ヤマサ醤油株式会社 (ヤマサしょうゆ、英:YAMASA CORPORATION)は、千葉県 銚子市 に本社を置き、醤油 ・各種調味料 の製造・販売を行う企業である。七代目当主濱口梧陵 が医学 をはじめ社会貢献 事業に尽力し、現在でも医薬品 原体(原薬)・医薬中間品・医薬化成品 ・診断薬などの製造・販売を行っている。
沿革
年表
1919年の広告
1645年 (正保 2年)
1854年 (安政 元年)
1864年 (元治 元年)
江戸幕府 より品質に優れた醤油として、最上醤油の称号を拝領、商標の右上にある「上」の由来となる。
1885年 (明治 18年)
八代目当主濱口儀兵衛 は国産ソース第一号である醤油ベースのソースを作り「新味醤油」と命名し、製造特許を取得した。また、このソースを木樽 に詰めサンフランシスコ に送り、現地で陶器 製の三角型の容器に詰め換え「ミカドソース」として販売した。
1895年 (明治28年)
1899年 (明治32年)
1928年 (昭和 3年)11月
個人経営から株式会社組織へ改め、ヤマサ醤油株式会社を設立。
1946年 (昭和21年)6月6日
1957年 (昭和32年)
ヤマサ醤油研究員の國中明(後に常務取締役研究所長)が、鰹節のうま味成分がイノシン酸 の中の5′-イノシン酸であることを見出し、酵母のリボ核酸(RNA)分解法によって工業的に5′-イノシン酸を作る酵素を生産する微生物を発見した。
1958年 (昭和33年)
1961年 (昭和36年)
1964年 (昭和39年)
5′-イノシン酸と5′-グアニル酸の工業的生産に成功。國中明は、これらのうま味成分は、昆布のうま味であるグルタミン酸ナトリウムと混合すると驚異的にうま味が増幅する「味の相乗効果」を発見し、「恩賜発明賞」を受賞した。
1970年 (昭和45年)
うま味調味料の開発でヤマサが扱う核酸は、医学生物学において基本的な物質であり、核酸関連物質を医薬品 として開発することに目を向けて、医薬品分野に事業範囲を拡大し、医薬品製造業の許可を取得。
1976年 (昭和51年)
「C-AMP測定キット」「C-GMP測定キット」などの核酸関連物質を研究用試薬として発売。
1979年 (昭和54年)
業界初のびん入りストレートつゆ「ヤマサ専科シリーズ」を発売。
1986年 (昭和61年)
体外診断用医薬品として「サイクリックAMPキット ヤマサ」、「PTHキット ヤマサ」の製造承認を取得し、本格的に体外診断用医薬品の製造・販売を開始。
1988年 (昭和63年)
診断薬部を設立、国内企業でも最も早い段階でモノクローナル抗体 取得技術の確立に成功し、同抗体技術を体外診断薬製品の開発に活用、展開することにより新しい体外診断用医薬品を創出。
1992年 (平成 4年)
YAMASA CORPORATION U.S.A. 設立。
共同開発していた白血病 の治療薬「シタラビンオクホスファート ヤマサ」の製造承認を取得。
「ヤマサ有機丸大豆の吟選しょうゆ」発売。
1993年 (平成5年)
日本商事が開発し臨床試験を行った帯状疱疹 治療の抗ウィルス薬 「ソリブジン 」にヤマサが原薬を提供した。ソリブジンは帯状疱疹ウイルスに著効のある新しい抗ウイルス薬であったが、抗癌剤治療薬「5-フルオロウラシル」との飲み合わせの副作用により投与された患者が亡くなる事件があった。
1994年 (平成6年)7月
1995年 (平成7年)7月
共同開発していた白血病の治療薬「ペントスタンチン」の製造承認を取得。
1997年 (平成9年)
1999年 (平成11年)
2000年 (平成12年)
2002年 (平成14年)
本社醤油製造工場の醤油仕込みタンクに業界初のスーパーステンレスタンクを導入。
