スコーピオンは初代『MK』にサブ・ゼロ、レプタイルとともに色違いの3人の忍者の1人として登場した。2011年9月にシリーズのチーフキャラクターデザイナーであったジョン・トビアスが、製作前の古いキャラクタースケッチやメモを数ページTwitterに投稿し、彼の初期の出自が明らかにされた。スコーピオンとサブゼロは、「2人の色違い忍者-狩る者と狩られた者([a] palette swap for 2 ninjas—a hunter and the hunted,)」と説明され、トビアスは、どちらかが組織を離脱するという構想や、当時無名だったキャラクターが敵対組織に属するという「復讐劇("revenge story" )」の導入も検討していた。このゲームの厳しいメモリー制限について、共同制作者でプログラマーのエド・ブーンは「経済性にはかなり気を遣っていたので、キャラクターの色を変え、ほぼ同じメモリを使って2人のキャラクターを作ることができれば、かなりのコスト削減になると考えた。("A lot of attention went into the economics of it, and so we knew that if we could take a character and change their color and use basically the same memory to create two characters, we'd save a lot of money and we'd have two characters.")」と回想している[27]。
スコーピオンには、サブ・ゼロのアイスブルーに対して、開発者が「火を象徴する色」として、黄色のパレットが採用された。外見は似通っているが性格は正反対であることから、「忍者組織の対立というストーリーを考えた("prompted the story behind them being these opposing ninja-clan-type characters.")」と述べられている[28]。3人目の色違い忍者であるレプタイルは、第3回目の改訂版で隠しNPCとして追加され、緑の服を着てスコーピオンのスピアーとサブ・ゼロの冷凍弾を使用し、ブーンによって「よりクールなスコーピオン("a cooler version of Scorpion.")」というというコンセプトのもと考案された[29]。オリジナルの衣装はシカゴの衣装店で買ったニンジャ風の衣装を改造して作られたもので、1作目の撮影では赤色だったが[28]、「MKII」ではキルティングベストとシンガードを付けた黄色の衣装が利用された。サブゼロ、レプタイル、隠しキャラのスモーク、ヌーブ・サイボットはスコーピオンの色違いかつ、後者2人は「MKII」で条件を満たして出現した際にスコーピオンのスピアーを特殊技として使用する。スコーピオンとその他の忍者のキャラクターは最初ダニエル・ペシーナが演じていたが、「UMK3」と1996年のコンピレーションタイトル「MKT」ではジョン・タークに代わり、「MKM:SZ」ではサル・ディヴィタが演じた。
スコーピオンはスピアーで相手を引き寄せる際に「Get over here!」と「Come here!」の2パターンのセリフの内どちらかを放つ。これらのセリフはゲームでも劇場版でもブーンが声を担当している。が、『MK』と『MKII』の家庭用移植版ではメモリの都合で「Come here!」だけが収録された。ブーンいわく、2つ目のフレーズは、スコーピオンが「スピアーを飛ばすと時に「「Get over here!」と叫ばせたら面白そうだ("it would be funny to have him yell out 'Get over here!')」 と思ったことが由来だという。そのためブーンはスタジオのマイクに向かい、挑発セリフの収録を進めた[34]。ダニエル・ペシーナも認めている通り[35]、このフレーズはもともとカノウを演じたリチャード・ディビシオのアイデアであり、スコーピオンの頭蓋骨の素顔も古典映画 「アルゴ探検隊の大冒険」に触発されたものであった[36]。初代「MK」のリリースから20年、ブーンは、このスピアーとキャラクターそのものを生み出したことを、本シリーズの歴史の中で個人的に最も印象深い要素の1つに挙げ、「みんなが一日中俺のオフィスに居座って、何度も何度もアッパーカットをスピアーで引き寄せた敵にヒットさせて、『最高だ』的なことを言っていたのを覚えてる。それはまさにゲームの礎になったんだ("I remember people sitting in my office all day just doing this uppercut [on a speared enemy] again and again, like 'Oh my God, that feels so good.' It just became the cornerstone of [the game].")」と述べている[37]。「MKII」では、「TOASTY!」というフレーズが誕生し、シリーズのサウンドデザイナーのダン・フォーデンが声を担当した。スコーピオンのフェイタリティ「Flaming Skull」を発動した際、またはアッパーカットがヒットした際にランダムで発声される。トビアスによると、「You're Toast!」というゲームのテストセッションでデザイナーの間で交わされたジョークが原型とのこと[38]。
