大和いも大和いも(やまといも)は、ヤマノイモ科のつる性多年草の芋で、奈良県在来のツクネイモの品種である。県内で古くから栽培されきた伝統野菜の一つとして奈良県 により「大和野菜」に認定されている。 関東などではイチョウイモを「やまと芋」と呼ぶが別の品種で、奈良県産の「大和いも」は粘り気の強いげんこつ型黒皮ツクネイモである。 歴史大和いもを含むツクネイモ群は、大陸から渡来したナガイモ(学名: Dioscorea opposita Thunb. 英: Chinese yam)の一種で、山に自生する日本原産のヤマノイモ(学名:Dioscorea japonica Thunb. 英名:Japanese yam)とは別の種である[1]。 →詳細は「ナガイモ」を参照 古い記録では、ヤマノイモ、ナガイモ両種を混同して「薯蕷」(あるいは「暑預」)の語が使われているとみられ、ナガイモの渡来時期が分かる資料はない。つくねいもの名前が最初に登場するのは『清良記』(1654年頃)、「薯蕷(やまのいも)」の栽培の記録があるのは『百姓伝記』(1681~1684年頃)、『農業全書』(1697年)[2]以降であり[3]、渡来時期は17世紀以前であると大雑把に推定されるのみである。 大和にかかわって「薯蕷」「暑預」の文字が現れる資料としては、
との記述がある。 江戸時代の『本草綱目啓蒙』[5]および『成形図説』[6]に「大和イモ」「大和芋」の名が現れるが、この頃は「仏掌薯(つくねいも)」を指していた。1924年(大正13年)の『本場に於ける蔬菜栽培秘法』(三農学士編 柴田書房)にも「大和蕷薯〔ママ〕 一名仏掌薯(ツクネイモ)」の項があり、この頃まで「仏掌薯(つくねいも)」が「大和いも」と呼ばれていたことが分かる[7]。 →「大和野菜 § 仏掌薯(つくねいも)」も参照
1881-82年(明治14-15年)頃の記録を記した『大和国町村誌集』には、「葛上郡組合村櫛羅 芋二万貫目(75t)」(現御所市)と記されている[8]。これが「大和黒皮」「櫛羅いも」とも呼ばれるげんこつ型黒皮ツクネイモ、つまり現在の「大和いも」であると考えられる。 一方で、奈良の食文化研究会は『出会い 大和の味』の「大和芋」の中で、「明治の中ごろ、大和の配置売薬家が丹波から種芋を持ち帰って植えられた」との説もあることを紹介している[11]。 1933年(昭和8年)、系統比較と選抜により、純系「やまといも」の育成が行われた。1935年(昭和10年)には南葛城郡大正村櫛羅(現御所市)に薯蕷試験地が開設されて品種改良試験が行われた。これにより県内の生産熱が高まり80haに作付けされ、大阪市場をはじめ各市場で「やまといも」の名声が高まった[9]。 奈良県で栽培される、げんこつ型黒皮ツクネイモの「大和いも」が、2005年(平成17年)10月5日、「大和の伝統野菜」として「大和野菜」に認定された。 特徴芋が球形をしたものをツクネイモ群と称し、表皮が黒いものは大和いも、白いものは伊勢いもと呼ばれるが、いずれも中身は白色である。 産地土質を選び、乾燥をきらうので、栽培が難しく、産地は限られる。現在は奈良県御所市の葛城山麓を中心に栽培され、産地の地名を取って「櫛羅(くじら)いも」とも呼ばれる。 利用法優れた品質から、高級料理の食材として珍重され、薯蕷饅頭やかるかんなど和菓子の原料に用いられる。 大和いもは親芋の下に子芋ができる姿から、円満な家庭と重ねて「めでたいいも」とか「孝行いも」とも呼び、おせち料理の煮物にも使われる[15]。 その他脚注
関連項目外部リンク
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