噴水噴水(ふんすい)とは、公園、池、湖などに設けられ、水を周囲よりも高い位置で、上部又は水平に噴出する装置。主に公園やダム湖、ため池などに設置される水景施設である[1]。 概要水景施設としては、噴水は水遊びを前提としない水辺空間である修景用水に設置されることもあれば、水遊びを前提とする水辺空間である親水用水に設置されることもある[1]。 日本語における「噴水」は水を上方向へ噴出させる装置という意味合いが強い[2]。一方、英語では“fountain”にあたるが、英語圏でも様々な解釈があるとされ、水が吹き上がる構造物とすることもあれば、水盤のように水を受ける場所のように捉えられることもある[3]。“fountain”は水飲み場の蛇口などを含むこともあり、噴出方向は必ずしも上方向となっている必要はないとされる[2][4]。 噴水の形状は、水盤から水が噴出して水自体をデザインする水盤噴水と、彫刻などのオブジェを施した装飾噴水に分けられる[2]。水盤噴水の演出形態はキャンドル型、放射型、落下型、ベル型などに分けられる[2](より細かく直上形、噴霧形、マッシュルーム形、キャンドル形、平形、扇形、フラワー形などに分けることもある[5])。 なお、室内装飾品として卓上噴水や室内噴水というものもある[6]。 日本の噴水奈良県にある飛鳥時代の石神遺跡では、水位差を利用して水を噴出させていたと推測される須弥山像と見られる石造物と、石人像が発掘されている[7]。石人像は異国人の風貌を持つ男女の老人が杯を持つ姿をした像であり、百済からの渡来人の技術によって制作されたものと考えられる[7]。 日本で最古とされる噴水は兼六園の噴水で、1861年に前田斉泰が金沢城内に作らせたものである。当然、動力は使われておらず、高低差を利用した位置エネルギーのみで動いている。その他、長崎公園の噴水も装飾噴水としては古いとされる。 2024年現在噴水の高さ日本一は、富士宮ホテルグループが運営する御殿場高原時之栖(ごてんばこうげんときのすみか)の噴水レーザーショー「ヴェルサイユの光」で、150mまで噴き上げることが出来、世界でも第7位の高さを誇っている。なお、富士宮ホテル時之栖は2025年1月13日で閉館すると発表しているので、その後は再度確認が必要である。 山形県西村山郡西川町の寒河江ダムにある「月山湖大噴水」は、噴き上げ高さが112mで、寒河江ダムが完成した1990年時点では日本一とされ[8]、世界でも第4位となっていたが、2024年現在、日本では「ヴェルサイユの光」に次ぐ第2位で、世界第10位となっている[9]。 このほか、滋賀県大津市の琵琶湖上(大津港沖合180m防波堤上)にて稼働している「びわこ花噴水」は、複数の放射噴水を横並びに構築することにより、横方向の長さで世界最大級の噴水をつくり出している[10]。 昭和期頃までには中小の公園や学校、官公庁などにも盛んに噴水が設置されたが、レジオネラなど病原菌の発生を防ぐ衛生管理や、循環式でも飛散や蒸発で損失する水を補う必要があり水道代やポンプの電気代、機器の維持コストが嵩む点から出水を停止されていたり撤去されたりする場合も多い。 世界の噴水高く噴き上げられる噴水の第1~10位までは、サウジアラビア王国・ジェッダの「ファハド王の噴水」(約260m)、アメリカ合衆国・イリノイ州イーストセントルイスの「ゲートウェイ・ガイザー」(約192m)、パキスタンイスラム共和国・カラチの「ポート・ファウンテン」(約189m)、アメリカ合衆国・アリゾナ州フェニックス、ファウンテン・ヒルズの「ダウン・タウンの間欠泉」(約170m)、オーストラリア・キャンベラの「キャプテン・クック記念ジェット噴水」(約152m)、アラブ首長国連邦(UAE)・ドバイの「ドバイ・ファウンテン」(約150m)、静岡県・御殿場市の「ヴェルサイユの光」(150m)、アメリカ合衆国・ネバダ州ラスベガスの「ホテル・ベラージオの噴水ショー」(約140m)、スイス連邦・ジュネーヴの「ジェット・ドゥー」(約140m)、山形県・西川町の「月山湖大噴水」(112m)となっている。 過去には、大韓民国・ソウル漢江の「ワールドカップの噴水」(約202m)が存在したが、現在は運用を終了している。 また、アメリカ・シカゴのグラント・パーク中心部で稼働しているバッキンガム噴水は、世界の噴水の中で10本の指に入るほどの水量(約5,700リットル)を誇り、アメリカで最も美しい噴水の1つと讃えられると同時に、1927年の完成と併せて今はなきルート66の起点として公認されたという逸話を有している[11]他、ロシア・サンクトペテルブルクのペテルゴフに所在する「夏の宮殿」の庭園には150を超える噴水が据え付けられている[12]。 西ヨーロッパでは、バロック期に幾何学式庭園の隆盛と平行して、噴水が庭園を構成する主要な要素として盛んに設置されていく一方、いくつかの街には市内の飾りとして彫刻を付した噴水が設けられた[13]。噴水に好んで用いられるモチーフには、ギリシア神話の海神やニンフを模したもののほか、各大陸の河をさまざまな民族衣装をまとった擬人像で表す、いわゆる「四大陸の泉」がある。 噴水がある箇所
日本
ギャラリー(日本の噴水)
日本国外
ギャラリー(日本国外の噴水)
噴水にちなむ作品小説音楽作品短編映画1964年初めての東京五輪開催の2年後にあたる1966年、約10分の短編映画『水のデザイン』がリリースされた。 これは、水処理専業最大手として知られる栗田工業(クリタ)の企画の下、東京シネマ(現・東京シネマ新社)の制作によりつくられたもので、映画が製作された昭和40年代初頭においてすでに稼働していた各地の噴水の数々がとりあげられている。 その中には、東京・八重洲通りの車道の間に造られた風速に連動して高さを自動調節する噴水[23]や、神戸市内に造られた、水の噴射をしないときにはノズルが水面下に隠れるよう造られた噴水などが含まれており、加えて現在は閉鎖された横浜ドリームランドに存在した音楽連動型噴水もとりあげられている。 さらに、映画製作当時において当映画の企画者クリタが開発していた噴水技術のいくつか(浮沈型噴水など)も紹介されている。 現在、当映画は科学映像館(NPO法人・科学映像館を支える会)のWebサイト上において無料公開されている。 その他の作品
科学実験における噴水ヘロンの噴水動力を使わず噴水を実現する方法として、ヘロンの噴水というものがある。古代ギリシャのヘロンという学者が考えたものであるが、原理が簡単で自作も可能であるために、現代において理科教育用として使われることがある。 アンモニアの噴水理科実験の一つのアンモニアの水への溶解度の高さを利用してフェノールフタレイン溶液を噴出させる実験は、アンモニアの噴水と呼ばれている[25][26]。 脚注
関連項目
外部リンク |