バローズのシリーズ外作品 (バローズのシリーズがいさくひん)では、アメリカ の小説 家エドガー・ライス・バローズ の作品のうち、4大シリーズ(火星シリーズ 、ターザン・シリーズ 、ペルシダー・シリーズ 、金星シリーズ )に含まれないものについて記述する。この名称は便宜上のものであり、広く用いられているものではない。また、作品一覧にリンク先がしめされているものについては、それぞれの項目を参照。
作品一覧
以下、掲載順に原題と連載期間、刊行年、邦題を示す。番号は、上部が作品番号(「E・R・バロウズ作品総目録(H・H・ヘインズの資料による)」[ 1] )、下部は単行本刊行番号(リチャード・A・ルポフ 『バルスーム』[ 2] )。なお、どちらも番号の振られていないもの(無いもの)も存在する。
日本語版未訳分の邦題については、出典のあるもののみ示した。邦訳は、
『モンスター・マン 』
ムーン・シリーズ (『月の地底王国』、『月人の地球征服』)
太古世界シリーズ (『時に忘れられた世界』、『時に忘れられた人々』、『時の深き淵より』)
がハヤカワ文庫SF (早川書房 )、それ以外は創元推理文庫 (東京創元社 )による。また、『モンスター13号』は、単独での刊行の他、創元SF文庫の『合本版・火星シリーズ第4集火星の古代帝国』(2002年 )にも収録されている。
作品/ (刊行)
単行本原題 (連載時原題)
連載
刊行
邦題 (創元版/早川版)
日本での刊行 (創元版/早川版) 訳者/イラスト
5、 31 (21)
The Cave Girl 第1部(The Cave Girl ) (洞窟の娘[ 3] ) 第2部(The Cave Man ) (洞窟の男[ 4] )
オール・ストーリー 1913年 7月 オール・ストーリー ・ウィークリー1917年 3月
1925年
石器時代へ行った男
1977年 12月16日 厚木淳 武部本一郎
6 (31)
The Monster Men (怪物たち[ 5] ) (A Man Without Soul ) (魂のない男[ 6] )
オール・ストーリー 1913年11月[ 7]
1929年
モンスター13号 (創元版) モンスター・マン (早川版)
1978年 12月22日 厚木淳 武部本一郎1973年 5月31日 関口幸男 斉藤寿夫
8 (26)
The Outlaw of Torn (トーンの無法者[ 8] [ 9] )
ニュー・ストーリー[ 10] ニューヨーク・ストーリー ・マガジン[ 11] 1914年 1月
1919年 [ 12] 1927年[ 13]
(未訳)
-
9、 14 (23)
The Eternal Lover (永遠の恋人[ 14] ) (別題 The Eternal Savage ) (永遠の野蛮人[ 15] ) 第1部(Nu of the Neocene ) (新第三紀のヌー[ 15] ) 第2部(Sweetheast Primeval ) (原始時代の恋人[ 15] )
オール・ストーリー ・ウィークリー 1914年3月7日号 オール・ストーリー ・キャバリアー1915年 1月23日号 ~2月13日号
1925年
石器時代から来た男
1977年11月11日 厚木淳 武部本一郎
10、 16 (25)
The Mad King 第1部(The Mad King ) 第2部(barney cuter of bestrice )
オール・ストーリー 1914年3月 オール・ストーリー ・キャバリアー 1915年8月
1926年 [ 16]
ルータ王国の危機
1981年 7月24日 厚木淳 加藤直之
13、 21 (13)
The Mucker (マッカー[ 17] ) 第1部(The Mucker ) 第2部(The Return of the Mucker )
