エイリアン4
『エイリアン4』(エイリアンフォー、Alien: Resurrection)は、1997年のアメリカ合衆国の映画。監督はジャン=ピエール・ジュネ。日本での公開は1998年4月25日。20世紀最後のエイリアンシリーズでもある。 概要シリーズの4作目[3]。原題の「Resurrection」は「復活」「蘇生」を意味し、前作『エイリアン3』のラストで自決したはずのリプリーとエイリアンの復活、完結したと思われたシリーズの復活の両方を表している。監督には『デリカテッセン』などで知られるフランス人映画監督のジャン・ピエール・ジュネが起用された。 今作のリプリーはクローン再生されたものという設定であり、前作までとは全く異なるキャラクターとして描かれている。前作が評価上で低迷したことにより、続投に難色を示していたリプリー役のシガニー・ウィーバーも、この新リプリーの設定を気に入って出演を許諾したという経緯がある。 また、今作ではシリーズ初のフルCGによるエイリアンが登場している[4]。また、前々作『エイリアン2』では水面でのシーンが登場するが、今作では水中シーンが登場し、スタントマンは使わず、ウィーバーら自身が水中撮影をこなしている。同シーンは『ジョーズ』などに代表されるオーソドックスな水中パニック映画に通じ、「今度のエイリアンは泳ぐ」といった宣伝もされていた。 過去3作では、エイリアンによる殺戮シーンは場面が切り替わるなどの手法を用いていたために詳細には描かれなかったが、今作ではエイリアンによる人体破壊シーンや臓物露出シーンが大量に描かれ、シリーズ中最もゴア描写が多い作品となっている。 ストーリーフューリーの宇宙刑務所において、主人公リプリーはエイリアン・クイーンを体内に宿したまま溶鉱炉に身を投じ、永きに渡るエイリアンとの戦いに幕を下ろした。 しかしそれから200年後、フューリーの宇宙刑務所に残されていたリプリーの血液をもとに、軍の実験宇宙船「オーリガ」で、科学者らの手によりクローン体「リプリー8号」として再生される。その目的は、リプリー8号の体内に寄生するエイリアン・クイーンの摘出であり、エイリアンを繁殖させて軍事兵器として利用することであった。リプリー8号の存在はあくまでも副産物に過ぎなかったが、クローン化の過程で彼女の遺伝子はエイリアンのそれと融合しており、科学者らにとって興味深い実験材料であった。 しかし、復活した無数のエイリアンは、仲間のエイリアンを殺してその体液の酸で床を溶かすという巧妙な手口で逃亡し、研究者や軍人たちを次々と虐殺していく。リプリー8号は本能的にエイリアンを「敵」と見なし、エイリアンを植えつける苗床である生きた人間を輸送してきた宇宙貨物船「ベティ」のクルーと共に、オーリガからの脱出を試みる。 その脱出の最中、リプリー8号は進化の末に子宮を得たエイリアン・クイーンから、人間とエイリアンのハイブリッド生物「ニューボーン」が誕生するのを目撃する。ニューボーンは生みの母であるクイーンを殺害し、自分と同じ人間とエイリアンの遺伝子を併せ持つリプリーを母親と思い込む。自分は人間なのか怪物なのか、その答えを出しかねていたリプリー8号は、仲間を救うためにニューボーンへ立ち向かう。 登場人物・キャスト主人公
宇宙船ベティの関係者
実験宇宙船「オーリガ」の関係者
その他
日本語吹替
※20世紀フォックス ホーム エンターテイメント ジャパンの「吹替の帝王」シリーズ第17弾としてBlu-ray Disc「エイリアン4 日本語吹替完全版 2枚組コレクターズ・ブルーレイボックス」が2019年4月26日に発売された。吹替の帝王版、通常版のBD2枚組で、吹替の帝王版の劇場公開版本編に上記のソフト版とフジテレビ版の2種類の吹替版が収録される。特典としてフジテレビ版吹替台本とフジテレビ版でコールを演じた高乃麗のインタビュー集が付属している。 作品解説監督のジュネとともに短編や『デリカテッセン』、『ロスト・チルドレン』を監督したマルク・キャロは、本作でも共同で作業に当たるはずだったが、ハリウッドを嫌い数枚のデザイン画を残しフランスに帰国している。ジュネ自身はDVDの特典映像において「キャロにはロスの日差しが合わなかったんだ」と述べている。2人はその後共に仕事をしていないが、『ロスト・チルドレン』や本作の特撮監督を務めたピトフの初監督作『ヴィドック』でキャロが美術監督を務めるなどの接点がある。 ハリウッドで映画を撮るに当たり、フランスでの経験しかなかったジュネと撮影監督のダリウス・コンディはその年のヒット映画を見てアクション・シーンのカット数を数えるなどの研究を行った。 リプリー役のシガニー・ウィーバーは当初出演しない意向であったが、本作のリプリーが過去作とは似て非なる別個体のクローンであるという設定に納得し、許諾した。作中でクローン・リプリーの驚異的な運動能力を示す場面として後ろ向きのままバスケットボールの超ロングシュートを決めるシーンがあるが、これはCGや特撮ではなく、ウィーバー自身が多くのリハーサルの末にNG無しの1テイクで決めた本物のシュートである。