ハロルドは帰宅中のマリアンの後をつけてきて気をひこうとするが無視される。マリアンはアマリリスという少女にピアノを教えながら、自分の高い「男性を見る目」について未亡人である母(パルー夫人)と言い合い、ハロルドのことを口にする("Piano Lesson"/"If You Don't Mind My Saying So")。そこへマリアンの10歳になる弟で内気なウィンスロップが帰ってくる。彼を密かに想うアマリリスだがその舌足らずな発音[注 3]をからかってしまい、マリアンに「恋人がいないのにおやすみなさいを誰に言
えばいいの」と尋ねる。マリアンは自分の「誰かさん」に言えばいいと慰める("Goodnight, My Someone")。
マリアンに再び拒否されたハロルドは、彼女を射止めようと決意する("The Sadder But Wiser Girl")。町のご婦人たちはハロルドによるバンドと女性ダンス委員会の計画に大興奮。マリアンと不適切な関係にあったケチな金持ちがいて所有する図書館の全書物が彼女に遺贈されたとハロルドに漏らし(後で誤解と判明)、マリアンがチョーサーやラブレーやバルザックの「汚らわしい本」を支持していると警告する("Pick-a-Little, Talk-a-Little")。教育委員会がハロルドの身分証明書を求めてやってくるが歌でごまかされ帰っていく("Goodnight, Ladies")。
翌日、ハロルドは図書館に行きマリアンを熱心に口説く("Marian the Librarian")。いつもの固苦しさを忘れたマリアンがハロルドや若者たちと踊るもつかの間、キスしてきたハロルドを引っぱたこうとして誤ってトミーを叩いてしまう。ハロルドはトミーの助けでウィンスロップや町の少年全員をバンドに加入させる。ハロルドを気に入ったパルー夫人は娘が彼に無関心なわけを知りたがり、マリアンは理想の男性を語る("My White Knight"、映画版は"Being in Love")。
その夜、教育委員会は再びハロルドから身分証明書を手に入れようとするが、ハロルドはまたもや彼らに歌わせこっそり立ち去る("Lida Rose")一方、マリアンはベランダでハロルドを想う("Will I Ever Tell You")。ハロルドと過ごしたウィンスロップは、姉と母にハロルドの故郷ゲーリーの話をする("Gary, Indiana")マリアンがハロルドを待っていると、巡回セールスマンのチャーリー・コーウェルがハロルドに不利な証拠を市長に伝えようとやってきた。列車が出発するまでのわずかな間、チャーリーはマリアンの気をひこうとする。彼女は証拠を届ける時間がなくなるよう彼にキスをしてまで引き留める。汽笛が鳴るやマリアンに押しのけられたチャーリーは怒って「ハロルドはイリノイ全部の郡に女がいて、全部の郡から金を巻き上げてるんだ、102の郡のな!」と言う。
そこへ現れたハロルドから自分の虚偽の風聞を思い起こされたマリアンは、チャーリーが話したことも全て作り話だと思い込む。2人は歩道橋で落ち合い、彼女は彼が自分の人生にもたらした変化を伝える("Till There Was You"『ティル・ゼア・ウォズ・ユー』)。割り込んできたマーセラスから制服が届いたから代金を持って逃げろと言われるが、ハロルドは「私は出世したんだ、職務放棄は出来ない。」ときっぱり拒否する。彼がマリアンの元に戻ると、彼女は彼がやって来た3日後から詐欺師であることを知っていたと明かす(ハロルドは1905年にゲイリー音楽院を卒業したと主張していたが、インディアナ州にゲイリーという名の市が誕生したのは1906年であった)。マリアンはハロルドへの愛ゆえに、教育誌の証拠ページを彼に渡し、後で会う約束をしその場を離れる。ハロルドの少年バンドとマリアンへの計画は順調に進み、彼は自信に満ちて『76本のトロンボーン』を歌い出すが、マリアンが歌う"Goodnight My Someone"を耳にし、ハロルドはマリアンに恋をしていることに気づく。2人は互いの歌を口ずさむ。
一方、列車に乗り遅れたチャーリーがアイスクリームパーティーにやって来て、ハロルドは詐欺師だと告発する。町の人々はハロルドの行方を捜して大騒ぎとなる。傷心のウィンスロップは、ハロルドがリバーシティに来なければよかったのにと言う。しかしマリアンは、ハロルドが言ったことはすべて信じている、町の子供たちによって実現出来たからとウィンスロップに告げる。姉弟はハロルドに逃げるよう懇願するが、ハロルドはマリアンに、彼女に会うまで恋をしたことはなかったと告白("Till There Was You"[リプライズ])、警官に手錠をかけられ連行される。
"Lida Rose"と"Will I Ever Tell You"は、最初は別々に歌われその後同時に歌われるが、これはブロードウェイでよく用いられた対位法(別々の歌詞と別々の旋律を持つ曲が、調和し一緒に歌うように作られている)の一例である。同様に、"Pick-a-Little, Talk-a-Little"と"Goodnight, Ladies"も最初は別々に、その後対位法的に歌われる。メレディス・ウィルソンの対位法は、アーヴィング・バーリンの対位法のミュージカル曲と共に、1959年のミュージカル『リトル・メアリー・サンシャイン(英語版)』で、三重対位法の曲("Playing Croquet""Swinging""How Do You Do?")に組み合わされパロディー化された。