2004年 (平成16年)
アメリカ バージニア州 のたまり醤油メーカーであるSan-J INTERNATIONAL, Inc.に資本参加。
2005年 (平成17年)
San-J INTERNATIONAL, Inc.の親会社であった、サンジルシ醸造 株式会社(三重県桑名市)の営業譲渡を受ける。
2008年 (平成20年)
タイ バンコクに醤油の販売会社 YAMASA THAILAND CO.LTDを設立(現在のYAMASA ASIA OCEANIA CO.,LTD.)。
2009年 (平成21年)
開封後も醤油の鮮度を保持する機能のある容器を開発し「ヤマサ鮮度の一滴 特選しょうゆ」を首都圏 限定で発売[ 8] 。2010年 (平成22年)に販売エリアを全国に拡大した[ 9] 。
2011年 (平成23年)
2014年 (平成26年)
パリ の食品見本市シアルでのイベント、ワールド・ツアー・バイ・シアルにて、「鮮度の一滴150ml鮮度パック」が銀賞を受賞(世界127品中の2位)。
2015年 (平成27年)
2016年 (平成28年)
本社銚子工場にしょうゆ味わい体験館がオープン[ 10] 。
2018年 (平成30年)
付記
稲むらの火
安政南海地震による大津波が広村を襲来した際のエピソードを基にした作品である。1920年 にラフカディオ・ハーン(小泉八雲 )が実話を基に小説 化し、"A Living God(生ける神)"として梧陵を紹介した。その後、戦前文部省 が教科書 の題材を公募した際に小学校教師であった中井常蔵氏が応募、書き改められた物語が「稲むらの火」として戦前の国定小学国語 教科書に採用された[ 11] 。濱口梧陵は安政南海地震後、復興 と将来の津波被害を防止するため大堤防 築造工事(長さ600m、高さ5m)などに尽力した[ 3] 。震災復興以外にも、教育 や人材育成のため広村に「稽古場」の設置、火災 にあった江戸 (神田お玉ヶ池)の「種痘所」 再建への資金援助、安政コレラの大流行の江戸から銚子への蔓延を防いだ。2007年 (平成19年)4月22日 に、濱口梧陵 の記念館と津波防災教育センターから成る防災 教育施設の「稲むらの火の館 」が和歌山県 有田郡 広川町 に開館した[ 12] 。
ヤマサ鮮度の一滴 特選しょうゆ
開封後も醤油の鮮度を保持する機能のある容器を開発・採用し、醤油の色や風味を70日間保つことができる商品として発売された[ 8] [ 13] 。通常、醤油は空気に触れると酸化して風味の劣化が進み、容器に入った醬油も開封後は1カ月ほどで黒ずんでくる。この新容器の注ぎ口は約2マイクロメートル の薄い膜となっており、重さで口が開く構造となっている[ 13] 。この注ぎ口は毛細管現象 によって逆止弁 のような働きをするため開封後も空気が入らない構造(真空 構造)となっている[ 8] [ 13] 。同商品の容器は新潟県 三条市 に本社を置く悠心との共同開発によって誕生し[ 13] 、同社が開発したエコ 容器、P.I.Dが採用された[ 14] 。ちなみに、同商品は2010年 (平成22年)2月22日 に販売エリアを全国に拡大し[ 9] 、2011年 (平成23年)にグッドデザイン賞 を受賞[ 15] [ 16] 、醤油に「鮮度」という新たな価値を消費者に提供した。今では当たり前になりつつある「鮮度保持容器」の先鞭をつけた。
事業所
国内及び海外に事業所や関連会社を設けている[ 17] 。
国内事業所
本社
支社
支店
営業所
工場
銚子工場:千葉県銚子市新生町2-10-1
成田工場:千葉県成田市 浅間452-5
海外事業所
YAMASA CORPORATION U.S.A
YAMASA EUROPE B.V.
