ザウバー・C31 (Sauber C31) は、ザウバーが2012年のF1世界選手権参戦用に開発したフォーミュラ1カー。
概要
C31のノーズは段差部分が目立つ無骨なデザインであるが、段差の後ろ(ノーズコーンとモノコックの境目)に細いスリットがある。2008年のフェラーリ・F2008の様な、ノーズ下面から空気を引き抜くベント(排気口)という見方もある[1]。
エンジン・KERS・ギアボックスなどのリアエンドの構成は、引き続きフェラーリから供給を受ける。リアサスペンションもフェラーリに合わせてプルロッド式に変更された。
サイドポッドの排気管の後ろには溝があり、排気はスロープに沿ってディフューザー方向に流れる。開幕前にはレッドブルも似たようなコンセプトに変更した[2]。コアンダ効果を応用したこのエキゾーストシステムは、この年のトレンドとなり、最終的には大半のチームが採用している。
リアウィングの支持部分は、下段プレートをスワンネック式ステーで吊り下げる方式に変更した。この太いステーはダウンフォースの荷重を支えると同時に、サスペンションアームのマウントも兼ねている。
前年のC30はタイヤマネージメントに優れる長所を持つ反面、タイヤを素早くウォームアップできず予選で苦戦した。C31ではこれらの両立が開発課題となっている[3][4]。
2012年シーズン
C31は2012年2月のヘレステストで初公開されたが、その場でテクニカルディレクターのジェームス・キーの離脱が発表された[5](のちにトロ・ロッソへ移籍)。チームのコメントでは、今後は各部門の責任者が開発を行うとしている[5]。プレシーズンテストでは他チームに警戒を抱かせる、印象的なペースを披露した[6]。
(※以下の成績表記についてはBMWザウバー時代 (2006-2009) を除く)
開幕戦オーストラリアGPをダブル入賞でスタートすると、第2戦マレーシアGPではセルジオ・ペレスが過去最高順位となる2位を獲得(ペレス自身も初表彰台)。続く第3戦中国GPでは小林可夢偉 が初めてのファステストラップを記録した(小林自身も初ファステストラップ)。
その後も、ペレスは第6戦モナコGPでファステストラップを記録し、さらに第7戦カナダGPでは決勝3位、第13戦イタリアGPでは決勝2位を記録した。一方、小林も第12戦ベルギーGPで予選2位、第15戦日本GPでは予選3位・決勝3位を記録した。
チームとしては初めてシーズン複数回の表彰台を記録し、コンストラクターズ部門では2001年の4位に次ぐ6位という成績を収めた。
C31に対する評価は高く、「ザウバーだったらミハエルは今年3勝はできた[7]」(フェルナンド・アロンソ)、「もしザウバーかロータスに乗れば、アロンソは軽々と2012年タイトルを持っていくだろう[8]」(ネルソン・ピケJr.)といったコメントも聞かれた。C31は路面が滑らかで、高速コーナーをもつサーキットを得意としたが、路面がバンピーで滑りやすいコースは苦手とした。また、チームの戦略ミスやドライバーのミスでポイントを失うこともあった。メーカー系ワークスチームのメルセデスを抜いてコンストラクターズ5位になることを目指したが、日本GP以降は失速してチャンスを逃した。
スペック
シャシー
- シャシー カーボンファイバー製モノコック
- フロントサスペンション ダブルウィッシュボーン インボードスプリングおよびダンパーによるプッシュロッド式(ザックス・レース・エンジニアリング)
- リアサスペンション ダブルウィッシュボーン インボードスプリングおよびダンパーによるプルロッド式(ザックス・レース・エンジニアリング)
- ブレーキ ブレンボ 6ピストン・ブレーキキャリパー カーボンファイバー製ブレーキパッドおよびディスク
- トランスミッション フェラーリ 7速クイックシフト・カーボンギアボックス 縦置き カーボンファイバー製クラッチ
- シャシー電子機器 MES
- KERS フェラーリ
- ステアリングホイール ザウバーF1チーム
- タイヤ ピレリ P Zero
- ホイール O・Z
エンジン
- エンジン フェラーリ 056
- 排気量 2,398 cc
- 型式 自然吸気 V8エンジン
- バンク角 90°
- エンジンブロック 砂型鋳造アルミニウム製
- ボア径 98 mm
- バルブ数 32
- バルブ駆動 ニューマチック
- 噴射および点火 電子制御
- 重量 95 kg以上
サイズ
- 全長 5,195 mm
- 全幅 1,800 mm
- 全高 1,000 mm
- フロントトレッド 1,495 mm
- リアトレッド 1,410 mm
- 重量 640 kg(ドライバーを含む、空タンク時)
記録
脚注