猛暑(もうしょ)とは平常の気温と比べて著しく暑いときのことである。主に夏の天候について用いられる。日本国内においては2007年(平成19年)以降、1日の最高気温が35℃以上の日の事を「猛暑日」と言う[1][2]。
原因とメカニズム
一般に夏季において背の高い(上空の高い所から地表まで鉛直に長い構造の)高気圧に覆われて全層に渡って風が弱く、周囲の比較的冷たい空気や湿気の流入が弱く、快晴状態の場合や南(南半球の場合は北)から継続的に暖気が入った時に起こりやすい。内陸の盆地や山間部では、周囲の山岳により、外部の大気との混合が妨げられ、熱い空気がその場に留まりやすい(熱気湖)事や、どの方向から風が吹いてもフェーン現象(風炎現象)が起こりやすいので、他の地域よりも暑くなりやすい。主な観測地点は山形県山形市、山梨県甲府市、京都市、大分県日田市などがある。
フェーン現象が発生すると、山脈の風下部では山から吹き降りてきた乾燥した高温の風によって盛夏でなくても猛暑となりやすい。主な観測地点は東日本や東北の日本海側、夏季の関東平野(特に北部)などがある。関東平野は西側に山脈があるので、西風が吹いた時にこの現象が起こりやすい。一方、西日本には2000 m以上の山が存在しない(西日本最高峰は愛媛県の石鎚山(いしづちさん)で1982 m、中国地方では鳥取県の大山(だいせん)で1729 m、九州本土では大分県の九重山中岳(くじゅうさんなかだけ)で1791 m)ため、水分の放出が充分に行われず、吹き下ろしの風に水分が含まれているので、気化熱が昇温を緩和するので、フェーン現象による気温の上昇は東日本ほど激しくない。東日本には富士山、北アルプス、南アルプスをはじめとする2000 m以上の山や山脈が多いため、同現象による気温の上昇が大きくなる。気象官署での観測史上2番目の40.8℃が山形市で記録された1933年(昭和8年)7月25日も日本海に台風があり、2000 m級の飯豊連峰を南西の風が吹き下りた事により、フェーン現象が発生した。しかし、当日は風速が弱く、日射よる昇温も大きかったと考えられる。
フェーン現象が起きると、冬季ですら25℃を超えることがある。例えば2009年(平成21年)2月14日には静岡県静岡市で26.2℃、同熱海市網代で25.4℃、神奈川県小田原市で26.1℃、同海老名市で25.3℃などを記録したが、当日は南から暖かい空気が入っていた事や、西側にある山地を越える際にフェーン現象が起こった事が原因と考えられる。
2010年(平成22年)の極端な猛暑は、ラニーニャ現象が一因とされる。研究や過去の統計から、ラニーニャ現象が発生するとフィリピン近海の海水温が上昇するため、上昇気流が発生する。その北に位置する日本付近では下降気流が発生し、太平洋高気圧の勢力を強くする(同様に、南海上に台風が存在する場合も台風の上昇気流を補うようにして、太平洋高気圧が強くなる)。そのため、日本付近が猛暑となりやすいと考えられている。他には、1955年、1964年、1973年、1984年、1985年、1995年、1999年、2007年、2010年、2016年、2020年、2022年が該当する。ただし、1954年、1970年、1971年、1988年、1998年のようにラニーニャ現象が起きていた年でも冷夏になったことや、1991年、2006年、2015年、2023年のようにエルニーニョ現象が起きていたにも拘らず猛暑になった事もあるので、一概には言えない。また、地球温暖化が進むと、フィリピン付近の海水温上昇により、太平洋高気圧の勢力が強大化して、日本付近は猛暑になりやすいという予測もある。
また、三大都市圏を中心とする都市部での最低気温の高温記録[3]が相次いだり、熱帯夜の増加や冬日が著しく減少しているのは、ヒートアイランド現象によって気温が底上げされている事が一因と考えられる。さらに東京都心で39.5℃など、南関東周辺で観測史上最高の高温記録が相次いだ2004年(平成16年)7月下旬は、ヒートアイランド現象に加えて背の高い高気圧、フェーン現象が重なった例である。
しかし、猛暑の原因となり得るものはこれだけではない。ダイポールモード現象が発生すると、日本付近では高気圧が強まり、猛暑になりやすいとされている。この例として、1994年、2001年、2006 - 2008年、2012 - 2013年などがある。通常、この現象は2年連続で起こることは珍しいが、2006 - 2008年は3年連続で起こった[4]。これは観測以来、前例がないとされる。また、太平洋中央部の赤道付近で水温が上昇するエルニーニョもどきと呼ばれる現象が起きると、その海域で対流活動が活発になり、それを補うようにして北太平洋の高気圧が強まるので、日本付近は暑くなりやすいとされる。2004年などがこれに当てはまる。また、この年は猛暑と同時に記録的な豪雨に見舞われたが、同じくエルニーニョもどきが原因と見られている。
他にも、北極振動や北大西洋振動が冬の間に負の状態が続くと、オホーツク海高気圧が弱まり、猛暑になりやすいという考えや、近年日傘効果をもたらす大規模な火山噴火(1992・1993年の冷夏の一因として1991年のピナツボ山(フィリピン)の噴火が挙げられる。1816年の夏のない年も火山噴火が原因とされる)が起きていないため、猛暑が何年も連続するとの指摘もある。また、猛暑の原因が揃っていても、冷夏の要因となるような現象が起こって相殺されることもあり、確実に猛暑になるとは言えない。
なお、1982年、1983年、1997年、1998年、2003年、2009年、2014年のように暖春の年でも冷夏になった事もあれば、1978年、1984年、1996年、2005年、2010 - 2012年のように寒春の年でも記録的な猛暑になった事もあるので、春が涼しかったからといって必ず猛暑にはならないとは言えない。
近年の猛暑異変
日本では1913年頃までは夏の気温が著しく低く、毎年のように冷夏が続いていた。特に1902年は平年を2.22℃、1913年は1.51℃も下回り、気象庁の統計史上最も寒い夏となっている。その後も、1983年までは2年以上連続で猛暑になることはなく、1993年までは冷夏の頻度も高かった。しかし、1994 - 1996年や1999 - 2001年に当時の平年値では3年連続で猛暑になり、記録的大猛暑となった1994年以降、猛暑となる年が急増しており、特に2010年以降は2014年を除いて1994年に匹敵するかそれを上回る顕著な高温記録が続出するようになった。
月および旬ごとの気温の平年差および順位(10位以内のみ表示)
年 |
月 |
北日本 |
東日本 |
西日本 |
南西諸島 |
旬 |
北日本 |
東日本 |
西日本 |
南西諸島
|
2010年 |
6月 |
+1.9(2位) |
+1.1(7位) |
|
中旬 |
+2.5(1位) |
+1.7(3位) |
+0.7(10位) |
|
下旬 |
+3.5(1位) |
+2.1(6位) |
|
7月 |
+2.0(4位) |
+1.6(5位) |
|
上旬 |
+2.7(3位) |
+1.4(10位) |
|
中旬 |
+1.6(8位) |
|
下旬 |
|
+2.0(1位) |
+0.8(10位) |
|
8月 |
+2.6(1位) |
+1.9(1位) |
+1.7(1位) |
+0.3(6位) |
上旬 |
+2.5(4位) |
+1.5(4位) |
+1.3(3位) |
|
中旬 |
+2.0(6位) |
+1.5(2位) |
+1.6(1位) |
+0.7(3位)
|
下旬 |
+3.1(2位) |
+2.7(1位) |
+2.1(1位) |
|
9月 |
+1.4(5位) |
+1.5(4位) |
+1.6(3位) |
+0.5(6位) |
上旬 |
+3.1(2位) |
+2.9(1位) |
+2.6(1位) |
|
中旬 |
+1.6(6位) |
+1.7(9位) |
+1.8(5位) |
+0.7(5位)
|
下旬 |
|
+0.7(8位)
|
2011年 |
6月 |
|
+1.1(6位) |
+0.8(4位) |
+0.9(4位) |
上旬 |
|
+1.1(7位)
|
中旬 |
|
+1.7(2位)
|
下旬 |
+1.5(8位) |
+3.8(1位) |
+3.3(1位) |
|
7月 |
+1.4(8位) |
+1.4(7位) |
|
上旬 |
+3.0(1位) |
+2.8(2位) |
+1.4(8位) |
|
中旬 |
+2.1(4位) |
+2.9(1位) |
+1.0(9位) |
|
8月 |
|
+0.1(9位) |
中旬 |
+1.6(10位) |
+1.2(5位) |
|
下旬 |
|
+0.5(8位)
|
9月 |
+1.3(6位) |
+1.0(8位) |
|
上旬 |
+2.5(3位) |
|
中旬 |
+1.7(5位) |
+3.1(2位) |
+2.1(3位) |
|
2012年 |
6月 |
|
上旬 |
|
+0.8(9位)
|
7月 |
|
+0.3(10位) |
中旬 |
|
+1.6(9位) |
|
+0.4(10位)
|
下旬 |
|
+0.9(8位) |
+0.3(9位)
|
8月 |
+1.4(9位) |
+1.2(4位) |
+0.9(4位) |
|
上旬 |
|
+0.9(10位) |
|
中旬 |
|
+0.9(8位) |
+0.7(8位) |
+0.3(9位)
|
下旬 |
+3.5(1位) |
+2.1(2位) |
+1.1(4位) |
|
9月 |
+3.7(1位) |
+1.9(2位) |
|
上旬 |
+3.3(1位) |
+1.5(2位) |
|
中旬 |
+5.5(1位) |
+3.1(1位) |
|
下旬 |
+2.2(3位) |
+1.3(6位) |
|
2013年 |
6月 |
|
+0.9(10位) |
+0.7(5位) |
+0.9(4位) |
上旬 |
|
+1.0(8位)
|
中旬 |
+2.3(4位) |
+2.3(2位) |
+2.8(1位) |
+1.0(7位)
|
下旬 |
|
+0.8(2位)
|
7月 |
+1.3(10位) |
|
+1.6(2位) |
+0.3(10位) |
上旬 |
+3.4(1位) |
+2.2(7位) |
+1.8(6位) |
+0.9(3位)
|
中旬 |
|
+1.5(10位) |
+1.7(3位) |
|
下旬 |
|
+1.2(3位) |
+0.4(8位)
|
8月 |
|
+1.3(4位) |
+1.3(2位) |
+0.8(2位) |
上旬 |
|
+1.0(9位) |
+1.3(3位) |
+1.4(1位)
|
中旬 |
+2.7(1位) |
+2.4(1位) |
