Share to: share facebook share twitter share wa share telegram print page

 

KF51 (戦車)

KF51 パンター
性能諸元
重量 59t
行動距離 500km
主砲 52口径130mm将来砲システム(FGS)ドイツ語版
副武装 12.7mm重機関銃(同軸×1)
7.62mmRWS×1
UVision Air HERO120徘徊型弾薬×4 [1]
エンジン MTU MB873 Ka-501ディーゼルエンジン
1,100kW
乗員

3名+1名

  • 指揮官 (砲塔)
  • 砲手 (砲塔)
  • 操縦手 (車体)
  • 追加クルー (車体)
テンプレートを表示

KF51 パンタードイツ語: KF51 Panther)は、ドイツラインメタル社が自社開発した主力戦車。2022年6月13日に、フランスパリで開催していたユーロサトリ2022の会場で公開された[2]

概要

ラインメタル・パンター KF51

KF51 パンターは、ラインメタルが展開するKF(ドイツ語: Kettenfahrzeug、装軌車輌の意)シリーズの一つ。シャシーは既存のレオパルト2A4のものをベースにしているが、自動装填式の 130 mm 主砲を搭載した新しい砲塔を導入することで、前世代の西側主力戦車からの脱却を図ることを目的としている。専任のシステムオペレーター[2]、あるいは小部隊指揮官のためのスペースを車内に準備することにより、無人プラットフォームとのチーム戦術を促進し、重量軽減のためパッシブ防御よりもアクティブな防御システムを優先する[3]

ラインメタルのアルミン・パッパーガーCEOは、ロシアと戦争中のウクライナにKF51を含む戦車の工場設立についての意向がある旨をコメントしている [4][5]。ただし実現へのハードルは高く、今後の世界ビジネスを視野に入れた観測気球であろうとの見方もある[6]

軋轢

ラインメタルとクラウス=マッファイ(KMW、現・KNDS)は協力のもとレオパルト2をはじめドイツ軍主要陸上装備の多くを開発製造してきたが、近年両社の距離は遠ざかりつつあり、KMWはレオパルト2後継を目指す「MGCS」でフランスのネクスターを主要パートナーに定め、一方ラインメタルもMGCSの主砲などコンポーネント分担に参画しながら独自にKF51を開発している。KNDSはラインメタルを抜け駆けとして非難、さらに車体がレオパルト2のものであることを挙げて、知的財産権の侵害であると攻撃。これに対しラインメタル側は冷戦中レオパルト2のキールに所在した生産ラインを買収した(現在は解体済み)経緯からA4型以前については権利を保有していると反論し、怒ったKNDS側はミュンヘン地裁に法的保護を求める訴えを起こす事態となった[7]。結局、ラインメタル側が引き下がり[8]、KF51の車体はレオパルト2の派生型だが自社陣営で権利を保有するコディアック装甲工兵車英語版ベースに設計を改めるという。またMGCS側もラインメタル130mm砲に替えて、2024年にはフランス製の140mm砲「ASCALON英語版」を搭載した新たなコンセプトモデルを発表している[注 1]

武装

主武装は52口径130mm滑腔砲で、レオパルト2A6/A7に搭載されている55口径120mm滑腔砲と比較して砲口エネルギーが約50%アップしており、射距離も大幅に向上している[9]。砲弾は新設計の砲塔に備えた自動装填装置に20発、砲塔内に10発搭載し、運動エネルギー弾、プログラム入力式空中炸裂弾、演習弾を使用できる[2][10]

副武装には主砲同軸で12.7mm重機関銃を装備するほか、オプションでナッター7.62mmRWS、イスラエルのUVisionが開発した徘徊型兵器Hero-120の4連装キャニスター[11]無人航空機用の発射機を装備できる[10]

防御力

アクティブ防御およびパッシブ防御システムを備え、上空からの脅威に対してはトップアタック防護システム(TAPS)で防御し[12]、急速に煙幕を展開するファストフォグ防護システム、脅威を早期発見して無力化する被照準警報システムなどの防護装置で生存性を向上させることで装甲防御力の強化による重量増加を抑えていると思われる[1][9]

ベトロニクス

NATO規格に基づいて完全にデジタル化された「NGVA」アーキテクチャを介して、射撃統制システムや光学系センサーとネットワーク化されており、追加センサーやエフェクターをシームレスに統合することができる[9]

ラインメタル社は、全乗員が通信機器や武器システム、センサー、エンジンなどの主要コンポーネントのデータにアクセスすることが可能になり、乗員とKF51が状況確認や射撃戦における主導権を得ることができると説明している[10]。また人工知能の活用により、ハンターキラーモードやキラーキラーモードで遅延なく目標への交戦が可能となる[9]。無人航空機のオペレーター席も用意出来るとしている[2]

