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音楽プロデューサーの「中野雄」とは別人です。 |
中野 剛志(なかの たけし、1971年〈昭和46年〉10月25日[1] - )は、通産・経産官僚、評論家、思想家[2][3]。学位はPh.D.(エディンバラ大学・2005年)。経済産業省商務情報政策局消費・流通政策課長、同局大規模小売店舗立地法相談室長、同局物流企画室長[4]。筆名に東田 剛(ひがしだ つよし)がある。
京都大学大学院工学研究科准教授、特許庁総務部総務課制度審議室長、経産省商務情報政策局情報技術利用促進課長、経産省大臣官房参事官(グローバル産業担当)などを歴任した[5][6]。
来歴
神奈川県出身[3]。実家はリサイクル業[7]。攻玉社中学校・高等学校卒業[7]。現役時に京都大学に落第し[8]、河合塾横浜校を経て[7]、東京大学教養学部教養学科第三(国際関係論専攻)卒業。西部邁の私塾・表現者塾出身[9][10]。
予備校の講師から「国際関係論を学ぶには佐藤誠三郎が良い」という助言を受け、東大入学後に佐藤の講義を受けている[7]。また、ロバート・ギルピンの著書を通して、自由主義およびマルクス主義に次ぐ第3の経済思想たる経済ナショナリズムを知り、大学卒業後の進路に通商産業省を選ぶ[7]。
1996年、通商産業省に入省。1999年、資源エネルギー庁長官官房原子力政策課原子力専門職に就任。
2000年、エディンバラ大学に官費留学し政治思想を専攻[11]。2001年、同大学より優等修士 (M.Sc. with distinction) の学位を取得[11]。指導教官はラッセル・キート (Russell Keat)。
帰国後、資源エネルギー庁資源・燃料部政策課長補佐に就任。2004年からは同課燃料政策企画室を併任。同年、経済産業省エネルギー・新エネルギー部新エネルギー対策課長補佐に就任。
2005年、エディンバラ大学よりPh.D. in Politics(博士(政治学))を取得[3][12]。学位論文は「国家の力:経済ナショナリズムの理論的基礎 (The power of nations: theoretical foundations for economic nationalism)」である[12]。
経済産業省経済産業政策局産業構造課長補佐を経て、2010年6月1日、京都大学大学院工学研究科都市社会工学専攻藤井聡研究室に退職出向[13]。同研究室には助教として着任し、翌年、准教授に昇任した。経済産業研究所コンサルティングフェローを兼任。
2011年3月17日、『TPP亡国論』の印税収入の半分相当を、日本赤十字社の「東日本大震災義援金」に寄付した[14]。『TPP亡国論』は20万部を超えるベストセラーとなっている[15][16]。
2012年5月31日をもって京都大学を退官し[17]、同年6月1日から経済産業省に復帰[13]。新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)に出向し、同機構総務企画部主幹、同機構ロボット・機械システム部主幹、同機構戦略的イノベーション創造プログラム『革新的設計生産技術』推進委員会オブザーバーを務めた[18][19]。2014年、特許庁総務部総務課制度審議室長に就任[20]。2017年7月5日、経済産業省商務情報政策局情報技術利用促進課長に就任[21]。2020年7月20日、経済産業省大臣官房参事官(グローバル産業担当)に就任[22]。2021年7月1日、経済産業省 商務情報政策局 消費・流通政策課長 兼 物流企画室長に就任[23]。2024年6月25日、経済産業省 商務情報政策局 参事官(商務・サービスグループ担当)に就任[24]。
人物
- 4人兄弟の長男[7]。
- 東京大学弓道部で同期の女性と結婚している[7]。
受賞
- 2003年(平成15年) - 論文「経済ナショナリズムを理論化する (Theorising economic nationalism) 」[25]により民族性ナショナリズム学会のドミニク・ジャッキン=バーダル論文賞 (Dominique Jacquin-Berdal Essay Prize) を受賞[26]。