オール・ストーリー ・キャバリア ・ウィークリー 1914年10月 オール・ストーリー ・ウィークリー1916年 [ 18] 6月
1921年
南海の秘境 風雲のメキシコ (全2巻) (マッカー・シリーズ)
1980年 7月25日 1980年9月5日 厚木淳 斉藤寿夫 (共に創元版)
17 (61)
The Man-Eater (マン・イーター[ 19] )
1915年11月(全6回)
1957年
(未訳)
-
19 (61)
The Lost Continent (Beyond Thirty ) (30度線の彼方[ 20] )
オール・アラウンド ・マガジン 1916年2月
1957年
失われた大陸
1971年 12月24日 厚木淳 武部本一郎
23 (62)
The Girl from Farris's (ファリスの店から来た娘[ 21] )
オール・ストーリー ・ウィークリー 1916年9月~10月 (全4回)
1959年
(未訳)
-
35 (50)
The Lad and the Lion
オール・ストーリー ・ウィークリー 1917年6月号~7月号
1938年
砂漠のプリンス
1980年11月7日 厚木淳 斉藤寿夫
38 (48)
The Oakdale Affair and the Rider
1918年 3月
1937年
(未訳)
-
39、 40、 41 (19)
The Land That Time Forgot 第1部(The Land That Time Forgot ) 第2部(The People That Time Forgot ) 第3部(Out of Time's Abyss )
ブルー・ブック 1918年8月号 10月号 12月号
1924年
時間に忘れられた国 (創元版全1巻) 時に忘れられた世界 時に忘れられた人々 時の深き淵より (早川版全3巻) (太古世界シリーズ)
1971年8月20日 厚木淳 武部本一郎1970年 12月31日 1971年2月28日 1971年3月31日 関口幸男 斎藤和明
42 (48)
H.R.H The Rider (騎手殿下[ 22] ) (H・R・H・ザ・ライダー[ 23] )
1918年12月
1937年
(未訳)
-
51 (68)
The Efficiency Expert (能率専門家[ 24] )
オール・ストーリー ・ウィークリー1921年 10月(全4回)
1965年
(未訳)
-
53 (17)
The Girl From Hollywood
マンシーズ・マガジン1922年 6月~11月 (全4回)
1923年
(未訳)
-
55、 58、 59 (24)
The Moon Maid 第1部(The Moon Maid ) 第2部(The Moon Men ) 第3部(The Red Hawk ) (レッド・ホーク)
アーゴシー ・オール ・ストーリー・ウィークリー 1923年5月5日号 ~6月2日号 アーゴシー・オール ・ストーリー・ウィークリー 1925年2月21日号 ~3月14日号 アーゴシー・オール ・ストーリー・ウィークリー 1925年9月5日号 ~19日号
1926年
月のプリンセス 月からの侵略 (創元版全2巻) (月シリーズ ) 月の地底王国 月人の地球征服 (早川版全2巻) (ムーン・シリーズ)
1978年8月11日 1978年10月27日 厚木淳 武部本一郎 1970年8月31日 1970年10月31日 関口幸男 金森達
57 (22)
The Bandit of Hell's Bend
オール・ストーリー 1924年9月
1925年
(未訳)
-
60 (27)
The War Chief (戦争酋長[ 25] )
アーゴシー・オール ・ストーリー ・ウィークリー1927年
1928年
ウォー・チーフ
1989年 1月27日 厚木淳 加藤直之
-
You Lucky Girl!
