WordPerfect
WordPerfect(ワードパーフェクト)は、かつてクロスプラットフォームで提供されていた、カナダのアルドのワードプロセッサソフトウェア。1980年代末から1990年代初めにかけて、一時デファクトスタンダードとなったが、その後Microsoft Wordの台頭によって圧倒的に占有率を失った。MS-DOS版と Microsoft Windows版だけではなく様々のプラットフォームやオペレーティングシステム上に移植されており、当時はMac OS、Linux、各種UNIX、VMS、System/370、AmigaOS、Atari ST、OS/2、NeXTSTEPなどで動作した。 1994年にWordPerfectはノベルに売却され、1996年にはコーレルに売却(コーレルはその後アルドに改称)し、現在はQuattro ProやプレゼンテーションソフトとバンドルしたWordPerfect Officeの一部として、Windows版のみ販売されている。 WordPerfect for DOSWordPerfectを最初に開発したのは、ブリガムヤング大学の学生ブルース・バスティアン(Bruce Bastian)とアラン・アシュトン(Alan Ashton)教授であった。サテライト・ソフトウェア・インターナショナル社(Satellite Software International, Inc.)をユタ州で創設し、後に社名をワードパーフェクト社(WordPerfect Corporation)に改称した。最初のバージョンはデータゼネラルのミニコンピュータ向けで、それを1982年にIBM PCに移植したWordPerfect 2.20が登場した。バージョン番号はデータゼネラル版と連続している。 人気を得るようになったのは、1986年のWordPerfect 4.2からであった。このバージョンでは、段落のナンバリング機能や脚注の自動挿入(多い場合に次のページに一部を割り付けるなど)といった機能を持っていた。WordPerfect 4.2は当時最も人気のあったWordStarからトップの座を奪い取った。 1989年、WordPerfect 5.1 for DOSがリリースされた。このバージョンではMacintosh風のプルダウンメニューを採用し、表計算ソフトのような作表機能も備えていた。WordPerfect 6.0 for DOSでは、従来型のテキストモードとグラフィックスを使ったWYSIWYGモードを備え、太字、下線、斜体といったテキスト効果が表示可能であった。 主な特徴
WordPerfect Library/Officeワードパーフェクト社は、付随するスピンオフ製品として1986年にWordPerfect Libraryをリリースし、後にWordPerfect Officeと改称した。これは、WordPerfectと共に使えるネットワーク機能や独自ユーティリティの集合体であり、NetWareを使っているオフィスでの利用を想定していた。以下のような機能が含まれる。
なお、後にコーレルがWordPerfectを買収し、WordPerfect Officeという名称をコーレル社のオフィススイート・ソフトウェアの名称として活用している。 WordPerfect for WindowsWordPerfectのWindows版の登場は遅かった。1991年にはWordPerfect 5.1 for Windowsがリリースされたが、DOSからインストールする必要がある上、安定性に重大な問題があった。1992年には、安定動作するバージョン5.2がリリースされたが、すでにMicrosoft Word for Windows version 2がリリースされてから1年が経過していた。WordPerfectのファンクションキーを中心としたインタフェースはWindowsに馴染まず、各種キーの組み合わせもWindows自身のキーボードショートカットと非互換を生じていた(例えば、Alt-F4 は「プログラム終了」だが、WordPerfectでは 「ブロックテキスト」)。注力していたプリンタドライバもWindowsでは不要となってしまった。 Windows版でもWordPerfectは独自の文字コードを内部で使用していた。このため、中国語などWindowsが対応した言語に対応できない事態が発生した。 ワードパーフェクト社は1993年、ボーランドとの相互ライセンス契約を締結し、WordPerfectはオフィススイートBorland Officeの一部となった。これには、他にQuattro Pro、Borland Paradox、WordPerfect Officeが含まれていた。その後、このWordperfect商品群は1994年6月にノベルに売却され、1996年1月にコーレルに売却された。ただし、ノベルはWordPerfect Office全体を売却せず、その技術をGroupWiseに流用した。 その後もWordPerfectはトラブルに見舞われた。Windows 95のリリースから9カ月後の1996年5月、32ビット版の WordPerfect 7がリリースされた。これは安定動作せず、マイクロソフトから "Designed for Windows 95" のロゴも取得できなかった。さらに、最初の WordPerfect 7は Windows NTで動作しなかった。