+2.3(1位) |
+0.6(4位)
|
下旬 |
|
+0.5(10位) |
|
+0.5(8位)
|
上記の通り、ラニーニャ現象やダイポールモード現象、エルニーニョもどき等が発生している夏は、テレコネクションによって猛暑になりやすいが、近年はこれらが発生していない年も猛暑になる事が多い。
1994年(平成6年) - 2023年(令和5年)の30年間のうち、全国平均気温が当時の平年値で正偏差となった年は25年間に達し(1997年〈平成9年〉や1998年〈平成10年〉、2003年〈平成15年〉、2009年〈平成21年〉、2014年〈平成26年〉を除く全ての年が当てはまる)、猛暑が恒常化している。これに関しては地球温暖化も影響していると考えられるが、それだけが全ての原因とは考えにくく、様々な気象要因が考えられている。
近年の猛暑多発により、1991 - 2020年平年値において夏季の平年値は多くの地域で上昇している。これによって、以前は暑夏とされていた夏が平年並みになったり、平年並みとされていた夏が冷夏として扱われる事になる。
影響
冷房などの空調設備の稼動増により電力需要が急増する他、ビールや清涼飲料水、冷菓、氷菓、殺虫剤、虫除け及び虫刺され用薬などの販売が大きく伸び外出先ではプール、海水浴場、河川浴、森林浴また冷房の効いた屋内施設などの利用者が増えるなど経済活動によい影響(経済効果)がある。しかし電力需要が供給量を超えた場合は停電となり、多大な被害が出ることもある。例えば、1987年(昭和62年)7月23日には首都圏大停電が起こった。
熱中症や脱水症状の件数も増し、体力が奪われるので免疫力が弱まり、他の病気にもかかりやすくなる。外気温が高いときは、冷房が効いた室内との温度差が大きくなるため、体温調節も難しくなり、体への悪影響もある。それだけではなく夏風邪のウイルスは高温多湿を好むので、その状態が長く続いた時はより多く繁殖する。実際に2010年(平成22年)8月は、夏風邪が例年の2倍程度流行した[5]。また、短時間で飲食物が腐敗しやすくなり、雑菌の繁殖も早くなるので、食中毒の危険性が高まるなどの悪影響も多い。温暖化が進むことによってマラリアやデング熱などの熱帯性の感染症が日本で流行することも懸念されている。
猛暑の年は米が豊作になる事が多いが、穂が出る時期の高温により、品質が低下するという側面もある。
猛暑が長期間継続した場合、少雨による渇水や旱魃が起こりやすく、森林火災が起こりやすくなる。また、対流活動が活発化(地表付近が暑くなる事によって、上空との温度差が大きくなる)して大気が不安定になりやすく、雷雨や局地的な集中豪雨の発生が増え、強くなる傾向にある。例えば、2008年は局所的な豪雨が多く、ゲリラ豪雨と呼ばれた。
また、海水温も上昇するので、竜巻が発生しやすくなるとの指摘もある。海水は陸地に比べて熱容量が大きく、長期間猛暑が続くと、多量の熱が貯熱される。そのため、猛暑が収束してもすぐには冷めないので、尾を引きやすい。実際に、2010年(平成22年)(日本周辺における海面水温は、統計がある1985年〈昭和60年〉以降で最も高かった[6])は被害を及ぼした竜巻の発生数が26個と平年の約2倍に上った。
なお、大暑夏の翌年の夏は冷夏になりにくい事が知られている。実際に1978年(観測史上3位)、1984年(同8位)、1990年(同6位)、1994年(同2位)、2000年(同7位)、2004年(同5位)、2010年(同1位)、2011年(同4位)の翌年にあたる1979年(平年差:+0.22℃)、1985年(同+0.04℃)、1991年(同+0.19℃)、1995年(同-0.05℃)、2001年(同+0.50℃)、2005年(同+0.48℃)、2011年(同+0.88℃)、2012年(同+0.55℃)はどの年も全国的な冷夏にはならなかった。現在のところ、この原因は分かっていないが、記録的な夏の高温は、翌年の夏にも影響を及ぼしている可能性がある。
過去の猛暑
世界
- 1540年
- ヨーロッパ[7]
- 1936年
- 米国大部分
- 1976年
- イギリス
- 1980年
- 米国全域
- 2000年
- 米国南部
- 2001年
- 米国東部
- 2003年
- ヨーロッパ全域
- 米国全域
- 2006年
- ヨーロッパ全域
- 米国東部
- 2007年
- ヨーロッパ南東部
- 2009年
- オーストラリア南部
- 2010年
- ロシア西部
- 中国全域
- 米国東部
- ヨーロッパ南部
- 2011年
- 米国中東部・カナダ東部
- 2012年
- 米国本土 - アラスカ州とハワイ州を除く48州で、7月の平均気温は平年より1.8℃高い観測史上最高の25.3℃となった[8]。
- 2013年
- オーストラリアの広範囲・ブラジル東部 - 2013年1月の平均気温は、統計がある1910年以降で最も高かった[9]。リオデジャネイロでは43℃の観測史上最高気温を記録した[10]。
- 中国南部[11] - 上海では7月の平均気温が32.0℃(平年差:+3.4℃)、7月26日と8月6日の最高気温は40.6℃に達した。
- タジキスタン - ソ連からの永遠の独立を記念して植樹されたセコイアが、45℃の熱波により枯れる被害があった[12]。
日本
1890年代
- 1893年(明治26年)
- 西日本に限られるが、明治時代としては珍しく、暑さが厳しかった。岐阜県岐阜市では7月の月平均最高気温が35.3℃に達した。
- 1894年(明治27年)
- 6月は空梅雨で、北海道から九州まで広範囲で異常な高温になった。盛夏期は北から平年並みに落ち着いてきたが、7月は東北地方以南、8月は西日本で高温傾向が続き、夏全体でも全国的猛暑となった。北海道寿都町では8月7日に観測史上2位の33.7℃を観測した。熊本県熊本市では6月13日から9月9日まで89日連続で真夏日となり、これは現在でも本土での最長記録となっている。
1920年代
- 1920年(大正9年)
- 6月と8月が平年を下回り、3カ月平均も平年を下回っているが、7月は当時にしてはかなり暑かった。7月25日に新潟市で38.5℃を観測し、7月の歴代1位となっている。
- 1922年(大正11年)
- 6 - 7月は平年並みに経過したが、8月の暑さが厳しかった。福井県福井市では、8月20日に観測史上2位の38.5℃を記録した。また、宮城県石巻市の8月の月平均気温は25.9℃と、通年で観測史上最も高い。なお、当時は極端に寒い夏が多かったため、現在の平年値をやや上回る程度でも、当時としては極端に高かったとみられる。
- 1923年(大正12年)
- 前年に続き、8月のみの猛暑となったが、6・7月が寒かったので、3ヶ月の平均気温は平年を下回った。8月6日には徳島県鳴門市撫養町(むやちょう)の区内観測所で42.5℃を記録した。
- 1924年(大正13年)
- 6月が極端に寒かったので、3ヶ月平均では平年並みにとどまったが、7月の暑さが厳しく、平均気温は+1.33℃と、当時としては最も高かった。7月11日には北海道札幌市で35.5℃を記録し、観測史上初めて35℃を超えた。翌日には同帯広市で37.8℃を記録し、この記録は2021年7月31日に同旭川市江丹別で38.4℃を観測するまで、北海道の7月の史上最高気温であった。同じ日に岩手県盛岡市で37.2℃、8月23日に千葉県勝浦市で34.9℃を記録し、これらは現在でも歴代1位の記録となっている。室蘭市では7月17日に観測史上2位の32.5℃を記録した。また、札幌市の真夏日日数は31日に達し、観測史上最も多い。
- 1927年(昭和2年)
- この年は7月のみの猛暑になったが、7月22日に愛媛県宇和島市で、当時の気象官署では最も高い40.2℃を記録し、日本で初めて40℃を超えた。7月23日に潮岬で観測史上2位の34.7℃、7月24日に熊本市で観測史上1位タイの38.8℃を記録した。
- 1929年(昭和4年)
- 7月中旬から8月中旬にかけて、東北地方を中心とする全国的な猛暑になった。8月2日に宮古市で観測史上2位の37.2℃、8月8日に室蘭市で観測史上最高の32.8℃を観測した。山形市で観測された猛暑日の日数は、19日と観測史上最も多い。また、高知県の江川崎の区内観測所では7月20日に41.0℃を観測し、これは気象庁非公認であるが、1977年12月に観測を開始した同地点のアメダスが2013年8月12日に観測した記録と並び、同地点の歴代1位タイ記録である。なお、この年は8月下旬は低温になった。
1930年代
- 1933年(昭和8年)
- 全国平均で+0.57℃と、1961年に更新されるまで最も暑い夏であった。特に、7月の平均気温が平年よりも1.36℃(観測史上6位)、8月も0.26℃高かった。前述の通り、7月25日に山形市で当時の気象官署最高の40.8℃を記録している。7月23日にも岩手県宮古市で観測史上最高の37.3℃を記録した。
1940年代
- 1942年(昭和17年)
- 7月下旬から8月中旬にかけては全国的に顕著な高温となり、福島市(39.1℃)、長野県松本市(38.5℃)、福井県福井市(38.6℃)、三重県伊賀市上野(38.8℃)、東京都八丈島(34.8℃)、高知県室戸岬(35.0℃)、同土佐清水市(35.5℃)、富士山(17.8℃)と、多くの地点でこの年に観測された最高気温が現在でも単独で史上1位の記録となっている。7月の平均最高気温は名古屋で35.2℃、京都市で35.0℃に達した。また、京都市では35℃以上の日数が36日を数え、観測史上最も多い。また区内観測所の記録では愛知県豊田市で41.8℃、瀬戸市と奈良県御所市(41.0℃)など東海地方から中国・四国地方の内陸部を中心に17地点で40℃以上を観測した。しかし8月下旬は一転してかなりの低温になった。
- 1946年(昭和21年)
- 北暑西冷傾向が強く、北・東日本で猛暑となった。特に、北日本では平年を1.5℃上回り、観測史上3位タイになっている。一方、西日本は8月、南西諸島は7 - 8月が低温になった。7月16日には長野県軽井沢で観測史上1位の最高気温34.2℃、栃木県奥日光で観測史上3位の最高気温30.2℃、山梨県河口湖で観測史上1位タイの35.4℃、北海道稚内市でも8月22日に観測史上1位の最高気温31.3℃を記録した。
1950年代
- 1955年(昭和30年)
- 空梅雨で梅雨期間の降水量が少なく、梅雨明けも全国的に早かった。太平洋高気圧が北へ張り出しやすかった影響で、7月は特に北日本、東日本で顕著な高温となり、北日本では1978年と並ぶ記録的に暑い7月になった。8月以降は東日本以西ではやや涼しくなったが、北日本では引き続き平年よりも暑かった。なお、この年の猛暑は1954年春から1956年冬にかけて発生したラニーニャ現象が一因とみられる。
