日産・ラルゴラルゴ(LARGO)はかつて愛知機械工業が設計・生産、日産自動車が販売していたワンボックスカー及びミニバンである。
概要1982年、「バネット(C120型)」派生の上級車種として、「バネット」の名を冠した「バネットラルゴ」として誕生し、1999年のモデル消滅までの17年間、ファミリー向けでありながら高級感も訴求した造りを特徴としていた。3代目は、セレナをベースに、全幅を3ナンバーサイズに拡大し排気量も2,400㏄を中心とし、更に高級感を強めた造りとなった。1995年に登場した現在の日産のミニバンのエアログレードの代名詞的存在の「ハイウェイスター」投入で、カスタム志向の若い世代にも人気を博した。 歴史初代 GC120型(1982年 - 1986年)
1982年9月、「バネット(C120型)」の上級車種として、「バネット」の名を冠した「バネットラルゴ」として誕生し、販売チャンネルごとに「ダットサンバネットラルゴ」、「サニーバネットラルゴ」、「チェリーバネットラルゴ」がそれぞれ設定された。 構造上の分類はキャブオーバーで、ボディースタイルとしてはワンボックスカーである。ベースとなるバネットに対し車幅を90mm拡大し、車格の差を表現している。乗用登録となる「コーチ」のほか、貨物登録の「バン」も用意されていた。 搭載されるエンジンは、コーチが直列4気筒 OHC 2.0LのZ20型、1952ccディーゼルのLD20型、ディーゼルターボのLD20T型、およびバン用のOHV 1487ccガソリン、A15型の4機種。 3車の相違点の1つにヘッドランプベゼル(ランプ周りの装飾部品)にあり、ダットサンバネットはシルバー、サニーバネットは外側黒/内側シルバー、チェリーバネットは外側シルバー/内側黒となっている。 コーチのグレードは「グランドサルーン」、「LX-G」、「LX-J」、「LX」の4種、バンは「DX」と「GL」の2種。グランドサルーンには2列目キャプテンシート、センターアームレスト付き3列目シート、当時の1BOX車唯一のガラスハッチが装備されていた。 AT車にシフトロック機能の装着が義務付けられるきっかけとなったモデルでもある[注釈 1]。 2代目 GC22型(1986年 - 1993年)
1986年(昭和61年)5月、先代同様、C22型バネットの上級車として登場。後に4WDも設定された。バネットとの共用部分は多いがフロアパン自体は独自のものであり、ラルゴには輸出も考慮された強化型を採用していた。先代同様、販売チャンネルごとの3車でスタートしたが、後に「バネットラルゴ」に統一されている。 グレードは「LX」、「スーパーサルーン」、さらに1BOXとしては初のガソリンターボ車として豪華な内装の「グランドサルーン」とスポーティーな「クルージングサルーン」が設定された。「グランドサルーン」にはATの組み合わせがあったが、「クルージングサルーン」はMTのみの設定であった。ATはそれまでの3速AT「ニッサンマチック」からOD付4速オートマチック、フルレンジ電子制御4速オートマチックの「E-AT」となる。 エンジンは2.0 Lガソリン・CA20S、2.0 Lディーゼルターボ・LD20T・II(従来のLD20Tから燃焼室の形状を変更)、1.8 Lガソリンターボ・CA18ETの3種を設定。CA18ETは「グランドサルーン」と「クルージングサルーン」に設定された。「クルージングサルーン」は「スーパーサルーン」をベースにターボエンジン、ハイグリップタイヤ、電子制御サスペンションを装備したモデルで、このエンジンは元はブルーバード(U11型)に搭載されていたもの。4WDのAT車で(MC後のグランドクルージング)0 - 400m加速が17秒という、当時の1BOX車では稀有な動力性能を見せた。ターボの装着は省エネルギーのためという当時の「お約束」で、運輸省届出値の燃費は自然吸気の2.0 Lを上回っていた。バンも継続して設定され、A15とLD20の2種類のエンジンが設定された。 同年11月、車種名を「バネットラルゴ」に統一。 同年11月、4WD車にAT車を追加。 1988年(昭和63年)1月、特別仕様車「スーパーサルーン リミテッド88」を地域限定で発売。 同年5月、特別仕様車「スーパーサルーン リミテッド88-Ⅱ」を発売。 1989年(昭和64/平成元年)1月、特別仕様車「スーパーサルーン リミテッド89」を発売。 同年6月、マイナーチェンジ。 グレードは「スーパークルージング」と上級の「グランドクルージング」の2種類。「スーパークルージング」は「スーパーサルーン」の、「グランドクルージング」は「グランドサルーン」のガソリンターボ版。ただし「グランドクルージング」はサードシートのアームレストが非装備であるなど、「グランドサルーン」より多少装備が簡素化された。コーチの4WDがビスカスカップリング式の「フルオートフルタイム4WD」に変更され、1BOX初のデフロックが装着された。乗用最上級グレードとして「エクスクルーシブサルーン」が登場。