-
-
(未訳)
-
64 (39)
Apache Devil (アパッチの悪党[ 25] ) (アパッチの悪魔[ 26] )
1928年5月
1933年
アパッチ・デビル
1989年2月17日 厚木淳 加藤直之
70 (37)
Jungle Girl (ジャングル・ガール[ 27] ) (The Land of Hidden Men ) (隠れた者たちの王国[ 28] )
ブルー・ブック・マガジン1931年 5月号~9月号
1932年
密林の謎の王国
1979年 4月20日 厚木淳 武部本一郎
82 (64)
The Resurrection of Jimber-Jaw
1937年 2月
1964年
5万年前の男
『金星の魔法使』 に併録 1970年9月11日 厚木淳 武部本一郎
88 -
The Scientists Revolt
1939年 7月
-
(未訳)
-
89 (56)
The Dequty Sheriff of Comanche Country (The Terrible Tenderfoot )
1940年 3月
1940年
(未訳)
-
101 (64)
Beyond the Farthest Star (さい果ての星の彼方に)
1942年 1月
1964年
ポロダ星での冒険
『金星の魔法使』 に併録
- (64)
(死後発見)
1964年
タンゴール再登場
『金星の魔法使』 に併録
-
Pirate Blood (海賊の血[ 24] )
不明
1970年
(未訳)
-
- (69)
I am a Barbarian
1941年 (執筆年)
1967年
カリグラ帝の野蛮人
1982年 11月5日 厚木淳 加藤直之
日本語訳作品
バローズの作品は冒険小説が主流であり、SF小説の場合でも、「冒険もの」の延長上にある場合が多い(月シリーズ 第2部のようなハードSF は例外)。これは、「売れないものは書かない」というポリシーからであり、一時期は普通小説等も執筆したが、商業的に成功していないため、その方面からは撤退している。
既訳小説は、ほとんどが冒険もの、ないしはSF調の冒険ものである。例外はアパッチ・シリーズ(『ウォー・チーフ』と『アパッチ・デビル』) と『カリグラ帝の野蛮人 』で、前者は19世紀末期のアパッチ戦争 を、後者はローマ帝国 の皇帝、カリグラ を扱った歴史小説である。ただし、アパッチ・シリーズは、主人公(ジェロニモ の養子、という設定の架空の人物)を中心にしたアクション面(と、滅亡へ向かう悲哀)が強調されている。
バローズの冒険もの(SF含む)は、以下のような点を基本としている。そのため、各作品の解説では、ことさら取り上げない。
ハッピーエンド(初作では悲劇に終わっても、続編では挽回される)。
勇敢で高潔、逞しい主人公。冒険小説であれば、アメリカ人、あるいはイギリスなどのヨーロッパ人。SF系の場合は、前作の主人公(欧米人)の信任の厚い人物。
若く美しい、貞節なヒロイン。身分の高い人物(家系)であることが多い。
紋切り型の悪役(卑劣、粗暴、冷酷などの一個の特性か、複数を合わせた人格)。改心する例は稀。
上記に外れる場合には明記する。
項目のある作品
タイトル横のカッコ内は、ハヤカワ版でのタイトル、シリーズ名。
石器時代へ行った男
主に孤島を舞台とした冒険小説(三人称小説)。邦題からはタイムスリップ SFを連想するが、SF的な要素は、ほとんどない(「孤島に原始人の部族や、類人猿の部族が存在している」という程度)。
ボストン で何不自由なく育った、富豪のインテリ息子が、洋上で遭難し孤島に辿り着く。文明のない世界に怯えながらも、逞しく成長し、原始人の社会で生き抜いていく。ヒロインは現地人だが、高貴な人物の血を引いていることが明らかとなる。
モンスター13号 (モンスター・マン)
マッドサイエンティスト もののSF 小説(三人称小説)。マクスン教授は、ボルネオ にある島の研究所で人工生命を造りだしていく。怪異な生命が誕生を続ける中、ついに13号は完璧な外見を持って誕生する。折しも、教授の一人娘・ヴァージニア(リニー)が誘拐される。「人工生命に魂はあるのか?」、13号(ブラン)は自らの存在に悩みつつ、12号以下の人造人間を従え、ヴァージニアを助けに向かう。