YAMASA ASIA OCEANIA CO.,LTD.
San-J INTERNATIONAL, Inc.
工場見学
銚子工場で工場見学 を行っている。見学内容およびアクセス情報は下記を参照[ 18] 。
見学内容
しょうゆ味わい体験館に展示されているディーゼル機関車「オットー」(2012年3月)
映像でヤマサ醤油の歴史や醤油の造り方などを知ることができる。「タップトーク」は、直径6mもの大きな桶を模したスペースの中に入り、もろみ から醤油になるまでの変化を足元の映像と音で楽しむバーチャル体験プログラムである[ 18] 。
「しょうゆ味わい体験館」では、ヤマサ醤油の歴史的資料や昔のしょうゆ造りに使用した道具の展示があり、銚子でしょうゆ造りが栄えた理由や、昔のしょうゆ造りの様子を見学できる。
なお、銚子工場には国内現存で最古のディーゼル機関車 (通称「オットー機関車」)が展示・保存されている[ 19] [ 20] 。
アクセス
鉄道
自動車
事業内容
醤油・食品の製造販売
飲食店のテーブルに置かれたヤマサ有機しょうゆ(2006年9月)
醤油 主な商品
ヤマサしょうゆ
ヤマサ有機丸大豆の吟選しょうゆ
ヤマサ丸大豆しょうゆ
ヤマサ減塩しょうゆ
ヤマサさしみしょうゆ
ヤマサ鮮度の一滴 特選しょうゆ
ヤマサ鮮度生活
ヤマサ絹しょうゆ
つゆ 主な商品
ヤマサ昆布つゆ
ヤマサぱぱっとちゃんとこれ!うま!!つゆ
ヤマサそうめん専科
ヤマサざるそば専科
ぽん酢 主な商品
他の食品 主な商品
ヤマサフレーブ
ヤマサ日東味の精
ヤマサ風味だし
ヤマサ大漁だし
医薬・化成品の製造販売
リボ核酸分解法によるうまみ調味料の製造販売を開始以降、核酸関連物質に特化した医薬・化成品事業を展開し、医薬品原薬、医薬品原料、食品添加物 、化粧品 原料などの製造販売を行っている。新型コロナウイルス のパンデミックにおいては、mRNAワクチン の製造に欠かせない材料であるシュードウリジンを製造して海外のmRNAワクチン メーカーに供給した。
体外診断薬の製造販売
甲状腺疾患 や内分泌疾患 など各種疾患 の診断補助に用いる体外診断用医薬品の製造販売を行っている。
テレビ番組
スポンサー番組
現在
過去
ほか
CM
出演者
現在
過去
CMソング
「こんこん昆布つゆ」(作詞:水天宮、作曲・編曲:長沢ヒロ )
昆布つゆのコマーシャルソング 。芦屋雁之助が歌ったものが1998年 2月11日 にCD (シングル 「お入り」のカップリングソング )として発売された[ 26] 。同曲は、CMソングのコンピレーション・アルバム にも収録されたことがある[ 27] [ 28] 。
類似商号
脚注
関連項目
本社(研究所と銚子工場を併設)付近にあった日本国有鉄道 (国鉄)総武本線 の貨物駅 (廃駅 )。銚子駅 側(新生駅構内西側)の本線北側に専用線 があり、鉄道貨物輸送 を行っていた(現在は廃線 )。専用線は仲ノ町駅 (銚子電気鉄道 銚子電気鉄道線 )との間にも敷設していたが、こちらも廃線となっている。
濱口儀兵衛と濱口梧陵が江戸 で醤油工場を経営する実業家 として登場する。原作は「JIN-仁-#市井の人々 」を、テレビドラマは「JIN-仁- (テレビドラマ)#市井の人々 」をそれぞれ参照。なお、濱口梧陵はテレビドラマには登場しない。
外部リンク
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