『原子爆弾解体新書〜ハウ・トゥ・ディスマントル・アン・アトミック・ボム 』(げんしばくだんかいたいしんしょ ハウ・トゥ・ディスマントル・アン・アトミック・ボム、How to Dismantle an Atomic Bomb )は、アイルランド のロックバンド 、U2 の11枚目のスタジオ・アルバム 。2006年のグラミー賞 において最優秀アルバム賞および最優秀ロック・アルバム賞を受賞した評価の高いアルバムである。
概要
タイトルはボーナストラックの「Fast Cars」の歌詞の一節から。Bombとは先年亡くなったボノの父親ボブ・ヒューソンのことである。[ 1]
当初、クリス・トーマスをプロデューサーに迎えてセッションを行っていたが、満足するものが出来上がらず、スティーブ・リリーホワイト、ブライアン・イーノ、ダニエル・ラノワ、フラッド、ジャックナイフ・リー、ネリー・フーパーなどの一流プロデューサーを次から次に注ぎ込んでなんとか完成させた。[ 2]
自ら先駆けとなったロックンロールリバイバル・ブームに乗っかったエッジのギターがギンギンに唸り、アダムとラリーのリズム隊がドタバタ忙しいロックアルバムで、当時ボノは「ファーストアルバムのつもりで作った」とか「The Who の『Who's Next 』を意識した」とか「Buzzcocks やSiouxsie and the Banshees やEcho & The Bunnymen などU2を作ったバンドを聴いていた」と発言しており、Black Rebel Motorcycle Club やYeah Yeah Yeahs など当世のバンドの名前にも言及していた。[ 3]
アルバムのセールスは900万枚を超え、再びグラミー賞を多数受賞して商業的にも批評的にも大成功し、日本でもっとも売れたU2のアルバムとなった……が、ボノは「曲は最高なのに部分が全体を超えていない」という趣旨のことを述べ[ 2] 、音楽評論家のジョン・ウォーターズが「この20年もの間トップの座にあり、そこから滑り落ちまいとしているバンドによる、これといって特徴のないアルバム」という辛辣な評[ 4] があったからもわかるとおり、いまいち煮えきらない点があったのも事実。この頃からボノの政治活動が本格化し、レコーディングを休みがちだったことも一因かもしれない。
なおアルバム製作中にフランスで本作のサンプルCDが盗まれ、ネット流出が心配される騒ぎが起こった。
シングル曲「ヴァーティゴ 」、「オリジナル・オブ・ザ・スピーシーズ」は、iPod のテレビCM曲として知られる。
グラミー賞獲得歴
最優秀アルバム賞(2006年)
最優秀ロック・アルバム賞(2006年)
最優秀楽曲賞 - サムタイムズ・ユー・キャント・メイク・イット・オン・ユア・オウン(2006年)
最優秀ロックパフォーマンス・グループ部門 - ヴァーティゴ(2005年)
最優秀ロックパフォーマンス・グループ部門 - サムタイムズ・ユー・キャント・メイク・イット・オン・ユア・オウン(2006年)
最優秀ロックソング部門 - ヴァーティゴ(2005年)
最優秀ロックソング部門 - シティ・オブ・ブラインディング・ライツ(2006年)
最優秀短編ミュージックビデオ賞 - ヴァーティゴ(2005年)
収録曲
楽曲一覧
イギリス、アイルランド、日本のボーナストラック # タイトル 作詞 作曲・編曲 プロデューサー 時間 12. 「ファスト・カーズ 」 ボノ、エッジ リリーホワイト 3:43 合計時間:
53:09
楽曲解説
ミラクル・ドラッグ - Miracle Drug
U2のメンバーの母校マウントテンプル・スクールの同窓生で、詩人・作家であるクリストファー・ノーランについての曲。彼は脳性麻痺をもって生まれたが、母親の愛情と献身的な介護によって、特製のコンピューターとキーボードで文字を打てるようになり、文才を発揮して、詩集や小説を著し、アイルランド最高の文学賞であるウィットブレッド賞を受賞した。2009年、異物を喉に詰まらせて、43歳の若さで亡くなった。[ 2]
「With or Without You」と同じコード進行。「All That You Can't Leave Behind」のアウトテイク「Levitate」の一部が使われている。ボノとエッジの他、ラリーもコーラスに加わった「Numb」と並ぶ三人ヴォーカルの曲(でもラリーの声は聞こえない)。