1960年代
- 1961年(昭和36年)
- 全国的に猛暑となり、干害が発生した。また、豪雨や台風の接近も多かった。この年は9月以降も高温傾向が著しく、当時としては極めて稀に見る顕著な残暑、暖秋となった。なお、この年は猛暑になりやすいとされるラニーニャ現象は発生していなかった。
- 1967年(昭和42年)
- 梅雨明け後は全国的に晴れて猛暑となった。盛夏期は降水量がほぼ全国的にかなり少なく、西日本では干害の被害が発生した。
1970年代
- 1973年(昭和48年)
- 6月は梅雨寒が続いたので、3ヶ月平均では平年並みだが、梅雨前線の活動は梅雨期間を通して不活発で少雨傾向が著しく、7月には全国的に平年よりかなり早い梅雨明けとなった。7 - 8月は太平洋高気圧に覆われて厳しい暑さが続いた。岡山県津山市では8月13日に観測史上2位の38.0℃を記録した。空梅雨の影響で水不足や干害も発生した。この年もラニーニャ現象が起こっていた。
- 1978年(昭和53年)
- 夏平均では、平年よりも1.16℃高く、当時としては観測史上1位、2023年現在でも同5位タイを維持している(2023年、2010年、2022年、1994年がこの年を上回った)。特に7月は平年より1.92℃も高く、現在でも2023年7月に次ぐ観測史上2位となっている。記録的に梅雨明けが早く7月上旬から最高気温が35℃を超える猛暑となり北日本から関東地方、北陸地方にかけての多くの地点で夏(6月から8月)の平均気温が観測史上最も高く昭和時代では有数の猛暑年となった。北海道留萌市で35.0℃、同羽幌町で34.4℃、同紋別市で36.3℃、青森県深浦町で37.9℃、同八戸市で37.0℃、秋田県秋田市で38.2℃、同能代市(アメダス)で39.1℃、山形県酒田市で40.1℃、同鶴岡市(アメダス)で39.9℃、同新庄市で37.4℃、富山県高岡市伏木で39.4℃(観測史上2位)、新潟県相川町で37.0℃、同新潟市で38.5℃など北日本を中心とした多数の地点観測史上最高気温を観測した。特に能代市の記録は、2023年8月10日に青森県弘前市で39.3℃を観測するまで北東北での最高気温となっていた。東京でも8月21日から24日まで4日連続で35℃を越え、当時としては観測史上最長となった(2015年に7月31日 - 8月7日まで8日連続で猛暑日を記録している)。この年は太平洋高気圧の勢力(特に北への張り出し)が非常に強く、快晴状態が続き、猛暑に加え梅雨明け後の降水量が少なく水不足が深刻化した。しかし、その一方で南西諸島だけは冷夏となり、地域差が極端に大きかった。なお、この年は顕著な猛暑になったにも拘らず、大規模なラニーニャ現象は発生していない。
1980年代
- 1984年(昭和59年)
- 前年11月からこの年の5月にかけては20世紀後半では有数の低温で、1980年から1983年にかけては冷夏が続き、冷害が頻発したため、この年も冷夏になるのではないかと懸念されていたが、6月以降は一転して高温傾向に転じ、夏の平均気温は平年を1℃ほど上回る猛暑となった。東京都八王子市(アメダス)では9月3日に39.2℃を記録した。猛暑に加え、春以降は降水量が少ない状態が続いたため、西日本を中心に水不足が発生した。この年は6月頃から規模の大きいラニーニャ現象が発生し、翌年秋まで継続した。
- 1985年(昭和60年)
- 6月はオホーツク海高気圧が発達して梅雨寒が続いたが、7月には解消して暑い日が多くなり、8月は多くの台風が接近したため、フェーン現象が頻発し、最高気温の月平均は兵庫県豊岡市で35.2℃、新潟県小出町(アメダス)で34.7℃、年最高気温は富山県高岡市伏木で38.5℃、8月9日に北海道広尾町で観測史上2位の35.0℃、9月1日には石川県金沢市で観測史上2位タイの38.0℃を記録しているなど、上位11地点のうち9地点が北日本および北陸地方から山陰地方の日本海側であった。これらの地域では、8月の平均気温が当時の平年値を最大で約3℃上回る超異常高温になり、新潟市では8月の平均気温が当時の平年値を3.5℃上回る29.2℃に達し[13]、2023年8月が上回るまでの38年間は観測史上1位であった。また、札幌市でも24.6℃と、当時の観測史上最高を更新した。このように8月の北日本日本海側や北陸地方は記録的な大猛暑で、その他の日本海側でも現在も月平均気温の10位以内にランクインしている地点が多い。この年はラニーニャ現象が前年から継続していた。
1990年代
- 1990年(平成2年)
- 6月は温暖な上、降水量は少なく、梅雨明け後は各地で最高気温が35℃を越す記録的な猛暑となり、各地で水不足となった。特に西日本では猛暑日の日数が大分県日田市で43日、京都市で28日、大阪市で20日など非常に多かった。8月の月平均気温は福岡市で29.6℃など、西日本各地で当時の観測史上最高の記録を更新し、「気象観測史上」というワードが1990年の新語・流行語大賞を受賞した。秋以降も太平洋高気圧の勢力が例年以上に強かったため、9月もやや高温になったが、降水量は多かった。また、台風の上陸が多く、11月30日には台風28号が和歌山県白浜町に上陸し、観測史上最も遅い日本への上陸記録となった。また、この年はかなりの猛暑であったにも拘らず、ラニーニャ現象は起こっていない。
- 7月19日 - 山梨県大月市(アメダス)で39.9℃を筆頭に甲府市で39.3℃、埼玉県秩父市で39.0℃、群馬県館林市(アメダス)で39.7℃、前橋市、榛名町上里見(アメダス)で38.7℃、埼玉県熊谷市で38.9℃、寄居町(アメダス)で38.5℃など記録的猛暑。また、静岡県静岡市でも38.0℃を観測した。
- 8月8日 - 大阪府大阪市で38.3℃観測。
- 8月22日 - フェーン現象により、本州日本海側で記録的猛暑。新潟県上越市高田で38.6℃、三条市、寺泊町(アメダス)で38.5℃、山形県酒田市で38.1℃、鶴岡市(アメダス)で37.5℃、石川県金沢市で37.2℃、輪島市で37.0℃などを観測。糸魚川市(アメダス)では当時全国での最低気温の最高記録の30.8℃を観測した。
- 1991年(平成3年)
- 6月は全国的に、7月は東日本以西で高温が持続した。特に6月は全国平均で2013年現在でも観測史上第1位の平均気温となっている。静岡市では6月27日に当時の6月の全国最高記録の38.3℃を観測し、7月24日にも静岡の7月の歴代1位である38.4℃を観測した。静岡市の猛暑日日数は10日と、観測史上最も多い。夏季の平均気温も東北地方を除き、1971 - 2000年の平年を上回った(東北地方は当時の平年値でも平年並みで、現在は平年値が上昇したので、中国地方、九州北部、東海北陸でも平年並みになっている)。また、東京では梅雨明け後の7月下旬の平均気温は29.6℃、平均最高気温は33.7℃となるなど、全国的に顕著な梅雨明け十日となった。但し、8月に入ると発達したオホーツク海高気圧の影響を受けて南西諸島を除いて低温となり、東北地方を中心に冷害も発生した。さらに梅雨後半の前線の活発化などもあって、不順な夏という印象も大きい。南西諸島では夏期間を通じて高温が持続し、観測史上1位となる記録的な猛暑年となった。沖縄県南大東島では7月12日に観測史上1位の35.3℃、東京都の南鳥島では7月18日に観測史上2位の35.5℃、父島では7月29日に観測史上2位の33.8℃を記録した。この年は冷夏になりやすいとされるエルニーニョ現象が起きていたにも拘らず、猛暑になった。
- 1994年(平成6年)
- 3ヶ月平均で平年を1.18℃上回り、当時としては観測史上最高の猛暑となった(2010年に記録が破られた)。梅雨明けが早く、全国各地で最高気温が35℃を超える暑さとなり、40℃を越えた地域も3ヶ所(アメダス)あった。8月の月平均気温が大阪市で30.2℃、広島市で30.1℃となり沖縄県石垣市(最高記録は1956年7月の30.7℃)以外の国内では観測史上初めて月平均気温が30℃を突破し(特に7月中旬から8月上旬の1ヶ月間では、大阪市の30.8℃を筆頭に東海地方以西の19ヶ所で平均気温が30℃以上となる)、名古屋市と大阪市では最高気温の月平均が35℃を超えた。京都市では最高気温が4日間連続して39℃を超え、最高気温の旬平均が37.9℃(任意の5日間では39.2℃)に達した。大分県日田市では22日間連続を含む計45日間猛暑日を観測した。東京都心でも8月3日に東北地方に上陸した台風11号に南風が吹き込んだため、当時の最高記録の39.1℃を観測した。他にも網走市、青森市、いわき市小名浜、秩父市、長野市、高岡市の伏木、津市、大阪市、岡山市、広島市、徳島市、佐賀市など、多くの気象官署でこの年の記録が単独歴代1位となっている。米は豊作であったが、空梅雨で降水量が少なかった事が災いし、全国的な水不足に見舞われた。なお、この年は9月以降も残暑が厳しく、10月以降も季節の進行がかなり遅く、顕著な暖秋だった。この猛暑や残暑の要因として、ラニーニャ現象は起きていなかったが、インド洋の西側の海水温の上昇によって、エルニーニョ・ラニーニャ同様に世界的異常気象を引き起こすダイポールモード現象が指摘されている。
- 1995年(平成7年)
- 梅雨入りの6月は寒かったが、7月下旬以降は太平洋高気圧に覆われ、晴れた日が続き、北日本を除いて前年に引き続き猛暑気味となった。大阪市(30.3℃)、名古屋市(30.1℃)、岐阜市(30.3℃)で月平均気温が30℃を超え、名古屋市と岐阜市では最高気温の月平均がそれぞれ36.0℃、36.1℃に達した。この年は猛暑の原因となるラニーニャ現象が発生していた。このように8月は記録的高温に見舞われたものの、9月に入ると南西諸島を除き、一転して平年並みからやや低い気温で推移し、1990年代以降では珍しく、残暑は一時的であった。静岡市では8月10日に観測史上2位タイの38.5℃、そして8月28日に観測史上最高の38.7℃を記録しているほか、佐久間町、天竜市(いずれもアメダス)では39℃以上も記録している。ほかには、8月20日に千葉県佐倉市(アメダス)で観測史上最高の39.1℃を記録している。
- 1996年(平成8年)
