エコロジー・持続可能開発・エネルギー省
環境連帯移行省(かんきょうれんたいいこうしょう、フランス語: Ministère de la Transition écologique et solidaire)は、フランスの省のひとつ。持続可能な開発、環境政策、エネルギーおよび気候、交通および交通インフラ、設備、海洋ならびに海洋漁業および養殖業を所管する。 歴史環境省およびエコロジー・持続可能開発省1971年1月、シャバン=デルマス内閣の下で、ロベール・プジャードが首相付の自然・環境保護担当大臣に任命され、環境省が創設された。2002年5月、第1次ラファラン内閣の下で、環境省はエコロジー・持続可能開発省(Ministère de l'Écologie et du Développement durable)となり、ロズリーヌ・バシュロがエコロジー・持続可能開発大臣に任命された。 2007年5月にニコラ・サルコジ大統領が就任すると、エコロジーと設備という、歴史的に異なる二つの任務を統合した一大省庁を創設することが決定された。これには、副首相格の国務大臣(Ministre d'État)を長とする一大省庁を創設することで、「持続可能開発担当副首相」ポストの創設を規定したニコラ・ユロの「環境協定(Pacte écologique)」に対して署名したことを尊重するねらいがあった。こうして、アラン・ジュペが短期間「国務大臣、エコロジー・持続可能開発・整備大臣」を務めた後、ジャン=ルイ・ボルローが「国務大臣、エコロジー・エネルギー・持続可能開発・海洋大臣(環境技術・気候関連交渉担当)」を務めた。また、公共政策全般改正(Révision générale des politiques publiques)により、地方出先機関は県国土局(県設備局、県農業・林業局および環境部局を統合して設置)と地域圏環境・整備・住宅局(地域圏産業・研究・環境局、地域圏設備局および地域圏環境局を統合して設置)に再編された。 2010年11月に第3次フィヨン内閣が成立すると、エコロジー・エネルギー・持続可能開発・海洋省はエコロジー・持続可能開発・運輸・住宅省(Ministère de l'Écologie, du Développement durable, des Transports et du Logement)と改称された。ボルローは大臣職を退き、代わってナタリー・コシウスコ=モリゼが大臣に任命された。ただし、前任のボルローおよびジュペが有していた国務大臣の職名すなわち副首相格の処遇は引き継がれなかった。 2012年5月にフランソワ・オランド大統領が就任すると、エネルギー政策が再び本省の所管となる一方で、住宅政策が本省の所管から外れ、エコロジー・持続可能開発・運輸・住宅省はエコロジー・持続可能開発・エネルギー省(Ministère de l'Écologie, du Développement durable et de l'Énergie)となった。第1次エロー内閣においてはニコル・ブリックが大臣に任命されたが、第2次エロー内閣が成立すると、2012年6月にはデルフィーヌ・バトに、さらに2013年7月にはフィリップ・マルタンに交代した。現在のヴァルス内閣においては、セゴレーヌ・ロワイヤルが大臣を務めた。 2017年6月21日の第2次エドゥアール・フィリップ内閣発足時に、環境連帯移行省に改称され、エリザベット・ボルヌが大臣に就任した[1]。 設備省1960年代、第五共和政初代大統領シャルル・ド・ゴールは、国家再建のため、国の現代化に取り組んだ。1966年、第3次ポンピドゥー内閣において、エドガール・ピザーニが設備大臣に任命された。設備省(Ministère de l'Équipement)は、かつての公共事業・運輸省(Ministère des Travaux publics et des Transports)と建設省(Ministère de la Construction)を統合したものである。前者がアンシャン・レジームにその起源を持つ、高度に地方分散が進んだ組織であったのに対し、後者は1945年に設置された、非常に中央集権的な組織であった。こうして、設備省の投資支出は、国家の資本支出の3分の1以上を占めることとなった。1967年時点において、設備省は、土地整備・都市計画局と建設局の2つの部局と、地方レベルにおける県設備局で構成されていた。1967年12月の土地基本法(Loi d'orientation foncière)により、設備省は土地と都市計画を所管することとなった[2]。 1970年代、設備省は27,500kmに及ぶ道路の建設と都市計画の推進を担った。時を同じくして設備省は、団地の建設、あるいはまた環境問題に対する配慮に関して、初めて批判を受けることとなった。