杵築市(きつきし)は、大分県の北東部にある国東半島南部に位置する市[1]。2005年(平成17年)10月1日に旧杵築市、山香町、大田村が新設合併して誕生した[1]。
地理
市の東南部は美しい海岸線となっており、東には伊予灘、南には別府湾が広がる[1]。大分市とは別府湾を挟んだ北向かいに位置する。南東部には守江湾と呼ばれる小さな湾がある。一方、市の北西部は200メートルから600メートルのなだらかな山間地となっている[1]。宇佐市と隣接する立石峠は旧豊後国と豊前国との境界である。
隣接する速見郡日出町、別府市とは、かつて同じ速見郡として歴史や文化を共有してきたことから、「別杵速見(べっきはやみ)」「別速杵(べっそっき)地区」と呼ばれ、市民生活や文化面での結びつきが強い。また大分市との結びつきも強い。しかし、日出町とは平成の大合併での合併協議が決裂した経緯がある。
気候
気候は瀬戸内式気候に特有な温暖な気候である[1]。
杵築(1991年 - 2020年)の気候
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月 |
1月 |
2月 |
3月 |
4月 |
5月 |
6月 |
7月 |
8月 |
9月 |
10月 |
11月 |
12月 |
年
|
最高気温記録 °C (°F)
|
19.4 (66.9)
|
24.0 (75.2)
|
28.8 (83.8)
|
30.4 (86.7)
|
33.0 (91.4)
|
35.1 (95.2)
|
36.7 (98.1)
|
37.4 (99.3)
|
35.6 (96.1)
|
32.3 (90.1)
|
28.3 (82.9)
|
24.2 (75.6)
|
37.4 (99.3)
|
平均最高気温 °C (°F)
|
10.2 (50.4)
|
11.0 (51.8)
|
14.2 (57.6)
|
19.0 (66.2)
|
23.3 (73.9)
|
25.9 (78.6)
|
29.7 (85.5)
|
31.0 (87.8)
|
27.9 (82.2)
|
23.2 (73.8)
|
17.8 (64)
|
12.5 (54.5)
|
20.5 (68.9)
|
日平均気温 °C (°F)
|
5.3 (41.5)
|
6.0 (42.8)
|
9.1 (48.4)
|
13.8 (56.8)
|
18.3 (64.9)
|
21.8 (71.2)
|
25.8 (78.4)
|
26.8 (80.2)
|
23.6 (74.5)
|
18.3 (64.9)
|
12.7 (54.9)
|
7.5 (45.5)
|
15.8 (60.4)
|
平均最低気温 °C (°F)
|
0.7 (33.3)
|
1.1 (34)
|
3.9 (39)
|
8.3 (46.9)
|
13.3 (55.9)
|
18.3 (64.9)
|
22.7 (72.9)
|
23.5 (74.3)
|
20.0 (68)
|
13.8 (56.8)
|
7.8 (46)
|
2.7 (36.9)
|
11.4 (52.5)
|
最低気温記録 °C (°F)
|
−6.8 (19.8)
|
−6.7 (19.9)
|
−4.9 (23.2)
|
−2.3 (27.9)
|
2.1 (35.8)
|
9.5 (49.1)
|
14.9 (58.8)
|
17.1 (62.8)
|
9.9 (49.8)
|
2.2 (36)
|
−1.9 (28.6)
|
−5.0 (23)
|
−6.8 (19.8)
|
降水量 mm (inch)
|
47.1 (1.854)
|
59.9 (2.358)
|
98.0 (3.858)
|
118.0 (4.646)
|
133.5 (5.256)
|
287.7 (11.327)
|
255.3 (10.051)
|
135.4 (5.331)
|
184.7 (7.272)
|
107.7 (4.24)
|
63.4 (2.496)
|
49.2 (1.937)
|
1,524.6 (60.024)
|
平均降水日数 (≥1.0 mm)
|
6.7
|
7.9
|
10.0
|
9.6
|
9.1
|
13.2
|
12.1
|
9.3
|
9.8
|
6.8
|
6.5
|
6.5
|
107.1
|
平均月間日照時間
|
145.5
|
142.7
|
175.0
|
192.5
|
201.9
|
146.5
|
183.0
|
212.3
|
158.8
|
168.7
|
145.4
|
144.3
|
2,024.1
|
出典1:Japan Meteorological Agency
|
出典2:気象庁[2]
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隣接する市町村
人口
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杵築市と全国の年齢別人口分布(2005年)
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杵築市の年齢・男女別人口分布(2005年)
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■紫色 ― 杵築市 ■緑色 ― 日本全国
|
■青色 ― 男性 ■赤色 ― 女性
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杵築市(に相当する地域)の人口の推移