2004年イグアナ(スペイン)年間ベストシングル第35位
ラヴ・アンド・ピース・オア・エルス - Love and Peace or Else
「All That You Can't Leave Behind」のアウトテイク。
ア・マン・アンド・ア・ウーマン - A Man and a Woman
エンジニアがミキシングをしていたら、ボノがそれを気に入り、ベースギターを手に取って歌い始めて生まれた曲。エッジが弾いているアコースティック・ギターは別の曲から持ってきて、繋ぎ合わせたものである。ボノのヴォーカルにはThin Lizzy のフィル・ライノット の影響があるのだという。ボノは「夏のニューヨークでポーチに座っているようなサウンドだ。僕はThe Clash とマービン・ゲイ を一つに繋ぎ合わせてみたかったんだ」と評している。曲のテーマは女性に対する忠誠とロマンスの再発見。[ 2] ボノは野放図なセックスなど退屈な代物で、1人の女性を愛するほうがずっとセクシーだという考え方の持ち主である。
ツアーでは1度も演奏されたことがないが、ビル・クリントン の慈善事業と65歳の誕生日を祝うコンサートで、ボノとエッジによってアコギで演奏されたことがある。
クラムズ・フロム・ユア・テーブル - Crums from Your Table
フランスの別荘で、ボノとエッジが酔っ払った状態で書いた曲で、最貧国が先進国に「テーブルの上のパン(Crumbs from Your Table)」、つまり経済援助をしてもらうために、平身低頭の姿勢でいなければならないことに怒っている。[ 2] Vertigoツアーで7回演奏された。
ワン・ステップ・クローサー - One Step Closer
「All That You Can't Leave Behind」のアウトテイクで、丁度、近くに来ていたラノワにペダルスチールに加わってもらって、ボノとエッジはギターという編成でセッションして作った曲。ボノが父親のボブのために作った曲で、One Step Closerとは、ボノが「(瀕死の)父親は神を信じていると思うかい?」とノエル・ギャラガー に尋ねると、彼は「(神というものを理解できるところへ)一歩近づいているじゃないか」と答えたことが由来。ライナーノーツにはノエル・ギャラガーへの感謝の念が記されている。ボノは「The Velvet Underground から始まって、カントリーソングのようになった」と述べているが、エッジはグラム・パーソンズ のようだと述べている。[ 2] ライブで演奏されたことは1度もない。
ヤハウェ - Yahweh
レコーディングの前からエッジが構想を温めていた曲で、最初のテイクでボノがヴォーカルパートを付け加えたことにより、ドラマティックに発展。メンバーによれば、「書いた」のではなく「書かれた」曲の一つだそうだ。クリス・トーマスが去った後、、ラノワとリリーホワイトがプロデュースを担当し、ラノワなどはマンドリンまで採り入れようとしたが、完成作はトーマスプロデュース時のものとほとんど変わらないのだという。[ 2]
ファスト・カーズ - Fast Cars (英国盤・日本盤ボーナストラック)
評価
イヤーオブ
2004年ローリングストーン年間ベストアルバム第7位[ 5]
2004年ローリングストーン読者が選ぶ年間ベストアルバム第1位[ 6]
2004年アンカット年間ベストアルバム第35位[ 7]
2004年スピン年間ベストアルバム第29位[ 8]
2004年NME年間ベストアルバム50第18位[ 9]
2004年Qマガジン年間ベストアルバム第4位[ 10]
2004年Mojoの読者が選ぶ年間ベストアルバム第9位[ 11]
2004年ワード年間ベストアルバム第9位[ 12]
2004年Humo(フランス)年間ベストアルバム第6位[ 13]
2004年イグアナ(スペイン)年間ベストアルバム第29位[ 14]
2004年スヌーザー年間ベストアルバム第7位[ 15]
2004年IFPI・2004年ベストセラーアルバム第4位
2006年グラミー賞最優秀アルバム賞
2006年グラミー賞最優秀ロック・アルバム賞
2006年メテオラ・ミュージック・アワード最優秀アイリッシュアルバム
オールタイム
2006年BBCレディオ2が選ぶオールタイムベストアルバム第63位[ 16]