- 2012年(平成24年)
- 著書『TPP亡国論』により新書大賞2012の第3位を受賞[27]。
- 著書『日本思想史新論:プラグマティズムからナショナリズムへ』により第21回山本七平賞の奨励賞を受賞[28]。
主張
政治思想・経済思想
経済ナショナリストによる思想の再解釈を通して、これらの思想の底流にあるのは、理性と思索により抽象化・単純化した思考ではなく、文化や社会慣習、常識の蓄積などをあるがままに掴み取ろうとする解釈学的アプローチであるとする。抽象的な数理モデルや、経済現象を利己的個人に還元した方法論的個人主義など、これらに基づく主流派経済学の非現実的な抽象論を批判し、これに依拠する民営化・規制緩和・小さな政府などの新自由主義的な手法が問題解決に対して失効しているばかりか、軋轢や問題の原因でもあると主張している[29]。
また、新自由主義が信奉する自由放任の市場経済は、家族・共同体といった保守が重視する価値を破壊するため、国家・道徳のためにも、保守は新自由主義と手を切るべきだと主張している[30]。
経済史
イギリス経験論の代表的人物であるデイヴィッド・ヒュームを経済ナショナリストとし[31]、ヒュームからアメリカの経済ナショナリストであるアレクサンダー・ハミルトンへの流れ[32]、ハミルトンを経由して経済ナショナリストの一大学派であるドイツ歴史学派の創始者フリードリッヒ・リストまでの思潮を辿り[33][34]、ヒュームからヘーゲルを経て[35]、新古典派経済学の創始者の一人とされるアルフレッド・マーシャルが実は経済ナショナリストであることを論証しようと試みた[36]。また、混同されがちな経済ナショナリズムと重商主義はその立場が異なることを、「ネイション」(国民あるいは人々の社会的・文化的・心理的紐帯)と「ステイト」(政府あるいは政治的・法的制度)の両者の基盤の違いを軸に論じた[37]。
経済思想史の流れで経済が順調ではない時の傾向として、通常の経済学の議論で見落とされていたものに注目する動きが出てくるとし、危機の時はオーソドックスから逸脱できた国だけが生き残れるとする[38]。
経済政策
デフレーションを解決することが最優先課題であるとし、内需拡大こそ重要であるとしている[39]。外需促進は貿易黒字の拡大を伴うが、これは円高を促し国際競争力を失う自殺行為であると指摘する。むしろ、財政出動により内需を拡大することで輸入が増加し、これが円を安くし国際競争力を高めることにつながるとする。すなわち、財政出動による内需拡大こそが円高を止めるとする。マンデルフレミングモデルに対して、デフレ下では金利の大幅な上昇はありえないため、自国通貨高にはならないと主張している[40]。
「くたばれグローバル資本主義」が座右の銘であり[41]、海外からの需要取り込みや国際分業の伸展により経済活性化を目指すグローバル成長戦略論には否定的である[42]。
元日本銀行副総裁で経済学者の若田部昌澄は、中野が経済学を理解した上で、自説に適した理論を的確に選び[43]、「そう言われればそうかな」と思ってしまうような論を展開しているとして、「トレード」を教える反面教材としては悪くないとしている[44]。若田部は「いろいろな人が反TPP論を繰り出したが、どれも中野のバリエーションのようなものだった。彼の議論をあらためて確認しておくことにはまだ意義がある」と述べている[45]。
社会経済学者の松原隆一郎は最初に景気回復は赤字財政による公共投資で可能になるという中野の主張を聞いて疑問を持ったと述べている。政府が国民の貯金を上回る累積赤字を背負うなら、その国家は財政破綻するのではないかと問うた。中野は銀行制度において、預金通貨は振り込まれる預金が転送されて生まれるのではなく、資金を求める人の口座に返済可能と判断し準備預金を積む限りで貸出額を記帳するだけで預金通貨は発生するので、政府も国債を政府紙幣を発行して「受領」されさえすれば通貨になるのだから、不況期には政府は支出を無限に増やせると主張した。松原はこの貨幣論はその国家がどこまで「信用」されるかにかかっているため、中野の軍事技術・費用逓減産業・地理的差異など、長期にわたって富を生み出す仕組みの説明で理論の筋が見えたと述べている[46]。