その際ジョナー役のパールマンと現場のスタッフが思わず拍手喝さいをし、現場の空気がヒートアップしてしまったため、ジュネは「編集でそれを隠すのが大変だった」と語っている。 当初「オーリガ」のデザインは「復活」のテーマにかけた十字架を模したものだったが、ジュネがこれを気に入らず間際になって工業的なデザインの戦艦に変更された(その代わり、コールがオーリガのファーザーコンピューターをハッキングするシーンで礼拝室の十字架のオブジェクトが登場する)。 本作には『エイリアン3』を手掛けた特殊効果会社アマルガメイテッド・ダイナミクス・インコーポレイテッド(ADI)が引き続きクリーチャー製作を手掛けた。ADIの創設者、トム・ウッドラフ・ジュニアとアレック・ギリスも、エイリアン2でスタン・ウィンストンと仕事をした経験があり、エイリアンのクリーチャーデザインと修正を映画の脚本に基づいて進めた。脚本には泳ぐために生き物の尾が尖っていること、頭のドームと顎がより尖っていること、カメラアングルとショットの長さのテクニックを使用して生き物がより凶暴に見えるようにすることが要求されていた。監督の承認を得た後、ADIは小規模サイズの彫刻、スケッチ、絵画、実物大の模型などの制作から開始した。本作でのアニマトロニクスの使用については20世紀フォックスの重役トム・ロスマンが「殆どの映画はニューボーンをデジタルで作ろうとするだろうが... しかし、アニマトロニクスでこれを再現すれば遥にリアルに見えるだろう」と考えた。 ジュネはADIに人間とエイリアンのハイブリッドクリーチャーについて、エイリアンよりも出来るだけ人間に寄せるよう依頼した。初期の構想ではシガニー・ウィーバーの特徴を再現することになっていたが、スタッフは当初のそのデザインでは1995年の映画『スピーシーズ』の生物シルのデザインに似すぎていると感じた。最終的にハイブリッドには目と鼻が追加されたことで、表情や感情を伝えやすくなり「単なる殺人マシン」ではなくキャラクターとして、より深みが増した。ジュネはハイブリッドの性器が男性と女性の混合に似ていることに固執していたが、しかし20世紀フォックスはこれに否定的でジュネは最終的に考えを改め、最終的にこの性器部分はポストプロダクション中にデジタル効果技術を使用して削除された。アニマトロニクスのハイブリッドには9人の操り人形師が必要で、映画の中で最も複雑なアニマトロニクスとなった。 撮影は1996年10月から1997年2月にかけ、カリフォルニア州ロサンゼルスのフォックススタジオで行われた。タイタニック、スターシップ・トゥルーパーズ、ロスト・ワールド/ジュラシック・パークなどのハリウッド大作の撮影が同時期に行われていた為、ジュネはスタジオを確保するのに苦労した。『エイリアン リザレクション』はエイリアンシリーズで初めてイギリス国外で撮影された作品であり、これはウィーバーの決定であった。 水中シーンが最初に撮影され、その為にフォックス・スタジオのステージ16に36×45メートル、深さ4.5メートル、548,000ガロンの水を入れたタンクに設置された。このシーンをステージ内を撮り終えた理由として、撮影クルーをサンディエゴにあった最も近い適切な別施設に移動させて撮る事は可能であったが僅か1つのシーンのために費用がかかり過ぎると判断されたからであった。水中撮影が含まれていた為、本作に出演するにあたってキャストとクルーは泳げることが前提条件であった。キャストはロサンゼルスのプールでプロのダイバーから器具の使い方のレクチャーを受けている。さらに2週間半、スタジオでスタントコーディネーターのアーニー・オルサッティと水中撮影監督のピーター・ロマーノによる指導が行われた。しかし、ウィーバーはブロードウェイでの出演の都合でトレーニングの殆どこれに参加できなかった。ウィノナ・ライダーは12歳の時に溺れかけた経験があり、それ以来水に入っていなかったため、このシーンの撮影は困難を極め、当初はボディダブルを使うことを提案したが、髪の長さが違うため観客にはスタントである事が分かってしまう為、最終的に本人がこのシーンを撮影したが、撮影初日に不安に悩まされたという。 本作の脚本は漫画本のようにレイアウトされ、左側に絵、右側にセリフと説明が書かれていた。ジュネは全てのショットを視覚効果アーティストの作業が容易になるように入念に考え進めた。ブルースカイスタジオは映画に登場する最初のCGIエイリアンの制作を依頼された。ジョーズアパートでCGIゴキブリを作成した同社の仕事に感銘を受けたジュネとピトフは、同社に30から40ショットのCGIエイリアンの制作を依頼することにした。エイリアンの足がフレーム内にあるときは常に、人形やスーツを着た俳優ではなくCGIエイリアンを使用することが決定された。