また、ワルツのテンポの"Goodnight, My Someone"は、行進曲のテンポの『76本のトロンボーン』"Seventy-six Trombones"と同じ旋律で作られている[8]。
背景
メレディス・ウィルソンは、アイオワ州メーソンシティで過ごした少年時代に着想を得て、自身初のミュージカル『ザ・ミュージックマン』を作曲した[9]。この取り組みは1948年の回想録"And There I Stood With My Piccolo"の出版から始まった[10]。最初のアプローチはテレビや映画のプロデューサーたちへの企画の持ち込みであった。いくつかの試みが失敗に終わった後、ウィルソンは フランクリン・レイシー(英語版)を招き台本の編集と簡略化を行った。この時ウィルソンは削除しようとした長い台詞が歌詞のように聞こえることに気づき、パタ・ソング(英語版)[注 5]の"Ya Got Trouble"に変身させた[12]。ブロードウェイでの舞台化に際しての試行錯誤は1959年のウィルソンの自著"But He Doesn't Know the Territory"に記されている[13]。
本作は多くのテレビ番組でパロディ化されている。『シンプソンズ』のエピソード「"Marge vs. the Monorail"」はコナン・オブライエンが本作のパロディで脚本を執筆した。2度目のブロードウェイ再演において、オブライアンは短期間のハロルド・ヒル役を打診されたが、最終的にスケジュールの都合により出演できなかった。『シンプソンズ』のDVDに収録されたこのエピソードでのコメントで、オブライアンは本作が好きな作品の1つであり、出演を断ったのはこれまでの人生で最も困難な選択だったと語った。2006年、NBCで放送された第58回プライムタイム・エミー賞の司会者としてオブライアンはオープニングでNBCとその視聴率下落をネタにした「"Ya Got Trouble"」のパロディを歌った。
テレビ番組『ファミリー・ガイ』は少なくとも3回本作のパロディを行なった。エピソード「"Brian Wallows and Peter's Swallows"」において、ロイスがブライアンの高望みを「"Piano Lesson"」のパロディで非難する。エピソード「"Patriot Games"」において、ピーターはフットボールでタッチダウンをし、球場の全員を率いて映画の振付で「"Shipoopi"」を踊る[30]。『ボストン・リーガル』のエピソード22「"Men to Boys"」において、アラン・ショアがレストランの客たちが鮭を食べないように「"Trouble"」のパロディを歌う。『アリー my Love』においては複数の楽曲が使用されている。シーズン2のエピソード16「キスの代償」で弁護士のジョン・ケイジが陪審員たちに「"Ya Got Trouble"」を一緒に歌わせる[31]。『マイリトルポニー〜トモダチは魔法〜』シーズン2のエピソード15「アップルサイダー対決」において、「"Ya Got Trouble"」を基にした楽曲を含め、多数言及されている[32]。
^1962年の映画[4]、1980年と2000年のリバイバル上演版[5]、および一部のアマチュアや地方のプロダクション上演版では、"Gary, Indiana"を歌うのが1幕ではハロルド(映画版)とパルー夫人("Marian the Librarian"と"My White Knight"の間)、2幕ではウィンスロップ(2000年上演版はパルー夫人とマリアンと3人)になっている。[要出典]
^Suskin, Steven. Opening Night on Broadway: A Critical Quotebook of the Golden Era of the Musical Theatre, pp. 460-64. Schirmer Books, New York, 1990. ISBN0-02-872625-1
^Bloom, Ken and Vlastnik, Frank. Broadway Musicals: The 101 Greatest Shows of all Time, pp. 215-16. Black Dog & Leventhal Publishers, New York, 2004. ISBN1-57912-390-2
^“Season Two Music”. allymcbeal.tktv.net (1 March 1999). 5 August 2022閲覧。 “'Ya Got Trouble' (Meredith Wilson) from 'The Music Man,' performed by Peter MacNicol and the jury”