ジョルジュ・レイグ級駆逐艦
ジョルジュ・レイグ級駆逐艦 (フランス語: La frégate anti-sous-marine Georges Leygues) はフランス海軍の駆逐艦の艦級[1][2][2]。対潜戦を重視しており、計画艦型番号は、当初はコルベット(Corvette)と称されていたことからC-70ASWとされていたが、1988年6月6日にフリゲート(Frégate)に変更されたことからF-70ASWとなった[3]。なお北大西洋条約機構(NATO)によるペナント・ナンバーでは、一貫して駆逐艦を意味する「D」の艦種記号を付されており、ジェーン海軍年鑑やアメリカ海軍協会(USNI)でも駆逐艦として扱われている[1][2]。 来歴フランス海軍が1940年代末から1950年代にかけて建造した第二次世界大戦後第1世代の駆逐艦は、艦隊護衛艦(Escorteurs d'escadre)と称される対空・対水上兵装主体の艦であった。その後、第二次大戦後の潜水艦脅威の深刻化を受けて、まず1956年度計画で、艦隊護衛艦をもとに対潜戦を重視して装備を変更した「ラ・ガリソニエール」(T-56型)が建造された[3]。 その後、T-56型の実績も踏まえて対潜戦重視の大型護衛艦(コルベット)の建造が計画され、まず1965年度計画で「アコニト」(C-65型)が建造されたのち、1967年度計画より、これを発展させたトゥールヴィル級(C-67型)が建造された[3]。 これに続く1972年のブルー計画(15ヶ年計画)で、艦隊護衛艦(T-47型およびT-53型)の更新用として、共通の船体設計に基づく対潜型コルベット18隻と対空型コルベット6隻の整備が計画された。しかし財政上の制約から、対潜型が1971年度から1983年度にかけて計7隻、防空型が1978年度・1979年度に1隻ずつの計2隻が建造されるのみに留まった。このうち、対潜型として建造されたのが本級である。なおターター・システムを搭載した防空型として建造されたのがカサール級であった[3]。 設計大量建造を想定して、C-67型よりも小型化が図られた[3]。船型は船首楼型とされており、抗堪性向上のため、NBC防護にも配慮したシタデル構造が導入されている。居住区は女性の乗艦にも配慮されており、また「ド・グラース」と同様に居住性向上に意が払われた結果、初期設計と比して艦全長にして5メートル、排水量にして150トンの大型化となった[4]。後期建造艦(5〜7番艦)では航海艦橋が1甲板分高くなっており、外見上の識別点となっている。堪航性向上のため、デニー・ブラウン社製で翼面積21.5 m2のフィンスタビライザーが装備されている。なお艦齢半ばにもかかわらず船体に亀裂が見つかったことから、2002年から2003年にかけて船体の強化工事が行われた。これにより、120トンに及ぶ鋼板が取り付けられ、これによる重心上昇を補うために210トンの固定バラストが搭載された[2]。 本級では、イギリス海軍やオランダ海軍の影響を受けてガスタービン主機関が導入されている。当初は両国と同じロールス・ロイス タインとオリンパスによるCOGOG機関の導入が検討されたが、タインでは十分な巡航速度が確保できないと判断されたことから、SEMT ピルスティク16PA6 V280ディーゼルエンジンを巡航機とするCODOG方式に変更された[5]。ガスタービンエンジンを用いた場合、停止状態から3分で最大戦速を発揮できる。またディーゼルエンジンを用いて、かつDUBV-43可変深度ソナーを吊下していた場合の速力は最大で19ノットとなる[2]。 機関区画は4室に区分されているが、両舷の機関を並べて配置するパラレル配置とされており、艦首側から、補機室、タービン室、ディーゼル室、減速機室と並んでいる。また機関制御は集中制御方式とされており、省力化に益している。機関科は士官3名、下士官23名、水兵24名とされている[2]。 装備C4ISR戦闘システムの中核となる戦術情報処理装置としては、SENIT-4が搭載された。また衛星通信装置としてシラキューズIIおよび商用のインマルサットが搭載されているほか、2〜4番艦では、OPSMER/SEAO指揮支援システムが後日装備されている[2]。 センサー面では、当初はおおむねC-67型が踏襲されていたが、後期建造艦では下表の通りに更新された[2][5]。またデコイ発射機も、当初はサイレクスが搭載されていたが、4番艦以降ではDAGAIEに変更され[4]、後に1〜3番艦にもバックフィットされた[2]。
更に、前期建造艦を対象として、1990年代後半より対艦ミサイル防御(ASMD)能力向上を目的としたOP3A(Opération d'Amélionration de l'Autodéfense Anti-missiles)改修が行われた。これにより、SENIT-4とインターフェースを取ったうえでSENIT-8.01情報処理装置が搭載されるとともに、目標捕捉および射撃指揮のため、DIBC-2A光学方位盤(SAGEM VIGY-105のフランス海軍仕様)も設置された[2]。 武器システム主砲としては55口径100mm単装速射砲(Mle.68 CADAM)を艦首甲板に搭載し、艦橋構造物上にDRBC-32E砲射撃指揮装置を設置した。個艦防空ミサイル・システムとしてはクロタルを採用し、火器管制レーダーと一体化した8連装発射機を後部上部構造物上に設置した。ミサイルは、発射機に装填された8発のほか予備弾18発を搭載した。後期建造艦では改良型のクロタルEDIRに更新している。また前期建造艦では、上記のOP3A改修の際に近接防空用としてミストラルのSIMBAD連装発射機とマウザーMK 30 30mm機関砲の無人砲塔(20mm機関砲 F2と換装)が搭載された[2]。 対艦兵器としては、1・2番艦ではエグゾセMM38の連装発射筒を両舷に搭載していたが、3番艦以降ではエグゾセMM40の4連装発射筒に変更され[5]、2番艦でも同様に後日換装している[2]。 対潜兵器としてはL5魚雷のためのKD-59E 533mm魚雷発射管を備えていたが、5〜7番艦では、MU90用のB515 3連装短魚雷発射管に後日換装している[2]。 艦載機・艇後部上部構造物の後端部は、長さ13.5メートル×幅11.4メートル×高さ4.3メートルのハンガーとされており、リンクス哨戒ヘリコプター2機を収容できる。その後方の艦尾甲板は長さ21メートル×幅12.20メートルのヘリコプター甲板とされており、SPHEX(Systéme Pousseur pour Hélicoptére Embarqué EXpérimental)コンパクトII型着艦支援装置を備えている。これはグリッド着艦拘束装置と機体移送軌条2条によって構成されている[2]。 艦載艇として、左舷にアーカー670内火艇を、右舷に9メートル型のVD9内火艇を搭載しているほか、海上治安活動などに用いるため、ゾディアック社製の複合艇2隻も搭載している[2]。 同型艦
脚注出典参考文献
外部リンク |