発展型

ラインメタル社は将来の能力拡張として、射撃統制システムへの人工知能の統合や砲塔の無人化、完全無人運用(UGV化)を提案している[1]

運用者

採用検討国

 ハンガリー
2023年12月15日、ラインメタルはハンガリー政府と次世代戦車の共同開発の契約締結を発表。約2億8800万ユーロの契約額で、ハンガリーの国営持株会社であるN7との協力のもと、最初はデモンストレータ車両として、主砲には現行型の55口径120mm滑腔砲に自動装填装置を追加した「パンターKF51 EVO」を開発するという[13][14]。N7は合弁会社ラインメタル・ハンガリーの49%保有株主で、先に採用されたリンクス歩兵戦闘車のライセンス製造実績がある。
イタリアの旗 イタリア
イタリアはアリエテ主力戦車の後継としてレオパルド2A8の採用を考えていたが、技術移転・ライセンス生産に関しKNDSとの交渉が折り合わなかった。代わって2024年10月以後ラインメタルとレオナルド S.p.Aのイタリアにおける戦闘車両開発製造の合弁会社の設立について合意・認可されたことから、アリエテおよびダルド歩兵戦闘車の後継にKF51およびリンクスがベースとなることが有力視される[15][16]

脚注

注釈

  1. ^ この他に輸出でも成功を収めているボクサー装輪装甲車もラインメタルはオランダ側持分事業を買収で囲い込む一方、KNDSはボクサーのミッションモジュールを共用できる独自の装軌型車体を開発。ラインメタルのKF41への対抗をもうかがわせている。

出典

  1. ^ a b c 「新兵器続々、ユーロサトリ現地報告 130mm主砲「KF51パンター」デビュー 竹内 修 『軍事研究』2022年9月号 p28〜p41
  2. ^ a b c d 世界最強!? 130mm砲を搭載 新型戦車KF51「パンター」デビュー 独ラインメタル”. 乗りものニュース (2022年6月14日). 2022年6月14日閲覧。
  3. ^ KF51 Panther”. Janes (20 July 2022). 21 July 2022閲覧。(Paid subscription required要購読契約)
  4. ^ 独防衛大手、ウクライナで戦車工場開設の意向”. CNN. 2023年3月26日閲覧。
  5. ^ 独防衛大手、ウクライナで戦車製造を検討 2か月以内に決定”. AFPBB. 2023年3月26日閲覧。
  6. ^ 新型戦車KF51 最初の顧客はウクライナ? 強気発言が注目される独ラインメタル社の野望”. 乗りものニュース. 2023年3月26日閲覧。
  7. ^ 斎藤雅道 (2023年5月1日). “「レオパルト2」は誰の子? ドイツ主力戦車の知財権めぐり裁判 KMWとラインメタル 友好関係だったのになぜ”. 乗りものニュース. 2025年1月26日閲覧。
  8. ^ KMWとラインメタルは訴訟を回避することで合意に達した Leopard 2”. META DEFENSE (2023年5月3日). 2025年1月26日閲覧。
  9. ^ a b c d 「ユーロサトリにみる戦車の将来像」 Carl Schulze 『PANZER』2022年10月号 p1〜p15
  10. ^ a b c Weltpremiere des mittleren Kampfpanzers KF51 Panther”. Europäische Sicherheit & Technik (2022年6月13日). 2022年6月14日閲覧。
  11. ^ 揺らぐ戦車のカタチ メーカーが模索する未来の姿は? 「ユーロサトリ2022」を振り返る”. 乗りものニュース. 2023年2月26日閲覧。
  12. ^ Panther KF51 main battle tank”. Rheinmetall. 2022年6月14日閲覧。
  13. ^ 独ラインメタル「一緒に研究だ!」戦車開発でハンガリー政府と契約 ベース車は?”. 乗りものニュース (2023年12月22日). 2025年1月26日閲覧。
  14. ^ Oliver Hoffmann (2023年12月15日). “Panther ready to pounce – Rheinmetall signs development contract with Hungary for nextgeneration tank”. ラインメタル. 2025年1月26日閲覧。
  15. ^ Richard Pettibone (2025年1月23日). “Rheinmetall and Leonardo JV Receives Approval, to Focus on Italian Army Programs”. DEFENSE AND SECURITY MONITOR. 2025年1月26日閲覧。
  16. ^ イタリア新型戦車「ヒョウ」ではなく「黒ヒョウ」に! 伊独の有力軍事企業が協力し“最新鋭車両”を開発”. 乗りものニュース (2024年8月18日). 2025年1月26日閲覧。

関連項目

外部リンク

Information related to KF51 (戦車)

Prefix: a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w x y z 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9

Portal di Ensiklopedia Dunia

Kembali kehalaman sebelumnya