- 東海地方から南西諸島を中心に暑夏となった。7月上旬に一時低温となったものの、6月はやや温暖であった。また、7月中旬から8月中旬までの盛夏期は高温多照となり、特に西日本で顕著となった。また、夏季の平均気温が平年並みであった関東でも8月中旬は顕著な高温となり、8月15日には千代田区大手町で観測史上第3位となる38.7℃、茨城県つくば市館野で観測史上第1位となる37.8℃、水戸市で歴代1位タイの38.4℃、同北茨城市(アメダス)で35.7℃、東京都府中市(アメダス)で38.9℃を記録した。一方でこの年はオホーツク海高気圧の勢力も強く、その影響を大きく受けた北海道や東北北部では平年よりも涼しく、期間を通して北冷西暑の夏となった。また、全国的に8月下旬から9月上旬は低温傾向に転じ、1990年代以降では珍しく残暑が殆どない早い秋の訪れとなった。
- 1999年(平成11年)
- 3年ぶりの猛暑になったが、北日本では平年より1.5℃も暑く、1994年を上回る観測史上3番目に暑い夏、東日本でも8月を中心に暑さが厳しかった。特に北海道では平年を1.7℃も上回った。太平洋高気圧が例年より北へ張り出しやすかったため、北海道でも多くの地域で連日最高気温が30℃以上の真夏日となった。北海道函館市では観測史上1位タイの33.6℃を記録し、札幌市、青森市、秋田市などでは夏の平均気温が観測史上最も高かった。一方、太平洋高気圧の西への張り出しは弱く、さらに前線、熱帯低気圧、暖湿気流などの影響を受けやすかった西日本と南西諸島では、曇りや雨の日が多く、気温は平年並かやや涼しかった。9月以降も全国的に残暑が極めて厳しく、10月の本州でも連日真夏日になるなど、かなり暖かい日が続き、顕著な暖秋となった。この年の猛暑、残暑はラニーニャ現象による影響とみられる。
2000年代
- 2000年(平成12年)
- 北日本・東日本を中心に厳しい暑さが続いた。特に北日本では前年に引き続いて顕著な高温となった。7月下旬は西日本で記録的な猛暑となり、7月22日に兵庫県豊岡市で観測史上1位の39.3℃を記録した。7月31日から8月1日にかけては台風6号が日本海を北上したため、各地でフェーン現象が発生し、7月31日には石川県輪島市で観測史上1位の38.2℃、秋田市で観測史上2位の37.9℃、北海道枝幸町で観測史上1位の35.0℃を観測し、石川県小松市(アメダス)では最低気温30.3℃を記録した。8月1日には小樽市で観測史上1位の34.9℃を観測したほか、枝幸町では前日の記録に次ぐ観測史上2位の34.6℃を観測した。但し、大気の状態が不安定な日が多く、全国的ににわか雨や雷雨が起こりやすかった。東日本・西日本では梅雨明けが早く、7月以降は降水量が少ない状態が続いたため、水不足となる地域があった。なお、前年ほどではないものの、残暑が厳しかった。9月2日に熊谷市で39.7℃を観測し、2020年9月3日まで9月の全国最高気温であった。
- 2001年(平成13年)
- 6月下旬はかなり暖かく、関東・甲信地方の梅雨明けは7月1日と、1951年以降で最も早かった(その後、2018年に記録が更新される)。7月は太平洋高気圧が本格的に強まって東北南部から南西諸島の広範囲で猛暑となり、特に東日本で著しかった。東京都心、埼玉県熊谷市をはじめ、関東地方の多くの地点では、観測史上最も暑い7月になった。7月24日には群馬県前橋市で40.0℃、静岡県佐久間町(アメダス)で40.2℃など、浜松市で39.3℃など記録を更新したほか、7月25日には高知県高知市で観測史上2位の38.3℃を記録した。この暑さが8月まで続き、残暑も厳しくなるかと思われたが[14]、北日本太平洋側や関東地方では、8月以降に発達したオホーツク海高気圧の影響で、冷たい北東風が吹き込みやすかったため、8月は一転して涼しく、曇りや雨の日が多くなった。ただし、この影響が少なかった西日本以南では、8月前半まで記録的な暑さが続いた(西日本は東日本以北に比べてオホーツク海高気圧の影響を受けにくい)。8月9日には沖縄県那覇市で35.6℃に達し、1916年7月16日に観測された35.5℃を上回り、85年ぶりの最高記録更新となった。西日本における8月上旬の平均気温は+1.4℃と、1961年(昭和36年)以降で2番目に高い。8月中旬に台風11号が上陸した後は、全国的に一気に涼しくなった。また、暖秋傾向が著しい2000年代以降としては、盛夏期は比較的短く、秋の訪れも早かった。なお、北日本では7月に東北南部で猛暑となった以外は天候不順気味で、東北北部の梅雨明けは特定できなかった。この暑さは、ダイポールモード現象が原因と考えられている。
- 2004年(平成16年)
- 6月は記録的に暖かく、全国的に梅雨明けは早かった。7月は各地で1994年や2001年に匹敵するような猛暑となった。7月20日には東京都心で39.5℃、翌21日には山梨県甲府市で40.4℃など、観測史上1位の最高気温を記録した。1994年(平成6年)や2010年(平成22年)とは異なり、8月は平年並みか、やや涼しい地域が多かった。しかし、9月に入って再び高温に転じた。梅雨期も高温で経過したため、真夏日の日数が非常に多く、熊本市が105日、京都市と大阪市で94日、東京都心で70日となり、観測記録を更新した。しかし、相次いで台風が接近、上陸し、風水害・塩害が頻発したため、1994年とは違い、米の出来は平年並みにとどまった(地域別でみると、天候が安定した東北地方太平洋側や関東地方、甲信(東山)地方で豊作、台風の影響を受けやすかった九州地方では不作となるなど、地域差が大きい)。この猛暑の要因は、太平洋高気圧が例年より北に偏って張り出したため、日本列島が高気圧の圏内になったものとされている。その他にも都市部では、ヒートアイランド現象も要因のひとつに挙げられる。この年は台風の上陸数が10個に達し、観測史上最も多い事も特徴として挙げられる。
- 2005年(平成17年)
- 7月は前年のような著しい猛暑とはならなかったものの、前年に引き続き、6月が記録的に暖かく、8月は前年よりも暑かったので、3ヶ月の平均気温は2年連続で上位となった。宮崎県日南市油津では7月26日に37.6℃、高知県四万十市中村(アメダス)では8月10日に39.7℃を記録した。真夏日日数は日田市が109日、熊本市が106日を記録した。6月は西日本を中心に記録的な少雨だったが、7月は一転して大雨となり、盛夏期も太平洋高気圧の張り出しが不安定で曇りや雨の日も多く、雷雨が多発するなど、高温とはいえ、やや天候不順気味な夏だった。9月は前年と同程度か、地域によってはそれ以上に残暑が厳しかった。
- 2006年(平成18年)
- 1991年と同様、冷夏になりやすいとされるエルニーニョ現象が起きていたにも拘らず、猛暑になった。6月は天候による気温差があったが、東北南部以南では平年よりもやや暖かかった。7月は天候不順気味で、全国的に梅雨明けが遅く、広範囲で記録的大雨となったが、8月に入ると一転して各地で猛暑に見舞われた。関西・瀬戸内地方を中心に月平均気温が29℃を超えたほか、大阪市では最高気温の月平均が35.0℃となった。北東気流や台風の影響で、それほど高温にならなかった東北地方太平洋側から関東・東海地方の沿岸部を除き、8月の平均気温は全国的に顕著な高温となり、寒暖差があったものの、夏季の平均気温は全国的に高くなった。東京都父島では7月30日に観測史上1位の34.1℃、鹿児島県屋久島では8月16日に観測史上1位タイの35.4℃を観測した。2006年(平成18年)夏の大雨、猛暑の要因は太平洋高気圧、オホーツク海高気圧とも勢力が強く、偏西風が蛇行したことが挙げられる。なお、この年の7月の記録的大雨に対しては、気象庁が平成18年7月豪雨と命名した。ただし、8月の暑さが厳しかった割には、9月の残暑は厳しくなく、平均気温は平年並みかやや寒かった所が多かった。
- 2007年(平成19年)
- 6月は空梅雨気味で温暖な日が多く、北日本で記録的高温となった地点があった。梅雨明けが関東・甲信・北陸地方以北では8月にずれ込むなど、7月は北日本から九州北部の広範囲で低温となった。しかし8月中旬は本州付近で太平洋高気圧に覆われ晴天が続き、関東・東海地方を中心に顕著な猛暑となった。最高気温が40℃以上を観測した地点が5ヶ所・のべ7日間(内アメダスが4ヶ所・6日間)にものぼった。8月15日には北海道苫小牧市で35.5℃、岩手県大船渡市で37.0℃(1位タイ)、宮城県石巻市で36.8℃の観測史上最高気温を記録し、翌16日には岐阜県多治見市(アメダス)と埼玉県熊谷市(気象官署)で40.9℃を観測し、1933年7月25日に山形市で記録した国内最高気温40.8℃を74年ぶりに更新した。この日には岐阜市でも観測史上最高の39.8℃を観測した。7月が涼しかったものの6月は温暖、8月が顕著な高温であったため結果的に夏の平均気温は北陸、近畿を除き平年を0.0 - 0.4℃前後上回る高温となった。北海道は0.8℃も上回った。9月は台風9号が東日本を縦断した以後に太平洋高気圧の勢力が強まり、特に西日本では平年を3℃前後上回る残暑が続いた。西日本を中心に全国の気象台・観測所153地点のうち64地点で9月の月平均気温の最高記録を更新し真夏日日数は熊本市が99日、鹿児島市が96日など九州各地で85日以上を記録した。また札幌市で現地の観測史上最も遅い真夏日を、大阪市で全国歴代2番目に遅い猛暑日を観測した。なお2007年(平成19年)の記録的な猛暑や残暑は地球温暖化が原因という指摘もあるが、その他には2007年(平成19年)春から発生しているラニーニャ現象および、ダイポールモード現象が原因の一つと考えられる。
- 2008年(平成20年)
- 6月は全国的に平年よりも寒かったが、7月に入ると全国的に平年を大きく上回る高温に転じ、特に西日本を中心に厳しい暑さが続いた。愛知県東海市(アメダス)で7月25日から27日に3日間連続で日最高気温が38℃以上を記録し、また、7月27日には大阪市で日最低気温が29℃以上となるなど、前年8月に匹敵する高温を各地で記録した。7月中旬 - 8月中旬の最高気温平均値は、名古屋市で35.4℃、京都市で35.1℃など、1994年や1995年などの年に匹敵する猛暑となった。東海以西では真夏日や猛暑日の日数が軒並み平年を大きく上回り、観測史上有数の記録となった地点が多かった。この高温・少雨・多照傾向は8月前半までの長期間に亘って持続し、8月上旬に気象庁の異常気象分析検討会として検討された。8月下旬になるとオホーツク海高気圧の影響などにより、ようやく全国的に低温傾向となり、厳しい猛暑から解放されたものの、7月から8月中旬までの顕著な高温傾向が反映され、夏の平均気温は東日本から沖縄・奄美地方にかけて高かった。高温傾向は東海や西日本では顕著であったが、7月から8月前半の高温傾向が比較的に小さく、8月下旬の低温が顕著となった東北・北海道では夏平均気温が平年並みかやや涼しかった。また、特に8月下旬は大気の状態が不安定であったため、広い範囲でにわか雨や雷雨が起こりやすく、前線を伴った低気圧の影響で東海地方や関東地方で豪雨となり、大きな被害が発生した(詳しくは平成20年8月末豪雨および2008年夏の局地的荒天続発を参照)。また、前年とは違い、期間を通して気温の変動が大きかった。9月以降も前年ほどではなかったが、この年も残暑は厳しく、一時的に涼しくなった8月下旬から一転して9月は再び全国的な高温に転じた。また、この年は2006年(平成18年)から3年連続でダイポールモード現象が起きていた。
