2023 FIFA女子ワールドカップ
FIFA女子ワールドカップ 2023(英: FIFA Women's World Cup 2023)は、2023年7月20日から8月20日まで開催された女子サッカーの国際大会であるFIFA女子ワールドカップの第9回大会である[1][2]。今大会から本大会の出場チーム数が24から32へ拡大する[3]。決勝でスペインがイングランドを1-0で下し、初優勝を果たした。スペインは2022年8月に2022 FIFA U-20女子ワールドカップ・10月に2022 FIFA U-17女子ワールドカップで優勝しており[注 1]、日本に次いで女子サッカー史上2か国目となる国際サッカー連盟(FIFA)主催の3つの世界選手権大会を全て制した国となった。またドイツに次いで、史上2か国目となる男女のワールドカップ優勝国ともなった[4]。 開催国の決定2019年3月19日に国際サッカー連盟(FIFA)は、開催地として立候補の書類を提出した国別協会が9件あることを発表した[5][6]。その後、2019年9月3日の発表では引き続き立候補している国別協会は8件となっており[7]、2019年12月13日の発表では引き続き立候補している国別協会は4件(うち1件は2か国共催)となっていた[8][9]。最終的な投票の時点では2件(うち1件は2か国共催)の立候補が残っていた。
開催国は2020年5月に決定の予定であったが[7]、2019年10月24日に行われたFIFAの理事会において、開催地を2020年6月に決定することを正式に決めた[22]。しかし新型コロナウイルスの世界的大流行の影響でFIFA総会が同年9月に延期となった。 2020年5月15日、FIFAは開催国の決定を6月25日に行うFIFAカウンシルで決定すると発表。6月上旬に各招致地から提出された招致ブック(開催提案書)や視察をもとに評価レポートを公表の上、FIFAカウンシルメンバーによる投票で決定する予定と告知した[23]。 6月25日のFIFAカウンシルメンバーによる投票の結果、開催国がオーストラリア・ニュージーランドに決定された[24]。
出場国2020年12月24日に、FIFAは大陸連盟別の出場枠を発表した[25]。
出場選手→詳細は「2023 FIFA女子ワールドカップ参加チーム」を参照
大陸間プレーオフ→詳細は「2023 FIFA女子ワールドカップ・大陸間プレーオフ」を参照
プレーオフは以下の方式で行われ、3チームが本大会出場権を得る[25]。
当初は上記の通り予定されていたものの、開催地については最終的に全試合がニュージーランドで実施されることとなった(親善試合を開催国として行うチームもニュージーランドのみとなる)。 組み合わせ抽選本大会の組み合わせ抽選は、2022年10月22日 19:30 NZDT(UTC+13)にニュージーランドのオークランドにあるアオテア・センターで行われる[34][35]。方式は以下の通り[36]。
抽選のポットは以下の通り(かっこ内は2022年10月13日付けランキング)[37]。
色は以下の通り: UEFA AFC CAF CONCACAF CONMEBOL OFC 公式球アディダスによる公式試合球の名称は「OCEAUNZ (オーシャンズ)」に決定した[38]。共同開催を記念したデザインとして、名前は今回の開催地域であるオセアニア(OCEANIA)と、オーストラリア(AU)とニュージーランド(NZ)のイニシャルが組み合わされている。 会場オーストラリアとニュージーランドは、FIFAに提出した入札書でトーナメントのために12の開催都市にまたがる13の会場を提案し、少なくとも10のスタジアム(各国で5つ)を使用することを提案した[39]。 2021年3月31日、FIFAは最終的な開催都市と会場を発表した。オーストラリアでは5都市・6スタジアムが使用され、ニュージーランドでは4都市・4スタジアムが使用される。オークランドのイーデン・パークで開幕試合が開催され、シドニーのスタジアム・オーストラリアで決勝戦が行われる[40][41]。