1978年、第3次バール内閣において、ミシェル・ドルナノが環境・生活環境大臣に任命され、初めて都市計画と環境政策の統合が図られた(ただし、運輸政策は依然として分離されていた)。これにより、土地整備・都市計画局は都市計画・景観局となった。しかし、1981年の政権交代のために、この組織は未完成なものにとどまった[2]。 第2次モーロワ内閣は地方分権諸法を成立させ、これにより、県設備局は県議会の管轄下に入り、道路のみが国の管轄下に残った。また、建築局は都市計画・景観局と統合され、建築・都市計画局となった。こうして、県設備局は地方自治体のためにサービスを提供する機関へと変貌を遂げた。第2次シラク内閣(第1次コアビタシオン)においても、設備政策と環境政策が改めて統合されるなど、現代化の取り組みが継続された[3]。 1990年代初頭には、国と県設備局との間で臨時職員制度が導入された。時を同じくして「都市政策(Politique de la ville)」という言葉が登場したが、大規模な都市計画は限られた用地を根底から再構成するために、省の統制を逃れ、国のあらゆる政策を阻止しようとした。また、ジョスパン内閣は、都市連帯・再生法(Loi relative à la solidarité et au renouvellement urbains、SRU法)の制定や、建築・都市計画局と住宅・建設局の統合(1998年3月に都市計画・住宅・建設総局となる)といった改革を行った[3]。 2003年に第2次ラファラン内閣は、都市および都市の再生のための方針および計画に関する法律(Loi d'orientation et de programmation pour la ville et la rénovation urbaine、ボルロー法)を成立させたが、これは都市政策における急激な変化を象徴するものだった。同法は、都市の再生における解体と建設を促進することとなった。時を同じくして、地方分権は新たな段階に入り、道路網に関する責任が県に移譲された。これにより、およそ3万人の職員が県間道路局に配置換えされた。2004年には住宅政策が設備省の管轄を離れるとともに、翌年には部局の再編が行われ、道路総局、海洋・運輸総局、都市計画・住宅・建設総局、民間航空総局、道路安全・交通局および観光局が設置された。ド・ヴィルパン内閣においては、国土整備が設備省の管轄を離れ、「設備」省という名称は、もはや伝統を表すものでしかなくなっていた。1990年代初頭には既に提言されていたが、2007年からは県設備局と県農業・林業局が統合され、県設備・農業局が設置されるようになった[3]。 任務および権限現在のエリザベット・ボルヌ内閣において、生態学的移行及び領土結束大臣は、以下の分野を所管する[4]。
組織任務の円滑な遂行のため、省の職員は以下の総局、局、中央専門部局、全国管轄部局および地方出先機関に配置されている。 大臣および大臣官房→「歴代エコロジー大臣」も参照
現在のエリザベット・ボルヌ内閣においては、クリストフ・ベシュが生態学的移行および領土結束大臣を務めている(2022年7月4日から現職)[5]。大臣は、中央行政機関、担当大臣、官房および報道官をその権限の下に置いている。担当大臣もまた同様に官房を有している。 中央行政機関生態学的移行および領土結束大臣は、以下の部局を権限の下に置く[4][6][7]。
監査機関
学術・専門ネットワーク学術・専門ネットワーク(Réseau scientifique et technique(RST))は、1万6000人の専門家によるネットワークである。彼らは全国に配置され、都市計画、文化財やインフラの管理、道路開発、道路交通安全、環境、防災など、数多くの分野に関与している[8]。 このネットワークは、各団体の業務における研究と実践の連携を可能にしている。 全国管轄部局
2014年1月1日に、ネットワーク・運輸・都市計画・公共施設研究センター(Centre d'études sur les réseaux, les transports, l'urbanisme et les constructions publiques(CERTU))、海洋・河川技術研究センター(Centre d'études techniques maritimes et fluviales(CETMEF))、運輸・道路・整備研究部(Service d'études sur les transports, les routes et leurs aménagements(SETRA))および8つの設備技術研究センター(Centre d'études techniques de l'équipement(CETE))が1つの新たな行政的公施設法人に再編され、災害・環境・移動・整備研究・専門センター(Centre d'études et d'expertise sur les risques, l'environnement, la mobilité et l'aménagement(CEREMA))となった。 学校エコロジー・持続可能開発・エネルギー省は、官吏養成のため、5校の工学校を含む多数の学校を有している。 これらの学校の多くは、省の監督下にある公施設法人となっている。