2010年代
- 2010年(平成22年)
- 6月下旬、北海道各地では日最高気温が足寄町(アメダス)で37.1℃、北見市(アメダス)で37.0℃を観測するなど、平年を15℃以上も上回り、釧路市では6月としての従前の最高気温を4.1℃も上回り、観測史上最高気温を大幅に塗り替えた。東日本以西でも、同月28日に三重県津市で35.6℃を記録するなど、平年よりも暖かい6月になった所が多かった。結果的に同月の平均気温は平年を1.07℃(当時使われていた平年値では1.24℃)上回り、観測史上5番目に暖かかった。7月17日とその翌日に、九州北部から東北北部までの全域が一斉に梅雨明けしたと同時に、急激に暑くなり、21日には群馬県館林市(アメダス)で38.9℃、翌日には岐阜県多治見市(アメダス)で39.4℃など、38℃以上を記録する場所もあった。同月の平均気温は全国平均で平年を1.29℃(同1.42℃)も上回り、大船渡市、仙台市、千葉市では当時の過去最高を更新した。特に東北では+2.3℃にもなり1978年(昭和53年)、1955年(昭和30年)に次いで3番目に暑い7月、大船渡市、仙台市、千葉市では、同月の平均気温が最高になった。同月の28 - 31日頃は曇りや雨の所が多く、暑さの峠は越えたのではないかという見方もあった。しかし、この解消は一時的なもので、8月1日からは再び全国で猛烈な暑さとなり、同月の平均気温は大阪市と岡山市で国内歴代2位タイの30.5℃、高松市で30.4℃を観測するなど、島しょ部を除く本土での観測記録を更新した。それ以外にも仙台で27.2℃、東京で29.6℃、京都市と福山市で30.1℃、広島市と福岡市で30.3℃など、77地点で観測史上最高になった。また、最高気温の月平均は兵庫県豊岡市で35.7℃、大分県日田市で35.6℃、京都府舞鶴市と広島県福山市、鳥取県鳥取市で35.5℃、京都市、大阪市、福岡市で35.2℃、広島市で35.1℃に達した。9月1日、気象庁は6月から8月の平均気温が平年比+1.46℃(当時使われていた平年値では+1.64℃)に達して1994年を大きく上回り、2023年が上回るまでの当時の観測史上最高となるなど、記録的な猛暑となったので、この夏の猛暑を異常気象と認定した。特に8月の平均気温は平年を2.00℃(同+2.25℃)も上回り、2023年8月が上回るまでは観測史上最も高かった。また、9月中旬までの残暑も非常に厳しく、1日には242地点、2日には62地点、3日には90地点、4日には144地点で9月としての最高気温を更新した。岐阜県郡上市八幡(アメダス)で39.1℃、群馬県上里見(アメダス)と愛知県東海市(アメダス)で38.8℃など、38℃以上を記録した地点も多かった。同月22日にも千葉県茂原市(アメダス)で36.7℃、静岡県静岡市で36.3℃、山梨県甲府市で35.7℃など、非常に遅くまで激しい暑さが続き、盛夏期が極端に長かった事もこの夏の特徴として挙げられる。全国の月平均でも+1.45℃(同+1.79℃)に達し、当時としては観測史上4位になった(2012年が1位になったので、現在は5位に落ちている)。帯広市、札幌市、岐阜市、名古屋市などの9地点で、同月の平均気温が過去最高を記録した。また、熱帯夜の年間日数は仙台で10日(平年:1.4日)、金沢で44日(同:13.5日)、東京で56日(同:27.8日)、名古屋で87日(同:19.5日)、京都で42日(同:20.7日)、鳥取で30日(同:7.8日)など、多くの地点で観測史上最多を記録し、平年の2 - 4倍程度に達した地点も少なくなかった。鹿児島市と下関市では51日連続で熱帯夜が続き、本土では最長記録を更新した[15]。この年は前年夏に始まったエルニーニョ現象が春に終わり、夏に差し掛かるころからラニーニャ現象が始まっていた事も原因と見られている。
- なお、9月5日に京都府京田辺市(アメダス)で最高気温39.9℃を観測したが、後日、観測機器にツタが絡まっていた事が判明し、公式記録として認められず、幻に消えた。また、2010年の漢字には「暑」が選ばれた。この夏の暑さが社会に与えた影響が、絶大であった事を象徴している。
- 2011年(平成23年)
- 盛夏期は前年や翌年、翌々年のような極度の高温にはならなかったが、3ヶ月の平均では前年に引き続き、極端に高くなった。6月中旬までは平年並みか、それよりも寒かったが、夏至の日にあたる6月21日に急に暖かくなり、翌日は群馬県館林市(アメダス)で36.5℃、同伊勢崎市(アメダス)で36.2℃など計13地点で、35℃を超えた。更に24日は、埼玉県熊谷市で39.8℃(この年に観測された最高気温かつ当時の6月全国最高記録でもある)、同鳩山町(アメダス)で39.4℃、同寄居町(アメダス)で39.2℃、館林市(アメダス)で39.3℃となるなど、全国53地点で猛暑日を観測し、65地点で6月の観測史上最高気温を記録した[16]。6月29日も山梨県甲州市(アメダス)で38.5℃、同甲府市で38.1℃となるなど、全国74地点で猛暑日を観測し、71地点で6月の観測史上最高気温を観測した[17]。6月下旬の平均気温は東日本で平年比+3.8℃、西日本で平年比+3.3℃とそれぞれ2005年の平年比3.3℃、2.8℃を大きく上回り、1961年の統計開始以来最も暖かかった[18]。三重県上野市では観測史上最も暖かい6月になった他、千葉市で35.0℃、名古屋市で35.8℃、岐阜市で36.2℃、彦根市で35.2℃、大阪市で35.4℃など、多くの地点で6月としての最高気温を更新した。7月上旬は北日本で3.0℃(観測史上1位)、東日本で2.8℃(同2位)、中旬は北日本で2.1℃(同4位)、東日本で2.9℃(同1位)平年を上回り、前年の同時期を凌ぐ猛烈な暑さが続いた。特に、7月19日は114地点で35℃を越え、館林市と鳩山町(いずれもアメダス)で38.7度を記録した。また、富士山山頂でも7月22日に、観測史上2番目に高い17.4℃を記録した[19]。しかし、7月後半に気温が急上昇した前年とは反対に、同月下旬には平年並みか、やや涼しくなった。当然ながら、この涼しさも上・中旬の高温を相殺するには程遠く、7月の平均気温は全国平均で平年より1.05℃、北・東日本で1.0 - 1.8℃ほど、西日本では0.1 - 0.8℃ほど暑かった。8月も前半の暑さが厳しく、同月10日には青森県六ヶ所村(アメダス)で34.2℃、福島県船引(アメダス)で34.4℃(翌年には34.6℃を記録)、同二本松市(アメダス)で36.6℃を、11日には釧路市で31.1℃(観測史上2位)、14日には福井県小浜市(アメダス)で38.1℃、18日には神奈川県小田原市(アメダス)で36.6℃の観測史上最高気温を記録した。平均気温は北海道では平年よりも1.1℃ほど、東北北部で0.7℃ほど、その他の地域でも奄美地方を除いて0.1-0.6℃ほど暑かった。また、滋賀県彦根市では3ヶ月平均気温が前年と並ぶ観測史上1位、金沢市と福井市で同2位、西表島では8月の平均気温が28.9℃に達し、1998年に並んで同1位となった。しかし、一時的に低温になったので、前年の同月ほどの極端な高温にはならなかった。また、前年とは異なり、期間を通して気温の変動が大きかった。熱帯夜の日数も記録的に多く、東京で49日(翌年も同じ日数に達した)、名古屋で40日などは観測史上2位になっている。9月以降も前年や翌年ほどではなかったものの、残暑が著しく厳しかった。釧路市や横浜市などの5地点では、同月の平均気温が観測史上2番目に高かった。同月上旬は北日本で平年よりも2.5℃暑く、当時としては観測史上2位(翌年に更新されたので現在は3位)、中旬は北日本で1.7℃高く第4位(同5位)、東日本で平年よりも3.1℃高く第1位(同1位タイ)の高温を記録した。
- この年の猛暑や残暑の影響を受けて、マツタケの国内生産量が過去2番目に少ない36トンにとどまった[20]。
- 2012年(平成24年)
- 北・東日本および西日本日本海側では3年連続の著しい猛暑となった。6月は寒く、7月7日までは35℃を超えなかった。7月上旬の時点でも、2010年(平成24年)とは異なり冬の間に北極振動が負になっていなかったこと、ラニーニャ現象も発生していなかった事から、今年は猛暑にならないと予想されていた[21]。同月8日に沖縄県石垣市伊原間(いぱるま)で同県としての最高気温となる36.1℃を記録したが、14日頃までは極端な暑さにはならなかった。しかし、15日頃から厳しい暑さになり、17日には群馬県館林市(アメダス)で39.2℃、同伊勢崎市(アメダス)で39.1℃、同前橋市で38.0℃、福島県白河市で観測史上最高となる36.0℃を記録した。20-23日頃は一時的に暑さが収まったが、24日頃から再び厳しくなり、特に31日は、この年最多となる170地点で35℃を超え、青森県むつ市で34.7℃、福井県美浜町(アメダス)で37.1℃を記録している。8月は前年を上回る厳しい暑さが続き、1日には鳥取県青谷町(アメダス)で観測史上最高となる38.0℃を、2日には福岡市で観測史上2位となる37.5℃を記録した。月平均気温は全国平均で平年よりも1.13℃高く、観測史上3位になった。盛岡市、宇都宮市、前橋市など、計15地点で8月の平均気温が観測史上2番目に高かった。夏季全体で見た場合の平年比は北日本+0,7℃、東日本+0.6℃、西日本+0.4℃と、前年よりもそれぞれ、0.3、0.3、0.1℃低い。ただし、特に8月中旬からは北日本から山陰にかけての日本海側中心に記録的な暑さが続き、8月の平年比は北海道で+1.1℃、東北は+1.9℃、関東甲信+1.4℃、北陸+1.7℃、中国+1.6℃となり、その後、9月下旬までの記録的な高温へと経過した。北日本と東日本の8月下旬の平均気温は記録的に高く、北日本では1961年以降で最も暑かった。新庄(山形県)、若松(福島県)、境(鳥取県)などの計5地点で夏の猛暑日日数の最大値を更新した。西日本太平洋側でも平年を0.1- 0 .4℃ほど上回ったが、高気圧の中心から離れていたため東日本以北や、フェーン現象によって高温になりやすかった日本海側のような著しい高温にはならなかった。7月には、高気圧の縁に沿って暖かく湿った気流が九州北部付近に流れ込んだため、記録的な豪雨になった(平成24年7月九州北部豪雨)。9月16日には北海道襟裳岬(アメダス)で26.2℃の観測史上最高気温を、翌日には新潟県上越市大潟町(アメダス)で37.6℃、富山市で36.8℃、その翌日には新潟県胎内市中条町 (アメダス)で37.5℃、同村上市(アメダス)で37.0℃、青森市と秋田市で36.1℃など、9月としての最高気温を、北日本の日本海側を中心に78地点で記録した。これは、台風16号が朝鮮半島から日本海北部を通過したことによって、南から暖気が入り込んだ上、フェーン現象が起こったことが原因と見られている。また、同月の平均気温は近畿以東の計51地点で当時最も高くなった。特に、北海道羽幌町、同旭川市、青森市、盛岡市などの13地点では4-4.6℃も高かった。この年も、ダイポールモード現象が起きていた[22]。