スコーピオンは、ロープに取り付けた銛のようなスピアー(「クナイ」と表現される)を相手に投げつける特殊技を持ち、シリーズを通しての象徴的な要素である。スピアーを相手の胸部に突き刺し、その後至近距離まで引き寄せ、敵は数秒間行動不能となる。この技は、元々の案であった投げ縄がワンダーウーマンの技を連想させるため、それを嫌ったペシーナが考案したものであり[35]、古代アジアの武器である縄鏢から着想を得ている[36]。もう1つの代表的な特殊技「Teleport Punch」は、画面外に飛び出し、背後から相手を攻撃するもので、「MK:DA」を除き、シリーズを通しての特殊技として定着している。さらに「MKII」で新たにScissors(蟹挟)が追加されたが、これは評判が良くなかった(セガサターンマガジンは「誰も使ってない("no one ever used")」「馬鹿げてる("ridiculous")」技と評した)[39]。1993年号のGameProにおいて、「MKII」の12人のプレイアブルキャラクターのうち8番目と評価され、サブ・ゼロとともに「以前は上位のキャラだったが、男の忍者は皆相性が悪い敵が多いので、「MKII」ではあまり使う機会が無いだろう("formerly a top-tier character [who] doesn't have much of a chance in MKII since all of the male ninjas have some poor matchups,")」と評され、スコーピオンはジャックスとミレーナに対して特に相性が悪いと記述されている[40]。セガサターンマガジンのエド・ローマスは、『UMK3』のスコーピオンの特殊技を「シンプルかつ効果的("simple yet effective")」とし、「初心者向けだが、(それでも)強いキャラクターであることに変わりはない("make him good for beginners, [which] doesn't stop him from being a useful character,")」、また彼の「信頼感のある("trusty")」スピアーは「コンボを決めるのに完璧("perfect for setting up combos.")」だと評している[39]。GameSpyは、「MK:D」のガイドにおいて、「特殊技や通常技のみならず、コンボにも強みを持つ総合的なキャラクター("a well-rounded character that has strengths in combos as well as in special and normal moves.")」と評している[41]。そして、「MK:A」ではスピアーが「相変わらず便利("useful as ever")」であるとし、「スピアーと他の特殊技だけで殆ど有利に立ち回れる("Between [that and his] other special moves ... Scorpion pretty much has everything covered.")」と付け加えている[42]。Prima Gamesによる「MK9」の攻略ガイドでは、明確な弱点や長所がなくバランスが取れており、他のキャラクターとの対戦での勝率は半分以上としている[43]。「MK:SM」では対戦とストーリーの両方で使用可能で、本作の技構成はリュウ・カンとほぼ同様だが、一部オリジナルの技もある[44]。
初代から『MK4』までの代表的なフェイタリティは、相手を焼き殺す直前にマスクを外して髑髏を露わにする「Fire Breath」である。「MKII」では別のバージョンも収録されており、異なるボタンとジョイスティックを組み合わせて入力すると、画面に「Toasty!」というテキストが表示され、音声が再生される。2008年の「Mortal Kombat vs. DC Universe」で「Fire Breath」が復活したが、それ以外の3Dゲームのフェイタリティではスピアーを主に使用する。『MK:DA』ではスピアーを相手の頭部に突き刺して破壊し、『MK:D』では手足をもぎ取りとどめに首を折り、『MK9』では胸にスピアーを突き刺してポータルに蹴り入れ、皮が剥がれた死体にする「Nether Gate」を持つ。そして、『MK9』の2つ目のフェイタリティ「Split Decision」は、剣で相手を切り刻むという内容である。