石器時代から来た男
タイムスリップ SF(三人称小説)。10万年の時を超えた、原始人ヌーの恋と冒険。ヒロインは原始人ナット・ウルと、彼女の転生した姿であるアメリカ人ヴィクトリア・カスター。第1部は主に現代のアフリカ を、第2部は主に過去を舞台にしている。
ルータ王国の危機
ヨーロッパにある架空の王国、ルータを舞台にした冒険小説(三人称小説)。『ゼンダ城の虜 』を参考にしている。主人公はアメリカ人、バーニー・カスター。バッツォウ中尉[ 29] は、当初は敵対する軍人として描かれているが、誤解が解けた後は、頼もしい友人となった。
失われた大陸
22世紀を舞台にしたSF 小説。20世紀にユーラシア やアフリカ と絶縁したアメリカ(南米 を含む)の将校が、ヨーロッパで繰り広げる冒険。主人公の一人称で語られている。
時間に忘れられた国 (太古世界シリーズ)
絶海の孤島キャスパックを舞台にしたSF冒険小説。恐竜や原始人の登場する、いわゆる「ロスト・ワールドもの」だが、進化に焦点が当たっている部分が特長。全3部からなり、主人公はそれぞれ異なる。第1部、第2部は一人称小説、第3部のみ三人称小説。
月シリーズ (ムーン・シリーズ)
未来SF。全3部作で、主人公はそれぞれ違うものの、同じ一族の子孫であり、魂が転生した存在となっている。第1部は月の内部を舞台としたスペースオペラ、第2部はアメリカ(シカゴ)を舞台としたハードSF、第3部は西部劇調となっており、すべて一人称で語られている。
5万年前の男
氷漬けで発見された5万年前の男を、蘇生させた顛末記(一人称小説。ただし、語り手は主人公ではない)。
さい果ての星の彼方に
SF小説(一人称小説)。第二次世界大戦 の最中、ヨーロッパで撃墜されたアメリカ空軍パイロット がポロダ星に瞬間転移し、そこで戦争に巻き込まれる。主人公はタンゴール(「無から」という意味)と名づけられ、パイロットとして、またスパイ としてユニス国のために戦う。なお、主人公の地球での氏名は伏せられている。
マッカー・シリーズ
マッカー・シリーズの第1部『南海の秘境』(The Mucker )は、オール・ストーリー・キャバリア・ウィークリーに1914年に掲載され、第2部『風雲のメキシコ』(The Return of the Mucker )は、オール・ストーリー・ウィークリーに1916年に掲載された。アメリカでは1冊(The Mucker )にまとめられている。
概要
不良を主人公にした冒険小説(三人称小説)。「マッカー」とは当時の俗語で、「ごろつき」、「チンピラ」などを意味する。バローズの主人公はたいてい紳士的であり、その点では型破りである[ 30] 。ただし、運命の女性バーバラ・ハーディングとの出会いによって、真の紳士に目覚めていく。
備考
第1部に登場する孤島には、室町幕府 滅亡時に日本から逃げ出した大名、オダ氏の一族が住んでいる。現地の首狩り族と混血しているが、当時の生活様式を守っている部分があり、外見的には当時の侍に近い。領地(もしくは島)は「ヨカ」と名づけられている。
バローズが鉄道公安官だった経験が生かされている[ 25] 。
砂漠のプリンス
『砂漠のプリンス』は、創元推理文庫SFでの邦題。原題は(The Lad and the Lion )で、オール・ストーリー・ウィークリーに1917年に掲載され、1938年に単行本化された。
概要
記憶を失ったアジズ(マイケル王子)が、ライオン と共にサハラ砂漠 で繰り広げる冒険小説(三人称小説)。ヨーロッパの架空の小国(マイケル王子の出身国)での宮廷陰謀劇も、同時に進行する。
備考
本作は1914年2月~3月に執筆された。雑誌掲載(1917年)が遅れたのは、映画公開(同年4月。主演、ヴィヴィアン・リード )に合わせるため(タイアップ )である。創元推理文庫の裏表紙には、「オール・ストーリー」1917年6月30日号の表紙が掲載されており、映画『砂漠のプリンス』を観客が眺めているイラストになっている。