2WDガソリンのみの設定で254万円。ホワイトパール系のツートンカラーやアルミホイール、電子制御サスペンションなどの専用装備が奢られている。その他のサルーン系はLD20T・IIとCA20Sを継続して搭載している。コーチ「LX」が廃止となり、バンに最上級の「VX」が設定された。 1990年(平成2年)10月、特別仕様車「スーパーサルーン リミテッド」を発売。エクステリアでは専用ボディーカラー、専用サイドストライプを採用。インテリアでは100%ウール地シート、ツインオートエアコン、マルチクールボックスを採用[注釈 2]。 1992年(平成4年)1月、アウトドアレジャー用途に一段と特化したモデルとしてオーテックジャパンによる特別仕様車の「ウミボウズ」および「ヤマアラシ」を設定。「ウミボウズ」はスーパーサルーンをベースにグリルガード、シビエ製大型フォグランプなどを装着し、オフロード系のスタイリングに仕上げられた。「ヤマアラシ」はモデル末期に追加されたグレードで、「ウミボウズ」同様にスーパーサルーンをベースとするが、オーテックジャパンによるルーフレールによって全高が2mを超えたため、バネットシリーズで唯一の3ナンバーモデルとなった。両モデル共にエンジンは2.0 Lガソリンと2.0 Lディーゼルターボの2種類。 1993年 (平成5年) 4月[1]、生産終了。在庫対応分のみの販売となる。 1993年 (平成5年) 5月、3代目と入れ替わりに販売終了。
3代目 W30型(1993年 - 1999年)
1993年5月、フルモデルチェンジ。車名から「バネット」が外れ「ラルゴ」となる。CMコピーは「ポストセダンをどうぞ」。CM曲はレニー・クラヴィッツの「ビリーヴ」が起用された。 モノスペーススタイルへとチェンジしたセレナ(C23型)の5ナンバーボディに対し、シャーシを共用するラルゴは3ナンバー専用ボディとされ、セレナに比べ各シートの座面長を45mmずつ大きく採るなど、上級車としての工夫が見られ、エルグランドが登場する1997年までは日産のミニバンの中では最上級モデルの地位にあった。そのため、ファミリー層のみならず、セドリックやグロリア等の高級車から乗り換えるような50代〜60代の中高年層もターゲットであった。ただし、セカンドシートはバネットラルゴに採用されていたキャプテンシートではなく、ベンチシートであった。 ボディ形状はセレナと同様に短いボンネットが付いて前輪が前進したセミキャブオーバーの外観であるが、構造的にはエンジンを前席下に搭載するキャブオーバーである。 また、この構造が幸いし重量配分はほぼ50:50であり、更にローパワーながら0-100km加速は9秒台と3Lクラスに匹敵する加速性能を誇る。 KA24DE型エンジンは海外向け車種に多く搭載されているエンジンであり(主な搭載車種は180SXの海外版である240SXなど)、圧縮比が10:1でありながらレギュラーガソリン仕様であった。 CD20Ti型エンジンはフレームの中に冷却気を通しインタークーラーに当てる工夫がされていた。 シフトレバーはセレナと同様にフロア式で、一見するとセダンのようなインストルメントパネルであった。 セレナとは異なり、トレッド拡大によりロックトゥロックが普通の乗用セダン並みになった。セレナにこのラックを組んでも全く問題ないため、日産の操安基準は相当にマージンをとっていると思われるが、珍しく前後のタイヤサイズが異なる点は注意が必要である。 グレードは下から「RX-g」「SX-g」「グランデージ」の構成。 「SX-g」と「グランデージ」にはビスカスLSD、SUPER HICAS、電子制御パワーステアリング、電子制御サスペンション(後期型からアクティブダンパーサスペンション)を搭載する「GTパック」がメーカーオプションで設定された。
1999年5月[3]、オーダーストップに伴い生産終了。在庫対応分のみの販売となる。 1999年6月、販売終了。事実上の後継はプレサージュとなる。なお、プレサージュもラルゴの生産終了から10年後の2009年で生産終了している[注釈 3]。 ラルゴの生産終了当時、日産のミニバンやRVのラインナップが過多であり、フラッグシップモデルのエルグランドやセレナ、プレーリーリバティ、事実上の後継車となるプレサージュと姉妹車のバサラ、クロスカントリー車のサファリ、SUVのテラノやミストラル、コンパクトクロスオーバーSUVのラシーン、3人掛けシート2列の6人乗りミニバンであるティーノ、ステーションワゴンの分類ではあるが2列シートでミニバン的なスタイリングのルネッサなど飽和状態であった。プレサージュが生産終了した2009年以降、現在に至るまで日産の日本国内市場における上級ミニバンはエルグランドのみとなっている。
車名の由来「ラルゴ」とは音楽用語の速度記号のひとつであり、イタリア語で「幅広くゆるやかに」の意。 脚注注釈
出典
関連項目外部リンク
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