、他の多くのイチジク属植物と同様に、イチジクコバチ科 (英語版 ) のハチ (イヌビワコバチ (セブアノ語版 ) )が寄生 する。雄花序の奥側には雌花 に似た「虫えい花」(花柱 が短く、不妊 )があり、これにハチが産卵 する。幼虫 は虫えい花の子房 が成熟して果実状になるとそれを食べ、成虫 になる。初夏 になると雌成虫は外に出るが、雄成虫は花序の中で雌成虫と交尾 するだけで一生を終える。雌成虫は雄花序の出口付近にある雄花から花粉 を受け、この頃(初夏)に開花 する雌花序に入った際には授粉 をするが、ここでは子孫を残せず、雄花序に入ったものだけが産卵し、翌年春にこれが幼虫になる。このように、イヌビワの授粉には寄生蜂 が必要であり、イヌビワと寄生蜂は共生 しているということができる。
他に、イシガケチョウ の食草 としても知られる[ 7] 。
脚注
参考文献
関連項目
ウィキスピーシーズに
イヌビワ に関する情報があります。
ウィキメディア・コモンズには、
イヌビワ に関連するカテゴリがあります。
外部リンク