本作は、ターザン の映画化に絡んで製作者に送付したもので、映画化権は500ドルで購入された。映画は好評だったが、バローズの意向が無視されたため、複雑な思いだったという。
アパッチ・シリーズ
アパッチ・シリーズの第1部『ウォー・チーフ』(The War Chief )は、アーゴシー・オール・ストーリー・ウィークリーに1927年に掲載され、1928年に単行本化された。第2部『アパッチ・デビル』(The Return of the Mucker )は、1928年に掲載され、1933年に単行本化された。
なお、本節での記述は当該シリーズに基づくものであり、当該シリーズは「史実を元にしたフィクション」である点に留意。
概要
アパッチ戦争 (インディアンと白人の戦争 )を背景に、アパッチ のゴヤスレイ(ジェロニモ )の養子となった、インディアン と白人の混血児ショッディジージが、恋と冒険を繰り広げる(三人称小説)。
第2部では闘争が終盤に入っており、部族の数は続々と減っていき、ジェロニモも和平を結ぶ(実質的な降伏)など、戦況は主人公たちを過酷に追い詰めていく。
備考
ショッディジージとは、黒熊を意味する。少年時代に単独で黒熊を仕留めた偉業に敬意を表し、名づけられた。
主人公の母親の祖父がチェロキー族 であり、ショッディジージの血には1/8のインディアンの血が流れているが、外見は白人的な容貌ではない(そのため、インディアンとして通用する)。シスインディ(インディアン)は誇り高く、白人の子を仲間に加えようとしない人物もいた(ネドニ族の酋長 ジュー。後に敵対)。
主人公はシスインディと信じきっており(コチーズ酋長 からも認められた)、白人を憎み、侮蔑すること甚だしい。白人に対しては「目白(ホワイト・アイズ)」、「ピンダーリッコイ」などの蔑称が使われている。
もっとも、白人側もインディアンを虐待しており、「田舎者(サイウオッシュ)」呼ばわりは可愛い方で、「いいインディアンは、死んだインディアン[ 31] 」と、インディアンの人命を軽視している。ジェロニモは家族を皆殺しにされた 事を語り継いでおり、全体を通してインディアンの視点で語られ、だまし討ちやインディアン犯罪の偽造など、白人の卑劣さが強調されている。バローズの冒険作品(一部のSF作品含む)の主人公の多くはアメリカ人かヨーロッパ人であり、白人としての意識で描かれている中、本作は特殊な位置にある。リチャード・A・ルポフは、『バルスーム』において「アパッチの側に絶大な同情をもって描かれている」と説明している[ 26] (ただし、『金星の魔法使』の「解説」では、「比較的知名度がすくないが、それでも読みごたえのある2作」[ 25] と評している)。
アメリカ人同様、メキシコ人も敵である。ただし、白人の友人(第0騎兵隊のキング少尉)や、メキシコ人の友人(ルイス・マリエル)も存在しており、後半のヒロインは白人女性である。
厚木淳によると、作中に登場する「第0騎兵隊」は「第7騎兵隊」のことであり、生存者(関係者)を慮った変更と推測されている(バローズ自身も所属していた[ 32] )。
また、厚木はかつて、『月からの侵略 』の「訳者あとがき」において、本シリーズを「バローズを代表する傑作」と評している[ 33] 。
密林の謎の王国
『密林の謎の王国』は、創元推理文庫SFでの邦題。原題は『隠れた者たちの王国』(The Land of Hidden Men )で、ブルー・ブック・マガジンに1931年に掲載され、単行本化にあたり、『ジャングル・ガール』(Jungle Girl )に改題された。
概要
カンボジア の奥地を舞台としたタイムスリップSF小説(三人称小説)。
備考
原題『隠れた者たちの王国』(The Land of Hidden Men )は編集者のつけたものであり、バローズは『らい 王の踊子』とつけていた。
カリグラ帝の野蛮人
『カリグラ帝の野蛮人』(I am a Barbarian )は1941年に執筆され、死後の1967年に単行本化された。なお、本節での記述は当該作品に基づくものであり、当該作品は「史実を元にしたフィクション」である点に留意。
概要