批判
TPP
TPP反対派の代表[47]、TPP反対の急先鋒[48]とも言われており、反TPP論者として注目されている[49]。TPPについて中野は「日本はすでに開国している」「TPPで輸出は増えない」「TPPは日米貿易だ」と持論を展開している[50]。
森健は、中野の『TPP亡国論』(2011年)について「著者はまずTPPは国内総生産比率で事実上、日米2カ国の自由貿易協定(FTA)に過ぎないことを示した上で、アメリカはなりふり構わぬ輸出強化策に出ていることを証明する。冷静な論考の過程で見えてくるのは、国民を幸せにしないグローバル経済の問題だ。TPPだけに終わっていないのが本書の深みだ」と評している[51]。祖田修は、『反・自由貿易論』について「本書はTPPに関し、最も信頼しうる著作の一つである」と評している[52]。
藤井聡
2021年には、新型コロナウイルスへの対応をめぐり、藤井聡氏の一連の言動を批判した。
- 「そう言えば、アーレントだ何だと哲学者ぶって大衆社会批判や全体主義批判をしながら、統計学的な手法を振り回している変な学者がいますが、おそらく彼は何も分かっていないのでしょう。もっとも、その人は、その統計ですらインチキして大衆を煽動しようとしているから、論外ですけれどね。[…]ちょび髭とか生やして、まなじり吊り上げて怒鳴っているような顔には気をつけましょう[…]最近だと、「◎◎である疑義が濃厚である」を連発する科学者ぶった偉そうな文章。見るたびに吐きそうになる。」[53]
- 「「ボクは自粛で山ほど嫌な思いをしています」とか駄々をこね、「自粛に賛成している者は社交を知らないガキ」だなどと書き連ねていた……。彼(藤井聡)の文章は、文体からして酷かった。前回の対談で話題になりましたが、やっぱり出るもんですね、文体に。」[54]
- 「残念ながら、信じてはいけない教授、指導を受けてはいけない教授もいることが、このコロナ禍で明らかになってしまいました。あれだけデタラメな言論を展開していれば、研究室の学生にもデタラメを教えているに決まっている。」[55]
- 「藤井氏の『表現者クライテリオン』には、個別の問題に関して意見が同じだったら、どんな低劣な言論人でも登場する。藤井氏は、消費税反対の徒党を組むため、あるいは緊急事態宣言反対の徒党を組むためだったら、誰とでも手を組み、利用しようとするのです。思想運動を「徒党」と言い、「朋有り遠方より来たる、亦た楽しからずや」を学問の「社交」と言うなら、徒党と社交は、全くの別物です。徒党を組みたがる連中は、社交を知らないガキですね(笑)。[…]世の中には、思想運動や学派という猿山のボス猿になりたいという野心をもっている大学教授や知識人がいるわけですよ。よく学生や助教に対して威張ったり、いたぶったり、怒鳴り散らしたりする大学教授がいますが、そういう手合いですね。そういう学者のクズは、「思想」ではなく、学界や言論界の「政治」をやっているのです。/そんな学者のクズを不運にも師匠として信じてしまった結果、その師匠に操られ、師匠に追従していくうちに、有望な学生の思想の芽が潰れてしまう。」[56]
- 「今回の新型コロナを巡っては、いろいろ奇妙な議論が出てきたのは事実ですが、あそこまで変な言論を展開したのは、彼(藤井聡)だけですよ。」[57]
- 「国民の不満につけ込み、うまい話をぶら下げ、数字を操作し、特定の敵を設定して執拗に攻撃し、メディアを多用して煽動し、自分の主張だけを一方的に押し通すが、論理的一貫性などおかまいなし。これは全体主義の典型的な手法で、かつて藤井氏は、橋下徹・元大阪市長が「大阪都構想」でそれをやっていると批判した。ところが、今回は、自分が「半自粛」でそれをやっている。越えてはならぬ一線をあっさり越えましたね、彼は。[…]吊り上がった眉と血走った目で「僕は、日本のために命をかけてるんですよぉ! 」などと怒鳴られると、それだけで「ああ、こいつがかけている命は、日本のためにはならんなあ」「正義を振りかざす自分に酔っているだけだなあ」と分かりますね。[…]相模原障碍者殺傷事件の加害者は、重度障碍者は生きる意味がないだの、抹殺するのが日本のためだのといった危険思想をもっていた。それと同種の危険思想を、[…](藤井)氏は持っているのです。しかし、[…](藤井)氏は、SNS上では、その危険思想を科学めかした理屈で隠しつつ、専門家会議や西浦先生を攻撃していました。」[58]