1970年(昭和45年)
|
38,504人
|
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1975年(昭和50年)
|
36,299人
|
|
1980年(昭和55年)
|
35,066人
|
|
1985年(昭和60年)
|
34,816人
|
|
1990年(平成2年)
|
34,095人
|
|
1995年(平成7年)
|
33,370人
|
|
2000年(平成12年)
|
33,363人
|
|
2005年(平成17年)
|
33,567人
|
|
2010年(平成22年)
|
32,083人
|
|
2015年(平成27年)
|
30,185人
|
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2020年(令和2年)
|
27,999人
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総務省統計局 国勢調査より
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地名
全域で明治以来の大字を継承する。平成の大合併より前の市域は「杵築市」の次に大字がつくが、旧山香町は大字の前に「山香町」、旧大田村は「大田」がつく。
- 杵築(旧杵築町)
- 馬場尾(旧杵築町)
- 南杵築(旧杵築町)
- 宮司(旧杵築町)
- 大内(旧大内村→杵築町)
- 猪尾(旧東村→杵築町)
- 片野(旧東村→杵築町)
- 熊野(旧東村→杵築町)
- 岩谷(旧北杵築村)
- 大片平(旧北杵築村)
- 鴨川(旧北杵築村)
- 船部(旧北杵築村)
- 溝井(旧北杵築村)
- 相原(旧八坂村)
- 中(旧八坂村)
- 日野(旧八坂村)
- 本庄(旧八坂村)
- 八坂(旧八坂村)
- 狩宿(旧奈狩江村)
- 奈多(旧奈狩江村)
- 守江(旧奈狩江村)
- 横城(旧奈狩江村)
- 山香町
- 内河野(旧中山香町)
- 野原(旧中山香町)
- 小武(旧東山香村)
- 倉成(旧東山香村)
- 広瀬(旧東山香村)
- 久木野尾(旧上村)
- 日指(旧上村)
- 山浦(旧山浦村)
- 吉野渡(旧山浦村)
- 下(旧立石町)
- 立石(旧立石町)
- 向野(旧立石町)
- 南畑(旧南端村)
- 大田
- 石丸(旧田原村)
- 小野(旧田原村)
- 沓掛(旧田原村)
- 永松(旧田原村)
- 白木原(旧朝田村)
- 波多方(旧朝田村)
- 俣水(旧朝田村)
歴史
江戸時代は杵築藩松平氏3万2000石の城下町として栄え、廃藩置県まで国東半島の政治・経済の中心地であった。
日出藩の分家、交代寄合旗本木下氏の陣屋が山香町の立石陣屋に置かれた。
近現代
杵築市の変遷
所属郡 [注 1]
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明治以前
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明治初年 - 明治22年 [注 2]
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所属郡 [注 3]
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明治22年 4月1日 町村制施行
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明治22年 - 昭和19年
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昭和20年 - 昭和29年
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昭和30年 - 昭和64年
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平成元年 - 現在
|
現在
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国東郡
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俣見村
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明治8年 俣水村
|
西国東郡
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朝田村
|
朝田村
|
昭和29年10月1日 大田村
|
大田村
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平成17年10月1日 杵築市
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杵築市
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赤水村
|
波多方村
|
波多方村
|
下波多方村
|
白木原村
|
白木原村
|
沓掛村
|
沓掛村
|
田原村
|
田原村
|
永松村
|
明治5年 永松村
|
岸奈村
|
小野村
|
小野村
|
石丸村
|
石丸村
|
守江村
|
守江村
|
東国東郡
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奈狩江村
|
奈狩江村
|
奈狩江村
|