NT対応のWordPerfect 7は遅れ、1997年にリリースされたときには NT 4.0がリリースされて6カ月が経過していた。 マイクロソフトは、Microsoft WordをプリインストールするPCメーカーにはWindowsを値引きするという作戦でシェアを伸ばしていった。WordPerfectは主に司法関係と学術関係で生き延びている。例えば、2005年にもアメリカ合衆国司法省がWordPerfectを大量に購入した[1]。2004年11月、ノベルはマイクロソフトを反トラスト法違反で訴えた[2]。 WordPerfect for MacintoshMacintosh向けのWordPerfectは他のオペレーティングシステム向けとはバージョン番号等も異なっていた。最初の1.0版はDOS版などのユーザー向けであり、それほど成功しなかった。2.0版は完全な書き換えがなされ、Mac OSのUIガイドラインに準拠するよう改良された。3.0版はその方向性をさらに推進した。1995年にリリースされた3.5版と若干の改良を施した3.5e版(1997年)を最後として、Macintosh版は開発されていない。2004年、コーレルは改めてWordPerfect for Macintoshを開発する予定がないことを明らかにした。 数年間、コーレルは3.5e版をウェブサイト上で公開し、無料でダウンロード可能にしていた。ただし、PowerPC版Mac上のクラシック環境で動作するソフトウェアであるため、インテル版MacではSheepShaverなどのエミュレータを必要とする。 WordPerfect for Linux1996年、カルデラがインターネットオフィスパッケージの一部としてLinux版WordPerfectをリリースした。草創期の商用Linux市場に足場を作ろうとしたコーレルも、独自のLinux版(Corel Linux)を開発した。 Linux版自体は好意的に受け止められたが、WordPerfectへの反応は様々であった。有名なアプリケーションがLinuxに移植されたことを単純に喜ぶ向きもあったが、オープンソースコミュニティの反応は冷ややかで、OpenOffice.orgのようなフリーウェアが主流の市場で、プロプライエタリなワードプロセッサがどれだけ支持されるかが疑問視された。また、WordPerfect 9.0はネイティブなLinuxアプリケーションではなく、Windows版をWine上で動作させるもので、安定性が批判の的となった。 結局、WordPerfectはLinux市場では受け入れられず、コーレルの方針転換もあって、9.0(2000年)を最後として開発が終了し、Linux版もXandrosに売却された。2004年4月、コーレルは最後のLinuxネイティブ版だった8.1を若干改良して、Linux市場の調査を兼ねてリリースした。2005年以降、WordPerfect for Linuxは販売されていない。 バージョン
(* - WordPerfect Office の一部)
上記以外のバージョンとして、Apricot、Atari ST、DEC Rainbow、Tandy 2000、TI Professional、Victor 9000、Zenith Z-100向けがあった。また、30種類以上のUNIX向けも存在した(AT&T、NCR、SCO Xenix、Microsoft Unix、DEC Ultrix、Pyramid Tech Unix、Tru64、AIX、Motorola 8000、HP9000、SUN 3など)。 最新版(X3以降)2006年1月17日、コーレルは WordPerfect X3を発表した。コーレルはOASISのオリジナルメンバーでもあり、OpenDocumentの仕様策定にも深く関わっている。しかし、OpenDocumentやOffice Open XMLのサポートはされず、ベータ版のリリースにとどまっていた[6]。 2008年4月、コーレルはオフィススイートWordPerfect Office X4をリリースした。これに含まれる新しいWordPerfectでは、PDF、OpenDocument、Office Open XMLがサポートされている。 2010年3月、コーレルはオフィススイートWordPerfect Office X5をリリースした。これに含まれる新しいWordPerfectでは、PDF、OpenDocument、Office Open XMLに対するサポートの強化のほか、Microsoft Windows 7への対応などがなされた。 2012年4月、コーレルはオフィススイートWordPerfect Office X6をリリースした。これに含まれる新しいWordPerfectでは、マルチ・ドキュメント/モニタ機能や新しいマクロ機能、Windows 8プレビュー版のサポート、eBookパブリッシャーが含まれる。[7] 2014年4月、WordPerfect Office X7リリース[8] 2016年4月、WordPerfect Office X8リリース[9] 2018年5月、WordPerfect Office X9リリース[10] 2020年5月リリースの最新バージョンは、WordPerfect Office 2020に含まれている[11]。 脚注
関連項目外部リンク
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