ロスト・イン・トランスレーション
『ロスト・イン・トランスレーション』(Lost in Translation)は、2003年のアメリカ合衆国・日本のロマンティック・コメディ映画。監督・脚本はソフィア・コッポラ、出演はビル・マーレイとスカーレット・ヨハンソンなど。 東京を舞台に、倦怠期のハリウッド・スターと、孤独な若いアメリカ人妻の淡い出会いと別れを描く。 本作品により、ソフィア・コッポラは一躍アメリカで最も注目される新鋭若手監督になった。400万ドルと少なめな予算と27日間で撮影されたこの作品は1億ドル以上の興行収入を収め、多くの米映画賞を総なめにした。2004年のアカデミー賞では、主要4部門(作品賞、監督賞、主演男優賞、オリジナル脚本賞)にノミネートされ、脚本賞を受賞。 コッポラ自身が若いころ日本に滞在しており、その体験をもとにした半自伝的作品と告白している。『ロスト・イン・トランスレーション』は言語問題だけでなく夫と妻、男と女、老人と若者、友人間などの現代社会多くの人間関係における相互理解の難しさ(アノミー)をテーマとしている。その孤独感を増幅する演出として、日本以外での上映に際しても、日本語のセリフには意図的に字幕を添付していない。 渋谷スクランブル交差点や東京メトロ、また絶対にロケの許可が降りないことでも有名な東海道新幹線での撮影はゲリラ撮影の強行によって乗り切られ[3][4]、映画の成功と同時に渋谷スクランブル交差点は東京を代表する世界的な有名スポットとなった[5]。知らずにヤクザの縄張りで撮影してしまった際には一瞬即発となる場面もあったという[6]。 ストーリー初老のハリウッド俳優、ボブ・ハリス(ビル・マーレイ)は、サントリーウイスキーのテレビCMに200万ドルで出演するために来日し、パークハイアット東京に到着するが、うまく眠ることができない。同じホテルに滞在しているシャーロット(スカーレット・ヨハンソン)は、セレブ写真家の夫ジョン(ジョバンニ・リビシ)に同伴して来日している。彼女は大学を卒業したばかりで結婚して2年になるが、ジョンは撮影の仕事でシャーロットをほったらかしているばかりか、映画のプロモーションのためにたまたま同じホテルにいたアメリカ人女優ケリー(アンナ・ファリス)との交流に忙しい。電車に乗って東京の街並みを散策したり神社を見たりするが、心が動かず虚しさを感じ、アメリカの友人に電話をかけても話を聞いてもらえない。同時にボブのほうも、倦怠気味の25年の結婚生活に疲れて、ミドルエイジクライシスをむかえている。 ある夜、ボブが長時間にわたるCM撮影を終え、ホテルのバーのカウンターでウイスキーを飲みながら疲れを癒していると、ジョンや友人たちとテーブル席についていたシャーロットがボブがいることに気づき、ウエイターづてに日本酒の杯を渡す。数日後、うまく眠れないシャーロットがバーに行くと、ボブは同じ席でウイスキーを飲んでいて、二人はお互いの生活や結婚、不眠について話をする。それからホテル内で顔を合わせるうちに、二人は親しくなっていく。夫が週末まで仕事で不在になることから、シャーロットは日本人の友人“チャーリー”と会うことにし、一緒にボブを誘う。ボブは派手なシャツを着てシャーロットの部屋に現れ、二人はチャーリーやその友人たちと一緒に夜の東京を遊びまわる。その後も何度か一緒に東京を散策するうちに、二人の間に友情が芽生えていく。 シャーロットはひとりで京都を訪れ、静かな町並みと雰囲気を味わう。その間にボブはテレビ番組にゲスト出演するが、それ以外の時間を無為に過ごす。ボブがいつものようにホテルのバーでウイスキーを飲んでいると、バーの専属バンドのヴォーカリスト(キャサリン・ランバート)に声を掛けられ、成り行きで一夜をともにする。翌朝、彼女がいるタイミングで京都から戻ったシャーロットがやってくるが、女性の声に気づいて部屋に入らず帰っていく。その後、ボブとシャーロットは昼食でしゃぶしゃぶの店に行くが、気まずさは解消されない。 ボブがアメリカへ発つ前夜、ホテルの火災報知機が鳴り、宿泊客は寝間着のままホテルのエントランスに避難させられる。ボブがシャーロットの姿を見つけて話し掛けると、二人の間にやがて和やかなムードが戻り、二人はホテルのバーへ行って酒を飲む。部屋へ戻るエレベーターのなかで、ボブはシャーロットの両頬に別れのキスをしている間にエレベーターを降りそこね、シャーロットが先に降りて別れを言う。 翌朝、ホテルをチェックアウトするボブがシャーロットの部屋に電話を掛けるが、彼女は電話に出ない。もう会えないかと思ったときにシャーロットがホテルのロビーに現れ、二人は互いに別れを告げる。広告代理店の担当者らと記念撮影をするボブは、シャーロットがエレベーターに乗り込んでいく姿を見つめる。空港へ向かうタクシーの窓から、ボブは東京の雑踏の中にふたたびシャーロットの後ろ姿を見つける。ボブはタクシーを降りると彼女を追って声を掛け、人混みのなかでシャーロットを抱き締める。ボブが彼女の耳元で何かを囁くと、シャーロットは泣きながらうなずく。ボブはシャーロットにキスをし、笑顔を見せてからタクシーに乗り込み、空港へ向けて出発するところで物語は幕を閉じる。 キャスト主な登場人物
その他キャスト
キャッチコピー
主なロケ地作品の評価映画批評家によるレビューRotten Tomatoesによれば、批評家の一致した見解は「ユーモアとほのかなペーソスのバランスを効果的に取っており、ソフィア・コッポラはビル・マーレイとスカーレット・ヨハンソンの両方にとってのショーケースとなる感動的でメランコリックな物語を作り上げている。」であり、232件の評論のうち高評価は95%にあたる220件で、平均点は10点満点中8.40点となっている[7]。 Metacriticによれば、44件の評論のうち、高評価は42件、賛否混在は2件、低評価はなく、平均点は100点満点中89点となっている[8]。 受賞歴
映像ソフト
日本では2004年12月3日に東北新社からDVDが発売された[1]。 出典
外部リンク
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