昭和30年4月1日 杵築市
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灘手村
|
鍋倉村
|
野辺村
|
奈多村
|
奈多村
|
狩宿村
|
狩宿村
|
横城村
|
一部
|
横城村
|
菅尾村
|
大内村
|
大内村
|
昭和8年4月1日 杵築町
|
杵築町
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篠原村
|
草場村
|
藤野川村
|
大内山村
|
速見郡
|
木田村
|
杵築村
|
速見郡
|
杵築町
|
守末村
|
杵築城下
|
一部[注 4]を除く
|
一部[注 4]
|
南杵築村
|
宗近村
|
安住寺村
|
生地村
|
下司村
|
菊本村
|
下原村
|
馬場尾村
|
馬場尾村
|
宮司村
|
宮司村
|
次郎丸村
|
片野村
|
片野村
|
東村
|
昭和11年1月1日 杵築町に編入
|
片野浦
|
高須村
|
猪尾村
|
猪尾村
|
三川村
|
原村
|
熊野村
|
加貫村
|
年田村
|
野田村(八坂郷)
|
日野村
|
八坂村
|
八坂村
|
八坂村
|
日明村
|
新庄村
|
中村(八坂郷)
|
中村
|
末守村
|
八坂村
|
川南の一部
|
川南の一部
|
相原村
|
一部
|
本庄村
|
川北
|
八坂村
|
宮原村
|
一部
|
一部
|
本庄村
|
本庄村
|
中野村
|
広瀬村(八坂郷)
|
山中村
|
生桑村
|
本郷
|
大左右村
|
八坂村
|
溝井村
|
溝井村
|
北杵築村
|
北杵築村
|
北杵築村
|
乙王村
|
二坂村
|
荒平村
|
鴨川村
|
鴨川村
|
五田村
|
山迫村
|
迫村
|
国東郡
|
東鴨川村
|
岩屋村
|
岩谷村
|
速見郡
|
川平村
|
筒木村
|
尾迫村
|
船部村
|
船部村
|
尾上村
|
中津屋村
|
払川村
|
三尾平村
|
小武村
|
一部[注 5]
|
大片平村
|
一部[注 5]を除く
|
小武村
|
東山香村
|
東山香村
|
昭和26年4月1日 山香町
|
昭和30年3月31日 山香町
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倉成村
|
倉成村
|
広瀬村 (日出荘)
|
一部[注 6]
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広瀬村
|
山浦村(日出荘)
|
山浦村
|
中山香村
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昭和13年10月1日 町制 中山香町
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吉野渡村
|
吉野渡村
|
日指村
|
日指村
|
上村
|
上村
|
久木野尾村
|
久木野尾村
|
内河野村
|
内河野村
|
立石村
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明治31年9月27日 町制 立石町
|
立石町
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野原村
|
野原村
|
中村(山香郷)
|
立石村
|
山浦村
|
山浦村
|
山浦村
|
山口村
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米子瀬村
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下村
|
六太郎村
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松尾村
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向野村
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薫石村
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平山村
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南畑村
|
一部
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南畑村(一部)
|
南端村 (一部)
|
南端村(一部)
|
南端村(一部)
|
昭和30年8月1日 山香町に編入
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市政
歴代市長
議会
定数:18[3]
公共機関
国の出先機関
警察
- 大分県警察杵築日出警察署
- 杵築幹部交番
- 八坂警察官駐在所
- 大田警察官駐在所
- 山香上警察官駐在所
- 山香中警察官駐在所
- 立石警察官駐在所
裁判所
図書館
金融機関
産業
農林水産業が柱だが、大分空港と大分市・別府市の中間に位置するという好条件から、大分キヤノンマテリアルなど先端技術産業が立地している。
出版文化産業振興財団の調査によると、2024年8月現在で、市内に書店が1軒もない全国15道県24市のひとつ(大分県内の市では唯一)である[4]。
主要生産品・特産品・地酒
教育
高等学校
中学校
- 市立
小学校
- 市立
- 豊洋小学校
- 護江小学校
- 大内小学校
- 杵築小学校
- 東小学校
