レースクイーン
こちらはレースクイーンではなく、主催者が雇ったグリッドガール(ドイツツーリングカー選手権 )
3人が並んでいるレースクイーン
マカオグランプリ
レースクイーン (race queen)は、モータースポーツ に参戦する各チームのスポンサー のコンパニオン であり職業美人 である。「RQ」と略される場合もある。
レース前配置(グリッド )を案内するため、レーサーの名前と番号が書かれたプラカード を持っている係員は、主催者が雇ったグリッドガール (Grid-Girl)である。
概要
元々はレース主催者などに雇われた(選ばれた)数名の女性(例えば鈴鹿サーキットクイーン 等)で、優勝者の表彰などレース運営の中で一定のシンボル的役目を担う者を指す言葉だったが、現在ではそれらの女性をサーキットクイーンと呼び、チームに雇われたキャンペーンガール (キャンギャル )をレースクイーンと呼ぶようになっている。また「レースクイーン」という用語は元々英語のPromotional model のサーキット版というニュアンスで作られた和製英語 で、英語では上記の「Promotional model」に加え「Paddock girls 」などの名称が用いられている。しかし昨今では性差別 の観点から、先進国 では廃止の方向性にある。
レースクイーンの分類としては、純粋にレースクイーンだけを生業とする者がいる一方で、学生やその企業の従業員が兼業で就業することもままある。また、タレントや俳優として名を成した者もしくはグラビアアイドル などでデビューした後に年契約でレースクイーンを務める、コスプレイヤー やネットアイドル といった「アイドル予備軍」が参入する、など経歴や形態が多様化している。
歴史
1960年代 後半に小川ローザ らがサーキットでモデルとして活躍したのが起源といわれている[ 1] 。以後その形態にあまり変化はなく、開会式や表彰式のアシスタントとして従事する程度であったが、1984年 に開催された日本最高峰のオートバイ耐久レース「鈴鹿8時間耐久ロードレース 」で、一部チームのキャンペーンガールがチーム名のロゴマークを入れた水着 を着て応援し、話題となった。
1980年代 後半のバブル経済 絶頂期に入ると、チームやスポンサー企業のロゴが入った極めて布地面積が少ないハイレグ・レオタード を身に纏った女性たちがサーキットに多数出現し、人気を博した。それ以降、このようなスタイルがレースクイーンの主流として定着した。特にオートバイのレーシングチームでキャンペーンガールを務めた飯島直子 と岡本夏生 の大ブレイクで、レースクイーンはサーキットを飛び出して様々な舞台へと進出するようになっていった。日本のレースクイーンは芸能界、人気タレントやアイドル特に映画女優への登竜門的存在となっている[ 2] 。当時は日本以外の国では余り存在しておらず、レースクイーンは日本が発祥の地であると言われ、次第と海外のレースにも広がった[ 1] 。
現状
現在はレースクイーンを多く輩出する芸能事務所 が多数あり、レースが行われない週末のカメラ小僧 向けのアマチュア撮影会 に所属のレースクイーンをモデルとして出演させて収益を得る、といったことが行われている。そのため最近では、レースはスポンサーアピールだけでなく、撮影会の集客の宣伝の場ともなっている。また、ワンエイトプロモーション 、フェスタソーレ 、エモーションカンパニー などレースクイーンに特化したタレントマネージメント・撮影会事業を展開する業者も登場している。
逆に「レースクイーン」の肩書き欲しさに、イベントコンパニオン 関連の事務所(中でもパチンコ 系のイベント会社)が自社の資金でレーシングチームのスポンサーとなり、自社のコンパニオンをレースクイーンに起用するといった例も見られる。過去にはAV女優 をレースクイーンとしたソフト・オン・デマンド の例(2002年のフォーミュラ・ニッポン で山本清大 をスポンサードした)もあるが、当時プレスのみならずレース関係者、一般の観客の間からも激しい批判が起こった。
国内モータースポーツ で一番動員力があるSUPER GT (旧全日本GT選手権 )は注目度も高いため、年々レースクイーンの数も増加の一途をたどった。特に2003年 には飽和状態に達し、1レースで200名以上、1台のマシンに10名以上が立つチームも現れたことから、翌2004年 以降は競技の進行を円滑に行うため、1台に対する人数の規定が設けられた。しかし、1レースに立てるのが4人だけで、実際は2007年までは5人以上登録していたチームも存在したため、全体で160〜180人程度いた。2008年に正式に公式規則で登録できるのが1シーズン4名までと規定され、人数も100人程度に減少した。(2008年から2011年までは4名まで、2012年より6名まで、2016年から登録人数は8人に緩和、1レースに立てるのは6人で変わらず)
そもそも日本で行われるレースが少ないことやレースクイーンとしてのギャランティーも下落している。岡本夏生・飯島直子らが人気レースクイーンとして活躍していたバブル期はレースウィークだけでも数十万円という時代はあったが、1990年代後半は所属事務所がレースクイーンになりたいモデルを無料で送り出すケースも出始め、ギャラのケタも一つ少なくなった[ 3] 。狭き門のオーデションを通過してレースクイーンになってもレースのない時期はイベントコンパニオン・撮影会モデルや、一般企業のOLなどの副業で生計を立てる者がほとんどである。
1990年代 後半から、「レースクイーン・キャンギャル情報誌」を名乗る書籍(雑誌、ムック 等)が雨後の筍のごとく次々と創刊されたが、大方ほんの数年で軒並み休刊 ・廃刊 に追いやられている。しかし、『オートスポーツ 』別冊として当初スタートした『ギャルズパラダイス』などはモーターショー や見本市 のコンパニオンとして出演するモデル達も取りあげることで現在も発行を続けている。