ローマ帝国 の皇帝、カリグラ(ガイウス・ユリウス・カエサル・アウグストゥス・ゲルマニクス) を扱った歴史小説。一人称小説であり、語り手は、ブリトン人 の「キンゲトリクス(Cingetorix )の曾孫」であるブリタニクスで、「息子に読ませるため」に執筆されている。西暦16年 から41年 までを扱っており、これは、ブリタニクスにとっては「カリグラの捕虜となってから、彼が死ぬまで」であり、カリグラの幼少期から、皇帝としての治世の4年目までに当たる。
備考
ローマ帝国の強大さ、壮麗さに触れるとともに、帝国とローマ人に関する嫌悪・侮蔑も繰り返し強調される。ただし、これは「アグリッピナ (カリグラの母親。ヒステリック で傲慢な性格であり、子供たちの性も乱れている)の家系(家庭)を見て育った」ため、とも明記されており、ローマ人の中でも好感の持てる人物(カリグラの父であるゲルマニクス 。ただし、「あまり利口ではない」とも)や、尊敬する人物(皇帝ティベリウス 。命を救ってもらったこともある)も登場する。
日本語未訳作品
トーンの無法者[ 10] [ 34] (The Outlaw of Torn )
13世紀のイギリス を扱った歴史もの。アクションも多く[ 10] 、当時のグレイストーク卿(ターザンの遠い祖先)も登場する。
バローズの第2作(処女作『火星のプリンセス 』と、第3作『類猿人ターザン』の間に執筆)。少なくとも5社から採用を却下されている[ 35] [ 12] 。
マン・イーター[ 19] (The Man-Eater )
ジャングルもの。ターザンは登場しない[ 36] 。
ファリスの店から来た娘[ 21] (The Girl from Farris's )
美しい不良少女が、献身的な恋人により更生していく[ 37] 。
The Oakdale Affair and the Rider
主人公に女性を据えた冒険もの[ 38] 。単行本は『騎手殿下』[ 39] (H.R.H The Rider )を収録(共に未訳)。
能率専門家[ 24] (The Efficiency Expert )
優秀なスポーツマンがビジネス界に進出し、成功する[ 40] 。
The Girl From Hollywood
高名な映画女優が、真実の愛情を知る作品。[ 41] [ 42] 。
The Bandit of Hell's Bend
西部もの[ 42] 。カウボーイ 2人が、ヒロインのために対決する[ 35] 。
You Lucky Girl!
戯曲 。未上演・未刊行のため、欠番扱い。娘が女優志望のため書いた、と伝わる[ 43] 。
The Scientists Revolt
未来もの。ヨーロッパの支配を続けるため、アメリカの科学者が苦心する[ 44] 。
The Dequty Sheriff of Comanche Country
西部もの[ 44] 。
海賊の血[ 24] (Pirate Blood )
エース・ブックス版(ペーパー・バック)の『金星の魔法使』 (The Wizard of Venus )に収録されている(刊行は1970年 )。
脚注
^ エドガー・ライス・バロウズ 『恐怖のペルシダー』 関口幸男訳、早川書房 〈ハヤカワ文庫SF 〉、野田昌宏、1971年 、289-296頁。
^ リチャード・A・ルポフ 『バルスーム』 厚木淳 訳、東京創元社 、1982年 、261-265頁。
^ エドガー・ライス・バローズ 「訳者あとがき」『石器時代へ行った男』 厚木淳訳、東京創元社〈創元推理文庫〉、1977年、297頁。
^ 「訳者あとがき」『石器時代へ行った男』 297頁。
^ エドガー・ライス・バローズ 「訳者あとがき」『合本版・火星シリーズ第4集火星の古代帝国』 厚木淳訳、東京創元社〈創元SF文庫〉、2002年、818頁。
^ エドガー・ライス・バローズ 「訳者あとがき」『モンスター13号』 厚木淳訳、東京創元社〈創元SF文庫〉、1978年 、240頁。
^ 「E・R・バロウズ作品総目録(H・H・ヘインズの資料による)」『恐怖のペルシダー』 289頁では1月となっているが、『モンスター13号』の「訳者あとがき」(240頁)では11月となっている。