Jeff Rovinの1995年の小説『Mortal Kombat』において脇役として登場。本編とは繋がっておらず、時系列は初代「MK」以前。死んだ父の魂と自分の肉体が融合し、特殊能力を得た青年として描かれ、父の仇であるサブ・ゼロに復讐するための器として使われている[47]。
Malibu Comics(英語版)の1994年に連載された連続シリーズ「Blood and Thunder」では、スコーピオンはサブ・ゼロへの復讐に燃える亡霊に過ぎず、スピアーは鎖や縄に取り付けられたモーニングスターに変更されている。初代「MK」の主要キャラクターたちとともに、絶対的な力を得るため、シャン・ツンが持つ神秘の書物「Tao Te Zhan」の中の謎をすべて解こうとする(結果として誰も達成出来なかった)。1995年の続編「Battlewave」では、外界の皇帝シャオ・カーンによって「Deathstone」なる神秘の宝石とともに生者の世界に戻され、アンデッド兵で構成された軍隊を指揮する立場となる[48]。
本作では主人公を務める。本作では、初代「MK」のストーリーの基本的な流れを踏襲しており、スコーピオンの出自やハンゾウ・ハサシとしての過去、サブ・ゼロ(変身したクァン・チー)とリン・クエイに家族と組織を滅ばされたことが描かれている。モータルコンバットにて人間界に協力し、クァン・チーを殺害し、仇討ちに成功した。島への残留を選択し、島が破壊された際に死亡。続編の「Mortal Kombat Legends: Battle of the Realms」では復活を遂げた[51]。
真田広之が演じた[52]。ハンゾウ・ハサシは燐塊とその首領ビ・ハンに妻、長子、組織を手にかけられ、復讐に燃えていた。復讐を誓い、リン・クエイの刺客を殺した後、ビ・ハンに殺された。ネザーレルムに追放され、復讐に燃える亡霊と化したハサシは、数世紀の時を経てスコーピオンとして蘇り、ハサシの子孫であるコール・ヤングと共闘し、サブ・ゼロと名を改めたビ・ハンに勝負を挑んだ。真田は、本作の制作以前は『モータルコンバット』シリーズをよく知らなかったが、「所帯持ちが戦闘マシンに変貌するという、俳優にとって非常においしい役("a very tasty role for an actor: family man changed to fighting machine.")」と、スコーピオンを研究したのだという[53]。
商品展開・プロモーション
初代「MK」のキャラクターと共に、スコーピオンはThe Immortals(英語版)のアルバム「Mortal Kombat: The Album」(1994年)の「Lost Soul Bent on Revenge」というイメージ曲でハイライトされている。
スコーピオンのアクションフィギュアや彫刻を中心に様々な種類のグッズが展開された。1994年、ハスブロから最初のスコーピオンのフィギュアがリリースされた。マスクは青でプラスチックのスコーピオンののアクセサリーが付属した3.75インチ(9.525 cm)バージョンと、よりゲームに沿ったデザインと武器を付属した12インチ(30.48 cm)バージョンを発売。トイ・アイランドは1996年に「MKT」コレクションの一部としてスコーピオンのフィギュアを配布し、その中には一対のフックソードが含まれていた。1999年、Infinite Conceptsからスコーピオンのフィギュアが発売された。2005年、Jazwaresは6インチ(15.24 cm)の「Deception」フィギュアを発売し、2006年には「Shaolin Monks」の フィギュアをリリースし、Hot Topic(英語版)限定2パックにサブ・ゼロとセットで同梱され[54][55] in addition to a collection of figures in 2011: a 4" figure from their MK2011 line,[56]、「Klassic」な4インチ[57]の、「レトロ」をコンセプトとしたサブゼロ、レプタイル、スモークと箱入りセットのフィギュアが発売され、付け替え用の頭蓋骨のパーツが付属している[58]。Syco Collectiblesは2011年から2012年にかけて、数多くのスコーピオンのグッズを発売した。10インチ(暗闇で目が発光するギミックつき)と18インチのポリストーン製スタチューや[59][60]、15インチ(38.1 cm)の台座とライトアップされた目を持つ1:2スケールの胸像と、頭部が着脱可能な11インチ(27.94 cm)の台座の小型胸像が発売された[61][62]。2011年、Pop Culture Shockは着脱可能な肩パッドと発光ギミック搭載の目を備えた等身大の胸像を配布した[63]。また、「Mortal Kombat Klassics」コレクションとして、「UMK3」をモチーフにした19インチ(48.62cm)のスタチューが発売された[64]。2012年に発売された16.5インチ(41.91cm)のミクストメディアスタチューでは、スコーピオンは槍をは放つポーズをとり、全身黒ずくめの姿で立体化された[65]。
