新世紀エヴァンゲリオン劇場版 シト新生
『新世紀エヴァンゲリオン劇場版 シト新生』(しんせいきエヴァンゲリオンげきじょうばん シトしんせい、英題:Neon Genesis Evangelion: Death and Rebirth)は、1997年3月15日公開の日本のアニメーション映画。『新世紀エヴァンゲリオン』の劇場版で、第 サブタイトルの「シト新生」は、DEATH & REBIRTH の直訳「死と新生」と「使徒新生」とを掛けている。略称は「シト新生」、「春エヴァ」、「デスリバ」。後のリメイク・リブート作品『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』と区別して、「旧劇場版」とも呼ばれる。 全国東映・東急系で公開。同時上映は『魔法学園ルナ LUNAR! 青い竜の秘密スッポコ魔法作戦!』(約10分)。 『DEATH』の再修正版『DEATH (TRUE)²』と第25話『Air』、第26話『まごころを、君に』の3編を合わせた、『新世紀エヴァンゲリオン劇場版 DEATH (TRUE)2 / Air / まごころを、君に』が1998年3月7日に上映された[2]。 概要主人公たちの内面を描いたテレビシリーズ第弐拾伍話と最終話の2話は、テレビシリーズ第弐拾四話までの伏線や謎の回収を完全に放棄しており、一般的な作劇の方法から見れば物語の完結と言えるものではなかった。本作品のパンフレットなどによれば、製作者もそのことは承知していたようである。そのため、テレビシリーズ放映終了1か月後の1996年4月に、最終2話は当初の脚本に沿った形でリメイクし、すでに順次発売されていたVHSとLDでソフトとして発売すること、次いで最終2話のリメイクとは別の完全新作の劇場版の製作・公開が発表された[3]。その後、この2つの企画は連動し、1996年11月1日に東京都内において記者会見が開かれ、そこで1997年春にテレビシリーズの総集編とリメイク版第25話・第26話をセットにした完結編『新世紀エヴァンゲリオン劇場版 シト新生』が、同年夏には完全新作の劇場版が公開されることが発表された。 岡田茂東映および、東急レクリエーション会長は「劇場版エヴァンゲリオンは、角川書店の方から持ち込まれ、ぜひ東映で配給して欲しいということで始めたものです。最初は20〜30の劇場で上映を始めたんです。それが、だんだん上映する映画館が増え、150館を超えるようになった。それで、あっという間に配給収入]が11億円にまでいってしまった。支援団体から『けしからん、まだ完結してないじゃないか。監督は何をやっている、完結編を早く作れ』ということになって、急遽完結編を作ることになった」[4]、「『失楽園』と『エヴァンゲリオン』は東映で作ってもよくて5億か6億円と普通の数字しか達成できないと判断し、非常に情熱があった角川書店の映画部に全部任せたんです」と述べている[4]。 前売券発売開始日の1996年11月23日には、早朝からオリジナルテレホンカード付きの前売券を購入するファンが行列を作り、一般メディアでも報道された。映画公開前には20万枚以上も売れ、当時の前売券の日本記録を更新したとされる[5]。 しかし、『REBIRTH』編の完成は当初の公開時期に設定されていた1997年春には間に合わないことが事前に判明したため、劇場公開1か月前の1997年2月14日に緊急記者会見が開かれた。その席上で総監督の庵野秀明が謝罪を行い、春の映画では『DEATH』編と制作途中の『REBIRTH』編が公開され、夏に完全版『REBIRTH』編となる『新世紀エヴァンゲリオン劇場版 Air/まごころを、君に』が公開されることが発表された。すでに販売されていた春の映画の前売券は、未使用の券に限り夏の映画でも有効との措置が採られた。 上記のような制作上の遅延もあり、『エヴァンゲリオン』は「まごころを、君に」をもって完結とされ、当初予定されていた「完全新作の劇場版」は制作されずに終わった。後に、2014年の第27回東京国際映画祭のインタビューで庵野秀明自身から「完全新作の劇場版」についての当初のプロットを明かしており、本人曰く「『進撃の巨人』とそっくり」な内容だったという[6]。また、第27回東京国際映画祭の企画である「庵野秀明の世界」において『新世紀エヴァンゲリオン劇場版 DEATH (TRUE)² / Air / まごころを、君に』がTOHOシネマズ日本橋で上映された[注 2]。 『DEATH』編タツノコプロとGAINAXにより、テレビシリーズ(第壱話 - 第弐拾四話)を再構成・一部修正して新作シーンが追加された総集編である。しかし、物語の時系列を無視してシャッフルしたものであるため、テレビシリーズを視聴していないと物語の理解は難しい[8]。第2新東京市にある中学校の体育館に、碇シンジ、惣流・アスカ・ラングレー、綾波レイ、渚カヲルを思わせる4人の中学生が集まり、弦楽四重奏曲の練習に向けて準備を進めていく合間に、テレビシリーズの断片が挿入されていく構成となっている。 