1921年 (大正 10年)、シルクハットを被りイギリスのオックスフォード大学 でボートレースを見物する皇太子 裕仁親王(後の昭和天皇 )
オペラハット:折りたたみ可能なシルクハット
シルクハット
シルクハット
シルクハット (絹帽[ 1] 、英 : silk hat )は、燕尾服 (テールコート)およびモーニングコート 着用時に用いる、第一正礼装 用の紳士 帽子 である。
概要
クラウン が円筒状で高く頂上がたいらで、つばの両側がそり上がり、へりが鋭角に折り返っている絹製の帽子のことをさす。作られた当初はビーバー の毛皮 を用いた帽子であり、ビーバーハット 等と呼ばれていた[ 2] 。後に絹 (シルク)が使われるようになったのでシルクハット と呼ばれ、その呼称が日本 では一般に定着している。
シルクを使うようになったのは、乱獲によりビーバーが絶滅寸前になったための代用である。アルバート王子 の影響を受けたともいわれている。日本で一般的にシルクハットと呼ばれるものは帽子の形を指しているが、その意味では英語ではトップハット (top hat, top-hat)が一般的に用いられる。これは親しみを込めて"topper"とも呼ばれることがある。英語でのシルクハットは絹製のトップハットを指し、絹製であることを強調するために用いられる。シルクハットという言葉はあるが形を指す場合はトップハットと呼ばれる。
歴史
ジョン・ヘザリントン(John Hetherington )が1797年 につくったものが最初のものといわれている。作られた当初はビーバーの毛皮を用いて作られていたが、後に絹が用いられるようになった。
アメリカ ではトップハットとして19世紀 にはストーブパイプハット (stovepipe hat)が流行した。これはリンカーン が大統領時代にかぶり人気となったもの。トップハットにはさまざまな形があるが、これはパイプのように直線的であり、トップとボトムは広がらず、一般的なトップハットよりも高さがある。
その後、トップハットは、クラウン部内側にヒンジ付のフレームを使い折りたたむことができるようなものができた。これはオペラハット (opera hat)やジャイブス (Gibbus)ともよばれた。オペラハットやジャイブスはトップハットと同義にも、また、高さのある男性用のフォーマルな帽子に対しても使われる。1920年代 にはハイハット (high hat)とも呼ばれていた。
19世紀後半になると、トップハットは、一般的なファッション としては次第に用いられないようになる。中流階級は山高帽 や、ソフト帽 のようなソフトなフェルト の帽子を使うようになった。これらはシティーライフに便利であるうえ、大量生産に適していた。
トップハットは、熟練者の手作りでなければ作れなかった。トップハットは上流階級向けとなり、皮肉や批判の対象ともなった。第一次世界大戦 末頃には日常生活ではほとんど用いられなくなった。1930年 (昭和 5年)後半には、昼間のモーニングスーツやイブニング用のタキシード や燕尾服などの礼服 に合わせるためだけのものとなっていた。
政治や国際外交などの特定の分野では、まだ使用されていた。誕生したばかりのソビエト連邦 では外交官 が国際的慣習に従ってトップハットをかぶるか否かについて激しい論争がなされ、投票により賛成派が多数を占めた。この論争の背景には、プロパガンダ 用のポスター において、シルクハットを被った燕尾服姿の男性がプロレタリアート (労働者)階級やソビエト政府に敵対するブルジョワジー (資本家)の象徴としてしばしば扱われていた事情がある。
トップハットは、正礼装を舞台衣装とした名残りとしてマジック ショーでよく使われる。また、パーティーでの服装でも合わせられることがある。
現在もトップハットを愛用する人物としては、ガンズ・アンド・ローゼズ のギタリスト 、スラッシュ が有名。
現在、トップハットのウール のフェルトや綿 、ポリエステル などの安価なイミテーションものが燕尾服やモーニング用に作られている。通常ストープパイプ型でフラットブリム(つばが平ら)の仕様であり、きちんと作られた毛皮 や絹製のものはかなり高価なものとなる。
脚注
ウィキメディア・コモンズには、
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