- 2010年(平成24年)と同様、海水温も記録的に高くなり、特に北海道周辺は9月中旬に平年よりも4.6℃も高かった[23]。9月17日には小樽市付近の定置網にジンベエザメ(全長3.5mのオス)がかかり、その後おたる水族館に提供された。北海道でジンベエザメがかかるのは初めてで、地元の長年やってきた漁師も驚きを隠せないでいる。また、釧路市付近の海でも8月下旬からマンボウがかかり始め、1日には1000匹に達したという。以前も同じ海域でマンボウがかかることはあったが、これほど多いのは一度としてなかった[24]。
- 2013年(平成25年)
- 前年は記録的な高温にならなかった西日本太平洋側や南西諸島も含め、3か月及び全ての地方を通して高温になった。特に8月中旬は暑さが厳しく高知県四万十市江川崎(アメダス)で41.0℃の国内最高気温を更新した。降水量は東・西日本の太平洋側及び奄美では記録的に少なかった一方、山口県、島根県などの日本海側ではこれまで経験したことがないような豪雨に見舞われた。
- 2015年(平成27年)
- 6月は太平洋高気圧が南西へ張り出し、南西諸島で平年を1.8℃上回る記録的高温になった。北海道・本州は6月は平年並みで、7月上旬は西日本を中心にかなりの低温になったが、その後、太平洋高気圧の影響が強まり、北日本・東日本は中旬から、西日本は下旬から一転して記録的な猛暑になった。7月14日に福島市で観測史上2位の39.0℃、8月1日に福島県白河市で観測史上2位の35.9℃、8月5日に北海道根室市で観測史上2位の33.6℃、同じ日に岩手県大船渡市で観測史上1位タイの37.0℃、8月6日に静岡県熱海市網代で観測史上1位の36.8℃、8月7日に千葉県千葉市で観測史上1位の38.5℃、8月8日に熊本県人吉市で観測史上1位の37.8℃を観測したほか、東京都心では7月31日から8月7日まで8日連続猛暑日を記録し、それまでの最長記録であった4日連続(1978年・2010年・2013年)を大きく上回って観測史上最長記録となった。また、宮城県仙台市で観測された猛暑日の日数は5日と、1926年の観測開始以降最も多い。このように盛夏期は、記録的な暑さとなったが、秋の訪れは早く、8月後半は再び低温に転じ、9月も平年並みであったため、近年では珍しく過ごしやすい晩夏・初秋となった。また、この年はエルニーニョ現象が発生している年としては数少ない猛暑年になっている。夏全体の平均としては、高温期の始まりが他の地域より早かった北日本は猛暑、高温期が短めであった西日本は冷夏気味、その間の東日本は平年より少し高い程度であったが、気温の変動がかなり大きい夏となった。南西諸島は7・8月は平年並みであったが、6月の記録的高温に引っ張られて夏全体でも猛暑になった。
- 2016年(平成28年)
- 6月は太平洋高気圧が南へ張り出し、北日本を除いて暖かく、南西諸島で記録的な高温になり、沖縄県石垣島で6月の月平均気温の高い方から1位の値を更新した[25]。7月は本州付近に南から暖かく湿った空気が流れ込み、東日本・西日本・沖縄奄美は高温となり[26]、7月7日に東京都心で最高気温36.7℃、埼玉県熊谷市で37.3℃を観測し、沖縄県久米島、与那国島、西表島、名護では1位タイの値を記録した。8月は全国的に高温となり[27]、8月6日に京都市で最高気温37.9℃、8月7日に秋田市で37.6℃、8月8日に岐阜市で38.5℃、8月9日に山梨県甲府市で38.5℃、8月11日に熊本市で38.1℃、8月19日に大阪市で38.1℃、8月21日に福島市で36.4℃、8月22日に長崎市で36.2℃の猛暑日を記録した。9月になっても高温が続き、残暑が厳しかった[28]。この年の猛暑、残暑はラニーニャ現象による影響とみられる。
- 2018年(平成30年)
- 関東地方では統計開始以降最も早い6月29日に梅雨明けした。同日は東北地方で猛暑となり、山形県山形市では、それまでの6月の最高記録を2℃近く上回る37.5℃を記録した。7月上旬に発生した平成30年7月豪雨の後、チベット高気圧や太平洋高気圧の影響により、厳しい暑さが続いた。7月23日には埼玉県熊谷市にて全国歴代1位となる最高気温41.1℃を記録した。他地域でもまた40℃近い猛暑が続いた。7月の平均気温は、東日本で平年比+2.8℃で史上最高となり、西日本でも1994年(平成6年)に次いで、第2位タイとなった[29]。8月以降も猛暑は続き、愛知県名古屋市で最高気温40.3℃を記録した[30]。さらに8月6日には岐阜県下呂市(アメダス)で午後2時過ぎに41.0℃を記録。さらに8月8日には岐阜県美濃市(アメダス)でも41.0℃となった。同じ年に41℃以上を3度も記録するのは観測史上初めて[31]。8月中旬に一旦かなりの低温になったが、東・西日本ではその後、台風の接近に伴い、暑さが盛り返し、8月23日には新潟県の3箇所のアメダスで40度以上を記録し、8月下旬では初めて40℃以上になった。この結果、東日本では6月 - 8月の平均気温が平年比1.7℃高くなり、観測史上1位、西日本では2013年に次ぎ、1994年と並んで第2位となった。しかし、南西諸島を除いて9月に入った途端、強い勢力の台風の接近が相次いだため、低温が続き、記録的猛暑の年としては珍しい緩やかな残暑となった。ただ、10月は台風の接近の影響で、フェーン現象が発生し、新潟県で10月の最高気温を更新する猛暑日の地点があった。この年は春も記録的に気温が高く、1月2月の気温の低さがありながら、東日本では、年間の平均気温が統計開始以来最も高くなった。
- 2019年(令和元年)
- 北日本を中心に記録的高温となった5月に続いて6月上旬は、大陸からの暖気に覆われて高温だったが、中旬以降は太平洋高気圧の張り出しが弱かった影響で、西日本中心に梅雨前線の北上が遅れたため、6月全体では平年を少し上回る程度になった。7月に入ってからも梅雨前線の北上が遅く、上旬から中旬にかけては本州で梅雨寒が続いたが、下旬に梅雨明けするとチベット高気圧や太平洋高気圧が強まり、一気に猛暑になった。7月31日に北海道釧路市で観測史上2位の31.4℃、8月13日に岐阜県高山市で観測史上1位の37.7℃、8月14日に新潟県上越市高田で観測史上1位の40.3℃を観測し、8月15日は台風10号のフェーン現象により、新潟県を中心に記録的な暑さとなり、胎内市中条(アメダス)の40.7℃を始め、複数のアメダスで最高気温40℃以上を記録したほか、糸魚川市(アメダス)では最低気温31.3℃を記録し、1990年8月22日に同市で観測された最低気温30.8℃を上回って最低気温の国内最高記録を29年ぶりに更新し、佐渡市相川でも気象官署として最高記録となる最低気温30.8℃を観測するなど、複数地点で最低気温が30℃を上回り、相川では最高気温も38.1℃と観測史上最高であった。また、最高気温40.0℃、最低気温30.2℃や最高気温40℃と最低気温30℃の両方を同日に達成した三条アメダスでは、日平均気温が34.3℃に達した。その後、一旦暑さは収まり、8月下旬は平年を下回ったが、9月に入ってから北日本を中心に記録的な残暑となった。また、前年とは異なり、期間を通して気温の変動が大きかった。夏全体の平均気温は、西日本では平年並みだったものの、北日本・東日本では平年を0.4℃ - 0.8℃を上回る高温となった。この年は10月以降も高温傾向が続き、秋の気温・翌年冬の気温は連続で観測史上最高となった。また、5月26日には北海道で異常気象ともいえる記録的な高温となり、佐呂間町で39.5℃を観測し、これは北海道の観測史上最高気温及び5月の国内最高気温である。ほかにも帯広市で38.8℃など10地点で38℃に達し、それまでの5月の観測史上最高気温上位20位のうち、これまで1位であった秩父市の記録が19位タイまで後退し、それ以外が全部北海道に塗り替わることになったほか、北海道44地点を含む全国53地点で猛暑日を観測(それまでは1993年5月13日の13ヶ所)、道内36ヶ所で観測史上最高記録更新、5月としては異例の全国562地点で真夏日を観測、全国289所地点で5月の観測史上最高気温を記録するなど極めて異例な猛暑日となった[32]。
2020年代
- 2020年(令和2年)
