FIFA女子ワールドカップ (フィファじょしワールドカップ、英 : FIFA Women's World Cup )は、国際サッカー連盟 (FIFA)が主催する、ナショナルチーム による女子サッカー の世界選手権大会 である。「ワールドカップ 」の部分は「W杯」と表記される場合もある。開催国名と開催年を付けて「FIFA女子ワールドカップ [国名] [年]」(英: FIFA Women's World Cup [country] [year] )などのように表記される。
概要
1991年 の第1回大会 以降、4年に1度開催されており、本大会は約1か月かけて開催される[ 注 1] 。
FIFA に加盟している各国サッカー協会の女子ナショナルチーム は女子フル代表、女子A代表 とも呼ばれ、そのうち開催国の代表チームと予選大会を勝ち抜いた代表チームが本大会に出場する。大会規模は徐々に拡大されており、1995年 の第2回大会 までは12チーム、2011年 の第6回大会 までは16チーム、2015年 の第7回大会 から24チーム[ 1] 、2023年 の第9回大会 からは32チームが出場し優勝を争う[ 2] 。
第1回大会は男子ワールドカップの第1回大会 の61年後にあたる1991年に開催された。1999年の第3回大会 まではFIFA女子世界選手権 の名称が用いられていたが、2003年の第4回大会 より現名称のFIFA女子ワールドカップ となった。2023年8月時点までに計9回開催され、優勝経験があるのはアメリカ合衆国 (1991年、1999年、2015年、2019年)、ノルウェー (1995年)、ドイツ (2003年、2007年)、日本 (2011年)、スペイン (2023年)の5か国である。
歴史
FIFA会長であったジョアン・アヴェランジェ が発案し[ 3] 、1991年に第1回大会 が中国 にて開催された[ 注 2] 。この大会には12か国が出場し、アメリカ合衆国が初代王者となった。第2回大会 は1995年にスウェーデン で開催されノルウェーが優勝した[ 注 3] 。
アメリカ合衆国 開催となった第3回大会 の決勝戦(アメリカ対中国 )には9万185人の観客がつめ掛け、また66万人以上もの人々がテレビ等で試合を観戦した[ 7] 。大会名が正式に「女子ワールドカップ 」となった2003年の第4回大会 の開催地が再びアメリカ合衆国になった背景に、本来の開催地であった中国で発生したSARS の流行があった[ 8] [ 注 4] 。その埋め合わせの措置として、2007年の第5回大会 は中国で開催される事が決定し、その大会において、前大会で初優勝したドイツは全試合無失点で勝利し2連覇した。
2011年の第6回大会 はドイツ で開催され、日本 がアジア初の優勝を果たした。地元ドイツ はその日本に準々決勝で敗れ3連覇はならなかった。
2015年の第7回大会 の開催地はカナダ で、参加国数は16か国から24か国に増加した[ 1] 。日本は連覇を狙うが、アメリカが3回目の優勝を果たした。
2019年の第8回大会 開催地はフランス で、アメリカがタイ 戦において13得点をあげると1試合最多得点記録を更新し、大会を2連覇した。
2023年の第9回大会 はオーストラリア ・ニュージーランド の共同開催となり参加国数は32か国となった[ 2] 。出場3回目のスペイン が決勝でヨーロッパチャンピオン のイングランド を破り初優勝し、ドイツに次いで2か国目の男女両方でのワールドカップ優勝国となった[ 9] 。
賞金
第5回大会 よりFIFAから成績に応じて、賞金が支給されている。第9回大会 の賞金は、以下の表を参照のこと[ 10] 。
各協会への割当金
成績
金額(USドル )
優勝
429万
準優勝
301万5千
3位
261万
4位
245万5千
ベスト8
218万
ベスト16
187万
グループリーグ敗退
156万
各選手への報酬額
成績
金額(USドル )
優勝
27万
準優勝
19万5千
3位
18万
4位
16万5千
ベスト8
9万
ベスト16
6万
グループリーグ敗退
3万
2023年3月18日、FIFAは総会で、7月に開幕する女子ワールドカップ2023年大会の賞金を、2019年大会の賞金3000万ドルから4倍近い大幅増の1億1000万ドル(約146億円)に増額すると発表した。インファンティノ会長は2027年の女子ワールドカップは男子の2026年ワールドカップと賞金を同額とする目標も掲げた。2022年のワールドカップカタール大会は賞金総額が4億4000万ドル(当時の為替レートで約616億円)だった[ 11] 。また2023年大会では史上初めて、大会に参加する選手個人に対しても報酬が支払われることとなった[ 10] [ 12] 。
開催方式
予選