世界での状況
欧米では「Paddock Girls」「Grid Girls」等の名称で、決勝レース時のダミーグリッドでの看板持ちなどに女性を起用することが多いが、これは基本的にレース主催者側が用意するもので、日本のレースクイーンのように各チームと契約して、胸を強調するような服を着てレース毎に帯同する形態とは異なる。
ただ欧米ではこれらの女性についても「性差別 の象徴」とみなして批判する意見があり、実際にFIA 世界耐久選手権 (WEC)では2015年よりグリッドガールを原則廃止している[ 4] (ただし富士スピードウェイ で行われる日本ラウンドでは、2017年現在もグリッドガールが存在している[ 5] )。
F1でも2015年ブラジルグランプリ では「女性だけを起用するのは不公平」との意見から「Grid boy and girl」として男女混在形式が導入されたほか[ 6] 、2017年末にはWEC同様にグリッドガールを原則廃止すべきとの議論が巻き起こった(ただしドライバーやチーム関係者はこれに反対している)[ 7] 。
廃止
鈴鹿サーキットクイーン は2020年末を持って活動及び新規募集を終了した[ 8] 。
性差別に関するマナーは欧米は当然のごとく、ユーラシア・アジアでも非常に厳しくみられる傾向が21世紀に入り急激に強まっており、グリッドガールはその批判の先頭に立たされてきたこともあって、2018年 1月31日、フォーミュラ1 は「現代の社会規範にそぐわない」として2018年シーズン からグリッドガール(レースクイーン)の廃止を決定した[ 9] 。グリッドガールに代わって「グリッドキッズ」を導入した[ 10] 。グリッドボーイ を試験的に導入したうえでの変更であった。
日本でも、レースクイーン自体の廃止にまでは至らないものの、名称変更や対象の拡大等で批判をかわそうという動きがある。一例としてSUPER GTでは、2024年 より従来のレースクイーンに相当する人物を「レースアンバサダー」と呼称し、対象を女性に限らないなどの変更を行う[ 11] [ 12] 。
コスチュームの変遷
コスチュームのデザインは、同じチーム・スポンサーであっても毎年細部を含めて変更されており、その時代の流行が多く反映されている。
1980年代以前
サーキットのイメージガールである、本来のレースクイーンの活躍が見られた時期。
コスチュームはTシャツ かタンクトップ とホットパンツ の組み合わせに、足元はブーツ といういでたちが一般的。季節によって、丈の短いジャケット が加わる場合もある。たすき は必携で、時代やサーキットによっては、ミニスカート やティアラ も見られる。
まだロングヘア はあまり見られない。
1980年代から1990年代前半
当時のエアロビクス ブームの影響から、足ぐりの角度を極端に上げたハイレッグカット(ハイレグ )のワンピース型レオタード が主流となり、これにスポンサー名を直接プリントするか、またはたすきが用いられる。下には海外製を中心とした、ジャズダンス 用のマチの見えない光沢のあるストッキング が組み合わされた。また、Tバック タイプのレオタードを着用するレースクイーンも多く見られた。
ピンヒール と大きな傘、そして当時流行の髪形(初期はレイヤー、その後ワンレン やソバージュ )とともに、レースクイーンの象徴的なスタイルとして強い印象を与えた。フェイスメイク は色黒、太眉が主流であった。
1990年代後半
ハイレグ路線から転換し、極端なミニスカートのワンピースが主流となる。スパンデックス 素材で作成された体のラインがそのままに出るものから、徐々にエナメル素材(PVC )のものへと変化していった。
ワンピースの利点は布地面積が広いことであり、スポンサーロゴが大きくプリントされ、企業やチームカラーで色とりどりにデザインされた。大きな襟が付いていることも特徴的だった。
ハイレグに代わるセクシーさを求め、大胆なスリットを設けたり、バストの部分をくり抜き、谷間を強調するデザインが現れた。
2000年代初頭
大きな変化としてはワンピースからセパレートタイプへの移行が挙げられる。ウエスト部分を露出したアンダーバストまでの上衣(ホルターネック・チューブトップ ・ハーフトップ やキャミソール が中心)とミニスカートに、ブーツ(夏季はサンダル )、春や秋には七分袖丈の上着を合わせるというスタイルが主流となった。ワンピース時代と比べスポンサーロゴは小さくなったが、カラーリングの組み合わせが容易になった。
またパンツスタイルも採用されるようになり、長ズボン (スラックス )と短いホットパンツ に大別される。この場合もサイドを網状にしたりカッティングしたりするなど大胆な露出が施されていた。
2000年代後半
引き続きセパレートタイプが主流となっているが、色や素材の違うパターンを織り込んで縫製された、細部にわたる複雑なデザインのものへと変化している。またショートパンツ はローライズ タイプが主流となっている。またアクセサリー・帽子・上着もチームによってさまざまに取り入れられている。さらにスポンサーによってはドレスやメイド服 、セーラー服 など、萌え 系コスプレ を意識したデザインも登場しており、露出一辺倒からの転換がうかがえる。
レースクイーンのイベント
レースクイーン出身タレント(50音順)
「Category:レースクイーン 」「Yahoo 検索エンジン 」も参照
脚注
関連項目
ウィキメディア・コモンズには、
レースクイーン に関連するカテゴリがあります。
イベント、会場のマスコット