- 6月は前半がかなりの高温となり、低温の時期が皆無であった事から、全国平均で観測史上1位の高温となった。7月は全国的に梅雨前線に覆われ、東海地方、関東地方などで史上最も遅い梅雨明けとなるなど、全国的に冷夏となったが、8月からは猛暑の原因となるラニーニャ現象および、チベット高気圧の影響[33]やインド洋で発生したダイポールモード現象などもあって、一転して2018年に匹敵する記録的猛暑となった[34]。特に南九州や静岡県西部、北関東などで記録的高温となり、8月11日には北関東で記録的猛暑、茨城県、栃木県、群馬県で観測史上最高気温を観測し、群馬県伊勢崎市と桐生市で県内最高記録の40.5℃、館林市で39.9℃など、埼玉県鳩山町で観測史上最高となる40.2℃、熊谷市で39.6℃、栃木県佐野市で県内最高記録の39.8℃、茨城県古河市で県内最高記録の39.6℃、東京都八王子市で39.3℃などを観測した[35][36]。8月14日には高知県四万十市中村で観測史上最高の39.8℃を観測。8月15日は四万十市中村、浜松市、浜松市天竜で39.7℃を観測。また、愛媛県愛南町御荘では、戦後の県内観測史上最高記録である39.0℃を観測した[37][注 1]。8月16日には浜松市天竜で国内観測史上4位タイの40.9℃を記録し、浜松市中区では初の40℃以上の記録となる40.2℃を観測[38]。その県内記録を塗り替えた翌日8月17日には、中部~西日本で記録的猛暑となり、浜松市中区で国内観測史上タイとなる41.1℃を観測している[39]。そして、長野県飯田市南信濃でも県内最高記録となる39.5℃を観測した[40]。南九州も記録的猛暑となり、宮崎県西米良村で県内最高かつ九州史上2位となる39.7℃、えびの市加久藤で観測史上最高となる39.4℃を観測。鹿児島県で観測史上初の38℃以上となる38.1℃を肝付町前田で観測[41](翌日には38.5℃を観測[42])している。その他、和歌山県古座川町西川では38.9℃を観測[43]するなど、西日本の太平洋側で記録的高温が続いた[44]。8月18日には徳島県那賀町木頭で県内最高記録の39.0℃を観測[45][注 2][注 3]。8月19日には大分県豊後大野市犬飼で38.7℃を観測。8月20日には滋賀県東近江市で県内最高記録の39.2℃を観測している[46]。残暑も厳しく、8月21日には岡山県高梁市で県内タイとなる39.3度を観測したほか、大阪市で観測史上2位の38.6℃を記録し、また、同市初の6日連続37℃以上という酷暑となった[47]。8月30日には兵庫県西脇市で県内観測史上2位タイとなる39.2℃を観測[48]。猛暑は9月に入っても続き、9月3日には新潟県三条市で40.4℃、胎内市中条で40.0℃と9月史上初の40度以上を観測(また、両地点とも3年連続40℃以上となった)[49]。また、岡山県高梁市は8月9日から9月1日まで観測史上最長記録となる24日連続猛暑日を記録し、それまでの大分県日田市の記録(1990年、1994年の22日連続)を塗り替えた[50]。また、前年に引き続き、気温の変動がかなり大きい夏となった。九州西部に接近、北上した台風10号以後は、暖秋傾向は続いたものの、残暑は次第に落ち着き、猛暑日はほとんど観測されなくなった[注 4]。
- 2021年(令和3年)
- 北日本で記録的猛暑となった[51]。6月は全国的に気温が高く、特に北日本の平均気温はかなり高くなった[52]。7月中旬以降は、北日本を中心に高気圧に覆われて晴れた日が多かったため、7月の北日本は記録的な高温少雨となり、稚内、旭川、秋田など10地点で、月平均気温の高い方からの1位の値を更新し、留萌、網走、紋別など8地点で、月降水量の少ない方からの1位の値を更新した。また、北日本日本海側では、7月としては1946年の統計開始以降で1位の多照となった[53]。特に北海道日本海側では、30日間の平均気温が平年より4℃以上高くなる空前の猛暑・異常高温が続き、札幌市で真夏日継続日数を97年ぶりに更新[54]。旭川市では7月27日に36.2℃、7月28日に36.7℃、7月31日に37.6℃、8月6日に36.5℃、8月7日に37.9℃を記録し、去年までの極値を5回も超えた[55]。記録的な高温少雨により、北海道では干ばつによる深刻な農業被害が出た[56]。7月31日には旭川市江丹別で7月の道内最高気温となる38.4℃を観測[57]。また、8月7日には留萌管内の小平町達布で8月の道内最高気温となる38.7℃を観測したほか、富良野市で38.5℃など道央、道北を中心に記録的猛暑となった[58]。8月上旬には西日本各地でも猛暑となり、8月5日に大阪市で1994年8月8日以来、史上市内観測史上2位の38.9℃、6日に鳥取市で1994年の値を更新する観測史上最高の39.2℃を記録。8月8日には多治見市で40.6度と今年初の40度以上を観測し、2018年以降3年ぶり当観測所史上7度目の40度以上となった。8月10日は関東地方で猛暑となり、東京都八王子市で39.0度を観測している。しかし、8月中旬以降は西日本から東日本にかけて長雨となり、オホーツク海高気圧が優勢となった。12日には稚内市沼川で2.6℃と国内の8月最低気温として128年ぶりの低い値[59]となったほか、東京都心では8月15日に8月としては観測史上6位タイ・大冷夏の1993年以来、28年ぶりの低い最高気温20.2℃を記録[60] 。宮崎で16日に8月の低い最高気温5位タイの24.6℃,17日に6位タイの24.7℃[61]など、夏本番に一転して、各地で記録的低温となる気温の変動が大きい夏であった。しかし、3ヶ月平均では旭川市、いわき市小名浜等の5地点で、夏の平均気温の高い方からの1位の値を更新し、釧路市と秋田市の2地点で、夏の平均気温の高い方からの1位タイの値を記録するなど、北日本で平年よりかなり高い+1.4℃の記録的猛暑となった。また、東日本は+0.2℃で平年より高く、西日本でも0.0℃と、2021年から適用の始まった新平年値でも正偏差〜平年並みであった[62]。
- 2022年(令和4年)
- 6月中旬までは全国的に梅雨前線に覆われ、低温だったが、6月下旬から7月上旬は高温が顕著で、東日本・西日本・南西諸島では暖かい空気に覆われやすかったため、平均気温がかなり高くなり、特に西日本では1946年の統計開始以降1位タイの高温を記録した。北日本でも平均気温が高くなった。6月下旬には東日本・西日本、7月上旬には北日本で、統計開始以降1位の記録的な高温となった。中でも6月25日には群馬県伊勢崎市で40.2℃と6月史上初の40℃以上を観測し、7月1日には群馬県桐生市の40.4℃をはじめ、アメダス6地点で40℃以上の最高気温を記録した[63]。7月中旬は台風4号や温帯低気圧が通過した影響で、北日本や南西諸島を除いて低温となったが、7月下旬以降は再び高温に見舞われ、北日本・東日本では天候不順だった他は、東北・北陸地方の梅雨明けは特定できなかった[64]。9月も気温が上がっており、平年よりも残暑が厳しかった。この年は猛暑になりやすいとされるラニーニャ現象が発生していた。
- 2023年(令和5年)
- 全国の夏3ヶ月の平均気温偏差は+1.76℃で、2010年(+1.08℃)を大きく上回り、1898年の統計開始以降最も高い値[65]となる観測史上最も暑い夏となった。夏3ヶ月の平均気温は80地点で高い方からの1位を更新、5地点で1位タイを記録し、根室市18.2℃(平年差+3.8℃)、石巻市24.5℃(+3.2℃)など、北日本では夏3ヶ月の平均気温偏差が+3.0℃の顕著な高温となった。東日本でも+1.7℃と1位、西日本で+0.9℃と1位タイとかなり高くなった。6月以降の猛暑日地点数の積算でも、2010年以降では最多となった。8月5日に福島県伊達市梁川で40.0℃、8月23日に秋田市で38.5℃・札幌市で36.3℃となるなど、気象官署とアメダスを合わせた915地点中、128地点で日最高気温の高い方を更新した。248地点で日最低気温の高い方からの観測史上1位を更新し、8月10日に新潟県糸魚川市で最低気温が31.4℃となり、日最低気温の高い方からの歴代全国1位を更新するなど、最高気温だけではなく、最低気温も記録的に高くなった地点が多かった[66]。
- 日最低気温25℃以上の日数は仙台市36日、秋田市27日など、平年値が10日に満たない北日本の官署で30日前後に達し、それまでの年間日数の最多を大幅に更新した。全国の各月ごとの平均気温偏差は6月+1.22℃、7月+1.92℃、8月+2.16℃となり、7・8月は2ヶ月連続で各月として1898年の統計開始以降第1位を更新するなど、3ヶ月を通して顕著な高温が継続した。8月平均気温は全国の63地点で高い方からの1位を更新し、7地点では1位タイを記録した。新潟市・富山市30.6℃、金沢市30.5℃、福井市30.4℃、酒田市30.1℃、秋田市(平年差+5.0℃)・鳥取市30.0℃など、東北地方日本海側、北陸地方、山陰地方の地点としては観測史上初の月平均気温30℃以上を記録し、観測例の北限は、それまでの東海地方の岐阜市から一気に東北地方北部の秋田市まで北上した。昭和時代まで日本の全ての観測点で月平均気温30℃以上を記録した例は皆無であり、1994年(平成6年)の猛暑において大阪市や広島市など、平年値の高い西日本の都市で初めて記録されたものが約30年で平年値の低い北日本まで達した事になる。さらに、東北地方太平洋側でも8月平均気温の平年値が22.1℃である宮古市で27.2℃(+5.1℃)となるなど、月平均気温が平年差5℃以上となる極めて顕著な高温となった地点もあり、北日本では8月の平均気温偏差が+3.9℃の顕著な高温となった。以上のように南西諸島を除き、全国的に気温偏差がかなり高くなる記録的な猛暑であったが、東北地方の福島市の夏3か月の平均気温が26.3℃(+2.8℃)となり、九州地方の大分市(+0.6℃)と同値となるなど、平年値が大きく異なる北日本と西日本の地点間で夏の平均気温が同じとなった稀な例など、顕著な高温の地理的分布は北に偏っており、エルニーニョ現象が発生[67]している中で、相対的には北暑型の猛暑となった。
- 根室市、秋田市、宮古市、石巻市など、北日本沿岸部の官署では、既往の夏3ヶ月平均気温極値を一気に1℃以上も上回っている地点がある事から、北日本を中心に従来の猛暑とは一線を画した歴史的な猛暑であった。8月28日、気象庁によって開催された異常気象分析検討会[68]は、2023年夏の猛暑を「太平洋高気圧の本州付近への張り出しが記録的に強まったことが要因で歴代と比較しても圧倒的な高温で異常気象だといえる」と指摘[69]した。フィリピン付近で台風を含む積雲対流活動が活発だった影響で、日本付近で上層の亜熱帯ジェット気流が北偏して暖かい高気圧に覆われると共に、下層の太平洋高気圧の張り出しが記録的に強まった事が主要因と考えられ、持続的な温暖化傾向に伴う全球的な高温傾向の影響や、三陸沖で7月に行った気象庁の海洋気象観測船「凌風丸」による海洋内部の観測で平年より約10℃も高い水温を観測するなど、黒潮続流の北上に伴って海洋内部まで水温が顕著に高い状態が続いている[70]など、周辺海域での海水温の顕著な高温が影響した事が指摘されている。
- 残暑も極めて厳しく、全国の9月の平均気温偏差は+2.66℃ [71]となり、これまでの2012年の+1.51℃を一気に1℃以上更新する歴代でも圧倒的な記録的異常高温となり、7月から3ヶ月連続で日本の月平均気温の高温第1位を更新した。地方別では東日本で+3.1℃、西日本で+2.3℃となり、1946年以降第1位の顕著な高温となり、稚内(北海道)、久米島(沖縄県)等101地点では、月平均気温の高い方からの1位を更新し、秋田(秋田県)、沖永良部(鹿児島県)等10地点では、月平均気温の高い方からの1位タイを記録した。最終的に猛暑日日数は群馬県桐生市で46日に達し(それまでの記録は1994年の大分県日田市で45日)、猛暑日年間日数の日本記録を更新した。8月の平年値が24.4℃である仙台市で25.1℃となるなど、9月の月平均気温が8月の平年値を上回った地点もあり、9月も真夏並みの暑さであった。気象庁の担当者は「9月にこれだけ高温となるのは珍しく、率直に言って信じられない。温暖化が進むにつれて、将来、この気象状況が“平年”になる可能性もあると受け止めている」とした [72] 。3ヶ月連続で観測史上1位の気温を大幅に更新した。また、7月の世界平均気温(陸域の地上気温と海面水温の平均)の速報値は、基準値(1991 - 2020平均値)との差が+0.62℃となり、統計を開始した1891年以降でこれまで最も高かった2016年と2021年(+0.29℃)を上回り、第1位の高温となった[73]。世界平均気温は5月から4か月連続でその月としての高温記録を更新している。