2010年ローリングストーンが選ぶ00年代ベストアルバム100/ 68位[ 17]
2010年Qマガジンが選ぶ21世紀のアーチスト&アルバム第33位[ 18]
2011年Qマガジンが選ぶ人生のアルバム250第95位[ 19]
脚注
^ “U2『HOW TO DISMANTLE AN ATOMIC BOMB』制作秘話:U2は自ら“核(atomic)の時代”を築く ”. uDiscoverMusic | 洋楽についての音楽サイト . 2024年4月5日 閲覧。
^ a b c d e f g U2 (著), 前 むつみ (監訳), 久保田 祐子 (翻訳)『U2 BY U2』シンコーミュージックエンタテイメント、2006年11月1日。
^ SNOOZER(スヌーザー) 2004年12月号
^ “Surrender to Peter Pan” (英語). The Guardian . (2004年12月6日). ISSN 0261-3077 . https://www.theguardian.com/music/2004/dec/06/popandrock.u2 2024年4月5日 閲覧。
^ “Rocklist.net....Rolling Stone (USA) Lists Page 2... ”. www.rocklistmusic.co.uk . 2024年4月5日 閲覧。
^ “Rocklist.net....Rolling Stone (USA) Lists Page 2... ”. www.rocklistmusic.co.uk . 2024年4月5日 閲覧。
^ “Rocklist.net...Uncut Recordings Of The Year Lists ..... ”. www.rocklistmusic.co.uk . 2024年4月5日 閲覧。
^ “Spin Magazine End Of Year Lists ”. www.rocklistmusic.co.uk . 2024年4月5日 閲覧。
^ “Rocklist.net...NME End Of Year Lists 2004... ”. www.rocklistmusic.co.uk . 2024年4月5日 閲覧。
^ “Rocklist.net...Q End Of Year Lists Lists ..... ”. www.rocklistmusic.co.uk . 2024年4月5日 閲覧。
^ “Rocklist.net...Mojo End Of year Lists... ”. www.rocklistmusic.co.uk . 2024年4月5日 閲覧。
^ “Rocklist.net...The Word Lists... ”. www.rocklistmusic.co.uk . 2024年4月5日 閲覧。
^ “Rocklist.net...Humo - Albums of the year.. ”. www.rocklistmusic.co.uk . 2024年4月5日 閲覧。
^ “Rocklist.net....Iguana magazine Lists... ”. www.rocklistmusic.co.uk . 2024年4月5日 閲覧。
^ miz-to-abra. “SNOOZER年間ベストTOP10まとめ ”. Tumblr . 2024年4月5日 閲覧。
^ “Rocklist.net...UK BBC Radio Lists... ”. www.rocklistmusic.co.uk . 2024年4月5日 閲覧。
^ “Rocklist.net....Rolling Stone (USA) Lists Page 2... ”. www.rocklistmusic.co.uk . 2024年4月5日 閲覧。
^ “Rocklist.net...Q Magazine Lists.. ”. www.rocklistmusic.co.uk . 2024年4月5日 閲覧。
^ “Rocklist.net... Q - 1001 Best Ever Songs... ”. www.rocklistmusic.co.uk . 2024年4月5日 閲覧。
関連項目
アルバム
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