FIFAワールドカップ(男子)の予選 と同様、まず国際サッカー連盟が各大陸別の連盟6団体に出場枠を割り振る(AFC 、CAF 、CONCACAF 、CONMEBOL 、OFC 、UEFA )。そして各連盟で予選を実施し、本大会に出場する国・地域チームを決定する。出場枠は本大会出場枠のほかに大陸間プレーオフが割り振られることもあり、この場合は地域予選の成績順で出場決定国に次ぐチームがプレーオフに出場し、勝ち抜いたチームが出場権を獲得する。
2019年大会以前の制度では、大陸間プレーオフの出場チームは2チームであり、その対戦で勝利したチームが本大会出場権を得ていた。この出場枠は便宜的に小数で表現され、例えば下記の表における「3+P」を「3.5」と記した。具体例を示すと、2015年大会 の予選においてCONCACAFが3.5枠、CONMEBOLが2.5枠であり、前者は予選上位3チームが、後者は同2チームに自動的に出場権が与えられた。これに加えてCONCACAFの予選4位チームとCONMEBOLの同3位チームを対戦させ、勝利チームが出場権を獲得している。
2023年大会の制度では、大陸間プレーオフに10チームが進出し、3つのグループに分かれて対戦。それぞれを勝ち抜いたチームが本大会出場権を得る。
出場枠の変遷は以下の通り。
凡例 =
H:開催国枠
P:大陸間プレーオフ枠
かっこ内の数は、当該連盟からプレーオフを勝ち抜き本大会出場権を得たチーム数
予選大会は、対象となる本大会の2年前から始まり、開催当年まで3年近くにわたって開かれる。その沿革は以下の通り。大会方式は各連盟ごとに決めているため、内容は開催により異なる。たとえば2003年大会 まで、オセアニアサッカー連盟 の女子ワールドカップ予選は本大会開催年に行っていた。またAFC女子アジアカップは2010年まで、本大会前年度開催分のみ予選大会を兼ねており、理由はそれまで隔年開催だったからである。
本大会
本大会期間は約1か月で、構成はグループステージとノックアウトステージ(決勝トーナメント)の2つである。まず前者で参加国を4か国ずつにグループ分けし、各グループ内で総当り1回戦のリーグ戦を行う。次のノックアウトステージへと進出するのは上位2チームと、3位のうち成績上位のチームで(大会によって出場国数は変動)、トーナメント方式 で優勝を決める。
グループステージにおいては、試合により得点数や内容に大きく差がつく例が見られた。2007年大会 の開幕戦ドイツ対アルゼンチンの試合では、ドイツが11-0のスコアで勝利しており、FIFA 会長のゼップ・ブラッター が苦言を呈し、開幕戦がこのような試合となった事や、11失点で敗北したアルゼンチンがスダメリカーノ・フェメニーノ優勝国であった事に言及した[ 13] 。
ノックアウトステージ(決勝トーナメント)は、各グループを成績上位で終えた合計16か国で行われ(第6回大会までは8か国)、勝利したチームが準々決勝から準決勝、決勝へと進む。このステージにおいては、90分のレギュレーションタイム終了時点で勝敗を決し得ない場合、1999年大会・2003年大会はゴールデンゴール 方式を採用した。2007年大会以降、前後半30分の延長戦 を行い、それでもなお勝敗が決まらない場合はPK戦 によって次の試合に進む国を決定する。3位決定戦は、準決勝で敗北し決勝戦へ進まなかった国同士が出場する。
結果
大会結果
開催実績
回
開催年
決勝戦開催都市
決勝戦会場
試合数
総 ゴール数
1試合平均 ゴール数
総 入場者数
1試合平均 入場者数
1
1991年
広州
天河体育中心体育場
26
99
3.81
510,000
19,615
2
1995年
ソルナ
ロースンダ・スタディオン
26
99
3.81
112,213
4,316
3
1999年
パサデナ
ローズボウル
32
123
3.84
1,194,215
37,319
4
2003年
カーソン
ホーム・デポ・センター
32
107
3.34
656,789
20,525
5
2007年
上海
上海虹口足球場
32
111
3.47
1,156,955
36,155
6
2011年
フランクフルト
FIFA女子ワールドカップスタジアム・フランクフルト
32
86
2.69
845,751
26,430
7
2015年
バンクーバー
BCプレイス・スタジアム
52
146
2.81
1,353,506
26,029
8
2019年
リヨン
パルク・オリンピック・リヨン
52
146
2.81
1,131,312
21,756
9
2023年
シドニー
スタジアム・オーストラリア
64
164
2.56
1,978,274
30,911
統計
代表別通算成績
順
国・地域名
出
優
準
三
四
試
勝
分
敗
点
均
得
失
差
1
アメリカ合衆国
9
4
1
3
0
54
41
9
4
132
2.44
142
39
+103
2
ドイツ
9
2
1
0
2
47
31
6
10
99
2.11
129
42
+87
3
スウェーデン
9
0
1
4
0
47
28