- 2024年(令和6年)
- 6月上旬は冷涼な空気に覆われて低温だったが、中旬以降は暖かい空気に覆われた影響で、北日本中心に梅雨入りが遅れたため、平均気温が高くなり、6月全体では平年を上回る程度になった[74]。梅雨入り後も平均気温が高く、太平洋高気圧の張り出しが強かった影響で、7月上旬の高温が顕著となり、7月7日には静岡市で最高気温40.0℃を観測し、各地で記録的な猛暑となった。7月29日は栃木県佐野市で最高気温41.0℃を記録するなど、2018年7月を上回る統計開始以降1位の記録的な高温となった[75]。8月に入っても猛暑は続き、福岡県太宰府市は7月19日から8月27日まで観測史上最長記録となる40日連続猛暑日を記録し、それまでの岡山県高梁市の記録(2020年の24日連続)を塗り替えた。
その他
- 1886年、1916年(6月のみ)、1930年(7月のみ)、1939年(7月のみ)、1943・1944年(北海道のみ)、1948・1950年(北日本のみ)、1951年(北海道のみ)、1953年(奄美のみ)、1956年(南西諸島のみ)、1971年(南西諸島のみ)、1972・1975年(北海道のみ)、1979・1980年(6月のみ)、1987年(7月の東日本のみ)、1998年(南西諸島、8月の西日本のみ)、2002年(東・西日本のみ)、2014年(6・7月の北日本のみ)、2017年(7月の北・西日本・関東[76]、8月の西日本・南西諸島のみ[77])
夏期(6、7、8月)の各年の平年比
平均気温平年差[78]、1991-2020年の平年値。
- (+)* かなり高い
- (+) 高い
- (0) 平年並
- (-) 低い
- (-)* かなり低い
年 |
北日本 |
東日本 |
西日本 |
沖縄・奄美
|
1946年
|
+1.1
|
-0.2
|
-0.5
|
-1.1
|
1947年
|
-1.1
|
-1.1
|
-1.2
|
-1.4
|
1948年
|
+0.3
|
-0.8
|
-1.0
|
-1.0
|
1949年
|
-0.6
|
-1.5
|
-1.8
|
-1.4
|
1950年
|
+1.2
|
-0.5
|
-1.2
|
-1.5
|
1951年
|
0.0
|
-1.2
|
-1.5
|
-1.4
|
1952年
|
-0.5
|
-1.2
|
-1.3
|
-0.8
|
1953年
|
-1.2
|
-1.4
|
-0.7
|
-0.1
|
1954年
|
-2.6
|
-2.2
|
-1.7
|
-0.2
|
1955年
|
+0.9
|
+0.1
|
-0.3
|
-1.0
|
1956年
|
-2.0
|
-1.3
|
-0.8
|
0.0
|
1957年
|
-1.3
|
-1.4
|
-1.3
|
-0.6
|
1958年
|
-0.7
|
-1.0
|
-0.6
|
-1.0
|
1959年
|
-0.8
|
-0.9
|
-0.6
|
-0.6
|
1960年
|
-0.4
|
-0.7
|
-0.3
|
-0.7
|
1961年
|
+0.5
|
0.0
|
+0.1
|
-0.2
|
1962年
|
-0.4
|
-0.8
|
-1.0
|
-0.4
|
1963年
|
-0.7
|
-0.6
|
-0.5
|
-0.7
|
1964年
|
-0.9
|
-0.5
|
-0.3
|
-0.9
|
1965年
|
-1.1
|
-1.0
|
-0.9
|
-0.9
|
1966年
|
-1.4
|
-1.2
|
-0.7
|
-0.8
|
1967年
|
0.0
|
-0.2
|
0.0
|
-0.4
|
1968年
|
-0.5
|
-1.2
|
-1.4
|
-0.9
|
1969年
|
-1.1
|
-1.3
|
-1.1
|
-1.0
|
1970年
|
-0.3
|
-1.2
|
-1.1
|
-0.6
|
1971年
|
-1.1
|
-0.7
|
-0.5
|
+0.3
|
1972年
|
0.0
|
-0.9
|
-1.0
|
-0.8
|
1973年
|
0.0
|
-0.5
|
-0.4
|
-1.1
|
1974年
|
-1.0
|
-1.3
|
-1.3
|
-1.0
|
1975年
|
-0.2
|
-0.8
|
-0.6
|
-0.9
|
1976年
|
-1.5
|
-1.8
|
-1.5
|
-1.1
|
1977年
|
-0.8
|
-1.1
|
-0.8
|
-0.3
|
1978年
|
+1.5
|
+0.8
|
+0.3
|
-0.8
|
1979年
|
-0.2
|
-0.2
|
-0.4
|
-0.6
|
1980年
|
-1.6
|
-1.5
|
-1.4
|
+0.1
|
1981年
|
-1.1
|
-1.0
|
-0.4
|
-0.7
|
1982年
|
-0.7
|
-1.9
|
-1.7
|
-1.0
|
1983年
|
-2.1
|
-1.3
|
-0.7
|
-0.2
|
1984年
|
+0.9
|
+0.1
|
+0.2
|
-0.3
|
1985年
|
0.0
|
-0.5
|
-0.3
|
-1.0
|
1986年
|
-1.4
|
-1.3
|
-0.8
|
-0.4
|
1987年
|
-0.5
|
-0.2
|
-0.5
|
-0.5
|
1988年
|
-1.1
|
-1.3
|
-0.8
|
+0.1
|
1989年
|
-0.5
|
-1.3
|
-1.2
|
-0.5
|
1990年
|
+0.6
|
+0.4
|
+0.6
|
-0.1
|
1991年
|
-0.2
|
-0.3
|
-0.2
|
+0.5
|
1992年
|
-0.7
|
-1.0
|
-1.2
|
-0.8
|
1993年
|
-2.3
|
-2.2
|
-1.7
|
0.0
|
1994年
|
+1.0
|
+0.9
|
+0.8
|
-0.1
|
1995年
|
-0.4
|
-0.3
|
-0.3
|
-0.5
|
1996年
|
-1.0
|
-0.5
|
-0.1
|
0.0
|
1997年
|
-0.5
|
-0.3
|
-0.3
|
-0.9
|
1998年
|
-1.1
|
-0.4
|
+0.3
|
+0.4
|
1999年
|
+1.1
|
0.0
|
-0.6
|
-0.3
|
2000年
|
+0.9
|
+0.4
|
+0.2
|
-0.5
|
2001年
|
-0.5
|
+0.4
|
+0.4
|
+0.4
|
2002年
|
-0.9
|
+0.2
|
+0.2
|
-0.3
|
2003年
|
-1.7
|
-1.3
|
-0.9
|
+0.1
|
2004年
|
+0.5
|
+0.6
|
+0.7
|
-0.3
|
2005年
|
+0.3
|
+0.1
|
+0.3
|
-0.2
|
2006年
|
0.0
|
-0.3
|
+0.2
|
-0.1
|
2007年
|
+0.2
|
-0.3
|
-0.1
|
+0.1
|
2008年
|
-0.5
|
-0.2
|
+0.1
|
+0.1
|
2009年
|
-0.7
|
-0.5
|
-0.4
|
-0.1
|
2010年
|
+1.8
|
+1.1
|
+0.5
|
-0.2
|
2011年
|
+0.7
|
+0.5
|
+0.3
|
+0.1
|
2012年
|
+0.3
|
+0.2
|
+0.2
|
-0.1
|
2013年
|
+0.7
|
+0.7
|
+0.9
|
+0.4
|
2014年
|
+0.8
|
+0.1
|
-0.6
|
+0.1
|
2015年
|
+0.2
|
-0.1
|
-0.8
|
+0.4
|
2016年
|
+0.4
|
+0.2
|
+0.5
|
+0.8
|
2017年
|
0.0
|
+0.2
|
+0.4
|
+0.5
|
2018年
|
+0.2
|
+1.3
|
+0.9
|
-0.2
|
2019年
|
+0.4
|
+0.1
|
-0.2
|
0.0
|
2020年
|
+0.8
|
+0.7
|
+0.4
|
+0.6
|
2021年
|
+1.4
|
+0.4
|
+0.1
|
0.0
|
2022年
|
+0.9
|
+0.9
|
+0.9
|
+0.6
|
2023年
|
+3.0
|
+1.7
|
+0.9
|
+0.1
|
2024年
|
+2.3
|
+1.7
|
+1.4
|
+0.9
|
猛暑日
猛暑日(もうしょび)とは、気象庁が2007年(平成19年)4月1日に制定した、日最高気温が35℃以上の日のことである[1]。2006年までは、非公式に酷暑日(こくしょび)などとも言われていた。また、気象庁による定義ではないが、日本気象協会では2022年(令和4年)8月2日より、日最高気温が40℃以上の日を酷暑日と呼んでいる[79]。
近年の高温傾向もあり、北海道を含む各都道府県で毎年のように観測されているが、沖縄県は海洋性気候なので観測例は少ない。ちなみに、沖縄県での観測史上最高気温は、石垣市伊原間(2012年7月8日)、南城市糸数(2013年8月6日)、宮古島市下地(2016年7月5日)で観測された36.1℃である。
- 1年で最も早い猛暑日 - 5月13日 埼玉県秩父市(1993年、37.2℃)ほか [80]
- 1年で最も遅い猛暑日 - 10月9日 新潟県糸魚川市(2013年、35.1℃)[81]
- 年間猛暑日日数 - 62日 福岡県太宰府市(2024年)[82][83]
- 連続猛暑日日数 - 40日 福岡県太宰府市(2024年)[83]
- 猛暑日地点数 - 301地点(2024年8月4日)[84]
- 日最高気温 - 41.1℃ 埼玉県熊谷市(2018年7月23日)、静岡県浜松市(2020年8月17日)[85]
脚注・出典
- ^ 戦前には1927年に宇和島市で40.2℃を観測しており、歴代2位の記録である
- ^ 1994年7月に県内の穴吹で39.2℃を観測しているが、後に観測切断された
- ^ 2日前の8月16日にも39.0℃を観測している
- ^ 9月18日に山梨県南部町で35.0℃を観測したのみ
関連項目
外部リンク