スケジュール試合日程は2021年12月1日にFIFAから発表され、キックオフ時間は発表されなかった[42]。ニュージーランドによる大会の開幕戦は2023年7月20日にイーデン・パークで行われる。一方、オーストラリアでの開幕戦は、同日にシドニー・フットボール・スタジアムで開催される。グループステージの試合は共催国がそれぞれ4つのグループを主催し、3位決定戦は2023年8月19日にラング・パークで行われ、決勝戦は2023年8月20日にスタジアム・オーストラリアで行われる[43]。 試合日程の構造上、オーストラリアは1つの国で全ての試合を行うことが確定している唯一のチームである[44][45]。 参加国は、4チームによる8グループ(グループAからH)に分けられ、各グループのチームはラウンドロビン方式で対戦し、上位2チームが決勝トーナメントに進出する。 グループステージの各グループは、以下の開催国に割り当てられる[43]。 ラウンド16から準決勝までは、グループA・C・E・Gのチームと、グループB・D・F・Hのチームとの間での対戦は行われない。またそのため、この間での国をまたぐ移動は、ラウンド16でグループE・Gから勝ち上がったチームの対戦がオーストラリアで行われるほかは存在しない。決勝と3位決定戦はオーストラリアで行われるため、ニュージーランドで準々決勝を勝利したチームは、準決勝ののちにオーストラリアへ移動する。 グループステージ順位決定方式各グループにおいて、2チーム以上の勝ち点が同じ場合は以下の優先順位で決定する。
グループA→詳細は「2023 FIFA女子ワールドカップ・グループA」を参照
グループB→詳細は「2023 FIFA女子ワールドカップ・グループB」を参照
グループC→詳細は「2023 FIFA女子ワールドカップ・グループC」を参照
グループD→詳細は「2023 FIFA女子ワールドカップ・グループD」を参照
グループE→詳細は「2023 FIFA女子ワールドカップ・グループE」を参照
グループF→詳細は「2023 FIFA女子ワールドカップ・グループF」を参照
グループG→詳細は「2023 FIFA女子ワールドカップ・グループG」を参照
グループH→詳細は「2023 FIFA女子ワールドカップ・グループH」を参照
決勝トーナメント→詳細は「2023 FIFA女子ワールドカップ・決勝トーナメント」を参照
トーナメント表
ラウンド16準々決勝準決勝3位決定戦決勝→詳細は「2023 FIFA女子ワールドカップ・決勝」を参照
優勝国
表彰
出典: FIFA 統計
総合順位
挿話観客動員数と視聴率今大会は約200万人の観客がスタジアムに詰めかけ、観客動員数記録を塗り変え、最終的な集計数は197万8274人にまで上がった[46]。開催国のオーストラリアは史上初の準決勝進出をかけたフランスとの準々決勝で、地元放送局の6歳から39歳の視聴率は驚異の91.2%となった[47]。中国は単独の試合としては世界最高の視聴者数を記録し、5,390万人もの視聴者がイングランド戦を観戦[48]。優勝したスペインでは560万人が決勝を視聴し、最高視聴者数は740万人に。これはスペインにおける女子サッカーの試合のテレビ視聴者数としては史上最高記録となった[49]。 歴史的敗退ニュージーランドが開催国としては史上初のグループステージ敗退となった[50]。また、全大会出場かつ決勝トーナメントに進んできたドイツも初のグループステージ敗退となった[51]。この様にポット1の国が2つも敗退するのは史上初であり、他にもFIFA女子ランキング1桁の国ではカナダとブラジルもグループステージ敗退となった[52][53]。前回大会の女王アメリカも決勝トーナメント1回戦で敗退となり、初めて4位以下となった[54]。反対に、2015年カナダ大会で決勝トーナメントの枠数が16となってから、今大会アフリカは史上最多の3か国が決勝トーナメントに進出した[注 3]。 判定アナウンスVARの結果を主審がマイクを通じて場内に説明する試み。FIFAクラブワールドカップ2022、2023 FIFA U-20ワールドカップで試験的に導入され[55][56]、年齢制限のないワールドカップ大会で男女を通じて初めて採用した。