T2中戦車
T2中戦車(T2ちゅうせんしゃ、T2 Medium Tank)とは、1930年代初頭に開発されたアメリカ陸軍の試作中戦車である。 概要1920年代前半、アメリカ陸軍は今後の戦車開発の方針として、5トン級の軽戦車と15トン級の中戦車の2種類を配備することを決定した。その内の15トン級中戦車がT2中戦車である。
[1] - M1924中戦車のモックアップ 1926年3月11日、兵器委員会はT1中戦車の研究と並行して、M1924中戦車の研究を行うことを承認した。 しかし、1926年秋以降、戦車のコンセプトそのものが変わり、当初のM1924中戦車の要素は無くなり、全くの別物となった。
[2] - T2中戦車の断面図
この、「軽戦車を基に中戦車を開発する」手法は、後に、M2軽戦車の部品を使ってM2中戦車を開発するという、成功に繋がった。
しかし、それでも不十分と考えられたのか、さらに、副武装として、操縦手の右側に、ブローニング 37 mm半自動砲(セミオートマチックガン)とブローニング M1919 7.62 mm機関銃からなる、T3E1システムを搭載した。この37 mm半自動砲も、5発クリップによって給弾された。 前面装甲厚は22 mmに達した。これは小銃や軽機関銃に対しては十分であった。 エンジンは、リバティ L-12で、出力は312 hpに抑えられたが、出力重量比は22.1 hp/tと、十分な数値が得られた。 サスペンションは、T1E1軽戦車の物を発展させたもので、片側に、12個の転輪と4個の支持輪を備えていた。381 mmに広げられた履帯も、T1E1軽戦車から受け継がれたものであった。
1930年12月下旬、T2中戦車の実験用の試作車が、アバディーン性能試験場に到着し、同月から機動試験が開始された。 機動試験の結果、操縦手の視界が悪いことが判明した他、理論値では路上最高速度40 ㎞/h出るはずが、実用上では32 ㎞/hしか出せないことが判明した。それ以上の速度ではサスペンションが保たないことが判明した。このサスペンションの問題が解決されることは無かった。 また、47 mm半自動砲の砲尾が重いというアンバランス問題も発覚した。 機動試験の後、戦車は改良のために、製造工場に戻された。 主砲のアンバランス問題解決のために主砲防盾にカウンターウェイトが取り付けられた。この頃、車体左側面の車外燃料タンクが追加され、2つになった。また、1931年5月頃、副武装のT3E1システムが撤去され、旧式のM1918 37 mm短戦車砲のT1システムに変更された。この頃、砲塔内の主武装が撤去された。主砲や副砲が撤去された理由は不明であるが、以後に開発された戦車には搭載されていないことからして、車載砲としては失敗作であったのかもしれない。さらに、1931年夏頃、T1システムも撤去された。その代わりに、車体に機銃用のボールマウントが、さらに、対空機関銃用のマウントが、設置されたが、それらに機銃が追加されることはなかった。足回りは、ヴィッカース中戦車 Mk.IIに搭載されていたものと同様の新型履帯に変更された。 改良の終わったT2中戦車は、1932年1月に、アバディーン性能試験場に再度送られた。
その理由は2つあった。 一つは、1929年9月に始まった金融恐慌による、国防予算の削減。 もう一つは、T2中戦車より、はるかに優れた、ライバルの登場、である。 1931年1月、ニュージャージー州ラーウェイにて、コンバーチブルドライブ車(装輪装軌併用式戦車)である、「クリスティーM1931中戦車」の公開デモンストレーションが行われた。この、クリスティーM1931中戦車の兄弟車は、ソ連のBTやイギリスの巡航戦車 Mk.IIIの基となった車両である。 この新型戦車は、武装を除く全ての性能で、競合他社の戦車を凌駕していた。T2中戦車と同じ、リバティ L-12エンジンのおかげで、当時としては破格の速度に達することができた。装輪時には、その差はさらに大きくなった。クリスティーM1931中戦車の先進的なデザインと比べると、T2中戦車は遺物のように見えた。 1932年、巻き返しを図る兵器局によって、T2中戦車は、歩兵戦車の中心地であった、フォート・ベニングの第67歩兵中隊(1932年10月に第2戦車中隊から改編)に送られた。 そこで、定期的に訪れる下院議員たちの前で、クリスティー戦車との比較デモンストレーションが行われた。両車の優劣は、誰の目にも明らかであった。
製造された唯一の車両は、1930年代の後半にアバディーン軍備博物館に送られて以来、長らくそこに留まり、近年、ヴァージニア州のフォート・リー駐屯地に移されて展示され、現在はアラバマ州アニストンにて、修復を待っている。 登場作品
外部リンク[3] - 最初期状態。車体左横の燃料タンクは一つ。車体前面右側の副武装はブローニング 37 mm半自動砲。 関連項目Information related to T2中戦車 |