- 八坂小学校
- 北杵築小学校
- 東山香小学校
- 山香小学校
- 立石小学校
- 上小学校
- 山浦小学校
- 向野小学校
- 朝田小学校
- 田原小学校
交通
空港
隣の国東市にある大分空港が最寄りであり、杵築市内と大分空港を結ぶバスが運行されている。
鉄道
中心駅は杵築駅だが、市の中心部から大きく離れている。
なお、1922年から1966年まで国東鉄道(のちの大分交通国東線)が市内を通っていた。
路線バス
- 大分交通グループ - 大分交通本体と子会社の国東観光バスが運行する。中心部に杵築バスターミナル(旧国東線・杵築市駅)があり、杵築駅前とともに杵築市内路線の主要停留所となっている。杵築市内路線のほか、大分市・別府市と国東市を日出町・杵築市経由で結ぶ路線がある。
- 大分駅前 - 新川 - かんたん - 高崎山 - 別府北浜 - 別府交通センター - 亀川駅前 - 日出 - 杵築BT - 安岐 - 国東市民病院前 - 大分空港 - 武蔵 - 国東市役所前 - 国東
- 杵築駅前 - 中平 - 杵築BT - 安岐 - 国東市民病院前 - 大分空港 - 武蔵 - 国東市役所前 - 国東
- 杵築駅前 - 杵築市役所前 - 杵築BT
- 杵築駅前 - ハーモニーランド - 日出 - 暘谷駅前
- 杵築BT - 山口 - 安岐町役場前 - 国東市民病院前 - 安岐
- エアライナー - 大分空港連絡特急バス。市内の大分空港道路杵築ICにある停留所に停車する。
- ノースライナー - 県北部の中津市・宇佐市・豊後高田市と大分空港を結ぶ連絡バス。旧大田村内の大田支所前から利用可能。大分空港で乗降しない利用も可能。
- 大貞車庫前 - 中津駅前 - 法鏡寺 - 宇佐八幡 - 宇佐駅前 - 豊後高田 - 田染中村 - 大田支所前 - 安岐町役場前 - 大分空港
- 杵築市コミュニティバス - 杵築市中心部と旧山香町および旧大田村を結ぶ市内循環コースと、旧杵築市・旧山香町・旧大田村のそれぞれの域内を運行する路線がある。いずれも土日祝日は運休する。
道路
ほかに東九州自動車道(宇佐別府道路)が市内を通過しているが、市内にインターチェンジはない。大分農業文化公園インターチェンジおよび速見インターチェンジは杵築市域に近い場所にあり、これらのインターチェンジが最寄りとなる場所もある。
一般国道
主要地方道
名所・旧跡・観光スポット・祭事・催事
名所旧跡など
祭事・催事
盆踊り
杵築市は、古くから盆踊りの盛んな地域であり、現在でも昔の踊りが残っている。殊に、山香は、テンポの速い踊りで有名で「山家踊り」などと呼ばれたものである。「よんべ山香の踊りをみたら…」で始まる口説き文句は広く知られており、いかに踊り熱心であったかがうかがわれる。現在でも、庭入りこそ行わなくなったものの盆踊りは盛んである。「供養踊り」「地蔵踊り」を分けて、2回盆踊りを行う地区もあるし、昔は、「お大師様の踊り」「八朔踊り」果ては「供養踊りの練習」などと名目を作って、何回も踊る地区も多かった。
以下、盆踊り唄を列挙する。
- 三つ拍子 - 市内全域で踊る。杵築の盆踊りの定番である。近隣の町でも踊る。
- レソ - 山間部で踊る。急テンポの踊りで、山浦地区には古い型が残る。別名「さえもん」。県を代表する踊りの一つ。
- 六調子 - 悠長な踊り。旧杵築市全域で踊る。なお、県北で踊る急テンポの六調子とは全く別の曲である。近隣の町でも踊る。
- 二つ拍子 - 太田と山香で踊り方や口説きの著しく異なる踊り。
- 豊前踊り - 主に、山香で踊る。六調子、二つ拍子と同系統の曲である。
- セーロ - 市内全域で踊るが添え物的なものである。別名「ヤッテンサンノ」。
- らんきょう坊主 - 向野地区に残る踊り。
- 一つなえ - 倉成地区に残る踊り。
- 粟踏み - 小武地区に残る踊り。
- ベッチョセ - 加貫地区でのみ踊る急テンポの踊り。県内でも加貫でしかみられない。
- マッカセ - 山間部に踊る所がある。県北を代表する踊りの一つ。
- さえもん - 旧杵築市全域で踊る。大分県内各地で踊るが、曲や踊りは多様である。(レソとは異なる。つまり杵築市内には大きく分けて2種類のさえもんがあるということ。昔は、大字大方平の一部では両方踊ったが今はどちらかしか踊らない。)
これらの唄で、一般に七・七調の段物を口説く。「鈴木主水」「阿波の鳴門」「四谷怪談」などの他に、「七島の由来」「孝子平助」「阿南清兵衛」「高熊山霊験」「田染」など、地域に根ざした口説きが伝承されている。
なお、「さえもん」「ベッチョセ」「らんきょう坊主」「一つなえ」および一部地域の「レソ」は、七・七・七・五の切り口説きである。
以下の踊りは、昔は踊っていたが現在は廃れているものである。大分県内の他の地域にはまだ残っている場合が多い。
猿丸太夫、浦辺の唐芋、団七、三勝、小町踊り、銭太鼓、かげ踊り、ばんば踊り他。特に団七踊りは、ひと頃は隆盛を極めたが、男・女・男の3人組み踊りというめずらしい形態のうえ道具がいるので、戦後は一気に廃れてしまった。
杵築市出身の著名人・有名人
杵築市ゆかりの人物
脚注
注釈
- ^ 明治初年時の所属郡。
- ^ 特記がない限り明治8年。
- ^ 町村制施行時の所属郡。
- ^ a b 魚町・南台
- ^ a b 松村・尾藤・尾下・境木・上村・中村・南平・芦刈・久保畑
- ^ 残部は昭和27年(1952年)1月1日に日出町へ編入。
出典
外部リンク
ウィキメディア・コモンズには、
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