- 「藤井氏は去年の6月のある討論番組で「僕が間違っていたら、筆を折って人前に出ないようにしますよ」などと口走っていました。あの時点で、世界中の感染症や公衆衛生の専門家が苦戦している未知のウイルスについて、専門外なのに、そう断言してしまった。信じ難い傲慢さです。でも、そんな大見えを切ってしまったもんだから、その後、修正できなくなっている。これはもう救いようがないなと。[…](藤井聡は)善人面しますね。怒って叫んでみせたり、ため息ついて悲しんでみせたりの三文芝居。[…](藤井聡は)善人面しているうちに、本気で「俺は正義の味方だ」と自己陶酔に陥ったようにも見える。[…]第4波の緊急事態宣言の前後、大阪や東京で感染者数が増え続ける中で、藤井氏は、感染者数の「増加率」が減ったのを勝手に「収束」という言葉で定義して、「収束に向かっているから緊急事態宣言は必要なかった」とツイッターで主張していました。/しかし、言うのも馬鹿々々しいですが、増加率が減少しようが100%以下にならない限り、感染者数は増加しているわけですから、普通はそれを「収束」に向かっているとは言わない。特に大阪は医療崩壊しかかっていたんですから、少なくとも、対策を強化する必要がないなどという結論になるはずがない。[…]緊急事態宣言は不要と唱える藤井氏や宮沢孝幸氏は「目、口、鼻さえ触らなければ大丈夫」って言っていましたが、人間は日常生活の中で無意識に目、鼻、口を触るわけですから、絶対触るなと言われてもできません。そんな無理筋の提案をしておきながら、それが受け入れられないからって「大嫌い」って言われてもね。」[59]
- 「京都大学大学院教授の藤井聡氏はなんて言ったのか。昨年の6月に「もし僕が間違っていたら人前には出ません。筆を折ります」と言ったわけですよ。それで筆を折るのが嫌なもんだから、今は事実や論理をバキバキ折っているところです(笑)。[…]藤井氏は、2020年12月、「WeRise」という団体のイベントに参加し、講演で「コロナがあったら、飲んでもいい」などと発言しています。コロナって、ビールのコロナじゃないですよ。挙句の果てには、ギターをかき鳴らし、飛沫飛ばして「Oh,Yeah,Oh,Yeah」などと叫んでいるのです。ツイッターで流れて来たその動画を見た時は、言葉を失いました。/これは、さすがに限度を超えているでしょう。藤井氏が「Oh, Yeah, Oh, Yeah」と歌っていた頃、すでに大阪の医療機関は逼迫していました。そして、その後、大阪は、医療崩壊状態になったんですよ! 藤井氏とつるんでいる連中は、この「Oh,Yeah, Oh, Yeah」の動画を見ても平気なんですか?[…]あんな「Oh,Yeah」男に「MMT! 」とか言われると、MMTまでトンデモ扱いされてしまうから、迷惑です。[…]藤井氏は、MMTを唱えていたにもかかわらず、昨年7月、「財政政策が行われるとは思わない」と断じ、さらに感染症の専門家でもないのに「半自粛」を唱え、挙句の果てに、尾身先生と西浦先生を公開質問状で断罪するという挙にでた。[…]感染拡大を防ぐために、感染症の専門家や医師たちが必死に警鐘を鳴らしていたというのに、藤井氏は警鐘ではなくギターを鳴らして「Oh,Yeah, Oh, Yeah」とマスクもしないで叫んでいたわけです。それで感染が拡大して医療崩壊したら「病床増やせって、言っただろ」って、いったい何なんですか、この人は。[…]深刻そうな顔にチョビ髭つけて、大学教授か何かの肩書を振り回し、やたら「アウフヘーベン」とか哲学用語・外国語を口走ってもったいつけ、人前で葉巻を吸って見せたりする。権力者にはペコペコするのに、学生や飲食店の店員とかには威張り散らし、講演ではすぐに興奮して「僕は、そういう日本人にムカついているんですよ~! 」とか叫んで大演説。」[60]
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