スコーピオンは、サブゼロとともに、「モータルコンバット」シリーズ、そして格闘ゲームというジャンルにおいて、最も人気かつ象徴的なキャラクターの1人であるとしばしば見なされている。ゲーム・インフォーマーは、スコーピオンを2009年の格闘ゲームキャラクターのベスト3位と認定し[71]、UGO Networks(英語版)が2012年に発表したトップキャラクターのランキングで、シリーズの主人公リュウ・カンに次いで2位にランクインした[72]。PLAY(英語版)誌が2013年に発表したトップ忍者キャラクターのリストで4位にランクインした[73]。2012年、GamesRadar+のルーカス・サリバンが、「『アンデッドの敵役』という要素のカッコよさ("coolness of his 'undead antagonist')」から、格闘ゲーム史上最高のキャラクターとして7位にランク付けしている。最初は単なる色違いだったにもかかわらず、スコーピオン独自の魅力によって、これまでの「MK」シリーズの顔となるほどの存在感を確立した、としている[74]。コンプレックス (雑誌)では、スコーピオンを多くのベストを決めるリストで特集している。シリーズ中、最も残虐なファイターとして5位にランクインし[75]、ベストビデオゲームマスコットでは15位[76]、2012年には格闘ゲームキャラクターで4番目に「最も支配的("most dominant")」なキャラクターとして選出した[77]。
スコーピオンはシリーズを通してサブ・ゼロと度々絡んでいるため、批評の際にもよくセットで扱われることがしばしばある2009年、PC World(英語版)によるトップビデオゲームニンジャリストでは同率5位となった[78]。2006年の{{仮リンク|Game Revolution|en|Game Revolution]]による「古参のMKキャラクタートップ10のランキングではサブ・ゼロと並んで首位を獲得し[79]、2011年のGamesRadarの記事では、「Mortal Kombat」シリーズの中で最も人気のある2人のキャラクターとして挙げられ、その進化について論じられた[80]。スコーピオンとサブゼロを合わせて、2015年にPlayStation Official Magazine – UK(英語版)の読者によってPlayStationの20年の歴史の中で最も象徴的なキャラクターの第5位に選出された[81]。Game Pro(英語版)は、2009年に色違いのベストビデオゲームキャラクターのリストで、スコーピオン、サブ・ゼロ、およびシリーズの他の忍者を3位にランク付けし、ミッドウェイゲームズは、「キャラクターの色を変えて新しいキャラクターを作る技法を、科学に変えてしまった("has turned the art of making new characters from other, different-colored characters into a science.")」と付け加えている[82]。
スコーピオンのキャッチフレーズ「Get over here!」は、PLAYのジョークリスト
「ten-of-the-best-chat-up-lines」に掲載された[92]。2011年、PlayStation Universeはは、スコーピオンは「ゲーム史上最も象徴的なキャッチフレーズの一つを生み出した("has spawned one of the most iconic catchphrases in gaming history")」「はつ初登場から19年経った今でも根強い人気を誇っている("remains a firm fan favorite nineteen years since his debut.")」と評している[7]。
^特殊技「Bloody Spear」および「Spear」使用時の掛け声のみ(「Get over here!」と「Come here!」の2種類。『MK:SM』のみ「Get the fuck over here!」と「Get over here bitch!」を含めた4種類)。2005年以降に発売された作品においては新規の収録は行われず「MK:DA」および「MK:D」の音声が流用されている。