地方出先機関および地域管轄部局エコロジー・持続可能開発・エネルギー省は、以下の地方出先機関を単独または共同で監督する。 地域圏レベルイル=ド=フランス地域圏を除く各地域圏においては、2009年3月3日または2010年1月1日から、それまでの地域圏設備局(Direction régionale de l'équipement(DRE))、地域圏環境局(Direction régionale de l'environnement(DIREN))および地域圏産業・研究・環境局(Direction régionale de l'industrie, de la recherche et de l'environnement(DRIRE))に代わり、地域圏環境・整備・住宅局(Direction régionale de l'environnement, de l'aménagement et du logement(DREAL))が設置されている。海外地域圏においては、この機関は環境・整備・住宅局(Direction de l'environnement, de l'aménagement et du logement(DEAL))と称され、2011年1月1日に初めて設置された。 イル=ド=フランス地域圏においては、地域圏・県間宿泊施設・住宅局(Direction régionale et interdépartementale de l'hébergement et du logement)、地域圏・県間設備・整備局(Direction régionale et interdépartementale de l'équipement et de l'aménagement)および地域圏・県間環境・エネルギー局(Direction régionale et interdépartementale de l'environnement et de l'énergie)が、エコロジー・持続可能開発・エネルギー省の所掌事務の実施に関与している。 地域圏間および県間レベル
県および地域レベル県国土局(Direction départementale des territoires(DDT))や県国土・海洋局(Direction départementale des territoires et de la mer(DDTM))といった県省間局もまた、省の所管分野において活動している。 これは、海外自治体における設備局(Direction de l'équipement(DE))も同様である。 県建築・文化財部(Service départemental de l'architecture et du patrimoine(SDAP))の後身であり、地域圏文化局(Direction régionale des affaires culturelles(DRAC))に属する地域建築・文化財部(Service territorial de l'architecture et du patrimoine(STAP))は、都市計画や建築の分野に関与している。 その他の地域管轄部局
公施設法人エコロジー・持続可能開発・エネルギー省は、上述の学校に加えて、以下の公施設法人を単独または共同で監督する。
その他の所管法人これらの法人はかつての商工業的公施設法人で、現在は部分的に国の監督を受ける株式会社である。
職員2018年度のエコロジー・持続可能開発・エネルギー省の定員は4万805人である。 エコロジー・持続可能開発・エネルギー省に属する職員の職種には以下のものがある(アルファベット順)。
庁舎大臣および大臣官房は、パリ7区のサン=ジェルマン大通りにあるロクロール館に所在する。省の中央行政機関はラ・デファンスに所在し、トゥール・ヴォルテール、トゥール・パスカル、グラン・ダルシュおよびトゥール・エスプラナード(2014年7月1日から入居予定)に入居している。 歴代エコロジー大臣フランスでは、1971年の創設以来、環境を所管する省の名称および権限は幾度となく変更されてきた。以下は、かつての環境大臣を含む、フランスのエコロジー担当閣僚の一覧である。2020年7月6日からは、環境連帯移行大臣(Minister of the Ecological Transition)と称されている。
脚注注釈出典
参考文献
関連項目外部リンク |