『DEATH』編は、後に修正版『DEATH (TRUE)』(WOWOWオンエア版)と再修正版『DEATH (TRUE)2』(1998年公開『REVIVAL OF EVANGELION』版)が公開され、VHS・LD化の際にも再修正版『DEATH (TRUE)2』が収録された。劇場公開された『DEATH』編で制作された新作シーンの多くは後の修正版でカットされ、VHS版やLD版で増補された第弐拾壱話 - 第弐拾四話に転用されている[注 3]。この修正版でカットされたシーンは、角川書店から発刊された本作品のフィルムブック(『DEATH』編のみの収録)で確認できる。 テレビアニメシリーズの16ミリのフィルムを35ミリにブロー・アップしている。新作カットもテレビアニメシリーズの映像の画質・質感と違和感を持たさないために、最初から35ミリで制作せずに16ミリで撮影作業を行ってから、35ミリにブロー・アップしている[8]。 最初は薩川昭夫が本作の監督を務める予定だったが、「既に総監督がいるのに、監督はいやだな」「僕が監督すると『エヴァンゲリオンの映画』ではなくて、『エヴァンゲリオンについての映画』『エヴァンゲリオンのフィルムを素材にしただけの全く別の映画』になってしまう」という思いから、構成に留まった[8]。 構成作業にあたって庵野から薩川へ「『わかりやすくてつまらないもの』を作るよりも、『わからなくてもいいから、刺激的なもの』を作ってほしい」「ドキュメンタリータッチで」と注文した。そして薩川はテレビアニメシリーズを何周も繰り返し見た後に初期稿をまとめた。それを叩き台にして、シーンを足したり削ったり、劇伴のレコーディングに立ち会った経験を元に書き上げたのが決定稿となった[8]。 薩川は構成に対して「錯綜した感じ」と案を出し、参考としてジャン=リュック・ゴダール、オーソン・ウェルズ、寺山修司、佐々木昭一郎の作品群を例に出した[8]。 2003年にリニューアル版DVDが発売された際には、VHS・LD・DVD(1998年11月22日発売)に収録されている第弐拾壱話 - 第弐拾四話を「ビデオフォーマット版」[注 4]として『DEATH』編の追加カットが収録されている。 2014年8月18日深夜(19日未明)には、『映画天国』(日本テレビ、関東ローカル)で「エヴァまつり」[注 5]の一環として『DEATH (TRUE)2 TV版』が地上波初放送された[9][10]。 2015年8月26日に発売されたBlu-ray BOX[注 6]には劇場公開版の『DEATH』編が初収録されたほか、同時発売されたDVD-BOX[注 7]にはWOWOWオンエア版の『DEATH (TRUE)』が収録された。いずれも、初のソフト化である[11]。なお、TOHOシネマズ新宿ではBlu-ray BOXの発売を記念し、劇場公開版『シト新生 (DEATH & REBIRTH)』が上映された[注 8]。 『REBIRTH』編『REBIRTH』編は、上記の理由によりリメイク版第25話「Air」の前半部分までの公開となった。内容はリメイク版第25話「Air」と同じであるが[注 9]EVAシリーズ(EVA量産機)が輸送機から投下されジオフロント上空を旋回している場面で、劇場版シト新生の主題歌である「魂のルフラン」が流れはじめ、スタッフロールとなる。 『REBIRTH』編とは違い、最初から35ミリフィルムで撮影作業が行われた。 なお、VHS・LD版およびリニューアルされる以前のDVDには『REBIRTH』編が収録されていたが、内容が次作の『Air/まごころを、君に』(第25話「Air」)と重複[注 10]するため、『REBIRTH』編は2003年以降に発売されたリニューアル版DVDには収録されなかった。このため映像ソフトで『REBIRTH』編を視聴することが出来るのは長い間VHS・LD版およびリニューアルされる以前のDVDのみであったが、2015年8月26日に発売されたBlu-ray BOXとDVD BOXに『REBIRTH』編が再収録された[11]。 ストーリーについての詳細は、『新世紀エヴァンゲリオン劇場版 Air/まごころを、君に』を参照。 劇中使用曲
スタッフ
前売券
予告編第1弾にはルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェンの『交響曲第9番』第4楽章が使用されている。内容はテレビシリーズの映像をつなぎ合わせたものとなっている。 第2弾にはジュゼッペ・ヴェルディの『レクイエム』より「怒りの日(Dies irae)」が使用されている。内容は演出にフラッシュカットが多用されているほか、『REBIRTH』編の絵コンテや映像、台詞なども入っている。しかし、本来予定されていた『REBIRTH』編が制作途中の部分までの公開となったため、次作『Air/まごころを、君に』でしか聴けない台詞も流れている。 『シト新生』の劇場公開に先駆けて発売されたアルバムCD『NEON GENESIS EVANGELION ADDITION』には、ミサト、レイ、アスカのそれぞれによる劇場版予告が収録されている。 リリース
受賞歴脚注注釈
出典
外部リンク |