^ エドガー・ライス・バローズ 「訳者あとがき」『カリグラ帝の野蛮人』 厚木淳訳、東京創元社〈創元推理文庫 〉、1982年、280頁。
^ エドガー・ライス・バローズ 「訳者あとがき」『ターザン』 厚木淳訳、東京創元社〈創元SF文庫〉、1999年 、394頁。
^ a b c 「訳者あとがき」『カリグラ帝の野蛮人』 280頁。
^ エドガー・ライス・バロウズ 「ターザン・火星・金星以外のバロウズ作品について」『時に忘れられた世界』 関口幸男訳、早川書房〈ハヤカワ文庫SF〉、野田昌宏、1970年、201頁。
^ a b 「E・R・バロウズ作品総目録(H・H・ヘインズの資料による)」『恐怖のペルシダー』 289頁。
^ 『バルスーム』 262頁。
^ エドガー・ライス・バローズ 「訳者あとがき」『石器時代から来た男』 厚木淳訳、東京創元社〈創元推理文庫〉、1977年、278頁。
^ a b c 「訳者あとがき」『石器時代から来た男』 278頁。
^ 「E・R・バロウズ作品総目録(H・H・ヘインズの資料による)」『恐怖のペルシダー』 290頁では1925年と1926年となっているが、『ルータ王国の危機』の「訳者あとがき」(368頁)では1926年のみ。
^ エドガー・ライス・バローズ 「解説」『金星の魔法使』 厚木淳訳、東京創元社〈創元推理文庫SF〉、リチャード・A・ルポフ、1970年、324頁。
^ 「E・R・バロウズ作品総目録(H・H・ヘインズの資料による)」『恐怖のペルシダー』 290頁では1913年となっているが、『南海の秘境』の「バローズとルポフ」(259頁)では1916年。
^ a b 『バルスーム』 10-11頁。
^ エドガー・ライス・バローズ 『失われた大陸』 厚木淳訳、東京創元社〈創元SF文庫〉、1971年、5頁。
^ a b 『バルスーム』 11頁。
^ エドガー・ライス・バロウズ 「ターザンと洞窟の女王」『ターザンと蟻人間』 高橋豊訳、早川書房〈ハヤカワ文庫特別版SF〉、森優 、1973年 、302頁。
^ 『バルスーム』 161頁。
^ a b c d 『バルスーム』 14頁。
^ a b c d 「解説」『金星の魔法使』 324頁。
^ a b 『バルスーム』 178頁。
^ エドガー・ライス・バローズ 「訳者あとがき」『密林の謎の王国』 厚木淳訳、東京創元社〈創元推理文庫〉、1979年、281頁。
^ 「訳者あとがき」『密林の謎の王国』 281頁。
^ エドガー・ライス・バローズ 『ルータ王国の危機』 厚木淳訳、東京創元社〈創元推理文庫〉、1981年、43頁、原文ママ。
^ エドガー・ライス・バローズ 「バローズとルポフ」『南海の秘境』 厚木淳訳、東京創元社〈創元SF文庫〉、1980年、259頁。
^ エドガー・ライス・バローズ 『ウォー・チーフ』 厚木淳訳、東京創元社〈創元推理文庫SF〉、1989年、166頁。
^ 「バローズとウェスタン」『ウォー・チーフ』 厚木淳訳、329頁。
^ エドガー・ライス・バローズ 「訳者あとがき」『月からの侵略』 厚木淳訳、東京創元社〈創元推理文庫〉、1978年、333頁。
^ 「訳者あとがき」『ターザン』 394頁。
^ a b 「ターザン・火星・金星以外のバロウズ作品について」『時に忘れられた世界』 201頁。
^ 『バルスーム』 10頁。
^ 「ターザン・火星・金星以外のバロウズ作品について」『時に忘れられた世界』 196-197頁。
^ 「E・R・バロウズ作品総目録(H・H・ヘインズの資料による)」『恐怖のペルシダー』 291頁。
^ 「ターザンと洞窟の女王」『ターザンと蟻人間』 302頁。
^ 「ターザン・火星・金星以外のバロウズ作品について」『時に忘れられた世界』 197頁。
^ 「ターザン・火星・金星以外のバロウズ作品について」『時に忘れられた世界』 197-198頁。
^ a b 「E・R・バロウズ作品総目録(H・H・ヘインズの資料による)」『恐怖のペルシダー』 292頁。
^ 「E・R・バロウズ作品総目録(H・H・ヘインズの資料による)」『恐怖のペルシダー』 293頁。
^ a b 「E・R・バロウズ作品総目録(H・H・ヘインズの資料による)」『恐怖のペルシダー』 295頁。