従来は大型ビジョンやテレビ画面に判定内容が表示されていたが、主審が理由を直接伝えることで、ファンがより容易に理解できることが期待されている。 ヒジャブの着用モロッコの選手が一人、韓国との試合において頭部を覆うヒジャブ(スカーフ)を着用してプレーした[57]。これは同大会で初めての事であり、またこの試合でモロッコはアラブで最初に勝利した国となった[57]。 日本人選手や日本代表サポーターのマナー今大会でも日本人サポーターや日本人選手の試合後のお辞儀やロッカー清掃は話題となった[58][59]。加えて、今回は山下良美主審、坊薗真琴副審、手代木直美副審の日本人審判団がロッカールームのボードに「ARIGATOU」とメッセージを残したことが伝えられ、世界から好意的な反応が寄せられる出来事もあった[60]。FIFAのジャンニ・インファンティーノ会長は自身のインスタグラム上で「準々決勝のスウェーデン戦では惜しくも敗戦に終わったが、今回の大会が史上最高のFIFA女子ワールドカップになったことへの貢献は、フィールド内外で誰もが忘れない」と、ピッチ内外で模範的な行いを見せた同代表に異例とも言えるメッセージを綴った[61]。 全世代制覇優勝国となったスペインは、2018 FIFA U-17女子ワールドカップ、2022 FIFA U-17女子ワールドカップ(2連覇)、2022 FIFA U-20女子ワールドカップで優勝しており、女子ワールドカップ全カテゴリーを制した史上2か国目の国となった。また最優秀若手選手賞に輝いたサルマ・パラジュエロは、2018 U-17女子W杯と2022 U-20女子W杯の優勝メンバーであり、個人で全カテゴリー制覇を成し遂げた史上初の選手となった[62]。 放映権本大会を巡って、FIFAと各国の放送局の間で放映権料についての軋轢が生じ、開催直前まで本大会を放送するテレビ局が決まらないという事態が発生した。 これはFIFAが女性選手の待遇改善を目的として、本大会の賞金総額を前大会からほぼ4倍となる1億1000万ドル(約158億円)とし、これをテレビの放映権料で賄うつもりだったためとしている[63]。 このため、日本やヨーロッパなどといった放送局との交渉において、FIFAから提示された金額を巡って難航し、FIFA会長のジャンニ・インファンティーノは「過去の偉大な女子W杯選手と世界中の女性への侮辱だ」などと批判した[64]。 なお、ヨーロッパの主要国(ドイツ、イギリス(イングランド)、フランス、スペイン、イタリア)を含む大半の国では2023年6月14日にFIFAと欧州放送連合の間で交渉がまとまり、加盟国の公共放送などで放送されることが決定した[64][65]。 日本については大会直前になっても本大会を放送するテレビ局が決まらないという事態が続いていたが[65]、開幕1週間前の2023年7月13日になってFIFAと日本放送協会(NHK)の間で交渉がまとまり、同局にて放送されることが決定した[66]。総合テレビとEテレ[注 4]、BS1にて日本戦の全試合を放送するほか[注 5]、BS1では開幕戦と決勝戦も放送する予定としている[67][68][69]。また、FIFA直営の動画配信サービスであるFIFA+でも日本語実況解説付きで全試合ライブ配信することが同月19日に発表された[70]。FIFA+の日本語実況担当者はFIFA側からは明らかにされていないが、フットメディア所属の複数のフリーアナウンサー(永田実[71]、原大悟[72]、福田浩大[73]、小林惇希[74]、藤田崇寛[75]、瀬﨑一耀[76])が自らのプロフィールやSNSでFIFA+での実況を担当していることを明らかにしている。 FIFAは放映権による収入を合計3億ドル(約417億円)と見込んでいた。しかし、実際には各国のテレビ局との交渉において当初の提示額を下回る金額での契約が相次ぎ、アメリカの経済紙であるウォール・ストリート・ジャーナルは目標額を1億ドル(約139億円)以上も下回った可能性が高いと報じた[77][78]。 大会公式スポンサー以下のスポンサーは今大会開幕時点のもの[79]。 FIFAパートナーFIFA女子サッカーパートナーFIFA女子ワールドカップスポンサーFIFA女子ワールドカップサポーター
脚注注釈出典
外部リンク |