6
13
90
1.91
85
52
+33
4
ノルウェー
9
1
1
0
2
44
25
5
14
80
1.82
100
56
+44
5
ブラジル
9
0
1
1
0
37
21
5
11
68
1.84
71
42
+29
6
イングランド
6
0
1
1
1
33
20
5
8
65
1.97
56
34
+22
7
中華人民共和国
8
0
1
0
1
36
17
7
12
58
1.61
55
39
+16
8
日本
9
1
1
0
0
38
18
4
16
58
1.53
54
62
-8
9
フランス
5
0
0
0
1
24
13
5
6
44
1.83
44
24
+20
10
オーストラリア
8
0
0
0
1
33
10
7
16
37
1.12
48
58
-10
11
カナダ
8
0
0
0
1
30
9
6
15
33
1.10
36
57
-21
12
オランダ
3
0
1
0
0
16
10
2
4
32
2.00
26
12
+14
13
スペイン
3
1
0
0
0
14
7
2
5
23
1.64
24
15
+9
14
イタリア
4
0
0
0
0
15
7
1
7
22
1.47
23
20
+3
15
ナイジェリア
9
0
0
0
0
30
5
6
19
21
0.70
23
65
-42
16
デンマーク
5
0
0
0
0
18
5
1
12
16
0.89
22
29
-7
17
コロンビア
3
0
0
0
0
12
4
2
6
14
1.17
10
13
-3
18
ロシア
2
0
0
0
0
8
4
0
4
12
1.50
16
14
+2
19
北朝鮮
4
0
0
0
0
13
3
2
8
11
0.85
12
20
-8
20
カメルーン
2
0
0
0
0
8
3
0
5
9
1.13
12
12
0
21
スイス
2
0
0
0
0
8
2
2
4
8
1.00
14
10
+4
22
ニュージーランド
6
0
0
0
0
18
1
4
13
7
0.39
9
35
-26
23
モロッコ
1
0
0
0
0
4
2
0
2
6
1.50
2
10
-8
24
ジャマイカ
2
0
0
0
0
7
1
2
4
5
0.71
2
13
-11
25
韓国
4
0
0
0
0
13
1
2
10
5
0.38
7
31
-24
26
ポルトガル
1
0
0
0
0
3
1
1
1
4
1.33
2
1
+1
27
南アフリカ共和国
2
0
0
0
0
7
1
1
5
4
0.57
7
16
-9
28
ガーナ
3
0
0
0
0
9
1
1
7
4
0.44
6
30
-24
29
チリ
1
0
0
0
0
3
1
0
2
3
1.00
2
5
-3
30
フィリピン
1
0
0
0
0
3
1
0
2
3
1.00
1
8
-7
31
ザンビア
1
0
0
0
0
3
1
0
2
3
1.00
3
11
-8
32
チャイニーズタイペイ
1
0
0
0
0
4
1
0
3
3
0.75
2
15
-13
33
タイ
2
0
0
0
0
6
1
0
5
3
0.50
4
30
-26
34
メキシコ
3
0
0
0
0
9
0
3
6
3
0.33
6
30
-24
35
アルゼンチン
4
0
0
0
0
12
0
3
9
3
0.25
7
42
-35
36
コスタリカ
2
0
0
0
0
6
0
2
4
2
0.33
4
12
-8
37
スコットランド
1
0
0
0
0
3
0
1
2
1
0.33
5
7
-2
38
アイルランド
1
0
0
0
0
3
0
1
2
1
0.33
1
3
-2
39
ハイチ
1
0
0
0
0
3
0
0
3
0
0.00
0
4
-4
40
赤道ギニア
1
0
0
0
0
3
0
0
3
0
0.00
2
7
-5
41
パナマ
1
0
0
0
0
3
0
0
3
0
0.00
3
11
-8
42
ベトナム
1
0
0
0
0
3
0
0
3
0
0.00
0
12
-12
43
コートジボワール
1
0
0
0
0
3
0
0
3
0
0.00
3
16
-13
44
エクアドル
1
0
0
0
0
3
0
0
3
0
0.00
1
17
-16
データは2023年大会終了時点
太字 は優勝経験のある国・地域で、太数字 は最多記録
国・地域名は現在の名称で統一した
順位は通算勝点の多い順で、通算勝点が同数の場合は1試合あたりの平均勝点が多い方を、それも同数の場合は得失点差の優れた方を、得失点差も同数の場合は総得点の多い方を上にした
PK戦 で決着がついた試合は記録上引分となる
優勝回数
個人通算得点
個人通算出場試合
表彰
ゴールデンボール(大会最優秀選手)
ゴールデンブーツ(得点王)
ゴールデングローブ(最優秀GK)
最優秀若手選手賞
フェアプレー賞
エンターテイニングチーム賞
オールスターチーム
脚注
注釈
出典
関連項目
外部リンク