これは、全身が見えてしまうとスーツアクターが演じているのが直ぐにバレてしまうと考えた為であった。 映画に登場する宇宙船はすべてミニチュアが製作され、視覚効果スーパーバイザーはCGIではリアルな宇宙船を作れないと考えていたからであった。USMアウリガは元々、アーティストのナイジェル・フェルプスがデザインしたもので、医療機器に似ていた。このデザインは、カメラがパンアウトして宇宙船を映す映画のオープニングショットには垂直すぎることが判明し、映画の2.35:1のアスペクト比では満足のいくものではなかった。デザインを最終決定しなければならない3日前に、ジュネはこれを却下した。そしてフェルプス、制作イラストレーターのジム・マーティン、コンセプトアーティストのシルヴァン・デスプレッツが宇宙船の再デザインを任された。ジュネはマーティンのデザインは宇宙ステーションに似すぎていると感じたが、デスプレッツのデザインは流線型で水平な外観のため採用された。 映画のタイアップビデオゲームの開発会社であるアルゴノートゲームズは、映画に登場する「アトムゾーン」というゲームの開発も任された。このゲームは数日間で開発され、ベティの乗組員が紹介されるシーンで簡単に登場するゲームを実行するためのカスタムハードウェアの構築も含まれていた。 設定今作では、長年のリプリーの宿敵であり、エイリアンを利用しようとする存在であるウェイランド・ユタニ社は、(作中年月から)数十年前に経営破綻し買収されているため、存在しない[6]。そのため、本作では軍と研究者達がウェイランド・ユタニ社の代わりを果たしている。 宇宙貨物船「ベティ」は実際は宇宙海賊で、他の宇宙船を襲撃しては冷凍睡眠中のクルーを拉致してレン博士に売り飛ばしていた。クルーは1作目のノストロモ号のクルー達を意識した個性的なキャラクター設定がなされている。 今作の世界では、通貨は電子マネーが主流で現金は法制度上価値のある存在として残ってはいるものの、目にするのも珍しい希少品と化している。しかし、エルジンはベレス将軍との取引において、先述の冷凍睡眠中のクルーを引き渡した報酬として現金を受け取っているが、これは「現金のやりとりは、データには残らない」という理由からである。 また今作ではシリーズ中初めてリプリーが地球に降下している。この時代の地球は荒廃して人類の多くは去っていることが示唆されており、作中でジョナーに「掃き溜め」「あんなところに行く位なら此処(オーリガ)の方がマシ」と言わしめている。 完全版2003年、ジュネは『エイリアン2』4部作DVDボックスセットに、当初は予算の都合でカットされていた冒頭と結末のシーンを変更した別バージョンを収録した。削除されたシーンには『エイリアン2』の登場人物ニュートへの言及、フリースがコールに冗談を言うシーン、リプリーのクローンが作戦中に目を覚ますシーン、ペレス将軍とエルギンの長い会話、リプリーの元雇い主であるウェイランド=ユタニの運命が明らかになる食堂での長い会話、礼拝堂でのコールとリプリーのクローンとの長い会話などがある。特別版では13分5秒分の映像(新たな冒頭と結末を含む)が復元され、劇場版より7分長くなっている。ジュネは、特別版はディレクターズカット版ではなく、劇場公開版の方が好みだと述べている。『エイリアン4部作』には、『ワン・ステップ・ビヨンド:メイキング・オブ・エイリアン・リザレクション』というドキュメンタリーが収録されており、プリプロダクション、プロダクション、ポストプロダクション、スクリーンテスト、コンセプトアート、キャストとスタッフによるオーディオコメンタリーに関する2時間以上の映像が収録されている。 『ワン・ステップ・ビヨンド:メイキング・オブ・エイリアン・リザレクション』も収録されている『エイリアン・リザレクション - コレクターズ・エディション』は2004年1月6日にリリースされた。 この完全版ではオープニング・エンディングが異っており、劇場公開版のオープニングはリプリー・クローンの失敗作の奇怪な姿がクローズアップで次々と映し出される物だったが、完全版ではエイリアンと見まがう昆虫の顔のアップからそれを押しつぶす兵士の指、そこからカメラを引いて兵士のいる銃座からオーリガ号の全景までがワンカットで映し出されている。 劇場公開版のエンディングは、ベティからコールがリプリーと共に地球を見降ろしながら「これからどうするの?」との問いかけ、リプリーが「分からない…地球は初めてだもの」と返してエンドロールとなるが、完全版では、丘の上でコールがリプリーと共に荒れ果てたパリを見つめながら、リプリーが軍に追われることを心配していると告げ、「これからどうするの?」と問いかける。それに対して、リプリーが「分からない…地球は初めてだもの」と返してエンドロールというものである。 脚注
外部リンク
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